STOのデメリット・課題

STOのデメリットや課題には、以下のようなものが挙げられます。これらの課題を克服していくことで、よりSTOが普及していくことが期待できます。

  • 二次流通市場の形成と拡大
  • STOの認知度向上
  • STOプラットフォームの標準化

それぞれのデメリットと課題について解説していきます。

● 二次流通市場の形成と拡大

セキュリティトークンは単純な企業と投資家間の取引に止まらず、株式などと同様に二次流通が活発な仕組みづくりを行っていくことが課題と言えます。
なぜなら二次流通市場が形成されなければ、個人投資家は手軽な運用や現金化ができないため、取引をしない恐れが出てくるからです。セキュリティトークンによって、土地や所有権、美術品などの資産を小口化できるメリットを活かし、二次流通売買が広がっていくなどが求められます。

● STOの認知度向上

現在のSTO市場は黎明期であると言えます。そのためSTOに対する理解も、一般には広まっていないため、取引も限定的なものになってしまっています。
今後は従来の有価証券取引では行えなかった新たな価値創造や、STOだからこそできるプロジェクト提案などで、投資家に対する認知度の向上を上げていく必要があります。STOではトークンそのものに価値はないため、魅力的な商品やサービスの開発は必要です。認知度の向上がなければ、STO市場の拡大は起こり得ないと言えます。

● STOプラットフォームの標準化

昨今では、多くの大手金融グループがSTOのプラットフォームを開発し始めています。しかしそれぞれのプラットフォームは閉鎖的であり、プラットフォーム間の互換性はありません。グループ毎のプラットフォームに止まってしまっては、二次流通市場の拡大などにもつながらないと言えます。加えて投資家からも敬遠されてしまいます。そのためプラットフォームをまたいだ連携が求められます。そのためには利用するデータの標準化や、きちんとしたルールの策定も必要になってきます。

STOに対する金融庁の動き

STOはデジタル技術を活用した新たな資金調達手段として考えられているため、法律や規制の整備を進めています。
中心となっているのは「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」です。金融庁では、この研究会を設置することで、民間のイノベーションの促進や金融のデジタル化への対応のあり方を検討していくとしています。2022年10月現在、7回の研究会が開催され、整備に向けた動きを加速させています。
またデジタル証券に関する自主規制団体として、「一般社団法人日本STO協会」を認定し、実務や運営における透明性向上を図る動きをしています。変化が加速していく中で、今後の動きが期待されます。

STOの自主規制

金融商品には自主規制団体がそれぞれ定められています。
STOでは「一般社団法人日本STO協会」が金融庁に認定され、自主規制を担っています。具体的には、「認定金融商品取引業協会」として認定されており、第一種金融商品取引業者等が行う電子記録移転権利等の取引を、当該の正会員に対して同協会が定める自主規制規則を適用しています。
一般社団法人日本STO協会の目的は、セキュリティトークンの公正で円滑な取引によるSTOの発展と運用、そしてグローバルな視点での競争力の維持などを推進しています。
前述したように、現在のSTO市場は黎明期であると言えます。業界のルール整備があいまいなままでは、市場の拡大はままならないことに加え、不健全な案件が横行してしまうことも考えられます。
このような影響を受けないためには、ルールの整備や市場の整備は不可欠です。

以下の記事では、2020年当時の一般社団法人日本STO協会事務局長である小柳雅彦氏が同協会の役割について語られています。合わせてご覧になってみてください。

参考:STO(Security Token Offering)ビジネス普及に対する協会の役割

STOの事例4選

(1)SBIホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ:私設取引所「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」の設立

SBIホールディングスと三井住友フィナンシャルグループは、STOのさらなる普及のため、私設取引所である大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)を2021年に設立しました。日本初のセキュリティトークンの開設、運営をしていくことで、新たな市場形成に貢献していきたい考えです。

(2)三菱UFJフィナンシャルグループ:ST研究コンソーシアム(SRC)の設立

三菱UFJフィナンシャルグループでは、三菱UFJ信託銀行を中心とした「ST研究コンソーシアム(SRC)」を設立しました。ST研究コンソーシアムでは、セキュリティトークンシステムProgmatを活用した検証を行なっています。Progmatでは、セキュリティトークンとスマートコントラクトを組み合わせたシステム基盤に、決済手段であるProgrammable Moneyを連携させ、24時間365日さまざま金融取引を行えることを目指しています。
Progmatを金融インフラとすることで、プラットフォームの拡張や市場・決済機能の拡張に貢献をしていきたい考えです。

参考:「ST研究コンソーシアム」の設立およびブロックチェーンを活用した次世代金融取引サービスの開発について
参考:【Progmat Coin】 コンセプトペーパー

(3)野村グループ:セキュリティトークンの発行・管理システム「ibet」の開発

野村グループでは、セキュリティトークンの発行・管理システムである「ibet」をオープンソースとして提供しています。ibetでは債券型、株式型など、さまざまトークンが標準化されており、Ibet for Finコンソーシアムに参加することで、すぐにプロジェクトを開始できるようになっています。
実際に不動産アセットマネジメント会社であるケネディクス株式会社は、ibetを活用して不動産関連資産を裏付けとしたセキュリティトークンを発行し、プロジェクトを行いました。

参考:Ibet for Finコンソーシアム
参考:ブロックチェーン技術を活⽤した「デジタル証券」の発⾏について

(4)Securitize Japan、株式会社LIFULL:不動産特定共同事業者向けSTOプラットフォームの提供

デジタル証券の発行や管理プラットフォームを提供しているSecuritize Japan株式会社は、「LIFULL HOME’S」などを展開している株式会社LIFULLと共に、不動産特定共同事業者向けSTOプラットフォームを提供しています。
株式会社エンジョイワークス社の「葉山の古民家宿づくりファンド 〜日本の暮らしをたのしむ、みんなの実家〜」のプロジェクトにおいて、日本初の一般個人投資家向けの不動産STOとして実施されました。
エンジョイワークス社は投資家からの出資に対して、セキュリティトークンを発行することで、持ち分譲渡の利便性や安全性を高めるとしています。トークンによって自分の持ち分保有の証明ができることに加え、譲渡時にはスマートコントラクトを介し、暗号資産とのDVP(Delivery VS Payment)を活用することで、債務不履行を防ぐことにつながります。

参考:不特法事業者向けSTOプラットフォームで国内初の一般個人投資家向け不動産STOが実施

まとめ

STOはブロックチェーン技術を活用した新しい資金調達方法です。法律や規制が整っていない部分もあるため、課題も山積している一方、高い安全性を確保しつつ、24時間取引やコスト削減、所有権の分割・小口化等を可能にしつつあり、ますます発展していくことが予想されます。今後の動向にも注視していくことが必要です。