金融ビジネスで決定的に重要となったUX/UI


金融ビジネスの非対面化が進展している。これまで、非対面化自体はネット証券など証券ビジネスを中心に進展していたが、今回のコロナ禍は、遅れていた銀行業界に対しても、非対面チャネル強化を不可避なものとした。アフターコロナにおいてもこの流れは不可逆であろう。海外では非対面チャネル活用の動きが顕著となっているが、非対面チャネルにおいては、UX/UI(ユーザーエクスペリエンス/ユーザーインターフェース)の重要性がクローズアップされている。UX/UIとはユーザーの経験や使い勝手を指すが、使いやすさやスマホ対応といった表面的なレベルに留まるものではなく、非対面チャネルがユーザーに与える心地よさや、利用頻度を高める吸引力を有しているか、といったデザイン面がより重視される概念である。

目次

金融+αが問われる時代に

日本の金融業界においてもコロナ禍を背景に、非対面チャネルの充実が大きな課題となっている。実はコロナ禍以前から日本の金融機関でも、著名なデジタルコンテンツ制作集団であるチームラボが作成した「りそなグループアプリ」のように、グッドデザイン大賞を受賞するケースも出てきており、着実に意識が高まりつつあったが、コロナ禍において、非対面チャネルの重要性は決定的となったのではないか。

今後については単なる見た目の新規性やスマートさに加え、海外事例にあるようにユーザーになんらかのインパクトを感じさせるようなUX/UIへの着意が問われることとなろう。非対面チャネルの戦略的な利用においては、ただインターネット上のサービスを提供するだけではなく、UX/UI、すなわち、ユーザーへの付加価値・無形価値を提供することが必須となる。

金融サービスの非対面化の成否は、金融サービスだけではない+αが求められるのは明らかだ。一方、日本の非対面金融サービスは、ややこの点への配慮が欠けているように思われる。海外事例などをふまえた、大胆な発想の転換を期待したい。

本稿中、意見に係る部分は筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を示すものではない。

寄稿
SBI金融経済研究所
事務局次長
村松 健 氏
1996年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、株式会社日本興業銀行(現みずほ銀行)入行し、2021年11月より現職。著書に『銀行実務詳説 証券』、『NISAではじめる「負けない投資」の教科書』、『中国債券取引の実務』(全て共著)、論文寄稿多数。日本財務管理学会所属。
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