金融ビジネスで決定的に重要となったUX/UI


金融ビジネスの非対面化が進展している。これまで、非対面化自体はネット証券など証券ビジネスを中心に進展していたが、今回のコロナ禍は、遅れていた銀行業界に対しても、非対面チャネル強化を不可避なものとした。アフターコロナにおいてもこの流れは不可逆であろう。海外では非対面チャネル活用の動きが顕著となっているが、非対面チャネルにおいては、UX/UI(ユーザーエクスペリエンス/ユーザーインターフェース)の重要性がクローズアップされている。UX/UIとはユーザーの経験や使い勝手を指すが、使いやすさやスマホ対応といった表面的なレベルに留まるものではなく、非対面チャネルがユーザーに与える心地よさや、利用頻度を高める吸引力を有しているか、といったデザイン面がより重視される概念である。

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「N26」に見る新たな金融ビジネス

ドイツのスマホ銀行「N26」も話題だ。すでに230万人のユーザーを獲得し、銀行でありながら全ての取引がスマホかつペーパレスで完結する点が特徴だ。特に日本のネット銀行では口座開設に数日を要するところ、10分で口座開設が完結(登録は8分)するという今までではあり得ないスピード感は、市場に大きな衝撃を与えている。手数料も低廉であり、チャットによるQ&A機能も装備、資金使途毎のサブアカウントが開設可能であることやカード・家計簿との連動などのサービスも充実している。なお、N26はドイツの預金保険制度の対象である。

ロビンフッドやN26が提供するサービスは、機能自体は特段目新しものではない。手数料の水準は低廉だが、唯一無二とまで言える水準でもない。そのような中で着実にユーザーを増やし既存の金融ビジネスに浸食している背景には、今までにないUX/UI、すなわち、夢中になる要素、心地よさ、驚き、ときめきといった付加価値を利用者に提供していることが重要な役割を果たしているということを示している。

村松 健 氏
寄稿
SBI金融経済研究所
事務局次長
村松 健 氏
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