「顧客体験価値向上を目的としたDXの取組みについて」

髙平 巧 氏
特別講演
【講演者】
セゾン自動車火災保険株式会社
事業推進部 マーケティングライン部長
髙平 巧 氏

<セゾン自動車火災保険について>

SOMPOグループにおける通販型ダイレクト損保事業の位置付けで、徹底したお客さま志向に基づき、デジタル技術を活用した独創的で革新的な商品、サービスを提供することで心地良い体験を感じていただき、お客さま一人一人の安心、安全な生活をサポートすることを企業ミッションとしている。

当社のプロダクト、おとなの自動車保険については、ネット型自動車保険で提供しており、低価格な保険料を設定し、必要な補償をニーズに沿って選んでいただくというコンセプトの下、サービスを提供している。また、お客さまのライフスタイルやニーズ、予算に合わせて補償内容を自分で選べる、「じぶんでえらべる火災保険」という商品も販売している。

加えて、セゾンカード限定の商品にはなるが、毎日の生活のちょっとした不安をカバーしてくれる、自分に必要な補償を自由にチョイスできるというコンセプトで開発したSVPを販売している。その他、SOMPOグループのプロダクトであるスマホ保険や医療保険、代理代行商品としてペット保険、がん保険、死亡保険等の保険商材も提供している。

今後はデジタル技術を活用した商品、サービスの提供により、お客さま一人一人の安心、安全な生活をサポートするという企業ミッションを追求して、デジタルにおける顧客体験価値の向上、ならびにDXを加味したデジタルマーケティングを実現することでさらなる規模拡大を目指していく。

デジタルアプローチのゴール設定は、お客さまインサイトに基づき、提供すべき価値をデジタル技術の活用によって具現化し、売り上げを最大化させることである。さらに業務効率化につなげることでデジタルアプローチの効果を最大化させることを目標としている。

お客さまをいかに理解、把握できるかが重要であり、仮説に基づき、デジタル技術を活用し、サービスを提供することで、いかにお客さまに心地良いと感じていただけるかがポイントだと考える。

<当社が考えるデジタルマーケティングで目指す理想像>

当社がデジタルマーケティングで目指す理想像として、データドリブンでお客さまの理解とアプローチをデータに基づいて行い、お客さまとの接点であるウェブサイトやSNSなどのデジタル接点と、リアル接点であるコールセンター、あるいは保険金支払い部門をシームレスに統合し、お客さまに購買の場を提供することだ。

さらに、収集したデータを元にサービス改善、ならびにプロモーションに生かしていく事を想定しており、得られたデータを統合して、お客さまを理解し、関係性を深め、心地良い体験価値を提供し続けることで、ファーストチョイスを目指して取り組みを進めている。

また、ウェブサイト、CRM強化を端緒としたデータ利活用、業務効率化の3点については、全社的に注力している取り組みで、現在チャレンジを進めている領域であり、デジタルによる顧客体験価値向上ならびに、DXを加味したデジタルマーケティングを実現したい。

<WEBサイトの取り組みについて>

人の移動や対面が大きく制限されて、非対面化、オンライン化がコロナ禍で加速度的に進み、ウェブサイトの重要性はますます高まっていると認識している。元々ネット型通販であるおとなの自動車保険においても、ウェブサイトの中でさらなるユーザビリティー向上が急務になっている。

複雑な保険商品をネットで提供しているため、お客さまが努力することなく理解しやすい体験価値を提供するという方針でウェブ全体の改善活動を行っており、納得、簡単、便利の3つのコンセプトを包含して取り組みを進めている。取り組みにあたり、3つのセクションに分けることができ、認知のセクションでは、効率的な集客を目標に取り組んでいる。次に情報収集のセクションでは、当社サイト来訪後のコンバージョンレートの向上を目的として、手続きのセクションでは、初回解決率向上を掲げ、コールセンター等のリアル接点とのシームレスな体験価値提供をコンセプトに取り組みを進めている。

実際に、昨年度にオフィシャルホームページを9カ月間程かけてリニューアルを実施している。ミッション達成に向け、「お客さま理解」をキーサクセスフィルターとして位置づけ、ペルソナの定義から、行動シナリオの設定、調査、ヒューリスティック評価、ユーザーテストを経てサイトを構築し、本番環境にてサイト公開をした。リニューアルの結果として、おとなの自動車保険のドメインのサイト来訪者は1.3倍、サイトの回遊性を示すサイト滞在時間は40秒近く向上しており、全体としてユーザーフレンドリーが図れた効果だと考えている。

<データ利活用の取り組みついて>

現段階では当社で保持しているクローズドデータを活用した改善に終始している。今後、オープンデータをつなぎ込み、CRMツールを導入して、さらなる体験価値の向上につなげていきたいと考えている。データ利活用にあたり、お客さまの属性データのみならず、新たに行動データを処理、統合、分析し、お客さまのインサイトに即したコミュニケーションを行うことでリテンションモデルにシフトし、LTVの最大化をゴールに取り組みを進めている。

戦略として、従前は規模拡大にあたり、新規契約を獲得することを量・効率ともに重視していたが、現在はカスタマーサクセス思想に基づいてリテンションモデルへの移行を目指している。また、昨年度よりこれらの移行に伴い、CRM強化を目的としたワーキングを立ち上げて、部門横断で強化の取り組みを開始した。まずは事業インパクトの見える化に着手しており、保有契約のポートフォリオを可視化した後、新規契約後、初の更新契約時の継続率、またその前後で事業インパクトの見える化を行い、精査している。

次のステップでは、3つのアプローチを実施しており、まずは過去のアンケート結果から、当社へ加入しているお客さまが当社にどのような価値を求めているのか、提供価値の仮説だしを行い、価値構造仮説マップを作成している。次に、顧客データの分析として、改善による事業インパクトの大きい注力セグメントの見定めを行い、最後に、価値構造マップの仮説の裏付けとして、既契約者に、現在「既に提供できている価値」と、「期待する価値」のアスキング調査を行い、期待されているが提供できてない価値を明確にしている。これらを基に、当社に加入いただいたお客さまへの成功体験を新規加入以降のトランザクションで見える化したサクセスジャーニーマップを作成している。

サクセスジャーニーマップをベースに、さまざまな施策をPoCとして一定期間実施した結果、実際の継続件数が増加する結果となった。現在は、セグメントごとのサクセスジャーニーマップをベースに、マーケティングオートメーションにより、さらなるOne to Oneのコミュニケーション促進に向けた取り組みを進めている。 今後は行動データを含めたお客さま情報の処理、統合を目的にCRMツールの導入を行い、お客さまインサイトに即したさらなるOne to Oneのコミュニケーションの促進、カスタマーサクセスの具現化に向け、取り組みの推進を図っていく。

<業務の効率化について>

DXによる業務効率化の方針として、規模拡大と比例しない業務量の抑制や効率化を図ることを前提に、デジタルを活用して、お客さま、当社、双方の簡単便利を実現することで、業務削減だけではなく、顧客体験価値向上につなげていく次第だ。

保険自体、お客さまと事業者の知識のギャップが激しい商材であり、確認や手続き関連で、結果的にお客さまの負担を掛けてしまうことが課題であった。この解決策として、LINEやCRMなどのデジタルツールやAIの導入により、お客さまにとって分かりやすく、さらに利便性を追求したCXを提供することにより、業務量が抑制され、生産性が向上し、品質が向上するという好循環につなげていきたいと考えている。

LINEについては、自動車保険に関するお客さまのイベントである、加入、事故、保全、更改の4つのトランザクション別で具体的なコミュニケーションを実施し、お客さまの声をベースに改善取り組みを進めている。

AIについては、保険金支払いで大量の保険金請求の中から不正請求を検知する作業でAIによるソリューションを導入して、保険金の不正請求に対する対応を強化するとともに、デジタル化による工数削減、支払いスピードの迅速化につなげている。事故という、保険の最大の価値提供時にスピードディーな保険金支払い対応を図ることで、お客さま満足度の向上につなげていく狙いだ。

最後にCRMツールついては、保険期間中の車の変更の際に、手続きが必要となるが、お客さまは、旧契約のみの変更手続きを行い、新しい契約の変更手続きを失念するケースが多い。これらの注意喚起として、多くの工数を割いて、お客さまへ手紙を送付し、注意喚起を行っているが、今後はCRMツールからMAへターゲットの自動連携を行い、MAを用いてお客さまへ自動的に通知することで課題解消を図り、オペレーター、バックオフィスの業務の削減と手続き漏れの抑止に取り組んでいく。

<最後に>

現在はお客さま接点の履歴が完全につながっておらず、デジタルとリアル接点の履歴を一元管理してくことで、お客さまの反応を鑑みたパーソナライズ化された、または、リアルタイムコミュニケーションを具現化させた取り組みついて紹介をした。今後もリアル接点、デジタル接点のシームレス化を図ってエフォートレス体験価値を提供し、DXを通じた顧客体験価値向上につなげていきたいと考えている。