- BNPLとは後払い決済のこと!今後の動向は?
- BNPLの仕組みは?ネットショップを具体例に挙げ解説
- BNPLとクレジットカードの違いを解説
- 事業者視点|BNPLのメリット
- 事業者視点|BNPLのデメリット・リスク
- 利用者(ユーザー)視点|BNPLのメリット
- 利用者(ユーザー)視点|BNPLのデメリット
- 事業者は要検討!不正検知などのリスク対策
- 事業者は必見!BNPLサービスの選び方を解説
- BNPLに関係する可能性がある法規制を解説
- 海外のBNPLサービス企業を解説
- 国内のBNPLサービス企業を解説
- BNPLサービスにてよくある質問を解説
- まとめ|BNPLは事業者・利用者におすすめのサービス
BNPLとは後払い決済のこと!今後の動向は?
まずはBNPLの基本情報や普及した理由などについて解説します。
- BNPLとは
- BNPLが普及した背景
- BNPL市場は大きな成長が見込まれている
- BNPLの年齢階層別利用率
BNPLとは
BNPLとは後払い決済のことです。「Buy Now Pay Later」の頭文字を取った略称で、日本語訳では「今買って、後で払う」という意味になります。
BNPLの具体例を挙げますと、例えばAmazonなどのネットショップにて商品を購入する際、支払い方法を選択します。その際に『あと払い (ペイディ)』を選んだ場合、氏名やメールアドレスなどを入力するだけで、商品の注文が完了するシステムがありますよね。あれがBNPLです。
上述しましたように、BNPLでは利用者が商品を購入した際、店舗に対してその場で代金を支払う必要がありません。代金の支払いは、BNPL事業者が店舗に対して立て替えを行う仕組みだからです。
BNPLの細かい仕組みは後述しますが、商品を購入した利用者に対してBNPL事業者から商品購入の請求書が届き、コンビニなどで支払いを行うことになります。こうした買い物などを行う際に、BNPLであれば現金を用意していなくても商品の購入が可能になります。
BNPLは「後払いシステム」として欧米を中心に世界に展開されており、日本でもPaidy・GMO後払い・NP後払い・atoneなどがあります。
BNPLが普及した背景
BNPLが普及した背景は地域によって異なります。実際に国民生活センターの資料には以下のように記載されていました。
BNPLは地域によって普及の背景も異なるわけです。
引用元:国民生活センター|後払い決済(BNPL)(2023年11月10日時点)
どういうことかといいますと例えば欧米やオーストラリアでは、銀行に利用状況が把握されないこと・クレジットカードを持てない層に支持されたことが、BNPL普及の理由として挙げられています。
もともと欧米やオーストラリアでは、クレジットカードは銀行が発行するものであり、そのほとんどがリボ払い専用です。そのためクレジットカードの利用状況によっては、信用スコアへの悪影響が懸念されるという事情がありました。「信用スコアへの悪影響を気にすることなく、後払いサービスを気軽に利用したい!」と考えている層が、BNPLを支持したことが予想されるというわけです。
また東南アジアなど、クレジットカードが普及していない国や地域においても、BNPLは普及しています。BNPLがクレジットカードの代替え手段になることはもちろん、利用する際のハードルが低かったからです。先ほど解説しましたが、BNPLはメールアドレスなど簡単な情報を入力するだけで利用可能です。その手軽さが、クレジットカードが普及していない地域にて重宝されたのだと考えられます。
このようにBNPLが普及した理由は国や地域によって異なります。それと同時に『多くの地域・人々にBNPLは受け入れられている』こともわかりましたね。この傾向は、世界各地にて今後も続くかもしれません。次で解説していますように、BNPL市場は年々大きくなっているからです。
BNPL市場は大きな成長が見込まれている
BNPL市場は日本および世界で、拡大傾向にあります。
BNPLの国内市場は、矢野経済研究所の調査によれば堅調に拡大しています。2020年度の国内のBNPL市場は8,800億円を突破しており、市場規模は2017年度と比較して2倍です。さらに今後も市場規模は拡大していくとされており、2024年度には1.8兆円まで伸びる予測がされています。一方で、日本ではまだサービスを利用したことがないユーザーも多く、今後BNPLが浸透していくことが期待されています。
海外市場に目を移すと、BNPLの市場規模はさらに拡大傾向です。2021年の世界のBNPL市場規模は510億米ドル(約5兆8981億円)だったものが、2030年までには4190億米ドルに成長するとされています。
さらに日本総研のレポートによれば、欧州でのEC市場における決済手段が2024年には銀行送金を超え、クレジットカードのシェアに迫るとしています。こうした市場拡大の背景には、若年層のクレジットカード離れや、コロナ禍におけるオンラインショッピングの利用促進が挙げられます。
アメリカでは若年層のクレジットカード保有率が高年齢層よりも低く、さらにクレジットスコアからクレジットカードをそもそも持てないケースが増えてきています。そのため若年層は銀行口座からの即時決済が可能なデビットカードを選択することが増えており、BNPLの利用も増えていくと予想されています。
またオンラインショッピングの利用促進もBNPL市場拡大の後押しになっています。EC市場で高額な商品購入を行うケースも増えてきており、デビットカードのような即時決済の場合、支払いが困難となってしまうからです。そのため分割払いの手数料がかからない、BNPLサービスの利用が増えていくと考えられています。
参照:拡大する Buy Now, Pay Later(BNPL)市場の動向と今後の展望
BNPLの年齢階層別利用率
BNPLは数多くの年齢者層に利用されています。実際に財務省の資料では以下のように明言されています。
BNPLは若年層を中心に利用する者が拡大しており、幅広い世代において一定の利用率を獲得している
引用元:財務省|日本におけるBNPLの成長性について(2023年11月10日時点)
その証拠として、本資料では10代・20代の利用率は15%以上、30代・40代・50代・60代は10%前後を示していました。老若を問わず、多くの世代がBNPLを利用していることが伺えます。手軽に利用できることが、多くの世代に利用される要因となっているのかもしれません。
そしてなにより、BNPL市場は今後も拡大していくことが予想されます。つまり現在10~20代の若者たちが年齢を重ね、40~50代になったときBNPLの利用率が更に上がっている可能性がかなり高いということ。今現在ですと、さすがにクレジットカードの方が身近に感じるかもしれませんが、数十年後にはBNPLの方が幅広い世代にて一般的になっているかもしれません。
BNPLの仕組みは?ネットショップを具体例に挙げ解説
ここでは、年々市場が拡大しており、幅広い年齢層に利用されているBNPLの仕組みについて解説します。
- 利用者がネットショップでBNPLを利用する
- 利用者が氏名などを入力する
- 個人情報がネットショップとBNPL事業者間で共有される
- BNPL事業者が利用者の審査を行う
- BNPL事業者が料金を一時的に立て替える
- ネットショップがBNPL事業者に決済手数料を支払う
- ネットショップが利用者に商品を発送する
- BNPL事業者が利用者に支払いを請求する
- 利用者は期限までにBNPL事業者に支払いを行う
① 利用者がネットショップでBNPLを利用する
まずはAmazon・Shopify・楽天などのネットショップにて、利用者(一般ユーザー)が支払い方法にBNPLを選択するところからスタートします。
支払い方法を選択するときはチェックボタン式であることが多いのですが、肝心のBNPLの表示方法はネットショップによって異なります。例えばAmazonですと『あと払い (ペイディ)』と表示されますし、楽天ですとシンプルに『後払い決済』とだけ記載されます。
ネットショップによっては別の形式で表示されることも十分に考えられるため、気になった販売事業者の方は事前にチェックしておくと良いでしょう。
② 利用者が氏名などを入力する
利用者(一般ユーザー)が支払い方法にBNPLを選択すると、基本的に氏名やメールアドレスの入力画面が表示されます。実際にAmazonの場合だと、以下項目の入力画面が表示されました。
- 氏名
- Eメールアドレス
- 携帯電話番号
- SMS(ショートメッセージ)を用いた認証
Amazonにログインしている状態ですと、氏名などは自動で入力されました。SMSによる認証は手動で行います。これで注文は完了。購入手続きを非常に簡単に進められました。
その一方で、例えば楽天の場合だと『後払い決済』を選択するだけで注文を確定できました。楽天市場の後払いはPaidyで実行されているわけではないため、後払いを選んだあとの細かい手続き内容は、Amazonと若干異なるようです。
③ 個人情報がネットショップとBNPL事業者間で共有される
利用者(一般ユーザー)情報が、ネットショップからBNPL事業者に共有されます。これは『誰が・いつ・どこで・いくら使ったのか』を、BNPL事業者が正確に把握するためです。実際にBNPLサービスの1つであるGMO後払いでは、『個人情報は相互に提供する』と公式サイトで明記しています。
サービスの提供に必要な個人情報(氏名・住所・メールアドレス等)は、ご購入店と弊社間で相互に提供するものとします。
引用元:GMOペイメントサービス株式会社|購入者様へ<GMO後払い>(2023年11月10日時点)
ネットショップから利用者の住所や氏が共有されないと、請求書を送れません。そのため、妥当な措置と言えますね。また万が一、利用者の支払いが遅れたときに連絡をとるため、メールアドレスや電話番号も共有されるとのことです。利用者の情報が二者間で共有されることを覚えておきましょう。
④ BNPL事業者が利用者の審査を行う
BNPLでは基本的に与信審査がありませんが、サービスによってはチェックをされることがあります。例えば株式会社メルペイが提供しているBNPLサービス『メルペイスマート払い』の場合だと、以下のように審査を実施すると明記されています。
メルペイスマートマネー申し込み完了後、審査を実施します。
引用元:メルカリガイド|メルペイスマートマネーの審査について(2023年11月10日時点)
メルペイスマートマネーのお申し込みから通常1-2日で審査結果をお知らせします(場合によっては3日以上お時間をいただくことがあります)。審査通過後、メルペイスマートマネーをご利用いただけます。
BNPLにおいて与信審査は絶対にないわけではありませんので、覚えておきましょう。
⑤ BNPL事業者が料金を一時的に立て替える
審査がなかった・通った場合は、利用者(一般ユーザー)の代わりにBNPL事業者が料金の一時的な立て替え払いを行います。利用者がその場で支払いを行わなくても商品を注文できるのは、この仕組みがあるからです。BNPL事業者から料金を支払ってもらえるということで、ネットショップ側も安心して商品を発送できる仕組みになっています。
⑥ ネットショップがBNPL事業者に決済手数料を支払う
BNPLサービスのもう1つの特徴がこれで、ネットショップ側はBNPL事業者に決済手数料を支払います。つまりBNPL事業者は、この決済手数料が自社の売り上げ・利益に直結するというわけですね。BNPLサービスがビジネスとして成立している理由は、ここにあります。利用者数や購入金額が増加するほど、BNPL事業者は儲かる仕組みと言えるでしょう。
また運転資金を調達する際の利息率を、ネットショップから支払われる決済手数料のパーセンテージよりも低くすればするほど、利益額はさらに増えることが予想されます。このようなシンプルなビジネスモデルも、BNPLビジネスが拡大している1つの理由と言えるかもしれません。
⑦ ネットショップが利用者に商品を発送する
BNPL事業者から立て替え払いを実施してもらったネットショップは、利用者(一般ユーザー)に商品を発送します。商品の代金をすでに受け取っているということで、ネットショップはノーリスクで商品を発送できるわけですね。
もちろん決済手数料をBNPL事業者に支払った分、ネットショップの利益は通常販売よりも減ります。しかしBNPLを導入することで、利用者に商品を買ってもらいやすくなります。クレジットカードなしでも分割払いが可能、かつサービスによっては審査すらなく利用可能なためです。
購入機会の増加、そして未払いリスクの回避ができることを考えますと、BNPLはやはり魅力的なサービスと言えます。
⑧ BNPL事業者が利用者に支払いを請求する
BNPL事業者が利用者(一般ユーザー)に支払いを請求します。支払いの請求方法はBNPLサービスによって異なります。例えばPaidyの場合ですと、Eメール・SMSで請求できます。
翌月1日~3日の間にメールと SMSでご請求金額をお知らせ。
引用元:Paidy|お支払い方法(2023年11月10日時点)
販売事業者からしますと、はがきによる郵送ではないため請求時のコストを抑えられるのはメリットです。利用者からしましても、スマホやパソコンでいつでも確認できるため便利と言えます。
もちろんBNPLサービスによっては、はがきなどで請求することもあります。請求方法が気になった販売事業者の方は、各事業者に問い合わせてみてください。
⑨ 利用者は期限までにBNPL事業者に支払いを行う
利用者は請求情報に基づき、期限までに料金を支払います。支払い方法はBNPLサービスによって変化します。詳細は以下の通り。
BNPLサービス名 | 支払い方法 |
---|---|
Paidy | コンビニ払い 銀行振込 口座振替 |
GMO後払い | コンビニ払い 郵便局 銀行振込 LINE Pay d払い YOKA!Payなど |
atone | コンビニ払い 郵便局 銀行振込 LINE Pay |
NP後払い | コンビニ払い Pay-easy 口座振替 |
2023年11月10日時点
支払い方法が一番豊富なのは、GMO後払いでした。多様な支払い方法を重視するのであれば、GMO後払いがおすすめです。
ちなみに支払い期限に関しましては、同じBNPLサービスでも選んだ方法によって期限が異なるかもしれません。実際にPaidyでは以下のように選んだ支払い方法によって、支払い期限が若干変化しています。
ご請求が確定した月の10日までに、コンビニ払いまたは銀行振込でお支払いください。
引用元:Paidy|いつまでに支払えばいいか知りたい(2023年11月10日時点)
口座振替をご利用の場合は、毎月請求月の12日(金融機関休業日の場合は翌営業日)にご請求金額が自動で引き落とされます。1月および5月請求分の引き落とし日は20日(金融機関の休業日の場合は翌営業日)になる場合があります。1日〜3日の間にご請求金額と引き落とし日をメールでご連絡します。
Paidyの場合だと『売上金は100%入金保証。未払い金はペイディが負担する』と明記しているため、そこまで気にする必要はありませんが、念のために覚えておきましょう。
以上がBNPLサービスの仕組みです。仕組みを見ますと、クレジットカードとほぼ同じようなシステムになっていることがわかりましたね。しかしBNPLとクレジットカードには明確な違いもあります。
BNPLとクレジットカードの違いを解説
ここではBNPL・クレジットカード・分割払いの違いについて解説します。
- BNPLとクレジットカードの違い
- BNPLと分割払いの違い
BNPLとクレジットカードの違い
「後払いシステム」と聞いて、クレジットカードと同じではないかと感じた方も多いかもしれません。しかし、BNPLとクレジットカードには明確な違いがあります。具体的には下記のような違いです。
異なる点 | BNPL | クレジットカード |
---|---|---|
与信審査 | 原則不要 | クレジットスコアで審査 |
利用開始 | 登録後すぐ | カードが届くまで 2~4週間程かかる |
利用枠(限度枠) | 少額スタート 返済実績に基づき増額 |
審査時に限度額が設定 |
BNPLでは与信審査が原則不要です。そのためクレジットカードを所持したくても持てない層や、与信審査に落ちてしまうようなユーザーでも後払いを利用できます。これはクレジットカードでは考えられなかった利点です。
それだけでなく先述しましたように、BNPLであればメールアドレスや電話番号などのような、簡単な情報の入力のみで使用可能です。すぐにアカウントが作成され、利用できます。クレジットカードのように『申し込み→電話などで本人確認を済ませる→クレジットカードの到着を待つ』などのような手間がかかりません。「利用したい!」と思ったそのときに、使うことができます。この手軽さ・スピード感もBNPLとクレジットカードの違いです。
またBNPLとクレジットカードでは、利用限度額に差があります。クレジットカードですっと、利用限度額は数十万円に設定されることが多いですよね。しかしBNPLでは数万円などのような少額からスタートすることが多いのです。これはクレジットカードのような与信審査・厳格な本人確認がBNPLには原則ないため、貸し倒れなどのリスクに備えて利用限度額を意図的に低くしているのだと推測できます。
したがってBNPLを利用し始めたばかりのころは、数十万の買い物はできない可能性が高いです。BNPLの利用限度額の詳細は後述します。
BNPLと分割払いの違い
BNPLと通常の分割払いの違いは、手数料の有無にあります。
異なる点 | BNPL | 分割払い |
---|---|---|
利用者手数料 | 原則不要 | 必要 |
加盟店舗側の手数料 | 高めに設定 | 低めに設定 |
BNPLの場合だと、利用者の手数料は原則不要です。クレジットカードの利用時には、3回以上の分割払いを選択すれば、基本的に手数料が発生します。現在、主な手数料はカード会社によって異なりますが、最大で14~15%程かかってきます。
しかしBNPLでは手数料が原則不要です。そのため、高額な商品を購入する際でも手数料を気にせずに利用ができます。
加えてBNPLを利用できる加盟店舗側の手数料にも違いがあります。クレジットカードの場合、手数料は低めに設定されていますが、BNPLは高めの設定です。そのため店舗側では利用者の購入金額などによっては、手数料が高くなってしまう可能性もあります。
事業者視点|BNPLのメリット
ここからは、事業者視点でのBNPLのメリットについて解説します。BNPLを導入予定の販売事業者の方はぜひ確認してみてください。
- クレジットカード非保有者にも後払いで購入してもらえる
- 料金を起因とした機会損失の防止を期待できる
- 客単価のアップを期待できる
クレジットカード非保有者に利用してもらえる
BNPLを導入することで、クレジットカード非保有者にも後払い・分割払いで購入してもらえます。先述しましたようBNPLの利用にクレジットカードは不要であり、氏名などの簡単な情報を入力するだけで利用できるからです。
例えばAmazonにてPaidyを支払い方法に選ぶと、以下のようなクレジットカード関連情報は一切要求されません。
- 利用しているクレジットカードのブランド名
- クレジットカードの名義
- クレジットカード番号
- 有効期限
- セキュリティコード
当たり前の話なのですが、上記のような情報はクレジットカードを保有していなければ入力できません。つまり必然的に、クレジットカードを持っている人しか後払いを選べない仕組みになっているわけです。
しかしBNPLであれば氏名などを入力するだけで、後払いを利用できます。クレジットカードを持っていない人でも後払い・分割払いを気軽に利用できるわけですね。その結果、事業者は販売機会が多くなり、売り上げアップを期待できます。
料金を起因とした機会損失の防止を期待できる
BNPLを利用することで、料金を理由とした機会損失を防ぎやすくなります。利用者はクレジットカードなしでも、分割払いを選択できるからです。
まずクレジットカードを持っていない場合、従来ですと口座引き落としなどの現金一括払いしか選択できないケースがほとんどですよね。金額がどれだけ高額であろうとです。与信審査に通っていないため、現金一括払いがどうしても要求されるわけです。
その結果「この商品が欲しいけど、金額が高いから現金一括払いは無理だな。クレジットカードを持っていないから分割払いはできないし、あきらめるか」といったケースが発生するおそれがあるのです。これでは販売機会の損失と言えます。
しかしBNPLであれば、このようなことは起こりません。クレジットカード非保有者でも分割払いを選択できるからです。一定額を超える商品を取り扱う事業者ほど、多くの層に分割払いの選択肢を提示できるBNPLは、おすすめのサービスとなっています。
客単価のアップを期待できる
BNPLを利用することで、客単価のアップを狙えます。後払いを利用できる、つまりその場の貯金や所持金が少なくとも、来月・再来月の給与やボーナスを踏まえて商品を購入してもらえる可能性があるからです。
例えば「今月はあまり余裕がないけどボーナスが入るし、いろいろ買おうかな」と判断してもらえるイメージですね。実際に、夏や冬のボーナスを見越してショッピングをしたとき「ついつい買い過ぎてしまった……」という経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。この現象は手持ちの現金だけでなく、自分の経済能力を判断基準とするため、ついつい財布のひもが緩くなってしまうことが原因と考えられます。
後払い決済であるBNPLを導入することで、全利用者に対してこのような現象を期待できるわけです。これは支払い手段が『即時、かつ現金一括払い』しかない場合では、考えられない効果です。その結果、様々な商品をついで買いしてもらえる可能性が生まれ、平均単価のアップを期待できるかもしれません。
事業者視点|BNPLのデメリット・リスク
メリットの多いBNPLですが、実はデメリットもあります。ここでは事業者視点でのデメリットを解説します。
- 決済手数料がクレジットカードよりも高いかもしれない
- BNPLを警戒する利用者がいるかもしれない
- 何らかの法規制が今後日本でも行われるかもしれない
決済手数料がクレジットカードよりも高いかもしれない
BNPLの利用手数料が、クレジットカードよりも高いかもしれません。実際にBNPLサービスであるGMO後払いと、クレジット決済を可能にするStripe(ストライプ)の決済手数料を比較しますと、以下のようにStripeの方が安い可能性があります。
項目 | GMO後払い | Stripe |
---|---|---|
事業者の決済手数料 | 2.3~4.7% | 3.6% 銀行振り込みは1.5% |
引用元:GMO後払い|コンビニ後払いの【GMO後払い】導入検討企業様向けサイト(2023年11月10日時点)
引用元:Stripe|オンライン決済・決済代行プラットフォーム(2023年11月10日時点)
GMO後払いの場合ですと、選んだプランによって事業者手数料が変化します。もしも『4.7%』のプランを選んだ場合、Stripeよりも事業者手数料が1.1%高いことになります。差はわずか1.1%しかありませんが、最終的な取引金額を考えますと大きな違いである言えます。
例えば50,000円の商品を1,000人に売ったとします。売り上げは50,000,000円になりますよね。すると決済手数料が1.1%違えば、支払い金額が550,000円も変わってくるのです。550,000円もあれば一定規模のWeb広告を打ち出したり、従業員1~2人分の給与を確保できたりします。如何に大きな差であるかがわかりますよね。
この辺りは自社サービスの売り上げ規模・利用者数・導入するプランによって話が変わってくる部分でもありますので、導入前によく検討してみてください。
BNPLを警戒する利用者がいるかもしれない
ひょっとしますと、BNPLに警戒感を示す利用者(一般ユーザー)がいるかもしれません。油断して支払い能力以上の買い物をしてしまうことを、危惧する可能性があるからです。
先述しましたように後払いや分割払いができると、人はついつい買い過ぎてしまうものです。その場の所持金だけでなく、入金予定のお金のことも見越して買い物ができるからです。そのことを利用前に自覚し、警戒するユーザーが出てくるのは無理もないことでしょう。
しかし自分の支払い能力を予め理解し、正しく使えば問題がないこともまた事実です。そのことを自社の販売サイトなどにあらかじめ記載しておくと良いかもしれません。
何らかの法規制が今後日本でも行われるかもしれない
今後、日本でもBNPLに対する何かしらの法規制があるかもしれません。海外ではBNPLに対する法規制の検討が進んでおり、日本もそれに追随することが予想されるからです。
実際にアメリカ・オーストラリア・イギリスが、BNPLに対して以下のような検討を始めています。
国名 | 検討事項 |
---|---|
アメリカ | 消費者の権利を制限する支払い関係の契約条項の登録を検討 |
オーストラリア | 2020年11月には証券取引委員会がBNPLに関する報告を発表し、2021年3月には金融事業者協会が策定したBNPLの自主行動規範が実施されている |
イギリス | 英国財務省は、BNPLに信用力調査や広告の適正化、FCAの認可等を義務づける規制方針を2022年6月に発表し、2023年2月から4月まで、BNPL規制案について2回目の意見募集を行っている。 |
引用元:経済産業省|経済社会の変化に対応する世界の消費者政策(2023年11月10日時点)
例えばオーストラリアの場合だと、BNPLはクレジット法の適用外とのこと。それに付け加えてユーザーへの情報公開および警告が不十分・不適切な貸し出しが存在するなどの指摘が相次いでいるようです。
そのこともありオーストラリアでは、証券取引委員会がBNPL規制案の意見募集を実施しました。警告が不十分であったり、不適切な貸し出しが続出したりすれば、利用者は支払いのために生活費や貯金を切り崩す危険性もあるからです。これでは、利用者を苦しめることになってしまいます。このことを危惧したオーストラリア政府は、BNPLに対する法規制を検討しているわけですね。
このような動きは、今後日本でも見られるようになるかもしれません。BNPLサービスを導入するのであれば、BNPLに対する法規制の動向を定期的に確認すると良いでしょう。
- 寄稿
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株式会社セミナーインフォTheFinance編集部