独自の信用スコアとOne to Oneの提案で小規模事業者のキャッシュニーズに対応

独自の信用スコアとOne to Oneの提案で小規模事業者のキャッシュニーズに対応

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飲食店や美容室など小規模事業者向けサービスを提供するUSEN-NEXT GROUPが、新生銀行グループと共同で、金融サービスを手掛ける新会社「USEN-NEXTフィナンシャル」を設立した。同社代表取締役社長の佐藤知洋氏と取締役の竹石祐也氏に、サービスの特徴や展望を聞いた。

  1. USEN-NEXT GROUPの情報力とノウハウを活用/a>
  2. 新生銀行グループが資金面とサービスをサポート

USEN-NEXT GROUPの情報力とノウハウを活用

─USEN-NEXTフィナンシャル設立の背景は。

佐藤 2020年1月15日に、USEN-NEXT GROUPの金融事業会社としてUSEN-NEXTフィナンシャルを設立した。同グループは飲食店や美容室など、全国約75万店の小規模事業者を主要顧客とし、音楽配信やレジ・防犯カメラなどの設備、インターネット環境やシステムなど、店舗経営に必要な幅広い商材の提供を手掛けている。

同グループの商材は、融資や割賦払いなどの金融サービスを利用して購入されるケースも多い。特に、新規開店をひかえた小規模事業者は、設備購入や仕入れのため、手元に多くの現金を確保する必要がある。キャッシュアウトしないよう、融資を受けるなど資金繰りが重要だ。しかし、銀行など既存の金融機関の多くは、情報や信用力の少ない小規模事業者に対して与信を避ける傾向がある。小規模事業者の半数近くは審査が通らないのが現状だ。

一方、USEN-NEXT GROUPには長年にわたり小規模事業者向けにサービスを提供してきた経験から、取引に関する大量のデータやノウハウがある。同グループの情報力を用いれば、既存の金融機関がカバーしきれなかった小規模事業者に対する金融サービスを提供できると考えたことが、新会社設立に繋がった。

当社のミッションは、新規開業予定の事業者を中心に、小規模事業者における利便性の向上を金融の観点からサポートすることだ。

─提供予定のサービスについて。

竹石 USEN-NEXT GROUPの知見とデータを活用した金融サービスとして、「USEN-NEXTビジネスクレジット」、「USEN-NEXT CARD BUSINESS」、「USEN-NEXTデータ・レンディング」の3つのサービス展開を予定している(図表1)。

「USEN-NEXTビジネスクレジット」は、USEN-NEXT GROUPが取り扱う商材を購入する際、割賦払いで代金の支払いを可能にするサービスだ。当社が商品ごとに購入代金を立て替え支払いし、その後購入者から分割払いで代金を集金する仕組みとなる。

「USEN-NEXT CARD BUSINESS」は、当社が展開する事業用クレジットカードである。USEN-NEXT GROUP商材の購入だけでなく、必要経費や仕入れの支払いに使用できる。

「USEN-NEXTデータ・レンディング」は、USEN-NEXT GROUPの顧客に対する無担保・無保証の融資サービスだ。同グループの蓄積したデータを用いて与信を迅速に行う。

佐藤 「USEN-NEXTビジネスクレジット」および「USEN-NEXT CARD BUSINESS」の提供開始は、2020年初夏を予定している。その後2020年10月を目途に「USEN-NEXTデータ・レンディング」の提供をはじめる見込みだ

当サービスの主要顧客は開業をひかえた小規模事業者である。だが事業規模に関係なく使ってもらえるサービスだと考えている。

新生銀行グループが資金面とサービスをサポート

─サービスの特徴は。

佐藤 事業者ファーストの姿勢に大きな特徴があると考える。例えば「USEN-NEXT CARD BUSINESS」に関しては、年会費を無料に設定した。これは他社の事業用クレジットカード年会費が有料である場合が多いことを考えれば、かなり挑戦的な試みといえるだろう。

また同カード会員に対して、「USEN安心サポート」というかけつけ保守サービスも無償で提供する。依頼を受ければ技術担当者が対応する仕組みだ。

このように、当社は金融サービス提供会社であるが、事業会社の色が強い特徴を持つ。事業者の利便性向上に貢献することを重要視している。

竹石 事業用クレジットカード年会費無料など、サービス充実を図る理由は当社の戦略にもある。

先行して展開を予定している「USEN-NEXTビジネスクレジット」および「USEN-NEXT CARD BUSINESS」は、それ自身でもリターンを見込める事業となっているが、副次的にデータの蓄積が見込めるというメリットがある。

USEN-NEXT GROUPが店舗に提供するPOS(販売時点情報管理)レジを例に見れば、割賦払いなどで導入してもらい、データ利用に同意のうえで、レジでの決済状況を送信してもらえば、店舗の運営状況をリアルタイムにデータ化することが可能だ。また事業用クレジットカードを仕入れや経費支払いにご利用いただくことで、クレジットヒストリーなど今まで知り得なかったデータを入手できる。

現在まで蓄積してきたデータとあわせ、当社が新たに開拓する領域のデータを総合的に活用することで、「USEN-NEXTデータ・レンディング」のサービス向上が見込める。エコシステム的な構図でサービス全体の質向上が期待できるため、より多くの事業主に利用してほしい(図表2)。

─データの活用について

竹石 蓄積したデータを、当社がFinTechベンチャーのクレジットエンジンと共同で構築しているモデルに組み込み、「U-スコア」という独自の指標を作成する。

佐藤が述べたように、足元ではU-スコアをデータ・レンディングの「高度化」のために運用し、他の金融機関が持たない小規模事業者に関するデータを与信に活用する。これにより、従来の方法では難しかった小規模事業者への与信を高度化するだけに留まらず、申請に手間や時間がかからない無担保・無保証での融資サービスの展開を可能にする。小規模事業者では突発的に現金需要が発生することも多いことから、迅速な審査とサービス提供は重要なポイントだ。

また既存の金融機関では決算書類に基づいて与信の審査を行うことがほとんどだが、それらはあくまで過去の情報であり、現状の把握には向かない。リアルタイムで現状を反映するデータを多く含むU-スコアを用いることで、与信の高度化を図ることができる。

─新生銀行グループとの提携関係は。

竹石 USEN-NEXT GROUPにはファイナンスに関する経験や知見が少ない。この弱点を補うため、当社は新生銀行グループと共同で設立するはこびとなった。

佐藤 具体的には、新生銀行が当社に対し、資金面のサポートを行う。またサービスの中核となる金融機能や金融サービスの開発支援は、新生銀行の子会社で、クレジットカード事業などファイナンスサービスを手掛けるアプラスがサポートする構図だ(図表3)。

アプラスには、同社が保有する金融機能を提供してもらうだけでなく、コンサルティング的役割も担ってもらう。当社で提供予定の金融サービスには、貸金業法、割賦販売法、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)および個人情報保護法など、法令による規制が複雑に絡む。法令順守に対する助言や、さらにはオペレーションノウハウの提供も、サービスを提供するうえでは欠かせない重要な要素と言えるだろう。

─将来の展望は。

竹石 将来的には、U-スコアをデータ・レンディング以外の領域にも活用したいと考えている。データに基づき、反応する感応度の高い顧客に特定の案内や特典を送るなど、顧客に合わせてOne to Oneの提案やマーケティングを充実させていくことを想定している。

U-スコアを用いた小規模事業者への与信の高度化とOne to Oneの顧客提案を両輪とし、当社だけでなくUSEN-NEXT GROUP全体でサービス向上を図っていくことが理想だ。

さらに、事業会社グループの中にある金融会社として、金融サービス変革のリーダーシップをとっていきたいと考えている。現在は新生銀行グループに金融機能を依存しているが、将来的に自前のシステムに移行していくことを検討する。

インタビュー
USEN-NEXT フィナンシャル
代表取締役社長
兼 アプラス
新事業戦略本部長
佐藤 知洋 氏
1993年アプラス(現アプラスフィナンシャル)入社。
2018年より同社新事業戦略本部長を務める。
USEN-NEXT フィナンシャル設立に伴い、2020年より現職。
インタビュー
USEN-NEXT フィナンシャル
取締役 経営統括室長
兼 USEN-NEXT HOLDINGS
金融事業室長
竹石 祐也 氏
1993年横浜銀行入行。
その後、数社で金融事業、経営企画などを手掛け、
2017年よりUSEN-NEXT HOLDINGS 金融事業室長を務める。
USEN-NEXTフィナンシャル設立に伴い、2020年より現職。
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