金融庁が公表する金融行政方針とは?
金融行政方針とは、政府や金融庁が金融市場および金融機関に対して実施する政策や規制の枠組みを指します。この方針は、経済の安定と成長を図るために、金融システムの健全性を維持し、金融機関の健全な運営を促進することを目的としています。具体的には、金融機関の経営管理、リスク管理、消費者保護に関する規制強化や、金融市場の透明性向上、デジタル化推進などが含まれます。最新版として、2024年8月30日に「2024事務年度金融行政方針」が金融庁より公表されました。
金融庁のHPに記載のある金融レポートとの違い
行政方針に対し、金融レポートとは、当該行政方針の進捗評価・分析等をとりまとめ、公表するものであり、金融行政の透明性が一層高まり、当局と金融サービス利用者、金融機関、市場関係者等の間で認識の共有が図られ、当局との建設的な対話を通じて、より良い金融行政の実現につながることを期待するために公表されています。
しかしながら、平成30年度(2018年度)より、課題と方針との関係性をより明確化するために、統合されています。
金融行政方針は毎年何月何日ごろに発表される?
2024事務年度(令和6年度)「行政方針」公表日:2024年8月30日
2023事務年度(令和5年度)「行政方針」公表日:2023年8月29日
2022事務年度(令和4年度)「行政方針」公表日:2022年8月31日
2021事務年度(令和3年度)「行政方針」公表日:2021年8月31日
令和2事務年度(2020年度)「行政方針」公表日:2020年8月31日
令和元事務年度(2019年度)「行政方針」公表日:2019年8月29日
平成30事務年度(2018年度)「行政方針」公表日:2018年9月26日
平成29事務年度(2017年度)「行政方針」公表日:2017年11月10日
平成28事務年度(2016年度)「行政方針」公表日:2016年10月21日,「金融レポート」2017年9月15日
平成27事務年度(2015年度)「行政方針」公表日:2015年9月18日 ※初回
基本的には令和に入ってからは、8月の末日に公表されることが多く、8月は年度の中間であり、政府や金融機関が次年度の計画を策定するための重要な時期にあたるため、この時期に方針を公表することで、各機関が新たな方針や施策を反映させるための準備期間を確保できるとされています。
また、8月末というタイミングは、年度末(3月)に向けた施策の進捗状況を評価し、新たな施策を導入するためのフィードバックを得るためにも適していると考えられています。
金融関連に勤めている方はぜひ8月末ごろは、金融庁のHPチェックを忘れずに行いましょう。
2024事務年度(令和6年度)の金融行政方針の概要を解説
日本経済は、緩やかな回復基調をたどりつつも、デフレからの脱却や持続的な経済成長への道のりは、依然として重要な課題として立ちはだかっています。こうした状況を打破し、日本経済を力強く再生させるためには、金融行政が果たすべき役割は極めて重要です。
2024事務年度の金融行政は、「持続的な経済成長への貢献」、「金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能の確保」、「金融行政を絶えず進化・深化させる」という3つの柱を基軸として、力強い日本経済の実現を目指します。
Ⅰ. 金融のメカニズムを通じて持続的な経済成長に貢献する
金融は、経済の血液とも言える重要な役割を担っています。企業は資金を調達することで事業を拡大し、雇用を生み出すことができます。家計は、預金や投資を通じて資産を形成し、将来への不安を軽減することができます。金融行政は、この金融のメカニズムを最大限に活用することで、持続的な経済成長を力強く後押ししていきます。
1. 資産運用立国に向けた着実な進展
日本は、世界的に見ても豊富な個人金融資産を保有しているにもかかわらず、その多くが預金に偏っているのが現状です。預金から投資へと資金の流れを転換し、成長分野への投資を促進することで、日本経済の活性化を図ります。
具体的には、
施策内容 | 詳細 |
---|---|
家計の安定的な資産形成の支援 | 新しいNISAの活用促進や金融経済教育の充実を通じて、投資未経験者層を含む幅広い層の資産形成を支援します。 |
顧客本位の業務運営の確保 | 金融商品の販売会社等における顧客利益の考慮義務の強化などを通じ、顧客本位の業務運営を徹底させ、投資家保護を強化します。 |
コーポレートガバナンス改革及び金融・資本市場の機能向上 | コーポレートガバナンス改革を推進し、企業の中長期的な成長を促すとともに、東証グロース市場への支援を通じて、スタートアップ企業の資金調達を後押しします。 |
市場の信頼性確保 | 市場監視の強化や監査品質の向上などを通じて、市場の公正性・透明性を確保し、投資家の信頼を向上させます。 |
資産運用業の改革 | 資産運用会社の競争力強化、ガバナンス改善、体制強化等を通じて、投資者にとって魅力的な運用環境を整備します。 |
アセットオーナーシップの改革 | アセットオーナーに係る共通の原則の周知・整備を図ることで、中長期的な投資を促進します。 |
スタートアップへの成長資金の供給等と運用対象の多様化 | ベンチャーキャピタルや投資型クラウドファンディングの推進などを通じて、スタートアップ企業への資金供給を強化するとともに、インフラ投資など、運用対象の多様化を図ります。 |
対外情報発信・コミュニケーションの強化 | 「Japan Weeks」や「資産運用フォーラム」の開催を通じて、海外投資家に対する日本の魅力発信を強化します。 |
これらの施策を通じて、貯蓄から投資への流れを加速させ、成長分野への資金供給を促進することで、日本経済の活性化を目指します。
2. サステナブルファイナンスの推進
地球温暖化や気候変動などの環境問題、人権問題、社会的不平等などの社会課題の解決は、持続可能な社会を実現するために不可欠です。金融は、これらの課題解決に向けた取り組みを支援する上で重要な役割を担っており、積極的にサステナブルファイナンスを推進していきます。
具体的には、
テーマ | 内容 |
---|---|
生成AIやフィンテック等の新たな展開に向けた対応 | 金融機関におけるAIの利活用を促進するとともに、利用者保護やシステムの安全性確保の観点から必要な対応を行う。また、フィンテック企業との連携を通じて、新たな金融サービスの創出を支援。 |
暗号資産取引等やWeb3.0の健全な発展 | 暗号資産交換業者の適切な業務遂行と利用者保護の確保、Web3.0の健全な発展に向けた環境整備などを通じて、新たなデジタル技術を活用した金融サービスの普及を促進。 |
決済・取引インフラの高度化 | 決済サービスの安定的な運用と利用者保護の観点からのモニタリング、新たな決済技術の導入促進などを通じて、決済・取引インフラの高度化を図る。 |
これらの施策を通じて、環境問題や社会課題の解決と経済成長の両立を目指し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
3. デジタル技術を用いた金融サービスの変革への対応
近年、人工知能(AI)、ビッグデータ、IoTなどのデジタル技術の進化は目覚ましく、金融分野においても、新たなサービスやビジネスモデルが次々と生まれています。金融行政は、これらの技術革新を積極的に活用することで、より便利で効率的な金融サービスの提供を促進していきます。
具体的には、
テーマ | 内容 |
---|---|
生成AIやフィンテック等の新たな展開に向けた対応 | 金融機関におけるAIの利活用を促進するとともに、利用者保護やシステムの安全性確保の観点から必要な対応を行う。また、フィンテック企業との連携を通じて、新たな金融サービスの創出を支援。 |
暗号資産取引等やWeb3.0の健全な発展 | 暗号資産交換業者の適切な業務遂行と利用者保護の確保、Web3.0の健全な発展に向けた環境整備などを通じて、新たなデジタル技術を活用した金融サービスの普及を促進。 |
決済・取引インフラの高度化 | 決済サービスの安定的な運用と利用者保護の観点からのモニタリング、新たな決済技術の導入促進などを通じて、決済・取引インフラの高度化を図る。 |
これらの施策を通じて、デジタル技術を活用した革新的な金融サービスの提供を促進し、利用者の利便性向上と金融システムの効率化を図ります。
Ⅱ. 金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能を確保する
金融システムの安定は、持続的な経済成長の大前提です。金融行政は、金融機関の経営 soundness を確保し、金融システム全体の安定性を維持するために、不断の努力を続けていきます。
1. 業態横断的な課題への対応
金融システムは、銀行、証券会社、保険会社など、様々な金融機関が相互に密接に関係し合って構成されています。金融行政は、個別の金融機関に対する監督だけでなく、金融システム全体としての安定性を確保するために、業態横断的な課題にも積極的に取り組んでいきます。
具体的には、
項目 | 内容 |
---|---|
経営基盤の強化と健全性の確保 | 金融機関の経営戦略や営業・財務基盤の確認、ストレス時の対応の管理態勢の確認などを通じて、金融機関の経営基盤の強化を促します。 |
事業者の課題に応じた支援の促進 | 地域の事業者に対する資金繰り支援や事業再生支援、経営改善支援など、付加価値の高い支援を提供できるよう、金融機関への働きかけを行います。 |
事業者の持続的な成長を促す融資慣行の確立 | 経営者保証への依存をなくし、事業性評価に基づいた融資を促進することで、事業者の持続的な成長を支援します。 |
令和6年能登半島地震等への対応 | 災害時の対応態勢の構築、被災者に対するきめ細やかな金融サービスの提供など、災害時における金融機関の役割を明確化し、迅速な対応を促します。 |
利用者目線に立った金融サービスの普及 | 顧客本位の業務運営の確保、分かりやすく使いやすい金融商品の提供、顧客ニーズに合致したきめ細やかなサービスの提供などを通じて、利用者にとって真に価値のある金融サービスの提供を促進します。 |
台頭するリスクへの対応 | 金融犯罪、サイバーセキュリティリスク、マネー・ローンダリングなど、金融システムの安定を脅かすリスクに対して、適切な対策を講じます。 |
これらの取り組みを通じて、金融システム全体の安定性を確保し、利用者保護を強化することで、国民が安心して金融サービスを利用できる環境を整備します。
2. 業態別の課題への対応
金融機関は、それぞれ異なる事業内容やリスク特性を有しており、金融行政は、これらの特性を踏まえた上で、きめ細やかな監督・検査を実施していきます。
具体的には、
カテゴリ | 目標 |
---|---|
主要行等 | グローバルな事業展開に伴う信用リスク、市場・流動性リスクの管理態勢の確認、IT・システムや内部監査のあり方の対話などを通じて、健全な経営を促します。 |
地域金融機関 | 地域経済の回復・成長を支えるための経営戦略の策定と収益基盤の強化、コンサルティング機能の強化などを通じて、地域経済への貢献を促します。 |
証券会社 | 市場の公正性・透明性の確保、投資家保護の強化、資本市場の仲介者としての役割の発揮などを通じて、資本市場の健全な発展を促します。 |
保険会社 | 保険市場の信頼の回復と健全な発展、経営基盤の強化と健全性の確保、利用者保護の強化などを通じて、国民生活の安定に貢献します。 |
これらの取り組みを通じて、各金融機関の特性に応じた監督・検査を実施することで、金融システム全体の安定性と信頼性を確保します。
Ⅲ. 金融行政を絶えず進化・深化させる
金融を取り巻く環境は、テクノロジーの進化やグローバル化などにより、常に変化しています。金融行政は、これらの変化に柔軟かつ機動的に対応していくために、不断の進化・深化を図っていきます。
1. 金融行政の高度化
より効果的かつ効率的な金融行政を実現するため、最新のテクノロジーを活用し、データに基づいた政策立案・実行を推進していきます。
具体的には、
施策 | 詳細 |
---|---|
データを活用した多面的な実態把握 | 粒度の高いデータの分析と可視化、共同データプラットフォームの整備などを通じて、金融機関や市場の実態をより精緻に把握します。 |
財務局とのさらなる連携・協働の推進 | 金融庁と財務局の連携・協働を強化し、より効果的な監督体制を構築します。 |
国内外への政策発信力の強化 | 国際会議での議論への積極的な参画、政策の発信力の強化などを通じて、日本の金融行政のプレゼンス向上を図ります。 |
これらの取り組みを通じて、より高度な金融行政を実現し、時代の変化に対応した政策を迅速に実行していきます。
2. 若手職員の育成をはじめとする組織力の向上
金融行政を担う職員一人ひとりが、高い倫理観と専門性を持ち、変化を恐れずに挑戦していくことが重要です。
具体的には、
カテゴリー | 施策 |
---|---|
職員の能力・資質の向上 | キャリアパスの軸となる分野に応じた育成プログラムの継続、データ分析プロジェクトの推進などを通じて、職員の専門性向上を図ります。 |
職員の主体性・自主性の重視 | 自主的な政策提言を促す枠組みの整備、政策オープンラボの活用などを通じて、職員の主体性・自主性を引き出します。 |
誰もが働きやすく良い仕事ができる環境の整備 | 職員のライフステージに応じた支援、業務の合理化・効率化、DXの推進などを通じて、働きやすい環境を整備します。 |
これらの取り組みを通じて、職員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体としての力を結集することで、時代の変化に対応できる強い組織を構築します。
2023年度と比較:金融行政方針の主要な変更点
2024年度の金融行政方針において、いくつかの主要な変更点が導入されています。
まず、金融機関の健全性と透明性を強化するための規制が厳格化されました。これは、過去数年間における金融機関の不正行為やリスク管理の不備が原因で、信頼性が揺らいだことへの対応です。具体的には、内部監査の強化や資本要件の見直しが行われ、リスク管理の徹底が求められています。
次に、デジタル金融サービスの普及とそれに伴うリスクへの対応が重要視されています。フィンテックの急速な発展により、従来の金融システムでは対応しきれない新たなリスクが出現しています。このため、デジタル通貨の規制枠組みの構築や、サイバーセキュリティ対策の強化が図られています。これにより、高度な技術を利用した詐欺やデータ漏洩などのリスクを最小限に抑えることが目指されています。
さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の促進が挙げられます。気候変動や社会的課題への対応が急務となる中、金融機関にはESG基準に基づいた投資判断が求められています。これには、企業の環境負荷や社会貢献度を評価する新たな指標の導入が含まれます。特に、脱炭素社会の実現に向けた投資が強化される予定です。
最後に、消費者保護の強化が掲げられています。金融商品の多様化と複雑化に伴い、消費者が適切な選択を行えるよう、情報提供の充実や金融リテラシーの向上が求められています。これには、金融商品の説明責任を果たすための新たなガイドラインの策定や、消費者相談窓口の拡充が含まれます。
これらの変更点は、金融市場の信頼性を高め、持続可能な経済成長を促進するための重要な施策です。それぞれの背景には、過去の課題と未来への展望があり、これらを踏まえた政策の実行が期待されています。
新たな政策の焦点と目標
2024年度の金融行政方針では、新たな政策の焦点と目標が明確に設定されています。特に注目すべきは、デジタル金融の推進と持続可能な経済成長の実現です。デジタル金融の分野では、ブロックチェーン技術やフィンテック企業の活用を通じて、金融サービスの効率化と透明性の向上を図ることが目指されています。これにより、金融取引の迅速化とコスト削減が期待されます。
また、持続可能な経済成長に向けた政策として、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の促進が挙げられます。特に、環境に配慮した金融商品の提供や、企業の持続可能性評価基準の厳格化が進められる予定です。これにより、企業は環境負荷を減らす努力を求められ、持続可能なビジネスモデルへの転換が促されます。
さらに、中小企業の支援も重要な焦点となっています。中小企業が資金調達を容易に行えるよう、政府は新たな融資プログラムを導入し、信用保証制度を強化する計画です。これにより、中小企業の成長と地域経済の活性化が期待されます。
金融リテラシーの向上も目標の一つです。個人投資家や一般市民が金融商品を理解し、適切な投資判断を行えるよう、教育プログラムや情報提供の充実が図られます。特に、若年層や高齢者を対象にした金融教育が重点的に行われる予定です。
最後に、国際的な金融規制との調和も重要視されています。グローバルな金融市場との連携を強化し、国際基準に準拠した規制の整備を進めることで、日本の金融市場の信頼性と競争力を高めることが目指されています。これにより、海外からの投資誘致や、日本企業の国際展開が促進されるでしょう。
以上のように、2024年度の金融行政方針ではデジタル化、持続可能性、中小企業支援、金融リテラシー向上、国際連携といった多岐にわたる分野が焦点となっています。これらの政策が実現されることで、日本の金融システムはより強固で柔軟なものとなることが期待されます。
金融行政方針から読み解く業態別重要ポイント
主要行等
主要行等は、金融システムにおける重要な役割を果たすため、以下のポイントが重要です。
- 信用リスク管理: 融資規律の確立、与信関連部署の融資規律や審査態勢、国内外の不動産業向け融資の動向の確認.
- 市場・流動性リスク管理: 各行の運用・調達方針の確認、有価証券運用や外貨流動性に関するリスク管理態勢の検証.
- IT・システムと内部監査: 業態や国境を越えたビジネス展開に対応したIT・システムや内部監査のあり方、本社による適時・適切な状況把握を含めた海外拠点の管理態勢の確認.
- ストレステスト: 日本銀行と共同で各行共通のシナリオに基づくストレステストの実施.
- コンプライアンス態勢: 不公正取引等の検知・防止のための態勢や情報管理態勢の整備の確認.
地域金融機関
地域金融機関は、地域経済の回復・成長を支えるため、以下のポイントが重要です。
- 経営基盤の強化: 自らのビジネスモデルの持続可能性を点検し、先々を見据えた経営戦略を策定・実行する経営力の確保.
- 事業性融資の推進: 事業性融資の取り組みを促進し、ビジネスモデルの持続可能性を確保するための対話.
- リスク管理態勢: 有価証券運用の状況や市場リスク、流動性リスク、取引先等の実態把握の状況を含む信用リスクの管理態勢の確認.
- 協同組織金融機関の支援: 協同組織金融機関間や他の支援機関等との結節点として、地域課題の解決・経営基盤の強化に資する取組への支援.
証券会社
証券会社は、市場のゲートキーパーとしての役割を果たすため、以下のポイントが重要です。
- 市場の公正性・透明性の確保: 金融商品の組成・販売勧誘態勢等について法令や自主規制規則に則ったかどうかのモニタリング.
- 顧客本位の業務運営: 顧客本位の業務運営の取組を深化させるための不断の取組.
- 不公正取引等の検知・防止: 不公正取引等の検知・防止のための態勢や情報管理態勢の整備の確認.
- 持続可能なビジネスモデルの構築: 競争環境の変化を踏まえ、持続可能なビジネスモデルのあり方について経営陣を含めて対話.
保険会社
保険会社は、顧客ニーズに的確に応えた質の高い保険サービスを提供するため、以下のポイントが重要です。
- 保険市場の信頼の回復と健全な発展: 大規模な保険代理店における態勢整備の厳格化、保険仲立人の活用促進、企業向け火災保険の赤字状況等の対応.
- 経営基盤の強化と健全性の確保: 顧客基盤の強化や収益の補完に向けた取組、内部監査の高度化、グループ・グローバルのガバナンスの高度化.
- 自然災害への対応: 統合的リスク管理(ERM)の高度化、防災・減災のサポート、気候関連リスクへの取組.
金融機関全般
金融機関全般において、以下のポイントが重要です。
- 経営基盤の強化と健全性の確保: 財務の健全性と業務の適切性を維持するための深度あるモニタリング.
- 事業者の課題に応じた支援: 地域の事業者が抱える課題を的確にとらえ、資金繰り支援や付加価値の高い支援を提供.
- 事業性融資の推進: 経営者保証への依存をなくし、事業性融資を推進するための施策.
- 利用者目線に立った金融サービスの普及: 顧客本位の業務運営の確保と顧客に寄り添った金融サービスの提供.
- 台頭するリスクへの対応: 金融犯罪、マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策、サイバーセキュリティの強化.
これらのポイントを踏まえ、各金融機関はそれぞれの業態に応じた取り組みを進めることが求められます。
まとめと今後の展望
2024年度の金融行政方針の総括
2024年度の金融行政方針は、過去の方針と比較していくつかの重要な変革をもたらしました。まず、金融市場の透明性と信頼性を高めるための新たな規制が導入されました。これにより、投資家の保護が強化され、市場の健全な発展が期待されます。また、金融テクノロジー(フィンテック)の進展に対応するための政策も明確に打ち出されました。具体的には、ブロックチェーン技術やデジタル通貨に関する規制の整備が進められ、これにより新しい金融サービスの普及が促進される見込みです。
さらに、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の推進も2024年度の重要なテーマとなっています。政府は、持続可能な社会を実現するために、環境保護や社会的責任を重視した投資を奨励しています。この方針により、企業はESG要素を考慮した経営を求められるようになり、長期的な経済成長と社会的価値の両立が期待されます。
金融包摂の観点からも、特定の地域や社会的弱者への金融アクセスを改善するための政策が導入されました。これにより、金融サービスがより多くの人々に利用されるようになり、経済的な格差の是正が図られます。特に、中小企業やスタートアップ企業に対する支援策が強化され、これらの企業が成長するための資金調達が容易になることが期待されます。
総じて、2024年度の金融行政方針は、金融市場の安定性と透明性を高めるとともに、新たな技術と持続可能な社会の実現に向けた多角的なアプローチを取っています。これにより、日本の金融市場はより健全で競争力のあるものとなり、長期的な経済成長を支える基盤が整備されることが予想されます。
将来の金融行政の方向性
将来の金融行政の方向性については、現在の国際経済環境や技術革新の進展、そして社会的課題に対応するために多岐にわたる考慮が必要となります。特に、デジタル通貨やブロックチェーン技術の急速な普及が、金融システムの透明性や効率性を高める一方で、新たなリスク管理を必要としています。これらの技術を効果的に取り入れるためには、法令や規制の見直しが不可欠です。
また、持続可能な経済成長を目指すため、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の推進も重要な方向性の一つです。金融機関に対しては、ESGに関する情報開示の強化や、環境リスク評価の精緻化が求められます。これにより、投資家はより持続可能な投資判断を行うことが可能となり、長期的な経済安定性の確保に寄与します。
さらに、金融包摂の観点から、全ての人々が金融サービスにアクセスできる環境の整備が急務です。特に地方や低所得層、デジタルリテラシーの低い層に対しては、教育プログラムの充実や、簡便で安全な金融サービスの提供が求められます。これにより、経済的な格差を縮小し、社会全体の安定を図ることができます。
国際的な連携も重要なテーマとなります。グローバルな金融規制の調和を図りつつ、各国の独自性を尊重した政策を実施することが求められます。特に、金融犯罪の防止やテロ資金供与対策においては、国際的な協力が不可欠です。
最後に、金融行政の透明性と信頼性を高めるための取り組みも継続的に行われるべきです。市民や企業の意見を積極的に取り入れることで、より実効性の高い政策を策定することができます。また、政策の効果を定期的に評価し、必要に応じて迅速に修正する仕組みも重要です。
このように、将来の金融行政の方向性は多岐にわたる課題に対応するために、柔軟かつ包括的なアプローチが求められます。これにより、持続可能で安定した金融環境を築くことが可能となります。
- 寄稿
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株式会社セミナーインフォThe Finance編集部