DAOの課題

DAOの課題としては、以下の3点が挙げられます。

  • 法整備が遅れている
  • 意思決定が遅くなりがち
  • ハッキングリスクがある

それぞれの課題について解説していきます。

(1)法整備が遅れている

2022年12月現在、日本ではDAOに関する法律は存在していません。現状のままでは、DAOを利用した際にトラブルがあったとしても法律の保護を受けられないばかりか、新たなDAOプロジェクトを立ち上げる際の障壁にもなり得ます。
世界を見渡すと2021年4月、アメリカのワイオミング州にてDAOを合法化した法律を制定しています。日本でも「経済財政運営と改革の基本方針2022 について」に明記されている通り、環境を整えるための法整備が求められています。

(2)意思決定が遅くなりがち

参加者の投票によって意思決定が進められるDAOは、従来のトップダウンの組織体制と比較して意思決定のスピードが遅くなりがちです。
例えばDAOのプロジェクトに何かしらのトラブルが発生した際の対応についても、投票によって決めていかなければなりません、意思決定のスピードが大きく遅れてしまえば、取り返しのつかない事態にもなりかねませんが、投票を行わなければDAOとは言えないというもどかしい点があります。
また民主的な投票結果が必ずしも良いもとは限りません。DAOは誰でも参加できることが、大きなメリットですが、悪意のあるユーザーが多く集まってしまうと民主主義がハックされる懸念もあるのも課題と言えます。

(3)ハッキングリスクがある

DAOはブッロクチェーン技術を活用しているため、改ざん耐性が高いのがメリットです。しかしハッキングリスクがゼロになるわけではありません。
実際に2016年には「The DAO事件」と呼ばれる、約360万ETHが盗まれるハッキング事件が発生しています。この事件はプログラムの脆弱性をつかれたことにより、多額の資金が流出してしまいました。
現行のDAOもインターネット上で展開しているため、セキュリティリスクが付きまとってしまうのは課題と言えます。

DAOに関する直近の注目ニュース【2022年12月更新】

(1)デジタル庁が、Web3.0推進へ向けDAO設立方針

デジタル庁は11月2日に行われた、Web3.0推進へ向け検討する「Web3.0研究会 (第5回)」において、DAOを設立する方針を明らかにしました。
人的、経済的な利益とリスクを注視しながら、環境整備や利用者の保護などが行える施策を取りまとめるとしています。基本設計としての法的位置づけは「構成員および事務局の自発的意思に基づき設立される任意団体」としており、法人格の付与などに伴う税制上の課題についても検討していきます。
他にもDAOを通じてのスタートアップ企業に対する資金調達環境の整備や、DAOを活用した地域活性化施策なども挙げられており、今後の動向が注目されます。

参考:Web3.0研究会 (第5回)

(2)ドコモがweb3.0に6000億円投資(DAO型アプローチを取る)

NTTドコモは11月8日に行われた「2022年度第2四半期決算会見」で、Web3.0の事業に対して6,000億円の投資を行うと発表しました。
具体的には「アクセンチュア」と「Astar Network」の2 社と提携し、web3.0における共通基盤となる「Web3 Enabler」を法人向けに提供するとしています。この「Web3 Enabler」では、暗号資産の交換からトークンの発行、ブロックチェーンなどがパッケージ化されており、web3.0サービスの構築を支援する仕組みとなっています。この取り組みに対しては、DAO型アプローチをかけることで、多種多様な業界や業種からの参加や連携を図りたいとしています。
さらに2023年には新会社を設立する方針で、新会社についても出資を募りたいとしています。

まとめ

DAOは従来の中央集権的な組織体制とは異なり、分散型で民主的な組織体制となっています。
公平性や透明性が高いため、今後はさらに他の分野への進出やサービスの展開も期待されており、Web3.0時代の新しい組織体制として多くの注目を集めています。
今後はDAOの法的位置づけや責任の在り方等、継続的に検討が進められることが予想されます。

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