デジタルバンクの将来性
デジタル技術の進歩、現代のニーズを見ても、デジタルバンク市場の拡大に注目が集まります。金融業界には「フィンテック」という単語がすでに一般的になってきており、テクノロジーの導入を前向きに捉えている土壌があると言っても過言ではありません。
デジタルバンクには現状としてセキュリティ対策やデジタル人材の確保、収益化等課題があるにせよ、近い将来、デジタルバンクが当たり前の存在となり、銀行の窓口に並ぶことがほとんどなくなる可能性もあります。
日本のデジタルバンクの先行例
(1)みんなの銀行
「みんなの銀行」は、ふくおかフィナンシャルグループが2021年5月に開設した日本初のデジタルバンクです。スマホ完結型のデジタルバンクのため、チャレンジャーバンクに分類されます。
みんなの銀行ではスマートフォンアプリを利用することで、ユーザーは24時間365日、銀行サービスの利用が可能になります。みんなの銀行には、「普通預金(Wallet)」「デビットカード(Debit Card)」「貯蓄預金(Box)」「お金の管理(Record)」の4つの機能が搭載されています。また月額600円のプレミアムサービスに加入すると、ATM利用手数料や他行への振込手数料が月に10回まで無料になるサービスや、キャッシングが5万円まで一時無利息で貸越できるサービスなどが利用できます。
サービス開始から1年でアプリのダウンロード数が105万、口座開設数が40万と一定の成果を挙げています。またユーザー層は10~30代のデジタルネイティブ世代が約7割を占めており、デジタルバンクのターゲットに適していると言えます。
参考:みんなの銀行
参考:スマホ専業の「みんなの銀行」1周年 100万DL突破で次の一手は?
参考:みんなの銀行 1周年、今夏にローン参入。デジタルウォレットを強化
(2)UI銀行
UI銀行は2022年1月にサービスが開始された、東京きらぼしフィナンシャルグループが設立したデジタルバンクです。UI銀行はデジタルネイティブ世代と呼ばれる若年層に加え、シニア層もターゲットとしています。そのためスマホアプリで全て完結させるサービスだけではなく、対面でのサービスも残し、両面での提供を行っています。具体的には定期預金の預け入れ等はスマホアプリで行い、住宅ローンなどの重要な取引については、きらぼし銀行の店舗で行えるように設計されています。こちらもUI銀行としての店舗は持っていないため、チャレンジャーバンクと言えます。
またUI銀行は将来的にBaaSの法人向けサービスの提供も視野に入れて、活動していきたいとしています。
参考:UI銀行
参考:東京きらぼしFGのデジタルバンク「UI銀行」の目指す世界とは? 口座開設、預金、振込をスマホで完結
(3)LINEバンク
LINEバンクはLINE株式会社と株式会社みずほフィナンシャルグループが共同出資した、「LINE Bank設立準備会社」が2022年度中に開業を目指すデジタルバンクです。
利用者人数が多いLINEアプリ上で銀行サービスの全てが完結する仕組みを目指しているとしています。またLINE株式会社は以前からLINE Financialという金融サービスをグローバルで展開しており、その一つであるLINEバンクも、タイ、台湾、インドネシアでサービスを開始しています。これまでのグローバルユーザー数は480万人を突破しており、日本で展開する際のノウハウも積まれています。
参考:LINE Financialとみずほ銀行による LINE Bank設立準備会社への追加出資および経営体制変更について
参考:LINE Bank、「Banking in Your Hand」をミッションに歩んだ一年
参考:LINE×みずほのスマホ銀行、2022年設立へ。スマホのメインバンクに方針転換
海外のデジタルバンク 3選
(1)OakNorth Bank
OakNorth Bankは2015年に創業した英国のデジタルバンクです。英国のチャレンジャーバンクで初めて黒字を達成したことでも知られており、中小企業向けの融資利息を収益源としています。
OakNorth Bankでは、ITシステムをクラウド上で利用する仕組みを設計しており、低コストでの事業運営を行っています。特にAIは与信分析などに活用されており、大手金融機関との差別化を図っているのが特徴です。また従業員数も必要最小限に抑えているため、利益率の高い事業モデルとなっています。
(2)N26
N26は2013年に設立したドイツ発祥のデジタルバンクです。欧州最大級のモバイル専業銀行にまで成長しており、アメリカにも進出を果たしています。
N26はスマートフォンを活用したサービス提供をしており、EUの居住者であれば、パスポート、携帯電話番号、住所登録によるオンラインID認証で簡単に口座開設が行えます。N26で開設した銀行口座には、無料のマスターカードやデビットカードが付いてくることに加え、Apple Payなどとの連携も可能で電子決済も即時に行えます。他にも19種類の通貨を自由に送金できるサービスなど、グローバル視点でのサービス提供を行っています。
(3)Green Dot Bank
Green Dot Bankはアメリカのカリフォルニア州に本拠を置くデジタルバンクです。BaaS型の事業を展開しており、Walmartとの電子マネー提携やUberとの運転手の給与口座連携、アップル社の電子マネー基盤の提供などを行っています。
例えばUberでは、ウォレットアプリ 「Uber Wallet」のクレジットカードや電子マネーの基盤を、Green Dot Bankのサービス基盤を活用しています。Uberは銀行免許を持っていないため、Green Dot Bankとパートナー契約を結ぶことで、基盤の活用が行えます。
こうした基盤提供をGreen Dot Bankは、行ってきており、パートナー企業が有している多くのユーザーによる手数料収入によって収益を立てています。
まとめ
便利で使いやすく、UIUXに優れている新しい銀行の形であるデジタルバンクは、今後も勢力を拡大していくでしょう。すでに具体的にサービスが開始されている事例もあり、利用者はさらに増えていくことも予想されます。今後の動向に注目が集まります。
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株式会社セミナーインフォTheFinance編集部