プロンプトではなく「コンテクスト」が成否を分ける──AI時代におけるマーケティングと顧客理解の最前線


【PR】デジタル技術の飛躍的な進化と顧客ニーズの多様化は、金融機関に従来の業務モデルからの脱却と、提供価値の再構築を迫っています。競争優位を決定づける重要な経営課題として「AIやデータの活用を、いかにCX(顧客体験)の再構築につなげるか」が挙げられるようになりました。
2025年11月19日、株式会社プレイドと株式会社セミナーインフォの共催で「金融Executive Summit AI時代の金融CX」が開催されました。本イベントでは、AI時代におけるマーケティングと顧客理解の最前線として、金融業界が直面する課題と、それを乗り越えるための実践的なアプローチが語られました。
本稿では、アクセンチュア株式会社の木原 久明氏と株式会社プレイドの大畑 充史による講演内容をレポートします。

【講演者】
アクセンチュア株式会社
ソング本部
執行責任者 兼 コンサルティンググループ日本統括 マネジング・ディレクター
木原 久明 氏
【講演者】
株式会社プレイド
データ基盤プロダクト(KARTE Datahub)事業責任者
パートナーアライアンス責任者
エコシステム部門 副本部長
大畑 充史
目次

企業から見た顧客価値「LTV」と、顧客から見た企業価値「cLTV」

最初に登壇したのは、アクセンチュア株式会社の木原 久明氏です。同氏は、金融機関を中心に20年以上にわたりコンサルティングに従事し、現在は顧客フロント領域の変革を担う専門組織の責任者を務めています。

(アクセンチュア株式会社 ソング本部 執行責任者 兼 コンサルティンググループ日本統括 マネジング・ディレクター 木原 久明氏)

木原氏は「AIの進化により、①顧客・市場、②業務、③経営のそれぞれをデジタルツインで再現し、企業活動を行うことが現実のものとなりつつあります」と語り、マルチエージェント時代の金融機関と顧客の関係性のあり方について提言しました。

まず木原氏が指摘したのは、顧客理解の視点を「顧客起点」から「ライフ起点」へとシフトさせることの重要性です。企業から見えている顧客像は、あくまで一側面に過ぎません。生活における多面的な価値観を理解し、生活者にとっての自社の意義を高めていくことが必要だと木原氏は述べます。

そこで重要になるのが、企業から見た生活者の価値である「LTV(Life Time Value)」と、生活者から見た企業の価値「cLTV(Customer Life Time Value)」の両立です。「LTVの最大化は企業の持続的成長の原資ですが、その礎となるのは、自社の製品やサービスが生活者にとっていかに意義があるかを示すcLTVです」と木原氏は強調します。

これまでは顧客の購買履歴といったトランザクションデータが中心でしたが、AIやデータ活用の進化により、顧客の行動指標や心理指標までもが可視化できるようになりました。これにより、顧客の動的な心理変容を捉え、リアルタイムでコミュニケーションを行う「One to Moment」の時代が到来しつつあるのです。

AIエージェントが創り出す「デジタルツイン・エンタープライズ」の未来

講演では、AIの進化がもたらす「デジタルツイン・エンタープライズ」の世界観についても語られました。木原氏は、AIの進化を「生成AI」から、特定のタスクに特化した「AIエージェント」、さらには複数のAIエージェントが対話・判断・意思決定を行う「AGI(汎用人工知能)」へと続く段階で説明しました。

「AIが個人や企業のパートナーとなり、AI同士の会話で自動最適化が進む世界観が見込まれます」と木原氏は語ります。これは、企業活動そのものをバーチャル空間に再現する「デジタルツイン」の考え方に基づいています。木原氏は、①顧客のデジタルツイン、②業務のデジタルツイン、③経営のデジタルツイン、という3つの領域でその可能性を示しました。

特に注目すべきは「顧客のデジタルツイン」です。SNSや購買データなどから生活者の価値観をネットワーク化し、AI上に「生活者AIエージェント」を構築。この仮想の顧客と、マーケティングなどの「専門家AIエージェント」を対話させることで、新たなニーズの発見や、バーチャル空間でのテストマーケティングが可能になるといいます。

木原氏は、銀行の利用者を対象に行った実例を紹介。公開されているXのテキストデータから複数の顧客セグメントをAIエージェントとして生成し、彼らが持つ潜在ニーズを基に新しい金融サービスを創出するアプローチを解説しました。

最後に木原氏は、金融機関におけるAIエージェントの具体的な活用余地として、マーケティング施策の生成、営業ロールプレイング、不正申込チェック、24時間365日の問い合わせ対応などを挙げ、変革に向けたチェックポイントを提示して講演を締めくくりました。

AIの判断の根幹となる、高品質でリアルタイムな「1st Party Data」

続いて、プレイドの大畑 充史が登壇しました。大畑は、同社のデータ基盤プロダクト「KARTE Datahub」の事業責任者などを務め、ビジネスとプロダクトの両面からデータ活用を推進しています。

(株式会社プレイド データ基盤プロダクト(KARTE Datahub)事業責任者 パートナーアライアンス責任者 エコシステム部門 副本部長 大畑 充史)

大畑は「企業の持続的な成長の鍵となるデータ駆動型CXの実現に向け、AIの活用に大きな期待が寄せられています。しかし、その判断の根幹となる、高品質でリアルタイムな『1st Party Data』が不可欠です」と切り出しました。

プレイドは、「データによって人の価値を最大化する」というミッションを掲げ、CXプラットフォーム「KARTE」を提供しています。KARTEは、Webサイトやアプリを訪れる顧客一人ひとりの行動をリアルタイムに解析し、個々に合わせた体験を提供することを可能にするプロダクトです。

月間約10億ユーザーの1st Party Customer Dataを解析する大規模な基盤を持ち、その強みは「ユーザー単位のデータ蓄積」と「リアルタイム解析エンジン」にあります。この技術力により、JCB、三井住友銀行、三菱UFJ銀行をはじめ、多くの金融機関でデータ活用のパートナーとして採用されています。

AIエージェント活用の成否を分けるのは「プロンプト」ではなく「コンテクスト」

木原氏が示した「顧客のデジタルツイン」や「ライフ起点の顧客理解」を実現するためには、その前提となるデータ基盤が不可欠です。大畑は、AIエージェント活用を推進するデータ基盤のあり方について、近年のトレンドを交えて解説しました。

「AIエージェント活用の成否を分けるのは『プロンプト』ではなく『コンテクスト』です」と大畑は述べます。AIが正確な出力をするためには、顧客が「今、何をしようとしているのか」というコンテクストを正しく捉え、AIに与えることが重要になるのです。

そのためには、構造化データだけでなく、音声や動画といった非構造化データも含め、あらゆるソースから情報を取得できる柔軟なデータパイプラインが求められます。

プレイドが目指すのは、企業内に存在する多様なデータと、顧客体験から生まれるリアルタイムのコンテクストデータをAI-NativeなDWH(データウェアハウス)に集約し、企業独自の専門性の高いAIエージェントを構築する環境です。

大畑は、プレイドが提供するAIエージェントの活用例として、音声とWebで自然な顧客コミュニケーションを実現する「AIオペレーター」や、自然言語でデータ分析ができる「AIデータ分析エージェント」を紹介。

さらに、あらゆるデータから顧客コンテクストを自動で理解する独自のAIエンジン「Context Lake」をリリースしたことを発表しました。これにより、顧客の嗜好や行動といった定性的な情報と経営指標を掛け合わせた分析が可能になり、事業の真の成長ドライバーを解明できるといいます。

最後に大畑は、AIエージェント活用を成功させる要点として、以下の3点を挙げ、登壇を締めくくりました。

  1. 競争優位性を確保するためには、企業独自のコンテクストデータの学習が鍵となる。
  2. データを一気通貫で「貯める・解釈する・活用する」システムとオペレーションが大切。
  3. データ戦略を策定した上で、AIエージェント活用のクイックウィンを積み重ねることが大切。

両氏の講演では、競争優位を決定づける重要な経営課題であるAI活用に対してどのように向き合うべきかが語られました。共通して示唆していたのは、AI活用の競争軸が「どんなAIを使うか」ではなく、「どんな顧客文脈を持ち、それをどうAIに学習させるか」へと移行しているという変化でした。

金融機関同士でAI時代の金融CXについて情報交換

両氏の講演後には交流会が設けられ、参加した金融機関のエグゼクティブたちが活発に意見を交換する姿が見られました。AIとデータ活用が、単なる業務効率化に留まらず、顧客との関係性を再定義し、新たな価値を創造する時代。その最前線で繰り広げられる議論は、参加者にとって大きな示唆に富むものとなったに違いありません。

【本記事に関するお問い合わせ先】
株式会社プレイド https://plaid.co.jp/
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