「SMBCグループにおけるAI・データ利活用の取組」

江藤 敏宏 氏
【講演者】
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
データマネジメント部長
江藤 敏宏 氏

<SMBCグループについて>

SMBCグループは銀行・証券・クレジットカード・リース・コンシューマーファイナンス等を有する総合金融グループだ。現在、グループ全体で法人約300万社、個人約4,300万人のお客さまにお取引頂いている。

「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」の経営ビジョンの実現に向け、3つの方向性として「情報産業化」、「プラットフォーマー」、「ソリューションプロバイダー」を掲げている。これらの取組に重要な要素となるデジタルやデータの活用を意識した対応を事業戦略等に織り込みつつ、グループ全体で推進している。

<データマネジメント部の概要・役割>

データマネジメント部は、ビッグデータへの注目が高まっていた2016年4月に、グループベースの経営管理高度化に向けたデータ整備や利活用の推進を目的に設立された。現在約50名が所属している当部では「データを活用したSMBCグループのビジネス変革」をミッションとして掲げ、その実現に向けて「データ利活用」、「データガバナンス」、「人材育成」の3点に取り組んでいる。
データの収集・整備から利用・管理、AIモデルの構築、分析ツールの提供、人材サポートまでを一気通貫で推進しており、これらの取組を通じて、各部や各社でのデータ利活用をけん引、支援している。

<データ利活用領域の拡がり>

かつては、既存の金融業務のベースであるリスク管理や財務管理、顧客管理といった領域が中心であったが、マーケティングや営業の高度化、不正取引検知等に拡がっている。また昨今では国内外の環境変化を背景として事業領域も拡大し、広告ビジネスや衛星データ等の非金融領域にまで拡がっている。またこれらの事業領域の拡大に伴い、取り扱うデータの量や種類も増加する中、その適切な整備・活用の重要性も高まっている。

<金融ビジネスにおけるデータ利活用>

1つ目の事例はパーソナライズド・マーケティングだ。SMBCグループでは、お客さまの基本的な属性情報に加えて、口座情報やATM利用履歴等のオフラインデータと、アプリのログイン履歴や利用履歴等のオンラインデータを統合し分析することにより、お客さまの趣味・嗜好を把握し、適切なタイミング、適切なチャネルでニーズに即した商品・サービスの提案を行っている。また、提案を受けた顧客の反応もデータとして分析することにより、同じ商品を再度案内するのか、別の商品を案内するのかといったネクストアクションに活かしながら、PDCAサイクルを回して精度を高めている。

2つ目はAIを用いた資産運用ビジネスの高度化だ。AutoML(機械学習)ツールの導入によって、特徴量の抽出が容易になり、スコアリングモデルを量産できるようになったことで、「運用商品」「相続・承継」といった商品毎にモデルを構築することができるようになった。またモデルを元に作成されたスコアリングリストによって、個々のお客さまのニーズに応じた適切な商品・サービスの提案が可能となった。具体的な実績として、投資信託では成約率が従来と比べて約2.5倍に向上するなど、着実な成果が上がっている。

3つ目はTableauを活用した取引状況の可視化だ。SMBCでは全社的にTableauの活用を推進しており、その中でも特に営業店における活用が進んでいる。例えば、Tableauのダッシュボードを活用し外国送金や輸出・輸入といった外国為替の取引状況を可視化することで、従来のExcelでの作業に比べ営業店の負担を軽減させるとともに、外貨預金や収益等の情報を追加で集約することで、データの質も向上させた。加えて、情報収集からお客さまへの提案までを一貫してTableauで行えるようにした。

<非金融ビジネスにおけるデータ利活用>

非金融ビジネスの事例の1つは広告ビジネスである。2021年に、銀行データを活用した広告・マーケティングソリューションを提供する株式会社SMBCデジタルマーケティングを設立した。データの量が豊富なだけでなく、口座情報には居住地やライフイベントのステータス等様々な情報が含まれており、データの質も非常に高く、広告出稿者は、よりニーズの高いお客さまへ広告を行うことができる。またお客さまにとっては、自分の属性に合わせた商品のプロモーションを受けられるメリットがある。
もう一つの事例としては、三井住友カードのデータ分析支援サービス「カステラ」がある。三井住友カードの持つキャッシュレスデータと、各企業が持つ購買データを分析し、企業マーケティングを支援するBtoBのサービスである。業界トップクラスの会員数と加盟店数を誇る三井住友カードが保有する膨大なデータを活用し、加盟店や提携先に対しそれぞれの顧客の自社以外での購買や購買しているエリア等の情報提供が可能だ。加えて、マーケティング課題の可視化や打ち手の提案、広告支援まで一気通貫で多様なサービスを提供している。

<データ利活用人材の育成>

SMBCグループではデジタルリテラシー等の向上を目的に「デジタルユニバーシティ」というグループ横断の研修組織を設置した。デジタルユニバーシティでは、全従業員向けのデジタルの基礎知識やスキルから専門人材向けの研修まで幅広い学習コンテンツを自己学習やワークショップなど、様々な形式で提供している。

SMBCグループのデータ利活用人材の育成方針として、3つのレベルに区分し各レベルに応じた育成施策に取り組んでいる。一番下の「データリテラシー」は、全従業員を対象とし、仮説検証の考え方やExcelレベルの基礎スキル等、日常業務における基礎的なデータ活用を習得する事を目的としている。真ん中の「ビジネスデータプランナー」は、業務・商品企画部署の従業員を対象とし、データ利活用によるビジネス企画を推進し、一般従業員と専門人材の橋渡しとなる事を目的としている。一番上の「データサイエンティスト」は、当部をはじめとしたデータ利活用専門部署の従業員を対象としており、高度なデータ分析スキルによる業務高度化や、付加価値の創出を期待している。

<育成の取組例>

データ利活用人材育成に向けた取組として、前述の研修の他、産学連携の取組を実施している。東京大学とは各業界の主要企業とともにコンソーシアムを設立しており、リカレント教育の共同検討やPBL(問題解決型学習)の提供、社会課題解決の為の議論に取り組んでいる。また本邦初のデータサイエンス学部を設立した滋賀大学とは同学部が設立された2017年度に連携協定を締結し、同大学への講師派遣やインターンシップの受け入れ等を実施している。

もう1つの取組例として、グループ各社の従業員が共通のテーマについてデータ分析を行いその精度を競うデータ分析コンテストがある。事前学習コンテンツや参加者同士で進捗などを共有できるコミュニティを用意する等、未経験者でも参加しやすい環境を提供しており、実際に2021年度は参加者300名のうち約7割がプログラミング未経験者であった。データ分析を専門としない部署の従業員も多く参加し、グループベースでの人材発掘や意識醸成に貢献していると考える。

<最後に>

データは価値の高い資産であるが、持っているだけでは意味がなくいかに利活用しマネタイズしていくかがデータそのものの価値、ひいては企業の今後を左右する。SMBCグループではデータ利活用について様々な取組を行っているが、まだ道半ばだと考えている。
今後データ利活用を一層推進し成長していくためには、全従業員が当たり前にデータを使う環境を作り、全従業員がビジネスにデータを使う文化・意識を定着させることが不可欠だ。引き続きデータ利活用と人材育成を両輪で推進していきたいと考えている。