NFTの課題

NFTには当然ですが課題もあります。主な課題には以下の4点が挙げられます。

  • 法整備の遅れ
  • ハッキングリスクがある
  • 価値の変動が大きい
  • 消費電力が大きい

それぞれの課題について解説していきます。

(1)法整備の遅れ

NFTは急速に広がりを見せてきているため、対応する法整備が十分に追いついていないのが現状です。
例えば「所有権」や「著作権」の取り扱いがあげられます。所有権は物理的にあるものが対象であり、著作権は思想や感情を創作的に表現したものになりますが、NFT自体はブロックチェーン状に記録される「データ」にすぎず、基本的には著作権は発生しません。しかし、NFTに紐づいたデジタルコンテンツやデジタルアートは、著作物として著作権が発生する場合もあるため、その取り扱いの検討が必要です。

(2)ハッキングリスクがある

インターネットを活用するNFTではハッキングのリスクがあることも大きな課題です。NFTで活用しているブロックチェーン技術は、情報の破壊や改ざんは難しいとされていますが、実際には相当額の仮想通貨が盗まれているなどの事件が起きています。
例えばNFTゲーム「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」では、2022年3月に「Ronin Network」というブロックチェーンが外部からハッキングを受け、約6億2500万ドル(約770億円)の被害に遭っています。

参考:約770億円のハッキング被害を補償──アクシー・インフィニティの運営会社

また暗号資産情報サイトの「Crypto Times」によれば、情報分析サイトComparitechのデータから、2020年4月から2022年8月にかけてのNFTの被害総額が現在価格換算で1,200億円以上であるとしています。

参考:2020-22年のNFT盗難被害総額 = 1200億円【調査レポート】

(3)価値の変動が大きい

NFTは価格の変動が大きいのも課題です。なぜならNFTは仮想通貨を基盤としている技術であるためです。仮想通貨は法定通貨と比較して、価格の変動が大きいことが知られています。仮想通貨の一つであるビットコイン(BTC)の価格が、乱高下しているニュースを見たことがある人は多いのではないでしょうか。
NFTも急激にある商品の値上がりが始まるなど、価値が急激に高騰する場合があります。そのため実際にNFTを購入する際には、現在の価値に見合ったものであるかを見極める必要があります。

(4)消費電力が大きい

NFTで取り扱う仮想通貨ETH(イーサリアム)は、取引の際に起こる消費電力が非常に大きく問題になっています。なぜならNFTを支えるETH(イーサリアム)の取引には、「PoW(Proof of Work)」と呼ばれる仕組みが利用されているからです。現状の環境では、この「PoW」を活用することで、大量の電力消費が行われ、環境負荷がかかっているとされています。
一説によるとETHでNFTが1度取引されると8.7メガワット時という電力が消費されており、この数値は英国の平均的な家庭の年間消費電力の2倍と推測されているのが現状です。
しかしイーサリアムが現在、エネルギー消費を抑えるシステムへ改修する動きもしており、消費量が減少する予測も出ています。
こうした消費電力への懸念があるのも、NFTの課題と言えます。

参考:
ブロックチェーンによるエネルギーの大量消費を解消できるか:動き出したイーサリアムと「PoS」の潜在力
NFT盛況!多量の電力消費に学者たちはどう改善策を考える?

NFTに関するニュース【2022年12月更新】

(1)三菱UFJ銀行がNFT関連事業協業パートナーAnimoca Brands(アニモカ社)へ出資

三菱UFJ銀行は2022年8月に、NFT(非代替性トークン)関連事業で協業するAnimoca Brands(アニモカ社)へ2億2500万米ドル(約308億円)の出資を実施したことを公表しました。
アニモカ社はNFTを活用したプラットフォーム構築サービスを提供している企業で、三菱UFJ銀行とは2022年3月からNFT市場の活性化および発展をさせるための協業を発表しています。
今後は次世代型インターネット概念である「Web3.0」の到来を見据え、NFTの環境を整備し、日本企業の競争力向上に発展していきたいとしています。

参考:
Animoca Brands 株式会社への出資について
Animoca Brands 株式会社との協業について

(2)三井住友銀行がNFTをはじめとするトークンビジネスにおける協業の検討をスタート

三井住友銀行は2022年7月、ブロックチェーン関連事業を行うHashPortグループと、NFTをはじめとするトークンビジネスにおける協業を開始する基本合意書に締結しています。
三井住友銀行でも「Web3.0」を推進に向けた環境整備へ向け、NFT領域におけるエコシステムの構築を目指しています。具体的にはHashPortグループと三井住友銀行のWeb3.0」に関する知見を組み合わせ、「トークンビジネスラボ」を設置。トークンビジネスを推進するための研究や実証実験を行なっていくとしています。

参考:「Web3.0」時代の到来に向けたNFTをはじめとするトークンビジネスにおける協業の検討について ~エコシステム構築に向けたトークンビジネスラボの設置~

(3)自民党がNFT戦略のホワイトペーパー第2弾の草案作成へ

自民党が2022年3月に発表していた「NFT(非代替性トークン)ホワイトペーパー」の第2弾の草案が年内にも取りまとめられる方針です。
「NFT(非代替性トークン)ホワイトペーパー」では、「Web3」を念頭に置いた「デジタル経済圏の新たなフロンティア」を定義しています。新たなフロンティアの育成のための鍵となるのが、NFTを含む暗号資産を活用した経済圏であり、国家戦略として定めるべきだと提言していました。この提言を受けた日本政府は、2022年6月に「Web3」の環境整備を本格化する方針を閣議決定しています。
第2弾では「暗号資産を巡る税制改革」などを中心に議論を深め、草案をまとめたうえで、政府に提言する計画だとしています。税制度の課題が払拭されれば、国内初のスタートアップ企業の設立や優秀な人材の海外流出に歯止めがかかると期待されています。

参考:
自民党がNFT戦略のホワイトペーパー第2弾の草案作成へ、年内にも
自民党Web3PT、NFTホワイトペーパー第2弾起草へ
NFTホワイトペーパー(案) Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略

まとめ

「NFTビジネス」の推進にあたり、政府が「Web3」に係る環境整備の強化へと動いております。
現在ではゲームやアートなど、限られた分野での活用になっていますが、今後は新たなビジネス展開が広がっていくことが予想されます。今後の動向に期待です。

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