※本稿の一部で、株式会社マネーフォアードのサービスを紹介しております。
Fintechベンチャーに注目が集まる3つの理由
2015年、Fintechは金融ビジネスにおける一大テーマとして取り上げられ始めた。
以前からテクノロジーは、情報産業である金融サービスの重要な側面でもあり、多額の投資が行われてきた領域であった。しかしながら、その担い手としてシステムインテグレーターから、ベンチャー企業に焦点が移っていることが、今時の動きの特徴である。
ベンチャー企業に着目が集まっているのには複数の背景がある。
①PDCAサイクルを早く回せる
第一に、様々なサービスの理解や比較、わかりやすいデザインといった点において、PDCAサイクルを短期に回すことができる点が重要である。消費者はスマートフォンを手にし、より速く直感的なサービス設計や、情報の組み合わせを求めている中、サービス提供側は様々な施策を試し、正解を見つけていく必要がある。このようなサイクルは、あるサービスの断面に着目し、身軽でリスクを取りやすい組織が必要であり、ベンチャー企業が向いているという側面がある。
②収益性・成長性の高い領域に自由に参入できる
第二に、既存サービスの制約にとらわれず、収益性・成長性の高い領域に入ることができる「後発者のメリット」がベンチャーにはある。ベンチャーは効率性の高い一領域から参入を行うことが可能であるため、カニバリゼーションや、初期的な教育コストなどを意識せずに、サービス展開を行うことが可能なプレーヤーである。
③消費者に対して中立的なポジションを取れる
第三に、米国などで顕著な傾向であるが、近年の消費者は金融サービスを含めて、極めて中立的で低額のソリューションを求めるようになってきている。価格比較サイトや、口コミサイトなどの利用を通じて、サービスを消費する際の価格や受けられるメリットに対して、非常に厳しい評価を下すようになってきている。金融においても、インターネットの力を使った「消費者の味方」という立場を貫きやすい新興企業が、市場において大きなシェアを握る構造が生まれ始めている。
Fintech時代の金融業界に求められる視点
消費者にとって明確でシンプルであること
ベンチャー中心の展開が進む中で、今後の金融サービス産業に求められる視野とは何なのだろうか。
「金融教育」という言葉に表されるように、金融サービスの商品はその必要性や機能を理解することが難しい。ある程度ニーズが自身で理解できていても、投資や保険といった商品の契約の詳細に至る中では、ある程度ブランドやそれに伴う安心感によって、その購入が担保されてきた側面を持っている。
Fintechサービスを通じて、消費者がより主導権を握る世界では、ニーズや取引・商品の理解がより明確で、シンプルとなることが求められていくと考えられる。
明確さ・シンプルさをいかに取り込むか
このような明確さ、シンプルさを、金融機関の店舗サービスやオンラインチャネルにおいて、協業や出資、買収などの選択肢の中でいかに取り込んでいくかが、金融機関のFintechにおける課題である。
スペインの銀行BBVAなどは、自らをソフトウェア会社になるものと宣言した上で、アプリ型の銀行業態において目覚ましい動きを見せるなど、既に大きな舵切りを行っている。
Fintechの主な領域
海外でも、住宅ローンの借り換え(レンディング・プラットフォーム)や、自動低コスト運用(ロボ・アドバイザリー)などの領域は、既に消費者ニーズが明確であるがゆえ、スピード感をもって発展した市場といえる。現在、Fintechが発展している主な領域は以下の6種に分類される。
- 貸付(P2P、ビッグデータ):個人・中小法人向け貸付
- PFM・会計サービス:金融取引・資産管理の自動化・分析
- 資産運用:インデックス・自動リバランス運用
- 決済:スマホカード決済・EC決済・個人間決済
- 銀行インフラ:アプリや便利機能を提供
- 要素技術:新しい技術を用いて既存のシステムを効率化
マネーフォワードのFintechへの取り組み
マネーフォワードは、B2C、B2Bの両面において、お金の流れの可視化と、その先の人生や経営の改善するサービスを運営している。様々な金融機関のデータとの自動連携を行い、情報をユーザーにいかに直感的にわかりやすくするか、また、ソリューションに至るまでのラグ・距離を短縮できるかという点を重視している。
これらは、従来は従属的な立場にあったかもしれない「金融情報」の「自分ゴト化」ともいえる動きであり、より合理的・効率的な意思決定を下せるプレーヤーが一人でも増えることを狙いとしている。
データ連携のさらなる進化を目指して、金融機関や様々なサービス間のAPI連携が重要なものと捉えている。このような動きは、2016年度以降も政策的な検討が進められていく予定であり、今後も動向が注目される。
- 寄稿
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株式会社マネーフォワード瀧 俊雄 氏
Fintech 研究所長