少額決済インフラ「ことら」とは?由来・手数料・加盟銀行【2022年版】

少額決済インフラ「ことら」とは?由来・手数料・加盟銀行【2022年版】

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昨今、スマホ決済の利用が広がり、少額で高頻度の決済ニーズが高まってきました。本稿では、少額決済インフラ「ことらプロジェクト」の概要と、「ことら」の可能性について平易に解説します。
※2023年2月3日更新

  1. 少額決済インフラ「ことら」とは?
  2. 「ことら」の由来
  3. 「ことら」の運営会社
  4. 「ことら」が求められる背景とメリット
  5. 「ことら」の手数料
  6. 「ことら」の加盟銀行
  7. 「ことら」のシステム
  8. 「ことら」の今後
  9. まとめ

少額決済インフラ「ことら」とは?

少額決済インフラ「ことら (COTRA)」とは、10万円以下の個人間送金を想定した少額決済インフラです。「ことら」は日本でキャッシュレス経済が普及してきていることを背景に、これまでとは異なる新たな決済インフラを構築するものとして進められています。

現在は他行に送金を行う場合、「全銀システム」を利用しています。全銀システムは銀行間の取引をリアルタイムにやり取りを行えるシステムで、約50年利用されているものです。しかし送金に手間や手数料がかかってしまうなど、コストが必要になることが金融業界の課題でした。
そのため手間が少なく、新たな利便性の高いインフラとして「ことら」が求められるようになりました。

ことらの企画・運営を進めているのは、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行のメガバンク5行が共同出資して設立した「株式会社ことら」です。2022年10月11日からサービス開始しました。

少額決済インフラである「ことら」が提供されることで以下のようなサービスが可能です。

  1. 各サービスが低コストな小口決済インフラに接続することで、安価な個人間送金が可能に。
  2. 送金元・送金先のサービス・アプリに依存せず、誰でも送金が可能に。
  3. 銀行以外のノンバンク決済サービス事業者との連携も検討。

ユーザーは上記のようなサービスを享受することで、手数料を気にせずに取引ができる、特定の決済アプリを必要とせずに送金ができるなど多くのメリットが得られます。
たとえば「ことら」を利用するユーザーの送金方法は、携帯電話の番号やメールアドレスを入力するのみです。そのためユーザーがより自由に利便性が高く、さまざまな場面での利用につながることが期待されています。

「ことら」の由来

「ことら」の由来は「小口トランスファー」の略称です。
プロジェクトネームを付ける際の候補の中に「ことら」があり、若手メンバーの中で好評だったため決定したと代表取締役社長の川越氏がインタビューで語られています。
また「ことら」の英語表記はコーオペラティブ・トランスファーシステムとの頭文字を取って「COTRA」です。先頭の文字がCである理由は「ことら」の目指す世界観を表現するために、あえて「C」にしたとしています。

「ことら」の運営会社

商号 株式会社ことら(英文 Cotra Ltd.)
所在地 東京都中央区日本橋兜町8番1号
資本金 17億円(資本準備金17億円)
株主構成 株式会社みずほ銀行 25.00%
株式会社三菱UFJ銀行 25.00%
株式会社三井住友銀行 25.00%
株式会社りそな銀行 18.75%
株式会社埼玉りそな銀行 6.25%
設立日 2021年7月1日
代表者 代表取締役社長 川越 洋
業務内容 (1)資金決済インフラの構築に関する企画立案と保守・運用
(2)金融機関や資金移動業者等からの決済情報の送受信
(3)資金決済インフラに接続する金融機関や資金移動業者等への開発
  及びサービス運営の支援
(4)資金決済インフラに関する調査及び研究並びに広報及び宣伝活動
(5)資金決済インフラの改善と発展に関する意見の発表及びその推進
(6)関係官庁、金融機関その他内外諸団体との連絡及び意見具申等
(7)資金決済インフラを表示する商標等の知的財産等の取得及び管理
(8)前各号に附帯又は関連する一切の業務

「ことら」が求められる背景とメリット

日本において「ことら」が求められる背景には、「キャッシュレス経済が普及してきたことに伴う社会ニーズの変化」が挙げられます。
経済産業省の商務・サービスグループキャッシュレス推進室が令和4年に発表した資料によれば、日本のキャッシュレス経済比率は2020年で29.7%です。この数字は2010年のキャッシュレス経済比率と比較すると倍増している結果となっています。また、経済産業省はキャッシュレス経済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしているため、今後もより拡大していくことが予想されます。
こうしたキャッシュレス経済の普及によって、各金融サービスはより発展を続けてきました。そのため社会的ニーズもキャッシュレスでのやり取りに変化してきており、自身の利用している決済サービスにスムーズに資金移動したいなどのニーズが高まってきています。

「ことら」を利用することで銀行や資金移動業者、一般ユーザーのそれぞれにメリットがあります。
銀行のメリットは、現金のハンドリングコストが削減されることです。現在、現金のハンドリングコストは約8,000億円にも上るとされており、「ことら」の導入によって現金を引き出す回数が削減できれば、コストカットにもつながります。
資金移動業者のメリットは、預金口座に手間なく送金できるようになることです。従来は決済アプリに資金移動をしてしまうと、預金口座にお金を戻すのには相当の手間が必要でした。「ことら」を導入することで、こうした資金移動の利便性が高まるため、資金移動業者の新規ユーザー獲得にも貢献できます。
最後に一般ユーザーのメリットは、利便性の向上や、手数料が安くなることが挙げられます。利便性の向上は、キャッシュレス決済が異なる事業者同士でも送金が可能になることが大きいです。たとえば送金を行うにしても「LINE Pay」で受け取りたい人、「PayPay」で受け取りたい人、預金口座に振り込んで欲しい人などさまざまでした。従来であれば、異なる事業者同士の送金は不可能でしたが、「ことら」を介することで送金が可能になります。そのためユーザーは自由に資金移動ができるようになります。
また手数料の資金移動を行うよりも安くなることが見込まれているのも大きなメリットです。

参考:キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会

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