「金融業界におけるData Trend 2022」

嶋 ピーター 氏
【講演者】
株式会社セールスフォース・ジャパン
Tableauディレクター Business Value Services
嶋 ピーター 氏

<時代とともに進化する組織(ティール組織論)>

時代とともに組織は進化しているが、それは情報(データ)をコントロールする観点からも見ることができる。フレドリック・ラルー氏による2014年の著作「Reinventing Organizations」で紹介されているティール組織論を使って説明してみたい。ティール組織論では、一番古い原始的な組織をRed(レッド)組織と呼んでいる。個人の力で支配的にマネジメントする「オオカミの群れ」であり、個人の力に依存し、短期的な目標で動く。その次に表れたのがAmber(琥珀)組織で、強固なピラミッド型組織であり「軍隊」とも呼ばれている。ヒエラルキーによって情報管理し、環境の変化には弱いという特徴がある。変化や競争よりヒエラルキーが優先されるという課題があり、行政機関、警察、軍隊などで多くあてはまる。

Orange(オレンジ)組織ではヒエラルキーは存在するが、成果を出せば昇給可能で、「機械」とも呼ばれている。実力主義や数値管理によるマネジメントが特徴で、現代の企業マネジメントの大半はオレンジ組織だ。Green(グリーン)組織は価値観や文化を重視する組織で、最近の新しい組織に多く見られる。主体性を発揮しやすく個人の多様性が尊重されやすいのが特徴で、360度フィードバック、社員モラル調査などの制度がある。現場に信頼・権利を分け与えているが、合意形成に時間を要してしまう場合がある。

最後に登場するのがTeal(ティール)組織で、全社員が意思決定権を持つ「生命体」にたとえられている。セルフマネジメント(自主経営)、ホールネス(全体性の発揮)が特徴で、組織存在目的が常に変化する。リーダーがいないので、チームの誰かに情報が集約するのではなく、情報はチーム全員が平等に持っている組織だ。

<ビジネス価値はアクションから生まれる>

DXが進んでいるが、集められたデータはそのままではビジネス価値を生まない。集まったデータを分析し、インサイトへ繋げる必要がある。しかしインサイトだけでもビジネス価値は生まれず、そこから具体的なビジネスアクションに繋げなくてはならない。それらビジネスアクションに繋げやすい組織の中でのデータ活用の観点を踏まえて、データトレンドを紹介していきたい。

2022年に大きな影響をもたらすデータトレンド

<人工知能(AI)の活用>

2022年2月に弊社より発表されたデータトレンド2022について、金融サービスから見て解説する。2022年に大きな影響をもたらすデータトレンドは5つあり、1つ目は人工知能(AI)の全社での活用だ。データ分析によるプロセス改善・開拓は、既知の課題の解決方法の探索、未知の課題の探索、新たな価値・商品・市場の調査で行われる。一方で人工知能(AI)は業務プロセスの自動化に使われているが、データ分析の補助にも多く使われている。DX推進により多軸のデータが集められているが、人間にとって分かりやすい2軸に変換するのにAIを使う。また画像データやアルタナデータの解析、音声など非構造データの構造化にもAIは必要だ。つまり、事業プロセス単位の自動化に止まらない広範囲なAIの活用が進んでいく。

そして、データを扱う全従業員がAIを活用できることが必要となり、全社全体のプラットフォームと考えることが重要だ。しかし全ての従業員が専門家である必要はない。

<データとAIの倫理>

2つ目のトレンドとして、組織にとってデータとAIの倫理的な利用の標準化が必要不可欠となる。金融庁は「IOSCOによる最終報告書『人工知能及び機械学習を利用する市場仲介者及び資産運用会社向けのガイダンス』の公表」において、AIとML(機械学習)を検討の最重要項目としている。今後、AIやMLの利用に対する管理(開発、テスト、利用、モニタリング)要件・規制は強化されていく流れだ。管理フレームはあるか、AIとMLの結果を分析するスタッフはいるか、運用前の開発・検証プロセスはあるか、投資家や規制当局に対する透明性はあるかといった点が金融機関に問われている。

<人材開発>

将来に備えた人材開発はデータスキルやツールのトレーニングに留まらない。データサイエンスとコンピュータサイエンスは全く異なる文化であることを理解することが必要だ。コンピュータサイエンスはプロセスの自動化を主な領域とするが、データサイエンスではデータ処理だけでなくビジネス・コンピテンシーとチーム力も重要だ。データサイエンスを成功させるマインドセットとして、データ・ビジネス・IT技術の3つのペルソナのチームワークと融合が必要だ。

<柔軟性の高いガバナンス>

競争力とコンプライアンスの維持に向けて、組織はデータガバナンスに対して、よりインクルーシブなアプローチを採用する。企業としてガバナンスが必要とする統一ビジョンは求められるが、柔軟に「連携された」ガバナンスが必要だ。データ及びCenter of Excellence(CoE)をハブ&スポークのような形にし、経営・人事・営業など各部門と柔軟に連携しながらガバナンスを行う。一箇所にデータとCoEを集めるのは無理で、各部門に特化したデータとCoEを配置する形となる。

<データの公平性>

人と組織の対話を改善するための枠組みとして、今後はデータの公平性が台頭してくる。データを共通言語とした社内コミュニケーションを確立するためには、公平にデータへアクセスできることが必要だ。また多様性の導入によって、利用データやAIに、アンコンシャス・バイアスが入り込むことを防ぐことが可能だ。これまで問題を起こしたAIは、例えばジェンダーバイアスや人種バイアス等が入っていた。このような事態を防ぐには、誰もがデータを公平に見ることができる体制が重要だ。

ヒエラルキーを排除したデータ活用による、従業員の活性化も求められる。現場でデータを活用することでデータの質は向上し、上層部に上げられたときのデータも高品質になる。品質の高いデータを現場にフィードバックすることにより、現場でも活発に分析が行われ、新たなインサイトの発見に繋がる。

<配置、管理、行動規範を人・データ・AIで考える>

現場が企業バリューに適当したビジネスアクションを選択し行動に繋げられるためには、データ活用・AI活用を業務単位で考えず、組織論の議論を含めた、全社でデータ及びAIを活用する文化の醸成が重要だ。ガバナンスを行う理念は共通としつつも、データ・モデル・お客様等の多様性に合わせた柔軟な運用が求められる。人材や業務要件に合わせて業務地域や部署を配置するように、データ・AIの特性や要件を理解し、戦略的に適材適所に配置することが重要だ。

DX推進により、オルタナティブデータや位置情報など多種多様なデータが入ってくる。データ活用目的も、財務・SDGs・ESGなど多様化している。様々な人材とともに、データとAIも活用することにより、差別化された・データを基にした分析・人が活躍する組織が生まれる。

<Tableauについて>

Tableauではお客様がデータを見て理解できるように支援することが、創立当初からのミッションだ。エンドツーエンドのデータ分析プラットフォームとして、強力なAI、データ管理、コラボレーション機能を備えたビジュアル分析を提供する。

Tableauアクセラレータは常にベストプラクティスで構成されたダッシュボードだ。100以上のユースケース、インダストリー、エンタープライズに対応したベストプラクティスの活用ができる。カスタマイズ可能で即時利用可能なソリューションであり、データドリブンなインサイトの実現を加速する。組織にインサイトを提供し、アクションに繋げ、結果を最大化する。他社の成功例を活用しながらステークホルダーを巻き込み、組織全体での分析の活用率を容易に向上させることも可能だ。