「三菱UFJ銀行のデータ利活用施策における組織体制・役割とその活動について」

門田 芳典 氏
【講演者】
株式会社三菱UFJ銀行
経営企画部 経営基盤改革室 調査役
門田 芳典 氏

<Tableauとの出会い>

2018年、BIツールの選定タスクが当部署にアサインされたことが始まりであった。BIツールの選定方法は、既存の実績を全く意識することなく、外部評価を参考に複数のBIツールを使ってPoCを実施した。経営情報システムの管理者である我々の意見に偏らないように、既存のツールのログ実績からヘビーユーザーを抽出し、国内本部各部のヘビーユーザーにもPoCに協力していただいた。

複数のツールを比較した結果、管理面や大容量データ処理の点から、当部署内でTableauが優勢となった。UI/UX部分もヘビーユーザーのアンケートを重視した結果、Tableau支持が圧倒的に多く、満場一致で選定となった。2020年10月の本番リリース時は100ユーザーと小規模で開始したが、現在は合計1,700ユーザーに迫る勢いだ。ユーザーの急増に対してCoEである経営基盤改革室の役割は非常に重要となっている。

<デジタルレポートプロジェクト>

※所属する組織は22年度より経営企画部 経営基盤改革室に組織変更された。ただし活動内容は21年度のため旧組織名の経営情報統括部とその体制を元に記載する。

所属していた経営情報統括部では、銀行内の計数管理高度化・効率化を目指し、従来のレポーティング業務をTableauに置き換える、デジタルレポートプロジェクトを立ち上げた。選考した国内本部の20部署を対象に、ビッグデータ基盤×Tableauの組み合わせでリプレースのソリューションを企画・運用開始した。VBA等を使った従来の既存業務は、Localパソコン内で処理が閉じており、スキルパーソンに依存した運営が課題であった。銀行では定期的なサイクルで人事異動が行われるため、各種ツールメンテナンスの担当者の確保もしづらい状況となっていた。デジタルレポートプロジェクトでは作成ロジックを見える化するとともに、外部環境の変化による計数管理の変更作業に迅速に対応することを目標とした。

ユーザーに受け入れてもらうため、計数管理をしている本部の選定20部署へ新規プロジェクトの説明を行った。サンプルで作成したダッシュボードはマネジメント層には好評であった一方、現場からは様々な声が挙がった。一から教えないといけない、マニュアルを用意してほしい、経費負担をしてもらいたいコメントが出てきたため、体制面・予算面など色々な課題が発生した。

<CoE体制、組織内での役割分担>

ここからはデジタルレポートプロジェクトに関するサポートの進め方について説明する。CoE体制について、経営情報統括部のトップはChief Data Officerである執行役員部長である。その下にMIS企画・運営グループとデータガバナンスグループの2つの組織があり、次長が運営管理を行う。デジタルレポートプロジェクトはMIS企画・運営グループに所属する3つのチームで推進する。

まずデジタルレポートチームはフロントに該当し、レポートの要件を直接ヒアリングする役割で、8名の行員で担当する部署の割り振りをした。Techチームは5名体制で、短期的にはデジタルレポートプロジェクトのシステム開発、中長期ではアーキテクチャ再構築のミッションを担う。ユーザーサポートチームはサポート窓口として、QA用のメールBoxの受付・回答、サポートWebサイトやFAQの管理・後進、研修サポート・マニュアル整備などを実施している。

<導入経費の負担方針、ライセンス管理>

使わないと有効性が分からないが、使うと経費が必要になるジレンマのなかで、プロジェクト推進のためのルールを設けた。2-3ライセンス分は経営情報統括部が負担し価値検証をするが、それ以上の追加ライセンスは各部署の経費で負担とする。経費予算獲得の暁には、経常情報統括部がTableau社に対して一括発注で窓口を集約し、期日管理などの各部のライセンス管理負担を減らすことにした。経費負担は合理性だけでなく、納得性も重要だ。

<利用のモニタリング>

導入後は利用状況のモニタリングが必要だ。Tableau Serverに関しては、PostgreSQL情報と既存データとして保有している組織要員情報を結合し、活用状況をモニタリングしている。モニタリングには様々な効果があり、CoE部署としては必須の業務だ。ユーザー視点に関しては、利用部署のマネジメント層ユーザーのダッシュボード参照確認が重要となる。なぜならマネジメント層が見ているなら、その部署では利用が定着していると言えるからだ。ワークブック視点に関しても、参照回数と継続性を確認する。担当者が部署移動したためメンテナンスされなくなるケースもあるが、同部署の方に引き継ぐか削除するかを決めてもらう。

アクセスログには常務自ら定期的にレポート参照しているログもあり、当該部署の計数担当者やCoE部署の励みにもなっている。

Tableau Publicやアクセラレータからのサンプルワークブックの参照確認も行っている。当部署もダッシュボードについて日々研鑽を積んでいるが、Publicで一般公開された先人のダッシュボードは参考になる。定期的に取集して全ユーザーがアクセス可能な「スキルUP用コンテンツ」に格納している。

<ユーザーサポートツール(Web/メール)>

全行員が参照するポータル内からアクセスできるサポートWebサイトを構築・提供している。1枚のHTMLを用意し、利用方法、申請フォーマット、各部署との成果物例などへのハイパーリンクを集約した。問い合わせメールに関してはグループ共用のメールアドレスを作成し、共用メールBoxに格納された後に、各担当者に偏りなく均等に割り振りして回答している。サポートWebサイトや掲示板サイトには標準機能でアクセスログが残るが、データ基盤に格納することで、Tableauで可視化できるようになった。

<ユーザースキルUPに向けた研修・留学制度>

プロジェクト開始時には当部署でTableau Desktop、Prep Builder、Explorerの操作研修を各2時間実施した。オンラインで開催・録画し、Eラーニングコンテンツに登録した。一方、100名以上が参加することもあり、研修で利用するデータはどうしてもオープンデータに限られる。研修段階で感じていた「熱」を業務利用時に忘れてしまうこともあり、定着しないケースもあった。また人事部主催のデジタル人材研修でのコラボレーションはデジタル素養のあるメンバーが対象だ。全体研修よりもデータ利活用が進んでいるが、当部の求める水準には達していなかった。各部署の保有するデータそのものを使ってTableau操作を学ばないと定着しないという結論に至った。

研修名称を「留学制度」とし、各部署の希望ベースでエントリーを募り、当該部署のデータを使ってオンラインまたは会議室で操作をみっちり学んでもらう取り組みを始めた。自部署のデータであり、留学の当日や翌日から活用できるため、定着度はかなり向上した。

<プロジェクトを通じて認識したTableauに適する領域>

Tableauの利活用に向いている領域や部署について、CoE部署に知見が蓄積されてきた。具体的には、経営管理計数(収益の予実管理)、経費管理、トランザクション管理、取引明細のリスク管理、Slack等コミュニケーションツール導入効果測定、アジャイルでのレポート作成(ロシア・ウクライナ影響分析等)だ。

<今後の方針>

デジタルレポートプロジェクトの立ち上げは、組織や業務フローを変革する大きな第一歩となった。役員の方々にも好評のプロジェクトとなった。今後は銀行内以外の外部データも利用しながら新たなデジタル化に取り組むとともに、スキルの底上げ等銀行全体のデジタル化を推進していこうと考えている。