STO(Security Token Offering)ビジネス普及に対する協会の役割

STO(Security Token Offering)ビジネス普及に対する協会の役割

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セキュリティトークン分野の今後の発展が見込まれる中、金商法におけるその性質や日本STO協会が果たすべき役割について、当協会の事務局長である小柳雅彦氏に話を聞いた。

  1. 新たな資金調達手法であるSTO その法と自主規制

新たな資金調達手法であるSTO その法と自主規制

日本STO協会は、2019年10月、セキュリティトークン分野の健全な発展及び投資家の保護を目的に誕生し、2020年4月30日に金融庁から「認定金融商品取引業協会」の認定を受けた。同協会は、電子記録移転権利等の売買や取引等に係る業務を行う金融商品取引業者及び登録金融機関を正会員の対象としており、同協会の定める自主規制規則等は当該正会員に適用される。

企業の資金調達手法として、これまではIPO(新規株式公開)が主に活用されてきた。2010年代前半より、ブロックチェーン技術(分散台帳技術)を活用した資金調達方法が広義にICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼称され、注目を集めた。STOは、旧来的なICOと峻別し、金融商品取引規制を遵守する形で実施される。

金商法上セキュリティトークンを整理すると、「株式や社債のような1項有価証券をトークン化したもの」と「電子記録移転権利」の大きく2つに分けられる。

「電子記録移転権利」とは、簡便に言うと集団投資スキーム持分や信託受益権など2項有価証券に位置付けられていたもののうち、いわゆるトークン化された権利を指す。トークン化により流動性が高くなると想定されることから、1項有価証券と同等の規制が課された。一方で、電子記録移転権利から除外され、既存の2項有価証券扱いのままとなるケースもある(下図「電子記録移転権利から除かれる権利」参照)。日本STO協会 事務局長 小柳雅彦氏は、「電子記録移転権利から除外される権利について、特に個人投資家の範囲が限定的であることは、第二種金商業者による個人投資家への販売にとって高いハードルと言え、STOの普及に少なからず影響を及ぼすのではないか」と指摘する。

日本にはセキュリティトークン取引所のようなセカンダリー市場が現状存在していないことから、急速にセキュリティトークンが広く流通することは考えにくい。しかし、セキュリティトークン市場の流通拡大や健全な発展のためには、セカンダリー市場の整備は不可欠だろう。

「電子記録移転権利の譲渡については、取引をデジタルで完結させるために、対抗要件具備の点で法律面の課題が残る。税制面においては、電子記録移転権利の取引を、既存の1項有価証券と同様に申告分離課税・損益通算の適用、特定口座での取扱いが望ましい」(小柳氏)

STOは各国の法令に基づいて実行される。例えば米国では、SEC(米証券取引委員会)への登録や登録免除規程の利用など、STOを行う際の選択肢は多い。

「日本のSTOビジネスはこれから組成・形成していく段階にある。当協会は、正会員の他に、金融商品取引業者等の方に限らず、電子記録移転権利等の事業にご関係・ご関心のある方を広く対象に、賛助会員という区分を設けている。自主規制業務の適切な実施に加え、会員の皆様など関係者の方々とワーキンググループを設置しSTOの適切な在り方の追求、国内外のSTO関連情報の共有や、研修・セミナーの実施などを通して、日本でのSTOビジネスの健全な発展に貢献することが当協会の大きな役割だと考える」(小柳氏)

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