「大手金融機関事例から学ぶAIを活用したプラットフォームで実現する業務効率化」
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【講演者】
ペガジャパン株式会社
ソリューション コンサルティング マネージャー
笹沼 満 氏
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【講演者】
ペガジャパン株式会社
シニア ソリューション コンサルタント
勝俣 花菜 氏
<Pegaとは>
本社Pegasystemsは1983年創業、今年で40周年を迎える。日本支社であるペガジャパンは、2011年に設立された。インテリジェントオートメーション、カスタマーサービス、1:1(ワンツーワン)カスタマーエンゲージメントの3つの柱において高い費用対効果を得ている。
創業者のアラン・トレフラーが金融機関を対象に事業を始めたことから、弊社の事業は金融業界に強い。現在は保険会社トップ10社のうち7社、グローバルメガバンクのトップ25社のうち18社ほか、ヘルスケア、通信事業者や製造などの業界で採用されている。
「Build for Change」を掲げ、社会情勢の変化に備えるプラットフォームを提供しているのが特徴だ。
<Build for Change-変化に備えるプラットフォーム>
Center-out アプローチ
Pegaの重要なコンセプトは、ビジネスプロセスを中心にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を進める「Center-outTMアプローチ」だ。変化への対応では、チャネルとバックエンドシステム、プロセスの3つに分けて考える必要がある。
チャネルを中心にアプリケーションを開発するとビジネスロジックが各チャネルに埋め込まれることになる。しかし再利用できないことから、チャネルごとにアプリケーション更新が必要となり時間とコストがかかる。しかも顧客はチャネルを移動するたびにバラバラの体験をすることになり、顧客満足度も低下する。バックエンドシステムにおいては、基幹システム、ERPやCRMなどが提供するテクノロジーを中心に開発すると、ビジネスプロセスを合理化できない。
これらを解決するのが、Center-outアプローチだ。すべてのチャネルで利用可能なAIやルールである「ブレーン(頭脳)」から始め「プロセスオートメーション」でエンドツーエンド(以下、E2E)の自動化を実現し「ケースマネジメント」で着実にタスクを完了する。
チャネルには「DX API」で接続するため、変化に対応する際にチャネルごとのコーディングは不要だ。バックエンドシステムには「Live Data」で接続してデータを仮想化する。これによりバックエンドに変化があっても、ビジネスプロセスの変更は不要となる。
Pega Infinity
Center-outアプローチを実現するソリューションが、Pega InfinityTMだ。ローコードプラットフォームとテクノロジーの上に、業界別アプリケーションと業務別ソリューションが提供されている。
金融や保険といった業界別にビジネスモデルやデータモデルを含むアプリケーションのテンプレートを提供しており、必要に応じてローコードで拡張・カスタマイズが可能だ。業務別ソリューションとは、次にご紹介するPegaの3つの柱を指す。
<業務別ソリューション-Pegaの3つの柱>
インテリジェントオートメーション
AIを活用してワークフローを自動化するソリューションだ。PegaプラットフォームやRPA製品が含まれており、一般的なワークフロー製品では扱えない複雑な業務プロセスを得意とする。
多くの企業は自動化を目的として複数のシステムやプラットフォームを活用しているが、その効果は限定的・局地的だ。しかしPegaを導入して統合的に管理すれば、必要に応じて人に作業を割り当てつつE2Eで自動化できる。実際にForresterでも非常に高い評価を受けている。
カスタマーサービス
コンタクトセンターあるいはコールセンター向けのソリューションだ。通常、オペレーターのデスクトップでは複数のアプリケーションを立ち上げており、業務が複雑になりがちだ。
Pegaのデスクトップでは、360°ビューを実現している。電話応対はもちろん、チャットや画面共有セッションも1つの画面で対応可能だ。複数のチャネルでの対応履歴も1つに統合されるほか、Next Best ActionのリコメンドなどAIが業務効率化を支援する。
1:1カスタマーエンゲージメント
AIを活用したNext Best Actionプラットフォームだ。AIを駆使して顧客のプロフィールや行動履歴からリアルタイムに学習し、顧客ごとにパーソナライズした提案が可能になる。会社のビジネス上の都合で提案したい商品や製品も考慮することで、顧客とビジネス双方の価値を最大化できる。
<Pegaの差別化領域>
Wrap & Renew
Wrap & Renewは、Pegaが推奨する導入方法だ。Pegaでは多くのプロトコルに対応したシステム連携コンポーネントを標準で提供し、ビジネスプロセスを中心に据えて既存のフロントとバックエンドを活用する。
フロントとバックエンドを刷新するタイミングをずらすことで、遅延なく着実にDXを推進できるわけだ。
Situational Layer Cake
Pegaだけが独自で持っているのが、再利用を高めるテクノロジー「Situational Layer Cake」だ。これにより、変化に備えることが可能になる。
世界60カ国で保険サービスを提供するAIG様のケースでは、Pegaの上に保険金サービス共通のOne Claimというフレームワークを構築した。その上に、自動車や医療などの商品に依存した差分を共通部品として構築し、さらに各国の差分を実装している。
もし変化によって新たな機能や規制を追加する場合、それぞれのレイヤーの対象部品を更新するだけで、それを参照しているサービスは自動的に新しい機能や規制を利用できる。
では次に、勝俣氏がデモをご紹介する。
<住宅ローン契約デモ>
住宅ローンの申込から契約までのプロセスを、Pegaに載せるとどのように見えるか。銀行の公式サイトに、Pegaで作成したフォームの埋め込みが可能だ。必須入力項目の設定はオプション1つで定義できるほか、テキスト形式以外にも入力方法を選択でき最適なフォームを作成できる。
「申し込む」をクリックすると「事前審査申込」フォームに遷移し、Pegaのケースマネジメントが始まる。Pegaでは定義されたワークフロー(以下、ケースライフサイクル)に従い、各担当者が自分に割り当てられた作業を進めて業務を完遂する。
契約者の信用スコアは、外部の審査機関とのAPI接続を介したシームレスなデータ連携によって算出される。事前審査の承認可否がビジネルロジックによって判断される裏では、連携されたRPAが動いて基幹システムに対して顧客情報を更新する。
端末ごとにレイアウトが自動で最適化されるので、マルチチャネルエクスペリエンスを提供可能だ。左側に固定情報、中央に作業領域、右側にウィジェットが表示されるほか、タスクは個人、グループ、能力などに応じて割り当てが可能で優先度の高いものから表示できる。
すべての審査が完了すると、契約者宛に「DocuSign」を介した電子署名の依頼通知がメールで届く。文書の確認ボタンをクリックすると連携されたDocuSignが自動で起動し、電子署名をして完了ボタンをクリックすれば住宅ローンの契約は完了だ。
開発ポータルの1つ「App Studio」は視認性が非常に高く、業務ユーザーとIT部門が協働しながら開発を進められる。ケースライフサイクルが定義されているのでローコードで新しいステップを追加でき、保存すれば即時、開発画面に反映される。
Pegaなら齟齬を減らし開発後の手戻りを抑制し、真に価値を提供できるアプリケーションを構築可能というわけだ。
では次に、笹沼氏が成功事例をご紹介する。
<事例紹介>
グローバルのAflac様では個人と団体向けの顧客サービスアプリケーションが別々だったため、非効率とトレーニングの課題があった。コンタクトセンター・ソリューションによる単一化とセルフ対応化に取り組み、一般的な問い合わせのチャットボット対応86%、チャットボットの封じ込め率61%を実現したほか、新型コロナ関連の問い合わせ機能を2週間で実装した。
MUFG様では、業務の自動化や複数チャネルへの対応とシステム開発の内製化などに着手した。チャネルごとに段階的に自動化を進め、住宅ローン関連の業務量75%削減と事前審査プロセスの劇的な短縮を実現した。
トヨタファイナンス様では業務のデジタルシフトを推進され、PCI DSSに対応したPegaプラットフォームを活用して開発生産性は約2倍に、開発納期は約2分の1に、インフラ調達は1〜2週間を実現した。
みずほ銀行様ではグローバルコーポレート業務のペーパーレス化や標準化に着手され、業務効率化および業務品質を大きく向上させたほか、ユーザビリティの高いシステムの構築に成功した。Situational Layer Cake技術を駆使したことから、第1フェーズの導入期間はわずか3か月間であった。
<結びに>
6月に「PegaWorld iNspire2023」が4年ぶりにラスベガスで開催される運びとなり、世界中の大企業が参加して80件以上の事例が紹介される。
今回の基調講演を通じて、AIを活用した意思決定とワークフローの自動化を実現するローコードプラットフォームについてご理解いただけたら幸いだ。