ICO(クラウドセール)とは?メリット・リスク・規制と今後


ICO(クラウドセール)が新たな資金調達手段として世界中で注目されている。ICOを通じて数十億円規模の資金調達に成功するプロジェクトが登場しているほか、ベンチャー・キャピタルからの投資額をICOが上回ったとするデータもある。国内でもICOへの注目は増すばかりだ。本稿では、ICOの概要やメリット、リスク、参加する際の注意点を解説する。

  1. ICO(クラウドセール)とは
  2. ICOのメリット
  3. ICOのリスク
  4. ICOの規制と今後
目次

ICO(クラウドセール)とは

ICOとは

ICOとは、Initial Coin Offeringの略称であり、新たに仮想通貨(暗号通貨)を発行し、それを世界中の投資家に向けて販売することで資金調達を行うものだ。クラウドファンディングの新たな形態とも言える。

ICOでは、資金調達を行いたいと考える企業もしくはプロジェクトが、独自にブロックチェーン上でコインまたは「トークン」と呼ばれるデジタル資産を発行し、それらを販売することで資金調達を行う。ICOは、「クラウドセール」や「プレセール」、「トークンセール」とも呼称される。

コインやトークンの発行自体は、企業から個人まで誰でもブロックチェーン上で行うことが可能だ。ICOにおいては、特にイーサリアムと呼ばれるブロックチェーンが選ばれることが多い。

コインの価値と役割

このコインやトークンにはどういった役割があるのだろうか。どういった役割を持たせるかは、発行者が自由に設定できるが、大きくは次の2つに分類することができる。通貨型と、資産型である。

前者の通貨型は、その名の通りで通貨として流通することを目的とするもので、プロジェクト内のサービスを利用するための使用料として利用されるものや、ビットコインのようにブロックチェーンの維持そのものに利用されるもの(「ネイティブ通貨」とも呼ばれる。)が挙げられる。

後者の資産型は、金や土地の所有権を示すものや、特別なコミュニティへの参加権となるもの、プロジェクトの収益の分配を受けることができるものまで様々だ。

市場取引までの早さも魅力

このように様々な役割を持ったコインやトークンだが、発行された後は各取引所の許可さえあれば早々に売買が可能となる。そのため、ICOを実施した1週間後には取引所に上場し、売買が開始された例も存在する。

従来の場合はこれまで厳重な審査を経てIPO(新規株式公開)を実施し、初めて市場で株式の販売をすることが可能だったが、ICOの場合は市場での売買開始までのスパンが短いことも、ICOが盛り上がっている理由のひとつだろう。

▼筆者:森川夢佑斗氏の関連著書
ブロックチェーン入門

ICOのメリット

ICOのメリット

ICOを行う企業・プロジェクトへのメリット

ICOを行うことの企業やプロジェクト側のメリットについて考えてみよう。

従来は、投資家から巨額の資金を集めるためには、入念な事業計画書を作成し、投資家の元を巡りピッチを繰り返す必要があった。やっとの思いで調達にたどり着いたとしても、株式を投資家に吐き出す必要がある。

ICOならば、株式を保有したまま、世界中に向けて資金調達を行うことが可能だ。さらに発行したコインやトークンを購入する人が増えることによるネットワーク効果も期待することができる。

投資家へのメリット

一方で、投資家にとってのメリットは何だろうか。

投資家は、これまでであればリーチすることができなかった有望な企業やプロジェクトに初期から投資を行うことが可能となる。そうすることで、その後の企業やプロジェクト価値の向上によっては、大きなキャピタルゲインが見込めるだろう。

また、1万円に満たない少額からでも投資ができるというのも魅力的だ。より広い個人投資家に、投資のチャンスが開かれているとも言える。

ICOのリスク

ICOのリスク

ICOを行う企業・プロジェクトへのリスク

ICOを行う企業やプロジェクトについて言えば、発行したコインやトークンが法的にどのような扱いになるのかは、細心の注意が必要だろう。そのため、ICOや発行されるデジタル資産についての明確な法定義が存在しない国で実施する場合は、その後の法整備の動向次第では違法ないしは規制の対象となる可能性を考慮しなければならない。

また、一部のICOで起きていた、少数の投資家によるコインやトークンの買い占めによるリスクも存在する。ビットコインなどのように保有者がある程度分散していれば、その影響も軽度で済むが、まだ流通量の少ない時点においては、一部の投資家の行動により他の投資家が被害を被るもしくはコインやトークンの価値を大きく乱高下させる可能性がある。

投資家へのリスク

ICOに参加する投資家はどうだろうか。

まず、株式などと異なるのは、コインやトークンは企業やプロジェクトの経営権を担保するものではないので、極端な話、ICO後にサービス開発を順調に進めるように運営チームに強制することはできない。

さらに仮想通貨およびブロックチェーン関連プロジェクトは、ものによっては非常に難解なものが多いほか、ホワイトペーパーと呼ばれる事業計画書および技術論文書も英語で書かれていることが多いため、十分に理解することが難しい。

そのため、インターネット上の情報などで発行主体の信頼性を確認しようとしても不十分になってしまう場合も多く、「仮想通貨」「ブロックチェーン」「ICO」といった言葉がバズワード的に一人歩きをし、誤った情報のまま投資を行ってしまうリスクも高いと言えるだろう。

投資を行う際には、適切な情報に基いて、自己責任で行う必要がある。

ICOの規制と今後

ICOの規制と今後

さて、これまで説明してきたようなメリットやリスクがあるが、ICOによる資金調達は盛り上がるばかりだ。

そんな中、米証券取引等監視委員会(SEC)は7月末に証券に近い性質を持つトークンについては、金融商品として扱い規制対象になる可能性があると発表した。

さらにシンガポールの金融管理局(MAS)も、証券先物法の対象になりえるトークンの販売を規制していくことを発表するなど、ICOに対して一部規制の波が起きている。

新しい業界への規制について、敬遠する声もあるが規制があることで業界が健全な発展に向かうだろう。今後、適切な規制が行われていくことで、スタートアップだけではなく大手企業もICOの利用を始めるかもしれない。そうすることで、多くの資本が流入しより業界の発展に寄与するだろう。

実際、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ株式会社フィスコ株式会社ABBALabが、日本の投資ファンドとしては初となる仮想通貨およびICOへの直接投資を開始した。

規制が入ることで、ICOを行う企業やプロジェクトからも適切な情報開示が行われ、一般の個人投資家もより安全に参加することが可能になるだろう。ICOの盛り上がりは、ここからが本番となっていくかもしれない。

▼筆者:森川夢佑斗氏の関連著書
ブロックチェーン入門

寄稿
アルタアップス株式会社
代表取締役CEO
森川 夢佑斗 氏
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