税制改正大綱とは?令和6年度の注目ポイントや項目について解説


本稿では、2023年12月22日閣議決定された「令和6年度税制改正大綱」の注目すべき項目と改定ポイントについて簡潔にわかりやすく解説します。

  1. 税制改正大綱とは?
    (1)各省庁から上がる要望例
  2. 税制改正大綱に記載されている項目
    (1)自社に関連性のある分野を確認して、影響を調べる
  3. 令和6年度税制改正大綱における企業向けのポイント
    (1)賃上げ促進税制の強化
    (2)特定税額控除不適用規定の見直し
    (3)事業再編投資損失準備金制度の拡充
    (4)国内投資促進税制
      ・戦略分野国内生産促進税制
      ・イノベーションボックス税制
      ・スタートアップ関連税制等
    (5)交際費の損金不算入制度の除外措置拡大
    (6)外形標準課税制度の対象拡大
    (7)国際最低課税(グローバル・ミニマム課税)
    (8)事業承継税制の特例承継計画提出期限を2年延長
    (9)将来的な法人税率引き上げの示唆
  4. まとめ
目次

税制改正大綱とは?

税制改正大綱とは、翌年度以降の税制改正についての具体的な内容をまとめた文書のことです。常に変化し続ける経済社会に対応するため、政権与党の税制調査委員会が中心となり、各省庁や業界団体からの要望を吸い上げ、12月中旬に取りまとめる流れになっています。2024年(令和6年度)の税制改正大綱は、2023年12月13日に決定し、政権与党である自民党公式サイトにて公表されています。
「令和6年度税制改正大綱」

政府は取りまとめられた税制改正大綱を基にして、12月下旬に「税制改正法案」として閣議決定を行うのが通例です。令和6年度税制改正大綱は、2023年12月22日閣議決定されました。

その後、閣議決定された税制改正大綱を基にして法案が作成され、翌年1月以降の通常国会に提出および審議に入ります。国会にて税制改正法案が可決されれば、翌年度の4月から新しい税制が施行される流れです。

(1)各省庁から上がる要望例

令和6年度に関しては、以下の省庁からさまざまな要望事項が上がっています。中でも経済産業省は66ページにわたる要望の概要を公表しています。
各省庁の要望を抜粋したものは、以下の表の通りです。

<令和6年度税制改正大綱における各省庁の要望例(抜粋)>

省庁名 項目 税目
内閣府 地方における企業拠点の強化を促進する税制措置の拡充及び延長 所得税、法人税
小さな拠点の形成に資する事業を行う株式会社に対する特例措置の延長 所得税
国家戦略特区における特別償却又は税額控除の特例措置の延長 法人税
警察庁 犯罪被害給付制度に係る税制上の所要の措置 所得税、国税徴収法
金融庁 NISA の利便性向上等 所得税
上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し 相続税
クロスボーダー投資の活性化に向けた租税条約等の手続きの見直し 所得税、法人税
こども家庭庁 こども・子育て支援加速化プランに基づく制度改正等に伴う税制上の所要の措置 所得税、法人税、消費税、登録免許税、国税徴収法、徴収規定等
児童福祉制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 所得税、相続税、贈与税、消費税、登録免許税、関税
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付け等に係る非課税措置の延長 所得税
既存住宅の耐震・バリアフリー・省エネ・三世代同居・長期優良住宅化リフォームに係る特例措置の拡充及び延長 所得税
デジタル庁 国外転出者のマイナンバーカードの継続利用に伴う本人確認書類に係る所要の措置 所得税等
復興庁 特定復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の税額控除の特例措置の延長 所得税、法人税
特定復興産業集積区域における開発研究用資産の特別償却等の特例措置の延長 所得税、法人税
特定復興産業集積区域における機械及び装置、建物及びその附属設備並びに構築物の特別償却等の特例措置の延長 所得税、法人税
総務省 国立研究開発法人情報通信研究機構が政府のみを出資者とする法人となることに伴う税制上の所要の措置 登録免許税、所得税、印紙税、消費税、法人税
過疎地域における事業用設備等に係る割増償却の延長 所得税、法人税
法務省 公益信託制度改革に伴う所要の措置 法人税、所得税、相続税、贈与税、登録免許税、印紙税、消費税
技能実習制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 所得税、法人税、登録免許税、消費税、印紙税
外務省 外交団免税購入手続きのデジタル化 消費税
次期戦闘機の共同開発を効率的に推進するために日英伊で設立する予定の国際機関による物品の輸入に伴う税制上の所要の措置の新設 消費税
財務省 新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の延長 印紙税
国家公務員共済組合制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 所得税・消費税・酒税・国外送金等調書法・租税条約等実施特例法、国税徴収法
銀行等保有株式取得機構に係る課税の特例措置 法人税
文部科学省 国立大学法人等への個人寄附に係る税額控除の対象事業の拡大 所得税
学校法人への個人寄附に係る税額控除の要件の見直し 所得税
近現代建築等の継承に係る物納の特例の拡充 相続税
厚生労働省 社会医療法人が行う救急医療等確保事業の拡充に伴う税制上の所要の措置 所得税、法人税、消費税
改正感染症法の流行初期医療確保措置による収入の非課税措置の創設等 所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税、印紙税
国民の健康の観点からたばこの消費を抑制することを目的とした、たばこ税の税率引上げ たばこ税
農林水産省 スマート農業技術等を活用した生産性の高い食料供給体制の確立に向けた税制上の所要の措置 所得税・法人税、登録免許税
農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置 登録免許税
経済産業省 印紙税のあり方の検討 印紙税
特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の課税の特例の延長 法人税
大企業向け賃上げ促進税制の拡充及び延長 所得税、法人税
国土交通省 物流総合効率化法の認定計画に基づき取得した倉庫用建物等の事業用資産に係る所要の措置 所得税、法人税
独立行政法人奄美群島振興開発基金に係る非課税措置の延長及び奄美群島の振興開発に係る所要の措置 所得税、法人税、登録免許税、印紙税
小笠原諸島への帰島に伴う課税の特例措置の延長 所得税
環境省 税制全体のグリーン化の推進 環境関連税制等
車体課税のグリーン化 自動車重量税
防衛省 防衛力強化にかかる財源確保のための税制措置
次期戦闘機の共同開発を効率的に推進するために日英伊で設立する予定の国際機関による物品の輸入に伴う税制上の所要の措置の新設 消費税
参照:令和6年度税制改正要望(財務省)

税制改正大綱に記載されている項目

税制改正大綱では、税目ごとの情報が記載されています。税目は以下のようなものです。

<税目>

  • 個人所得税
  • 資産課税
  • 法人課税
  • 消費課税
  • 国際課税
  • 納税環境整備
  • 関税 

個人の生活に関連する情報を確認したいのであれば「個人所得税」を確認し、企業活動に関わる情報を確認したいのであれば「法人課税」を確認すると良いでしょう。
税制改正大綱で関連する項目を確認し、変更点などを把握しておくことで、税金の支払いなどの準備が行えます。

(1)自社に関連性のある分野を確認して、影響を調べる

税制改正大綱は100ページ以上あるため、ダイジェスト版の税制改正大綱の概要を確認して大枠などを掴むことが大切です。

たとえば「令和6年度税制改正大綱」は、企業の賃上げの流れを後押しするための「賃上げ税制」を、3年間延長した上で内容を見直しています。中小企業が従業員全体に対する給与等の支払いを、前年度よりも1.5%以上増加させた場合、増額分の15%を法人税の納税額から控除できる仕組みになっています。

なお、あくまでも大綱になるため、詳細な改正内容については、実際に改正され、施行されなければ見えない部分があるのも事実です。たとえば具体的な税率の計算方法や必要な書類などです。関連性のあるトピックをピックアップしておき、改正後に詳細を確認する流れが良いでしょう。

寄稿
株式会社セミナーインフォ
TheFinance編集部
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