BNPL(後払いサービス)のグローバル拡大基調と今後の可能性


新型コロナウイルス禍への対応を迫られる中で、デジタル技術の高度活用が急速に広がっている。金融分野においても、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を介した企業間連携によって、非金融事業者のサービスに金融機能を組み込む(エンベッドする)Embedded Finance(エンベデッド金融)が、Fintechの最新形態として大きな注目を浴びている。非金融事業者は自社サービスの付加価値向上、金融事業者はサービス提供チャネル拡大というWin-Winを狙った提携事例が、国内外で既に多数見られる。本稿では、 Embedded Financeと並ぶFintechのもうひとつの注目領域であるBNPLに焦点を当て、今後の可能性について解説する。

目次

地域ごとにおけるBNPLの位置づけの違い

世界中で快進撃を繰り広げるBNPLだが、決済サービス市場における位置づけは地域ごとに大きく異なっている(表2)。

まず欧米諸国では、競合サービスであるクレジットカードの位置づけからして日本と異なっている。国内では手数料のかからない翌月一括払いが主流なのに対し、欧米諸国ではクレジットカードはリボ返済が基本。そのため金利手数料を負担に感じる消費者が多い。そんな環境において、金利手数料だけでなく延滞手数料まで無料化の進むBNPLは、クレジットカードに対する低コストな代替サービスとして人気を集めている。

東南アジアなど新興国においてはそもそも銀行口座保有率も低い水準にあり、銀行口座保有が前提である国際ブランドクレジットカードの普及率も低い。そんな中で登場したBNPLは一般層にも利用可能な唯一の後払いサービスとして支持されている。

欧米や新興国におけるBNPLの訴求点は日本市場にはあてはまらない。国内のクレジットカード利用者の大多数は手数料など払わないためコスト面でBNPLが優れているということはない。また一人が複数枚を持つことが当たり前なほどにクレジットカードは広く普及しているため、後払いというだけでは消費者への訴求力に乏しいはずだ。

興味深いことに、国内のBNPL利用者はクレジットカード利用者でもあり、2つの後払いサービスを併用し場面によって使い分けていることがわかっている。当社の調査ではBNPL利用者の70%は「クレジットカードも利用している」と答えている(図1)。「クレジットカードを持てない人や、クレジットカードを使いたくない人がBNPLに流れている」というイメージは事実とまったく異なっている。 

森岡 剛
寄稿
株式会社インフキュリオン コンサルティング
マネージャ
森岡 剛
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