世界のCBDC導入への取り組み状況
中国
中国は世界に先駆けてCBDCを積極的に取り入れようとしている国です。 なぜなら中国では中国人民銀行が「デジタル人民元」を発行しており、これまでに多くの実証実験が行われているからです。実証実験は中国国内の28都市で行われており、取引金額は875億元(約1兆6,625億円)に上っています。
デジタル人民元は正式な導入には至っていませんが、2022年2月の北京五輪では外国人向けのデジタル人民元も発行されるなど、着実に取り組みを進めています。
なおデジタル人民元については、下記の記事でより詳細な解説をしているので、ぜひ参考にしてみてください。
参考:デジタル人民元とは?現状・影響・問題点を解説【2022年版】
スウェーデン
デジタル国家として知られているスウェーデンでは、スウェーデン中央銀行がデジタル通貨「e-クローナ」の発行を行い、実証実験を推進しています。
元来、スウェーデンでは現金利用の減少やキャッシュレス決済の拡大などが背景にあり、CBDCの議論も活発にされていました。上記のような社会的な背景のもと、スウェーデンでは2020年2月から実証実験が開始されています。中央銀行や商業銀行での取引やプロジェクト参加者の売買決済においてe-クローナを利用し、検討を進めています。
なおスウェーデン中央銀行の総裁であるStefan Ingves氏によれば、今後5年以内にスウェーデンはCBDCを保有できる可能性があると述べており、動向が注目されています。
カンボジア
カンボジアは新型コロナウイルスが流行した2020年を除き、2011年以降、年率約7%の経済成長を続けている発展途上国のひとつです。
カンボジアでは2020年10月から決済システムである「バコン」の運用を開始しています。カンボジアにおいてCBDCの取り組みが進んでいる背景には、銀行口座の保有率が低いことと、スマートフォンが国民に多く普及していること、経済のドル化が進んでいることが挙げられます。経済のドル化とは、自国通貨よりも米国ドルが流通することです。
カンボジアではこうした課題に対応するために「バコン」の普及を推進しており、自国通貨の利用などを促しています。
バハマ
人口が約40万人と小国のバハマでもCBDC「サンドダラー」の運用が始まっています。バハマは700以上の小島から成っており、現金を運ぶ際のコストがかかってしまうことが課題でした。さらに銀行の店舗数が2019年までの10年間で約3割減少し、国民の銀行サービスへのアクセスが低下したことも取り組みを加速させた要因です。
バハマではサンドダラーを浸透させることで、上記の課題解決に加え、マネーロンダリングの強化などの効果を期待しています。
実際にバハマではサンドダラー発行から1年程経過し、徐々にではありますが、流通量が増えてきているとしています。しかし一方で国民の認知度は低く、浸透には至っていないのが現状です。
バハマ中央銀行のジョン・ロール総裁は現状を踏まえ、「今後はさらに普及促進に力を入れていく」と表明しており、CBDCの先行事例として注目を集めています。
アメリカ
アメリカでは2022年に入り、CBDC「デジタルドル」の発行に向けて取り組みを進めています。
2022年1月には米国連邦準備制度理事会(FRB)が「中央銀行発行によるデジタル通貨についての報告書」を発表し、CBDCのメリットやデメリット、他国の状況などが示されました。
さらに2022年3月、バイデン大統領が暗号資産(仮想通貨)に関する大統領令に署名したことで、発行に向けての動きを加速させています。
アメリカの動きの背景には中国のデジタル人民元の発行があります。デジタル人民元が広く流用されれば、ドルに変わる世界の通貨基軸としての可能性を秘めているからです。
アメリカもすぐさまデジタルドルの発行には至りませんが、本格的な検討や法整備を始めています。
EU
EUでは2021年7月に欧州中央銀行がCBDC「デジタルユーロ」の発行に向けて、本格的な準備を始めると発表しています。
まずは2年間の調査期間を経て、利便性や金融システムへの影響、金融政策への影響などを見ていくとしています。さらに調査結果を基に、デジタルユーロの実用化に向けた開発を進めていく考えです。デジタルユーロの開発には3年程度を見込んでおり、運用開始は2026年頃を想定しています。なお、デジタルユーロの発行は決定事項ではなく、深刻な問題が生じた場合は発行を行わない場合もあるとしています。
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株式会社セミナーインフォTheFinance編集部