BNPLとは後払い決済のこと!動向・事業者と利用者のメリット・リスク対策を解説


「BNPLって何だろう?」
「BNPLを使ったときのメリット・デメリットが気になる」

BNPLサービスの利用を検討している販売事業者の中には、このような疑問を抱いている方がいるかもしれません。

まずBNPLとは後払い決済のことを指します。ネットショップなどで商品を購入する際、Paidyなどを選べることがありますが、あのような支払い方法をBNPLと呼びます。

BNPLには販売事業者、利用者(一般ユーザー)の双方にメリットがあります。販売事業者であれば客単価のアップが、利用者だと分割手数料がないことが挙げられるでしょう。しかしその一方でデメリットもあるため、利用する際には注意が必要です。またアメリカやイギリスのように日本でもBNPLに対する規制が始まる可能性がありますので、今後の動向に要注目です。

そこでこの記事ではBNPLの基本情報だけでなく、仕組み・クレジットカードとの違い・メリットやデメリット・BNPLに関係する可能性がある法規制などを解説します。この記事を読めば、BNPL関連の情報を幅広く把握可能です。各BNPL事業者の月額料金や手数料も細かく記載していますので、要点を効率的に確認できます。

「BNPLを利用してみたいけど、使っても大丈夫なのかな」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。

作成:2022/6/29
更新:2023/11/15

目次

利用者(ユーザー)視点|BNPLのメリット

先ほどは事業者視点でのメリットを解説しましたが、ここでは利用者(一般ユーザー)視点でのBNPLのメリットを解説します。BNPLの利用を検討している販売事業者の方は、自分の顧客に対してどのようなメリットがあるのかを確認してみてください。

  • 分割手数料が原則ない
  • 利用ハードルがクレジットカードよりも低い

分割手数料が原則ない

利用者(一般ユーザー)視点でのBNPLのメリットと言えば、なんといっても手数料なしで分割払いを利用できることです。事実、Paidyでは以下のように『分割手数料無料』と明記しています。

分割手数料無料*で、お支払いを3・6・12回に分けることができます。お支払い総額はそのままで月々のお支払いを調整できるので、よりかしこく計画的にお買い物を楽しめます。

引用元:Paidy|ご利用ガイド(2023年11月10日時点)

その結果12か月払いであったとしても、現金一括払いのときとまったく同じ金額で商品を購入できます。3・6・12回に分けても手数料が発生しないというのは、クレジットカードではあり得ませんでした。

その証拠にクレジットカードの1つである楽天カードでは、分割手数料は以下のようになっています。

支払い回数
支払い(ヶ月)
実質年率(%)
2
3 12.25
5 13.50
6 13.75
10 14.50
12 14.75
15 15.00
18 15.00
20 15.00
24 15.00
30 15.00
36 15.00

引用元:楽天カード|分割払い(2023年11月10日時点)

仮に50,000円の商品を12分割払いで購入した場合、4,080円もの分割手数料を支払うことになります。しかしBNPLサービスであるPaidyであれば0円。50,000円で購入できるわけですね。これは大きなメリットと言えます。

ただし支払い方法によっては、BNPLでも分割手数料が発生する可能性があります。例えばPaidyの場合だと、分割手数料が無料になるのは口座振替・銀行振り込みの場合のみです。コンビニ払いを選択した場合は、分割手数料が発生しますので要注意です。

ちなみにPaidyにおいては、12回分割払いを選べるネットショップは以下のようになっています。

【12回あと払いが使える主なお店※2】
DMM.com
ラクマ
BUYMA
SHOPLIST.com
さくらトラベル
ビックカメラ.com
エアトリ(AirTrip)
サウンドハウス
MAGASEEK
セカンドストリートオンライン
PEACH JOHN
RASIK(ラシク)
dazzy store
DRW
KURAND
nairo
UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)
GREEN FUNDING
ヤマダウェブコム
ツクモネットショップ
コジマネット
247 Lingerie
PUNYUS
アイリスオーヤマ公式通販サイト アイリスプラザ
シップス 公式サイト
unicoオンラインショップ
ドワンゴチケット
ATV Direct

Paidyは今後も、お買い物の新しいスタンダードを目指し、革新的なサービス提供を続けてまいります。
※1 口座振替・銀行振込のみ分割手数料無料。
※2 使える加盟店は今後変更になる可能性があります。発表後、最新の使える加盟店はホームページをご覧ください。

引用元:Paidy|ペイディ、分割手数料無料※1 の「12回あと払い」を提供開始(2023年11月10日時点)

ビックカメラやエアトリなど、有名なサイトが名を連ねています。しかし逆に言いますと上記以外のショップ、例えば個人が運営するような店舗では12分割払いは選べないおそれがあるわけですね。

分割手数料が発生するパターン、および12回分割払いを選択できないケースがあることも、念のために覚えておきましょう。

利用ハードルがクレジットカードよりも低い

利用者視点でのBNPLサービスのメリットとして、利用ハードルが低いことが挙げられます。BNPLサービスによっては利用審査なしで、かつ氏名などの簡単情報のみで利用可能だからです。

現にBNPLサービスの1つであるatoneでは、以下のように携帯電話番号などだけで利用できると明記されています。

atone は、ネットショップの画面で、登録した携帯番号とパスワードを入力することで決済が可能です。

引用元:atone|atone翌月後払いをネットショップで使う(2023年11月10日時点)

そのため与信審査なしで、しかも1分もかからずに後払いを利用可能です。BNPLには与信審査が原則ないことを考えますと、この時点でクレジットカードよりも利用ハードルは低いと言えます。

利用者(ユーザー)視点|BNPLのデメリット

利用者(一般ユーザー)にとって便利なBNPLサービスですが、残念ながらデメリットもあります。

  • 限度額が低いかもしれない
  • アカウントが乗っ取られるかもしれない

限度額が低いかもしれない

BNPLの場合、クレジットカードよりも利用限度額が低いことが多いです。実際にBNPLサービスであるGMO後払いと、クレジットカードであるVisa LINE Pay クレジットカードの上限額を比較すると、なんと最大745,000円もの差がありました。

GMO後払い Visa LINE Pay クレジットカード
利用上限額 55,000円 原則100,000~800,000円

引用元:GMOペイメントサービス|購入者様へ(2023年11月10日時点)
引用元:Visa LINE Pay クレジットカード(P+)|便利とお得をプラスする(2023年11月10日時点)

GMO後払いの上限金額は、Visa LINE Pay クレジットカードの下限金額にすら届いていません。そのためBNPLだと、ブランド品や高級家具などの購入時には使えないおそれがあります。これはBNPLサービスのデメリットと言えます。

アカウントが乗っ取られるかもしれない

これはBNPLに限った話ではありませんが、作成したアカウントが乗っ取られるかもしれません。ネットを通じたサービスである以上、サイバー攻撃や個人情報流出のリスクは避けられないためです。

実際に愛知県警の公式サイトを確認してみると、以下のような相談事例があったとのことです。

クレジットカードで身に覚えのない引き落としがあったので、確認したところ、誰かが私のアカウントにログインしていた。

引用元:愛知県警察|ショッピングサイトのアカウントに不正アクセスされ、クレジットカードやポイントを利用された(2023年11月10日時点)

上記はクレジットカードの事例ですが、BNPLサービスを利用したときにも同様のことが発生するかもしれません。したがってBNPLを利用する際は、『セキュリティ対策をしっかりと行っている』と明記しているサービスを利用するのがおすすめです。

そのほかにも、自分で定期的にパスワードを変更するなどの取り組みを行うことで、安心して利用できることでしょう。

事業者は要検討!不正検知などのリスク対策

BNPLサービスを販売事業者に安心して利用してもらえるよう、BNPL事業者には以下のような対応が求められます。BNPLを導入予定の販売事業者の方は、利用予定のBNPLサービスが信用できるかどうかの判断基準として、以下をご参考ください。

  • 本人確認の厳格化
  • IPアドレスなどを利用した不正検知システムの導入
  • 段階別の与信枠を設ける
  • セキュリティの専門家に相談をする

本人確認の厳格化

BNPL事業者は本人確認を厳格化するべきでしょう。身分証などを用いた本人確認を実施することで、なりすましを未然に防ぐ効果を期待できるからです。

そもそも本人確認が緩い、つまりログインIDやパスワードのみで利用できる場合、これらが流出した時点でサービスを利用される可能性が高いことを意味します。これではログインIDやパスワードが流出したときに、脆弱と言えます。根本的な話になりますが現代社会だと、個人情報の漏洩は以下のように非常に多くなっているからです。

発生事象には「漏洩」が5,335件(76.1%)と最も多く、次いで「紛失」681件(9.7%)となりました

引用元:一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)|2022年度個人情報の取り扱いにおける事故報告集計結果(2023年11月10日時点)

上記はプライバシーマーク付与事業者である1,460社からの事後報告のみの数字です。プライバシーマークを取得している企業ですらこの惨状ですから、その他一般企業も含めますと、相当な数の個人情報が流出しているのかもしれません。このことを踏まえますとBNPL事業者は、漏洩した個人情報を利用したなりすまし行為を防止するため、本人確認を厳格化するのが無難と言えます。

BNPLの導入を検討している事業者の方は、本人確認の徹底を公表しているサービスを利用するのがおすすめです。

IPアドレスなどを利用した不正検知システムの導入

BNPL事業者は、IPアドレス※などを利用した不正検知システムの導入、もしくは開発をすることが望ましいです。

※デバイスに割り当てられている番号のこと。簡単に例えますと住所のようなものです。

不正を検知次第、BNPLサービスの利用を停止できるからです。

まず不正検知システムとは、以下の項目をチェックすることで第三者によるなりすましを防ぐ仕組みを指します。

  • IPアドレス
  • 端末情報
  • 配送先情報
  • 商品の購入頻度

過去に記録された上記情報と、リアルタイムで記録されている各情報が一致せず、明らかな不正が疑われる場合(5年間配送先が日本だけだったのに、いきなり南米になるなど)、不正検知システムが作動するわけです。その結果、なりますまし行為を未然に防ぎ、不正利用されるリスクをグッと抑えられるわけです。

このようなシステムを有しているかを、利用予定のBNPL事業者に問い合わせてみると良いでしょう。

段階別の与信枠を設ける

リスク対策を徹底したいのであれば、BNPL事業者は段階別の与信枠(利用限度額)を設けるべきです。万が一不正利用されたときのリスクを最小限に抑えられるからです。

そのこともあってかBNPL事業者であるatoneでは、以下のように最初の上限金額は低く設定しています。

使いすぎを防ぐためにご利用可能額を50,000円を基準に設定。お客様のご利用状況に応じて変動します。

引用元:atone|安全への取り組み(2023年11月10日時点)

atoneのように最初は利用金額を低くすることで使い過ぎの防止はもちろん、不正利用されたときの被害金額を抑えられます。いきなり十数万円もの金額を提示する場合に比べ、被害は最小限に食い止められるでしょう。利用予定のBNPLサービスの基準与信枠や上限金額が増える条件を、事前に問い合わせておくことをおすすめします。

ちなみにですがatoneのように、リスク対策とはいえここまで利用限度額を低く設定しますと、自社の商品単価とBNPLの利用上限金額が見合っていないおそれが出てきます。高級家具や宝石などを取り扱っている販売事業者が、その代表例です。このような販売事業者では、利用者(一般ユーザー)の支払い金額が50,000円を超えることが多いハズ。

そうなりますと利用者はBNPLでの支払いができなくなります。これでは導入をした意味がありません。この場合は上限金額を引き上げてくれるのか、どこまで上げられるのかも各BNPL事業者に事前に確認しておくと良いでしょう。

セキュリティの専門家に相談をする

理想を言えば、BNPL事業者は定期的にセキュリティの専門家に相談をするべきでしょう。ケースによっては、自社で対応するのが難しいことも考えられるからです。

そもそもBNPLは一種の金融事業です。セキュリティ面が非常に重要視されます。個人情報・クレジット情報など、利用者(一般ユーザー)の人生に大きな影響を与えうる情報を取り扱うことが多いからです。

そして、そのような情報を取り扱う際には個人情報保護法などの法律が絡んできます。必然的に最新の法律情報が必要になるわけですね。そういった背景もありBNPL事業者は最新の法律事情・セキュリティ情報に精通している専門家に、定期的に話を聞くべきと言えます。その結果、現在よりも万全のセキュリティ体制を構築できるハズです。

BNPLサービスを利用する際は、この点について事業者に問い合わせてみると良いかもしれません。そのBNPL事業者の返答でセキュリティに対する取り組みや考え方が見えてくる、つまりは自社の大切な顧客情報を共有するに値する、信用できる事業者なのかどうかを見分けられます。ご参考ください。

事業者は必見!BNPLサービスの選び方を解説

ここまでを読み、「BNPLを使ってみるか!」と判断した販売事業者がいるかもしれません。そこでここでは、BNPLサービスの選び方を解説します。

  • 利用料金を確認する
  • 現在使用しているシステムと連携可能かを確認する

利用料金を確認する

BNPLサービスを選ぶ際は、まず利用料金を確認しましょう。BNPLサービスごとに月額利用料金の有無・手数料に違いがあるためです。詳しくは以下の通り。

BNPLサービス 月額費用 手数料
Paidy 0円 3.5%
GMO後払い 0~45,000円 2.7~4.7%
NP後払い 0~48,000円 2.9~5.0%
atone 0~48,000円 2.5~3.5%
PayPay 1,980円 1.6~1.98%
後払いドットコム 0~45,000円 2.8~4.8%

2023年11月10日時点

Paidyのみ料金プランがなく、月額費用無料・決済手数料は3.5%で固定されています。非常にシンプルな料金体制のため、一番わかりやすいでしょう。

その一方で、GMO後払い・NP後払い・atone・PayPay・後払いドットコムには、それぞれ料金プランが用意されています。基本的にどのサービスも、月額費用が安いプランは決済手数料が高く設定されており、逆に月額費用が高いと手数料は低くなっていました。

そのため売り上げが多い企業であれば、『月額費用が高い・決済手数料が安いプラン』を選ぶのが、最終的には一番利益を上げられるでしょう。逆に売り上げのめどが立っていないスタートアップの場合は、月額利用料金が0円のプランを選ぶのがおすすめです。売り上げがゼロだったときのリスクを抑えられます。

またBNPLサービスによっては、オプション料金が別に用意されています。例えばGMO後払いですと、請求書に用いるはがきが1枚当たり185円かかります。他方でPaidyであればEメールやSMSで請求しますので、このようなオプションはありません。このように請求方法1つで、最終的な利用料金が変わってくることもあり得ます。

したがってBNPLサービスを料金視点で比較する際は、月額費用・決済手数料・オプション費用の3つを確認すると良いでしょう。その結果、どこが一番お得に使えるかを把握できます

現在使用しているシステムと連携可能かを確認する

BNPLサービスを選ぶ際は、自社が利用しているシステムとの連携が可能かを確認してください。「せっかくBNPLを導入したのに、自社が利用しているシステムと連携できない!」といったトラブルを防ぐためです。

導入したとしても自社サイトと連携させられないのであれば、導入費用を無駄にしてしましますよね。このような事態を避けるためにも、既存システムとの連携が可能かを必ず確認しましょう。

ちなみにですが、そのこともあってかNP後払いでは、連携できるシステムを『NP後払い|連携システム』で公表しています。非常にわかりやすいので、一度確認してみてください。

他のサービスを利用予定の場合は『貴社のBNPLサービスと、弊社が今使っている〇〇は連携可能か?』と事前に問い合わせてみると良いでしょう。数日中に返信が来るハズです。

BNPLに関係する可能性がある法規制を解説

ここではBNPLに関係する可能性がある法規制について解説します。BNPLを利用する前に一度確認してみてください。

  • 割賦販売法|包括信用購入あっせん
  • 割賦販売法|個別信用購入あっせん
  • 割賦販売法|二月払購入あっせん
  • 割賦販売法|クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録
  • 犯罪収益移転防止法

割賦販売法|包括信用購入あっせん

BNPLは割賦販売法の包括信用購入あっせんに該当する可能性があります。この場合、事業者は包括信用購入あっせん業者として、経済産業省に登録申請をしなければなりません。

まず1つずつ解説をしますと、割賦販売法とは商品代金やサービス料金の分割払い・延べ払いに関する法律のことです。割賦販売法は、以下の促進や実現を目的に制定されました。

  • 取引の公正さと健全な発達
  • 購入者の利益保護や損害防止
  • クレジット番号など各情報の適切な管理
  • 流通や役務の提供

上記を達成し、国民経済の発展に貢献することを目的にしているのが割賦販売法ということですね。ちなみに割賦販売法の『割賦(かっぷ)』は、分割を意味します。

そして割賦販売法にはいくつかの分類(章)が設けられており、その1つが『信用購入あっせん』になります。信用購入あっせんの詳細は以下の通り。

消費者が、特定の販売会社(加盟店)で商品等を購入することを条件に、クレジット会社が当該商品の代金を消費者に代わって販売会社に立替払いをし、後日、消費者が当該代金をクレジット会社に2か月を超えて支払う取引。

引用元:経済産業省|割賦販売法(後払信用)の概要(2023年11月10日時点)

要は利用者がクレジット払いを選択したときに、支払いに2か月を超えるケースが信用購入あっせんに該当するというわけですね。利用者(一般ユーザー)の信用を担保とし、購入をあっせんすることから、このような名称がつけられているのかもしれません。

そして、この信用購入あっせんには『包括・個別』の2種類があります。包括信用購入あっせんに関しては、以下のような仕組みになっています。

  1. 販売事業者がクレジット会社との間に加盟店契約を行う
  2. 利用者はクレジット会社にカードの申し込みを行う
  3. クレジット会社が利用者の信用調査を行う
  4. 問題がなければクレジット会社が利用者にカードを交付する
  5. 利用者がクレジットカードで商品を購入する
  6. 販売事業者が利用者に商品を発送する
  7. クレジット会社が販売事業者に対して代金の一時的な立て替え払いを行う
  8. 利用者はクレジット会社に分割で代金を支払う

つまり利用者が一般的なクレジットカードの使い方をし、かつ分割払い時に12回払いなど2か月を超える支払い方法を事業者が提示および選択されたケースが、包括信用購入あっせんに該当するということですね。

逆に言いますと、支払い期間が2か月以内であれば包括信用購入あっせんに該当しないわけです。時折BNPLサービスにて支払い期間が2か月以内と短く設定されていることがありますが、あれは対象取引が包括信用購入あっせんに該当しないようにするためだと推測されます。該当する場合は先述しましたように、経済産業省への登録が必要になるからです。

もしもこれからBNPLサービスの利用を検討しているのであれば、対象サービスを運営している事業者が、登録包括信用購入あっせん業者に登録しているかを必ず確認しましょう。登録されていれば2か月を超える支払いが可能、つまりは利用者が選べる分割回数が多くなる可能性があります。登録事業者は『経済産業省|登録事業者一覧』にて確認できますので、ご参考ください。

割賦販売法|個別信用購入あっせん

個別信用購入あっせんとは商品を購入するごとに、その商品を購入するために申し込み・審査を受ける仕組みを指します。

例えば自動車などを購入する際に、審査を受け、通ることで初めて利用できるクレジットサービスがありますよね。このときの支払い期間が2か月を超えた場合、対象取引は個別信用購入あっせんに該当します。個別信用購入あっせんに該当するか否かの判断基準も、包括信用購入あっせんと同様に『支払い期間が2か月を超える』ことになっています。

ちなみに経済産業省の資料によりますと、リフォームローンや家電製品のクレジットなども、対象になるとのことです。

そんな個別信用購入あっせんの仕組みは以下の通り。

  1. 販売事業者がクレジット会社との間に加盟店契約を行う
  2. 利用者が商品の購入を申し込む
  3. 販売事業者がクレジット会社に信用調査を依頼
  4. クレジット会社が利用者の信用調査を行う
  5. クレジット会社が販売事業者に調査結果を報告
  6. 販売事業者が利用者に商品を発送する
  7. クレジット会社が販売事業者に対して代金の一時的な立て替え払いを行う
  8. 利用者はクレジット会社に分割で代金を支払う

先ほどの包括信用購入あっせんでは『クレジットカードを申し込む→事前に審査を受ける→カードを発行してもらう→そのカードを使う』のが特徴でした。商品の購入前に、信用調査をすでにクリアしているというわけですね。

その一方で個別信用購入あっせんでは商品を購入するごとに、申し込み・審査を受けなければなりません。その都度審査を受けなければならないのですが、クレジットカードを持っていなくても後払い・分割払いを利用できるため、クレジットカード非保有者からすれば希少な支払い手段と言えます。

なお個別信用購入あっせんに該当する取引を行う場合も、経済産業省への登録が必要になっています。注意点としては、個別信用購入あっせんと包括信用購入あっせんの登録は、別物扱いとなっている点です。そのこともあり経済産業省のサイトには、『登録包括信用購入あっせん業者一覧』と『登録個別信用購入あっせん業者一覧』の2種類が掲載されています。

BNPLサービスを利用する際は念のために、対象BNPL事業者が個別信用購入あっせん事業者に登録しているかどうかも確認しておくと良いでしょう。

割賦販売法|二月払購入あっせん

割賦販売法における二月払購入あっせんとは、利用者が後払いを選択したときに『支払い期間が2か月以内』を選んだ際のクレジットサービスのことです。別名『翌月一括払い・マンスリークリア』とも呼ばれます。詳細は以下の通り。

前項の「二月払購入あつせん」とは、カード等を利用者に交付し又は付与し、当該利用者がそのカード等を提示し若しくは通知して、又はそれと引換えに特定の販売業者から商品若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から役務の提供を受けるときは、当該販売業者又は当該役務提供事業者に当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対価に相当する額の交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)をするとともに、当該利用者から当該代金又は当該対価に相当する額を、当該利用者が当該販売業者から商品若しくは権利を購入する契約を締結し、又は当該役務提供事業者から役務の提供を受ける契約を締結した時から二月を超えない範囲内においてあらかじめ定められた時期までに受領することをいう

引用元:e-Gov法令検索|割賦販売法|第三十五条の十六(2023年11月10日時点)

要は分割払いではなく、『クレジットカードを経由した、後払いによる一括払い』が二月払購入あっせんに該当するということですね。包括信用購入あっせん・個別信用購入あっせんとは別の規制であり、BNPLの内容によっては該当する可能性があります。念のために覚えておきましょう。

割賦販売法|クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録

クレジットカード番号等取扱契約締結事業者とは、『販売業者に対し、クレジット番号や期限日などのクレジット情報の取り扱いを認め、加盟店契約を締結する』ことを生業とする事業者のことを指します。正確には以下の通り。

次の各号のいずれかに該当する者は、経済産業省に備えるクレジットカード番号等取扱契約締結事業者登録簿に登録を受けなければならない。

一 クレジットカード等購入あつせんに係る販売又は提供の方法により商品若しくは権利を販売し、又は役務を提供しようとする販売業者又は役務提供事業者に対して、自ら利用者に付与するクレジットカード番号等を取り扱うことを認める契約を当該販売業者又は当該役務提供事業者との間で締結することを業とするクレジットカード等購入あつせん業者
二 特定のクレジットカード等購入あつせん業者のために、クレジットカード等購入あつせんに係る販売又は提供の方法により商品若しくは権利を販売し、又は役務を提供しようとする販売業者又は役務提供事業者に対して、当該クレジットカード等購入あつせん業者が利用者に付与するクレジットカード番号等を取り扱うことを認める契約を当該販売業者又は当該役務提供事業者との間で締結することを業とする者

引用元:e-Gov法令検索|割賦販売法 |第三十五条の十七の二(2023年11月10日時点)

上記はクレジットカードと書かれており、直接的にはBNPLに触れていません。しかしBNPLの仕組みがクレジットカードと酷似しているため、該当する可能性は十分にあります。BNPLが比較的新しいビジネスということで、法整備が追い付いていないというのが実情でしょう。信用購入あっせんなどにも同じことが言えますが、この辺りは今後何かしらの法規制があるかもしれません。

そのことを先読みしてか、BNPL事業者である株式会社Paidyの名前が『クレジットカード番号等取扱契約締結事業者一覧』にすでに記載されていました。クレジットカード番号等取扱契約締結事業者登録簿に登録済みということですね。

クレジットカード番号等取扱契約締結事業者に該当する場合は、株式会社Paidyのように登録をしなければなりません。その際は経済産業省に、登録申請書・加盟店との契約書・業務における組織図などを提出する必要があります。

犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法とはその名の通り、事業者の利益が犯罪に使われることを防ぐために制定された法律のことです。詳細は以下の通り。

犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、犯罪による収益が移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えること等から、犯罪による収益の移転の防止を図り、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的として制定されたものです。

引用元:国土交通省|犯罪収益移転防止法の概要について(2023年11月10日時点)

上記資料を要約しますとマネーロンダリングなどを防ぐために、取引の有無の確認・記録の作成や保存・疑わしい取引の届け出を、各事業者に求める法律ということですね。犯罪収益移転防止法では対象となる『特定事業者』が選定されているのですが、この中の1つにクレジット会社が選ばれています。

そのため割賦販売法の包括信用購入あっせん・個別信用購入あっせんに該当する取引を行うのであれば、犯罪収益移転防止法の対象にもなる可能性があります。BNPLが各信用購入あっせんに該当する可能性がある以上、このことも覚えておきましょう。

寄稿
株式会社セミナーインフォ
TheFinance編集部
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