デジタル人民元の仕組み

デジタル人民元の仕組みは「第1階層」「第2階層」「第3階層」の3ステップで流通することです。

「第1階層」は中国人民銀行が国有銀行などの仲介機関に対して、デジタル人民元を発行します。発行された仲介機関は、同価値の「準備金」を中国人民銀行へ渡すことで完了です。

「第2階層」ではデジタル人民元を発行された仲介機関が消費者に対して配布します。消費者は事前に、仲介機関へ入金した分と同じ分のデジタル人民元を受け取れる仕組みです。

最後に「第3階層」は消費者が実際に利用します。店舗での買い物はもちろんのこと、個人間でのデジタル通貨の送付も可能になっています。

デジタル人民元の利用方法

デジタル人民元の利用にはアプリを活用しています。

消費者はスマートフォンにデジタル人民元専用のアプリをインストールし、自身の情報を入力した後、自身のデジタルウォレットを開設することからスタートです。

開設後は中国人民銀行が指定した仲介機関からデジタル人民元を受け取り、自身のデジタルウォレットにチャージします。チャージが完了したら利用者はデジタル人民元を利用できます。

その後は日本でも行われているスマホ決済と同じように、スマホにデジタルウォレットのQRコードを表示させ、店舗側に読み取ってもらうことで、支払いが可能です。

またスマートフォンを持っていない人に向けて、「カード型」のハードウォレットでの活用もテストされています。カード型ハードウォレットでは、カードの右上に小さな画面があり、支払額や残額などが表示される仕組みです。

他にもスマホ同士の接触で決済ができるオフライン決済のテストも行っています。

デジタル人民元の問題点とリスク

デジタル人民元の大きなリスクは中央権力の管理下に置かれているという点です。中国の中央権力が管理しているため、デジタル人民元を利用しているユーザーが「いつ・どこで・どのように」利用したかを、リアルタイムでモニタリングする権限を有しています。

デジタル人民元を発行している中国人民銀行は、匿名性を担保しているといいますが、一部では実名で利用しているシーンがあるのも事実です。そのためデジタル人民元は利用を開始した瞬間、どこまで行っても中央権力の管理下に置かれていることになります。

中央権力のさじ加減によって、利用用途が大きく変わってしまうことは、日本人が利用する場合、間違いなくリスクと言えるでしょう。

こうした点はビットコインなどの仮想通貨が中央権力から距離を置く、中立の立場を取っている点と比較して大きく異なります。

デジタル人民元がもたらす影響

繰り返しになりますが、現在の世界の基軸通貨である米ドルについては、デジタル化はされていないのが現状です。

こうした状況の中、デジタル人民元が中央銀行デジタル通貨として浸透していくことになれば、世界のビジネスの中心が米国から中国へ変わっていくことも考えられるでしょう。

米国は2022年1月20日の米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した報告書の中で、米国のデジタル通貨の取り組みは、デジタル人民元の取り組みから大きく後れを取っていると言わざるを得ないのが現状としています。

加えて中国がCBDCでいち早く成功を収める結果となれば、親中国家はもちろんのこと、一帯一路の経済圏に入っている国家、アフリカ諸国などが中央銀行デジタル通貨を発行する際に、舵取りをする可能性も高くなるでしょう。

現在、貿易をはじめとした米中対立は深刻です。米中対立はデジタル通貨の分野にも広がっており、米議会は先行しているデジタル人民元の影響が、世界経済のバランスや先行きに影響を与えることを警戒しています。

そのためデジタル人民元の広がりは、これまでの世界経済のあり方を変える可能性を秘めています。

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