CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは?先行国と日本の状況【2022年版】


デジタル技術の革新が進む中、中央銀行自身が発行するデジタル通貨、すなわち、CBDC(中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency))が注目を集めています。本稿では、CBDCの概要から各国の取り組み状況、今後の課題と展望について、網羅的に解説します。

目次

日本のCBDC導入への取り組み状況

日本のCBDCの発行は計画されていないのが現状です。しかし日本銀行は将来的にCBDCのニーズが高まった際に対応できるようにしておきたいとしています。

日本銀行の黒田総裁も2019年12月の講演で下記のように発言しています。
「わが国の現金流通高がなお増加していることから、現状CBDCの発行を国民が求めているとは考えられないが、将来デジタル通貨発行の必要性が高まったときに、的確に対応できるよう、日銀内で技術面や法律面での調査・研究を進めている」

黒田総裁の発言を裏付けるように、日本銀行では2021年4月から実証実験の段階的な実施を始めています。このうち、CBDCの「基本機能」に関する検証を目的とする「概念実証フェーズ1」は、2022年3月に終了し、4月から、CBDCに様々な「周辺機能」を付加して、その実現可能性や課題を検証する「概念実証フェーズ2」を開始しました。
将来的に日本において、CBDCが実現するかは不透明ですが、可能性はゼロではないと言えるでしょう。

CBDCの課題

CBDCには運用や技術、情報の取り扱いなどさまざまな課題が考えられています。
主な課題は下記の通りです。

  • 現金発行・流通システムとの並行稼働による運用コストの増大
  • 既存の民間企業の業務圧迫
  • 信用不安時の影響
  • CBDC利用者の情報保護
  • 中央銀行による完璧なCBDC運用

CBDCが広まったとしても既存の紙幣がなくなるわけではありません。CBDCのメリットとして経済全体のコスト低下を挙げましたが、既存の流通システムも変わらず並行稼働させるとなれば、運用コストは増大していくことが考えられます。
また信用不安時の影響も課題のひとつです。現在でも市場不安が広がった際に銀行取付けなどがおこりますが、デジタル化されることで従来の取付けよりも急速かつ大規模に広がることが懸念されています。
またCBDCは利用履歴が残りますが、こうした情報は不正行為を行なった場合を除き、個人情報保護の観点から必ず守らなければいけないものです。サイバー攻撃に対する対応なども必要になってくるでしょう。そのため利用者に安心できると感じてもらう環境整備も大きな課題になります。
最後に運用面です。CBDCは中央銀行が発行している法定通貨になるため、発行後の利用停止や廃止は行えません。民間銀行であれば、サービス停止などの措置を取ることも可能ですが、CBDCで行うことは難しいと言えます。そのため隙のない完璧なCBDC運用体制の構築も求められています。

TheFinance編集部
寄稿
株式会社セミナーインフォ
TheFinance編集部
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