「デジタルアダプションによるトレーニングコストの削減と利用状況のモニタリング」

小野 真裕 氏
【講演者】
WalkMe株式会社
Chief Customer Value Officer
小野 真裕 氏

WalkMeについて

当社は2011年にイスラエルで創業し、デジタルアダプションの市場を創造したリーダー企業だ。ミッションは、誰もが迷いやストレスなくデジタルシステムを使いこなせる世界を創ることである。デジタルアダプションとは日本語で「定着化」に相当し、具体的には誰もが迷いなく操作できる業務シナリオに沿った、伴走型のガイダンスや見守り機能だ。

顧客数はグローバルで2,000社を超え、Fortune 100のうち55社でご利用頂いている。日本では2019年から事業を開始し、導入実績は50社を超えた。WalkMe自体はどのようなシステムにも適用できるが、その中でも特に多いのがSalesforce様やSAP様といったシステム上での利用だ。

DXが直面する不都合な真実

ご存じのとおりDXにはさまざまな困難があり、一説によると7割~9割はうまくいっていないという話もある。その理由は、トランスフォーメーションは「痛み」が伴うこと、さらにデジタル自体が「痛み」の原因になりえることだ。システムを実際に稼働し始めると、システム導入による期待成果がすぐに出ると思われがちだが、実際はそうならない。現場の抵抗や混乱などでネガティブな方向に振れた後、徐々に習熟するにつれて成果が出てくる。稼働前に描いていた理想と現実の間のギャップを埋めるのがデジタルアダプションである。

日本におけるデジタルアダプションニーズ

我々と日経BPコンサルティング様の共同調査で、SaaS導入後の現在の課題を質問したところ、「ユーザーへの定着化」と回答した方が72.9%と非常に多かった。企業のサポートとしては「マニュアルやFAQの用意」が86%と大多数だ。一方、47%のユーザーからは「マニュアルがわかりにくい/使えない」との回答結果が出ている。DX推進にあたり、ユーザー・運営ともに「痛み」「疲弊」があるのが現状で、緩和する必要がある。

デジタルアダプションのアプローチ

これまではユーザーの方からテクノロジーに合わせることを求められる時代であったが、今後はテクノロジーから人間に寄り添うアプローチが重要となる。WalkMeの目指すデジタルアダプションのイメージは、「カーナビ+自動運転」だ。業務システムにおいて、クリックする場所や入力内容等をガイドすることで、ユーザーのやりたいことができる状態にする。

これまで単独でバラバラに存在していたERP・HCM・CRMをオーバーレイしたうえで、入力やページ遷移などのガイダンスやオートメーションを可能にする。これまでは人間で対応していた部分に対してテクノロジーでサポートするのだ。また本当にユーザーがうまく利用できているかをWalkMeがモニタリングし、改善のPDCAを回せるようにする。

一口にマニュアルといっても2つのレイヤーがあり、操作マニュアルはシステムの使い方のガイドだ。もう1つの業務マニュアルは現場の意思決定・アクションであり、WalkMeはいずれのマニュアルも実装できる。単に操作ができるだけでなく、現場の変革意思に沿ったアクションもできるようサポートする。

今後の見通しとして、Gartner社は、2025年までに70%の組織が「社内のテクノロジーすべて」においてデジタルアダプションを利用するようになると予測している。

某損害保険会社様のWalkMe導入事例

Salesforceを基盤とした新代理店システムを本年10月より順次展開されている。システム利用の早期定着やユーザビリティ向上を目的として、WalkMeをご採用頂いた。以前scratchで作っていたシステムをSaaSベースに刷新する取り組みだが、SaaSベースが故の制約や直観的に理解しづらいポイントの解消のために、ツールが必要と感じていらっしゃったとのことだ。

GoLive直後の現時点で寄せられた声を紹介すると、ユーザーの方からは「自動化が非常に便利」「項目数が多い画面でも迷わず入力できる」との評価を頂いた。WalkMeがあることで、マニュアルは以前より3割削減することができた。マニュアルを参照していなくても画面の概要が理解できるようになり、マニュアル自体も1画面ずつ操作を掲載する形式から脱却されたそうだ。大規模システムということもあって操作研修は実施されたが、活用上の重要なポイントやわかりにくいポイントをWalkMeで案内する形式となった。今後期待する効果としては、ヘルプデスクの入電数削減とのことだ。

トレーニングコストの削減

トレーニング、サポート、効率化の3領域についてコストを削減し、システムに関する従業員満足度の向上が可能だ。トレーニングではシステム運営側での場所の確保や講師の配置といった諸々のコストを削減し、ユーザー側も講習に参加する手間がなくなる。効率化に関してはユーザーが迷わなくなることから問い合わせが減り、操作時間が短縮され、ミスも発生しなくなるので手戻りも減る。サポート側もユーザーサポートやエラー発生時の処理のコストを減らすことができる。

入社からの早期立ち上げ

ある従業員が入社した直後から、さまざまな手続きをどのように行えばいいのか迷うことがあるだろう。WalkMeはさまざまなシステムを横断して利用できるため、ユーザーの「やりたい事」に対して「どのシステムを使うか」「どう使うか」をサポートすることが可能だ。アメリカでは1つの会社に入っているSaaSが数百あるとされ、日本はまだ10程度だがこれから増えることが予想される。今後、ユーザーが最初にどのシステムに行くべきかのサポートを手厚くする必要がある。

WalkMeは単一システムだけでなく、デジタルアダプション・プラットフォームとして複数システムに対応する際に最大の効果を発揮する。WalkMeが複数のシステムをオーバーレイすることにより、ユーザーのサポートが可能だ。一つの事例をお見せすると、従業員は届いたメールをクリックするだけでWalkMeのサポートが始まり、住所変更などの手続きをスムーズに行える。

我々はWalkMeを通じたデジタルのユーザーエクスペリエンスの向上だけでなく、最終的には従業員のハピネスやエンゲージメントといった領域の効果を狙っていきたいと考えている。具体的にはユーザーの満足度やアプリケーション定着度の向上等だ。デジタル上のユーザーエクスペリエンスに注力することにより、従業員エンゲージメントの向上、生産性向上、退職率の減少につながる。

利用状況のモニタリング

WalkMeのユニークユーザー数やセッションなどの状況は、随時モニタリングが可能だ。それぞれのガイダンスに関しても一連のフローの状況をデータで表示し、ユーザーがどこで離脱したのかを把握できる。さらにWalkMeはユーザーのクリックやマウスの動きなどの情報を記録することも可能だ。たとえばあるユーザーのイベントログを利用して、動画のように映像を再生することで、具体的に画面のどこで迷っているのか、操作を間違えているのかがわかる。ガイダンスをどのように改善すれば良いのかが把握できるので、PDCAも迅速に回すことが可能だ。WalkMeは優れたツールであるが、一発で100点のガイダンスを作るのは難しいので、改善ループをどんどん回すことは非常に重要である。

◆講演企業情報
WalkMe株式会社:https://walkme.co.jp/