デジタル人民元とは?現状・影響・問題点を解説【2022年版】


中国の中央銀行である中国人民銀行が2022年2月に行われた北京五輪で、外国人向けに初めてデジタル人民元を提供しました。中央銀行が発行するデジタル通貨の最先端として世界から注目を集めています。本稿では、デジタル人民元の概要からデジタル人民元がもたらす影響や問題点など網羅的に解説します。

目次

デジタル人民元発行のメリットと中国の狙い

人民元の国際的なプレゼンスの強化

前述したように現在の世界の通貨基軸は米ドルです。しかし米ドルはデジタル化されておらず、人民元がデジタル通貨の中心になれば、人民元の国際化が強化されるでしょう。

さらに中国は2013年に習近平国家主席が「一帯一路」を掲げたことによる広域経済圏を築いており、こうした広域経済圏にデジタル人民元が定着すれば、より強固な国際化につながっていくとされています。そのため中国では早期にデジタル人民元を定着させ、デジタル人民元通貨圏を構成することで、人民元の国際的な存在感の強化を狙っていると考えられます。

監視・統制の強化

中国では過去に元安圧力が強まったことで、海外に資金が流出したことが幾度となく起こっています。さらに流出には不正な手段が使われていたこともあり、近年ではより監視の強化を強めているのが現状です。こうした背景から人民元をデジタル化すれば、中国内部での元の動きをより把握しやすくなります。

国内での監視・統制を強化することで、海外への資金流出リスク減らしたい狙いがあると考えられています。

金融政策の強化

人民元をデジタル化させることで、金融政策の強化につながることが挙げられます。なぜならデジタル人民元に金利をつけることが可能になるからです。

現時点で中国人民銀行はデジタル人民元への金利はつけないとしていますが、将来的に金利をつける可能性はあるでしょう。そのような場合、マイナス金利をデジタル人民元につけることが可能になり、金融政策の幅が広がって行くことにつながります。

AML/CFTの強化

目に見えにくいお金の流れも、デジタル化することで送金情報を隅々まで見ることが可能になり、また、よりリアルタイムでのお金の流れを把握することも可能となります。そのためデジタル人民元の活用は、AML/CFTの強化にもメリットがあると言われています。

中央銀行デジタル通貨 (CBDC) 分野でのリード

法定通貨のデジタル化は世界的に見ても進んでいません。そのため世界に先駆けて「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」を発行することで、デジタル分野における技術・運用面でリードを奪えます。

なぜなら先駆けて行なった国ほど、デジタル通貨の規格や仕様を決定できるからです。前述した通り、中国では一般への実証実験や外国人向けへのテストなど実用化に向けた動きを加速しています。さらに法整備も進んでいるため、他国が中国をモデルケースにする場合も出てくるでしょう。

デジタル通貨が世界に広がれば広がるほど、中国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)でのリードが鮮明になってきます。

寄稿
株式会社セミナーインフォ
TheFinance編集部
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