InsurTechの成功例 “一点突破型”
成功を遂げ、生き残るであろうInsurTech企業の共通点に、新しいニーズを捉えた「一点突破型」があげられる。その一例が、2020年7月に上場し、住宅保険の加入から保険金請求までオンラインで完結できると大きな話題を呼んだ「レモネード」だ。幅広い商品提供ではなく、特定の保険商品―同社の場合、住宅保険―に絞って事業拡大を進めた。蓄積したデータで顧客ごとに保険料を最適化し、保険引受を高度化している。加入者は安く保険に加入でき、保険会社は損害率を下げられる。両者Win-Winの関係となった結果、最速で成長し、市場を築きあげた。現在はビジネスモデルが確立したとみて、ペット保険・生命保険などに事業領域を広げている。
同じ一点突破型でも最初は広かった事業領域を1つに絞ることで成長した企業に英国の「ボート バイ メニー」というペット保険会社がある。元はその名(たくさんの方に購入される)の通り、消費者から新しい保険商品の要望の声を集め、一定希望者が集まれば保険会社に商品開発を提案し、新商品をつくるビジネスモデルだった。しかし、現在はペット保険専門の会社に変わった。あくまで想像だが、広くあまねく新商品を開発するよりも、特にニーズが強い商品に特化した方が、事業成長が見込めると判断したのではないだろうか。そして、累計483百万ドル(約550億円)の大型調達を達成した。市場の見極めに成功し、今後も勝ち残っていくと見ている。
さらにもう一つ着目している点は、他社と協調関係を上手に築く「エコシステム」の姿勢である。前述のレモネードは先般、生命保険領域にも参入した。同社は住宅保険の領域においては販売と引受の両方を担当するフルスタックな保険会社である一方、生命保険の領域においては保険の引受は他社に委ねるという選択をしており、あくまで代理店である。強みである消費者にとって使い勝手の良いインターフェース部分を活かし、他の保険会社とも協業することで、今後も勝ち残っていくと見ている。
- 寄稿
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株式会社hokan尾花 政篤 氏
代表取締役CEO