資本市場のデジタル化と投資家の権利保全の両立

資本市場のデジタル化と投資家の権利保全の両立

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三菱UFJフィナンシャル・グループが証券と資金の決済を自動化する「Progmat(プログマ)」の開発に取り組んでいる。Progmat実現後に可能となることや、フラットフォームとしての特徴・展望について三菱UFJ信託銀行 経営企画部 FinTech推進室 調査役の齊藤達哉氏に話を聞いた。

  1. 証券と資金の決済を自動化 セキュアな金融商品取引を提供

証券と資金の決済を自動化 セキュアな金融商品取引を提供

三菱UFJフィナンシャル・グループはセキュリティトークン(ST)の取引基盤「Progmat(プログマ)」の開発を進めている。その中核を担うのは三菱UFJ信託銀行だ。Progmatは、ブロックチェーンを用いて証券と資金の決済を自動化する仕組みを持つ。有価証券の発行段階から流通まで、自動かつ一括で行えるプラットフォームを構築する見通しだ。

三菱UFJ信託銀行 経営企画部 FinTech推進室 調査役の齊藤達哉氏は、「Progmatの特徴は、信託銀行がすべてのネットワークに接続できる『ノード』を持つこと。ブロックチェーン上のデータを原簿情報とし、証券決済の裏側の処理も自動化できる。トークンの移転と権利の移転を一致させ、法的な権利の主張が可能となる」と説明する。

信託銀行では、株式取引における株主名簿管理人や信託受益権の原簿の整備といった管理業務を担っている。今後セキュリティトークンが定着していけば、信託銀行が行っていた管理業務は自動化することになるだろう。「そこで当社は、これまで担ってきた機能をデジタルなかたちでも提供できるよう、先行してプラットフォームの構築を進めていきたいと考えている」(齊藤氏)

Progmatが実現すれば、誰もがシンプルでスピーディ、そしてセキュアに金融商品を取引できるようになり、新たな市場の創出も期待できる。「長期的には、資金調達と投資の柔軟性向上や機会拡張を通じて資金の流れを円滑にすることで、夢や目標に挑戦したい企業や人がこれまで以上に挑戦しやすい社会の創造を目標としている」(齊藤氏)

Progmatはオープンなプラットフォームとして多種多様な外部パートナーと連携をとり、ネットワークを拡大していく。「様々なアレンジャーを介して、新しい資金調達ニーズを持つ多くの方に参加いただく予定だ」(齊藤氏)

三菱UFJフィナンシャル・グループは、顧客との共創プロセスにより、社会的に意味のあるユースケースを円滑に社会実装するための枠組みとして、2019年11月に「ST研究コンソーシアム(SRC)」を設立した。SRCの加盟社数は当初の21社から、34社まで増加中だ(2020年3月末時点)。

齊藤氏は、「SRCでは、お客さまとの対話を通じて、当プラットフォームに求められる機能拡張の方向性や現行制度の課題などを明らかにし、セキュリティトークンに係る技術の検証・実装や、ステークホルダーとの調整を、お客さまと協働して進めていく」と語る。

Progmatは2020年度中にはサービスを開始する予定で、段階的に機能を拡張していくという。「信託銀行が自ら原簿管理者としてブロックチェーン上に参画することで、将来の収益機会を逃すことなく、資本市場のデジタル化・自動運転と投資家の権利保全の両立を図る」(齊藤氏)。STの市場は、今後どのくらいの市場規模になるのか、それは何年後になるのかなど、まだまだ未知数な部分は多い。しかし、金融機関のデジタル化は今や必然な流れであり、各金融機関は先手を打って投資していくことが不可欠と言えるだろう。

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