金融ビジネスで決定的に重要となったUX/UI


金融ビジネスの非対面化が進展している。これまで、非対面化自体はネット証券など証券ビジネスを中心に進展していたが、今回のコロナ禍は、遅れていた銀行業界に対しても、非対面チャネル強化を不可避なものとした。アフターコロナにおいてもこの流れは不可逆であろう。海外では非対面チャネル活用の動きが顕著となっているが、非対面チャネルにおいては、UX/UI(ユーザーエクスペリエンス/ユーザーインターフェース)の重要性がクローズアップされている。UX/UIとはユーザーの経験や使い勝手を指すが、使いやすさやスマホ対応といった表面的なレベルに留まるものではなく、非対面チャネルがユーザーに与える心地よさや、利用頻度を高める吸引力を有しているか、といったデザイン面がより重視される概念である。

  1. 「ロビンフッド」の衝撃
  2. 「N26」に見る新たな金融ビジネス
  3. 金融+αが問われる時代に
目次

「ロビンフッド」の衝撃

米国では株式投資アプリ「ロビンフッド」が話題となっている。ユーザーはすでに1,300万人に拡大しており、コロナ禍における巣ごもり株式投資ニーズの受け皿となっている。ロビンフッドがここまで大きな存在となったのは、コロナの影響に加え、最低取引単位がなく売買手数料が無料であることで投資のハードルを下げていることや、ゲーム感覚で株式投資が可能な操作性にある。具体的には、シンプルかつスタイリッシュな画面構成や、プッシュ通知の活用による閲覧頻度向上などだが、「進みやすく戻りにくい」といった顧客誘導的なデザイン(ダークパターン)であるとの批判的な指摘もある。ロビンフッドで株式投資に熱中した学生が、損益表示を見誤り、大きな損失が発生したとショックを受け自殺するとの痛ましい事件も発生している。

米国の資本市場では個人投資家が金融・資本市場で個別株式の直接取引を行うことはあまりなく、投資信託や年金資産のインデックス投資が中心だったが、ロビンフッドの登場により、状況が変わりつつある。ゲームストップ株の高騰が話題になったように、個人投資家がSNSなどで情報共有を行い個別株への集中的な売買を行うといった新たな動きも注目されよう。

村松 健 氏
寄稿
SBI金融経済研究所
事務局次長
村松 健 氏
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