2021年12月8日(水)開催 INSURANCE WEBINAR「コンタクトセンターにおける顧客接点の最適化」<アフターレポート>

2021年12月8日(水)開催 INSURANCE WEBINAR「コンタクトセンターにおける顧客接点の最適化」<アフターレポート>

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2021年12月8日セミナーインフォ主催INSURANCE WEBINAR「コンタクトセンターにおける顧客接点の最適化」が開催された。近年では、デジタルシフトによって顧客問い合わせチャネルが多様化し、電話だけでなくメールやチャットボットなどのマルチチャネルで顧客対応を行うのが主流となった。保険業界ではサービスの差別化や競争力強化のため、顧客目線に立って、顧客のニーズを理解し、柔軟な対応をすることが必須となっている。本セミナーでは保険会社におけるコンタクトセンターのトレンドを踏まえ、各保険会社に最新事例をご紹介いただいた。その他、各協賛企業よりデジタルを駆使したコンタクトセンター最適化のための最新技術をご紹介した。

  1. アフターコロナにおける顧客タッチポイントの最適化の方向性」
    チューリッヒ生命保険株式会社 富澤 正人 氏
  2. 「DX時代の顧客接点進化に向けた取り組み事例」
    株式会社TMJ 伊藤 哲彌 氏
  3. 「お客さま満足度向上に向けたあいおいニッセイ同和損保のコンタクトセンター戦略
    ~在宅、デジタル、データ活用への取り組み~」
    あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 緒方 康夫 氏
  4. 「顧客対応を自動化するチャットボット・ボイスボット活用最前線
    ~個人情報を取扱う手続きへの対応とサポートDXの実現に向けて~」
    モビルス株式会社 柏原 学 氏

「アフターコロナにおける顧客タッチポイントの最適化の方向性」

富澤 正人 氏
基調講演➀
【講演者】
チューリッヒ生命保険株式会社
お客様サービス本部 本部長
富澤 正人 氏

チューリッヒ生命保険株式会社

当社は150年の歴史を持つスイスの保険グループの一員であり、従業員360名ほどで運営している。契約件数は2021年に126万件を突破し、直近6年で6倍に増加した。

コンタクトセンターの概要

コンタクトセンターの従業員数は全体で100名超、既契約者向けのセンターは約30名である。業務内容は各種変更手続きの受付から、最近ではチャットボットやマイページ等のNon-Voice領域のサービス展開にも取り組んでいる。

センターの入電数は2015年から2018年まで前年比125%で増加していたが、2018年にチャットボットやVisual-IVR、2020年にマイページをリリースしたことにより、入電数は抑制できている。また、チャットボットやマイページといったNon-Voiceサービスの比率がこの2年で0%から40%に伸びたことから、スタッフ数を20%以上減らすことが出来ている。加えて、お客様のロイヤルティ指標であるNPS®は2018年のスコア4から2020年には17に良化している。

<在宅コールセンターのパフォーマンス最大化>

当社は新型コロナウイルスが感染拡大する前より在宅コールセンターの環境整備を進めていた。その結果、第一回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月時点で在宅率70%以上にて運営することができた。在宅をスタートさせた時は、運営上の混乱やエスカレーションのしにくさから生産性が悪化したが、在宅専任のエスカレ担当の配置やリモート研修等を通じて、コロナ前と同等の生産性に戻りつつある。

在宅コールセンターが当たり前になる中、次の課題は「在宅ストレス」への対策だ。顔が見えない、一人だと不安、ちょっとしたことが聞けないという声がよく上がる。また、自己のスキル・キャリアについて不安や悩みを抱えてしまうこともある。このような課題に対して、様々なコミュニケーションの活性化に繋がる施策に取り組んでいる。

<コミュニケーション施策例>

具体的な施策例として、毎月テーマを決めてオフィスおよび在宅メンバーで「座談会」を開催している。オンライン会議にて全員顔を出しながらテーマに応じて意見を出しあっている。その後、座談会で出た意見と改善に繋げられる施策は進捗状況をボードに貼り出すなど、全てオープンにしている。座談会だけで終わらせないように留意している。

その他、スタッフ1人1人が様々な「+α」のテーマを持って改善に取り組んでいる。NPS®やQA(Quality Assurance)といったお客様満足や電話品質の改善、ヒヤリハットといった事故を抑制する活動など、スタッフ自身が興味を持てるテーマを選択できるようにしている。これらの活動を通じてスタッフ同士のコミュニケーション機会が生まれており、情報発信も活発に行われている。単なる情報発信ではなく、テーマごとにイラストやコメントを添え、見てもらうための工夫も凝らしており、これらが会話のきっかけにも繋がっている。特に在宅メンバーが情報発信し、オフィスにいるメンバーが受け取るといった構図がコミュニケーション上のバランスとして非常に良い。

<Voice領域の方向性>

今後のセンターの方向性としては、「+α」の活動を維持しながら、さらなる働き方の多様性を追求し、「場所」の自由度を高めていきたい。また、こうした活動を社内の他のコール部隊にも横展開するといった社内サポートとしての動きから対外的な活動として副業などにもチャレンジしていってもらいたいと考えている。

<Non-Voice領域の方向性>

次にNon-Voiceの領域では、主に3つのサービスがある(①マイページ、②チャットボット、③SMS/LINE)。2年前はNon-Voiceの利用率はほぼ0%であったが、現在は40%近くまで引き上げられている。結果、入電抑制やペーパーレス化が進み、月間のコスト削減効果も500万円以上となっている。

Non-Voice比率を増加させるために、定性・定量の両面からペインポイントを洗い出し、継続的にUI/UXを改善している。最近ではお客様のWebサービスに対する期待値や要望が高まっていることから、如何にスピーディに課題を発見し改修できるか?如何にエフォートレス体験を構築できるか?がポイントと考える。

<取り組み施策例1:ログイン方式/デプスインタビュー>

当社のマイページは、「ID・パスワードなし」でログインできるのが特徴だ。「名前」・「生年月日」・「携帯番号」を入力すると、SMSでワンタイムパスワードが通知されログインできる。このログインのしやすさが利用率に繋がっていると考える。

また、ログイン後のUI/UXに関して、デプスインタビューによりお客様に実際の画面を利用していただき、1つ1つインタビューしながら具体的なペインポイントを特定している。NPSアンケートも取得しているが、アンケートコメントだけでは画面のどこに問題があるのか把握しづらいためだ。また、インタビューは画面を設計したスタッフ自身が行うことで、お客様の直接的な反応(分かり難いなど)を知ることができる。時にはショックを受けることもあるが、今後の改善の推進力となっている。

<取り組み施策例2:カスタマージャーニー/テキスト分析>

UI/UX改善として、カスタマージャーニーも非常に効果的だ。コールスタッフや事務スタッフは普段からお客様と接しているが、なかなかお客様目線になり切れないことも多い。そのため、ワークショップ形式で議論することにより、自身がお客様の体験をし、様々な気付きに繋がることや参画意識の醸成にも繋がる。

また、お客様の声を分析するためにツールを使ったテキスト分析にも取り組んでいる。デプスインタビューの結果(定性)を定量的なデータで裏付けることへの利用や、細かなお客様の声の発見に繋げている。また、今後のデジタルスキルの習得として、各スタッフに学んでもらっている。

<取り組み施策例3:UI改修>

マイページやチャットボットともに継続的にUIを改修している。具体的な例として、チャットボットのバナーは当初「ご質問をどうぞ」という汎用的な案内であった。しかし、問合せ件数が多い「控除証明書の再発行・住所変更はこちら」という直接的な表現に変更したことで利用率が倍近く増え、入電数も10%以上抑制することが出来た。他にも当社ではスマホのサービス利用率が70~80%と高いため、スマホ画面の1st Viewの見せ方にこだわっている。

<今後目指したい世界観 ~“一貫した顧客体験の追求”>

保険業界共通の悩み・課題として、顧客とのタッチポイントの少なさがある。現状は、お客様側に何らか用事があり保険会社のサービス(マイページなど)を利用していただくという、受動的かつ限定的なタッチポイントとなっている。その中におけるペインポイントの潰し込みというマイナス面の改善にフォーカスしている状況である。今後は、如何に気持ちよく使っていただくか?といった「ゲインポイント」も模索していく必要がある。そのためには、有人チャットなどWebの中に人が介在することで痒い所に手が届くようなサービスを提供していきたい。

さらに大事なことは、保険会社からお客様と繋がるための新たな“きっかけ”を創出していくこと、そのきっかけと既存のサービスが“同一プラットフォーム”で使えること、更にはお客様の行動履歴や属性情報から“パーソナライズな情報・サービスの提供”に繋げていけることが重要と考える。これらを満たしたタッチポイントが“一貫した顧客体験の追求”であり、今後目指したい世界観でもある。そうすることで今までの保険会社とお客様の「真実の瞬間」も変わっていくものと考える。