INSURANCE FORUM 保険テクノロジーが切り拓く業務改革<アフターレポート>


2018年11月29日(木)、セミナーインフォ主催「INSURANCE FORUM 保険テクノロジーが切り拓く業務改革」が開催された。「働き方改革」への取り組みがはじまって数年、保険会社においてもRPAやAIをはじめとするテクノロジーの活用事例が多く発表されるようになった。その中で直面した新たな課題やテクノロジーの持つさらなる可能性など、次の段階への対応が必要になっている。本フォーラムでは、日本生命、損害保険ジャパン日本興亜による最新取り組み事例をはじめ先進企業各社による国内外の最新事例をご紹介し、保険会社におけるこれからの業務改革のあり方を探った。

  1. ビッグデータおよびAIを活用したコンサルティング力強化の取り組みについて
  2. デジタルプラットフォーム時代の到来 ~保険業界におけるデジタルテクノロジーの活用可能性~
  3. 徹底的に事例に見る、デジタルインシュアテックの活用
  4. 人工知能を活用した業務改革事例のご紹介
  5. 資産運用業務におけるデジタルトランスフォーメーション
  6. 損害保険ジャパン日本興亜における音声認識システムを活用した保険金サービスの品質向上と業務効率化の取組み
目次

ビッグデータおよびAIを活用したコンサルティング力強化の取り組みについて

井上晴雄

基調講演

【講演者】
日本生命保険相互会社
商品開発部 営業開発G 兼 営業教育部 みらいのカタチ教育推進T
課長補佐

井上 晴雄 氏

近年、少子高齢化に伴う介護・医療費の負担増加や公的年金への不安を背景に、生命保険の役割はますます重要になっている。がん保険や介護保険、長寿保険など、従来の死亡保険・貯蓄型保険に留まらずそのニーズは多様化している。日本生命では、あらゆるお客様のご要望に応えるべくチャネル態勢を構築しているが、なかでも中核となるのは5 万名の営業職員によるチャネルだ。1,180 万人、21 万企業に上る個人・法人のお客様とその多様なニーズを支えるためには、営業職員のコンサルティング力を底上げする必要がある。その鍵となるのが社内に蓄積された膨大なビッグデータの活用だ。

実際にビッグデータとAI を活用し、実証実験を行った3 つの取り組みを紹介したい。まず一つ目は「最適なご提案タイミング」に関する取り組みだ。営業職員はそれぞれ1,500名近いお客様情報を管理する端末を所持しているが、今どのお客様にご提案すべきか、その選定は職員それぞれの知見に依存している。このため、能力によるバラツキが起きやすく、話しやすい相手を選んでしまうといった課題が発生している。

これに対し、社内に蓄積されたお客様情報を営業担当によるメモも含めてAI で分析することで、最適なご提案タイミングのお客様を抽出し「AI ターゲット」として担当の営業職員に配信する試みを行った。2018 年4 月より開始したこの取り組みにより、訪問率、ご提案率、成約率はそれぞれ15% 程度上昇した。これまでも本部や営業所の部長から優先提案先の提示は行ってきたが、「AIターゲット」は機械が算出した客観的なデータとして評価され、案件化の確率と併せて打ち出しを行うことで営業担当者の実際の行動につながったものと考える。

二つ目は「最適な活動レコメンド」に関する取り組みだ。日本生命では、お客様情報や関連業務への遷移ボタンを1画面に集約した訪問準備システムを用意している。この画面内に、お客様に対して次に行うべき行動をレコメンドする「アドバイスメッセージ」を表示しているが、約2,000 種類のメッセージは本部職員が手動で登録したものであり、メッセージ内容が属人的な経験値に基づくものである点に課題があった。これに対し、コールセンターにおけるお客様との会話をAIで分析することで、最適なフォローアップのタイミングを導きだし、データに基づくメッセージ内容に更新することに繋がった。

三つ目は「最適な教材・資料探し」だ。日本生命ではお客様向け・営業職員向けに多くの資料やマニュアル類を用意しているが、それらが様々な媒体に散在しており、必要な資料を必要な時に探し出すことが困難な状況となっている。これに対し、営業職員が質問をすると、求める教材の候補をAI が表示するシステムを作成した。簡易分析やクリックログ学習などを重ねることで、1 画面に表示できる上位5 候補の正答率は90% を超えている。現在は一部の教材での実施だが、今後すべての社内教材を対象としたAI による検索システムを本格導入したいと考えている。

これらの取り組みを通じて、メモデータなどの非構造データも含めて統計分析をすることで、新たな視点でお客様を見つけだすことができると認識した一方、入力精度が不十分であるなど、分析するためのデータ整備に課題があるという認識も持った。今後、より意味のあるデータを作っていくために、入力インターフェースの見直しを含め、職員の行動がより詳細なデータとして残るような取り組みを行う必要があると考えている。ひいては、営業職員のGPS データなど、これまで取得してこなかったデータも活用し、提案フェーズやクロージングでも使えるアウトプットを提示していきたい。

デジタルプラットフォーム時代の到来 ~保険業界におけるデジタルテクノロジーの活用可能性~

藤井秀樹

【講演者】
パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社
代表取締役社長

藤井 秀樹 氏

丸山弘毅

【講演者】
株式会社インフキュリオン・グループ
代表取締役

丸山 弘毅 氏

近年、テクノロジーやサービスは凄まじいスピードで変化・進化を続けている。そのトレンドは多岐にわたり、金融・保険業界に大きな影響を及ぼすものだけでも、AI、RPA、Blockchain、Fintech、Paymentなど広範に及んでいる。各企業はこれらの変化に対応し、新たなテクノロジーを取り込みながら競争優位性を確保していくことが求められるが、自社内でのノウハウ構築は、その変化の速さゆえに短期間に陳腐化してしまうリスクが伴う。蓄積するのではなく活かすフェーズに進むためには、あらかじめノウハウが体系化された外部のデジタルプラットフォームを活用することが有効だ。

デジタルプラットフォームを活用するうえで重要な視点は二つ。まず、プラットフォームの先にある、実現したいサービスの姿を描くことだ。競争に打ち勝つためには、サービス提供の仕組みを競うのではなく、提供されるサービスそのものを差別化することが重要である。もう一つはアジャイル開発だ。アジャイル開発とは、あらかじめシステム全体の要件定義を行うウォーターフォール開発と異なり、仕様変更があることを前提に、要件定義・設計・実装・テストのサイクルを小さく継続的に回していく手法である。新たなテクノロジーを素早く実験し、修正していくことで、デジタルプラットフォームの最適な活用方法を見つけることが可能になる。当社でも、保険業界向けに最適な保険商品や営業活動のネクストベストアクションをリコメンドするAIプラットフォームを用意している。

実際にデジタルプラットフォームを活用するうえでは、次の三つの処方箋を押さえておきたい。第一に、アジャイル開発に対応したガバナンス態勢を敷くことだ。アジャイルはトライアンドエラーを繰り返す手法であるため、安心して失敗できる態勢をつくることが重要である。第二に、外部人財の活用だ。その時々で必要とされるスキルは多岐にわたるため、全てを自社の社員でカバーすることは難しい。ニーズに合わせて外部人財を活用することが必要となる。最後は、スタートアップ等の外部企業とのコラボレーションだ。世界中に裾野が広がっているスタートアップと連携することで、新しいビジネスモデルを生み出すことができるだろう。

ここからは、保険分野における電子決済プラットフォーム活用の可能性について紹介したい。デジタル化の進展により金融サービスはユーザー中心にシフトし、多くのFinTechスタートアップが台頭、各金融機関はオープンAPIによるスタートアップとの連携を進めている。電子決済プラットフォームを根底に置いたキャッシュレス社会推進の一環として、2018年11月、証券・保険に対するオープンAPIについても検討が開始されることが公表された。オープンAPIによるスタートアップとの連携は、顧客の利便性の向上や新規顧客層の活性化はもちろんのこと、これまで取得しえなかった行動データの取得などのメリットをもたらす。

例えば保険分野においては、保険料の口座振替をペーパーレスかつリアルタイムで実現することが可能になるであろう。さらに顧客の認証と決済がリバンドルされ、支払いという行為そのものが発生しない社会においては、レジでの会計行為なしに決済を完了することが可能になる。このようなサービスをつなぎ合わせれば、保険料の口座振替から通院時の決済、申請、保険金払込までの一連の流れを、顧客側からのアクションや待ち時間を必要とすることなくシームレスに提供することもできる。各種サービスから取得できる行動データとも組み合わせながら、顧客のあらゆる行動を繋げていくなかに、保険サービスの新たな在り方が見えてくるのだ。

講演企業情報
パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社:http://jp.pactera.com/ja

徹底的に事例に見る、デジタルインシュアテックの活用

本川亨

【講演者】
インフォシス リミテッド
保険事業部 シニアディレクター

本川 亨 氏

インフォシスは、インドを代表する一大IT 企業だ。AI やR&Dに積極投資を行っており、近年のIT トレンドのなかで特にインシュアテックに強みを持っている。日本においてはシステム開発案件が主流であったが、現在ではテクノロジーの活用によりお客様とともに新たな価値を創造することを柱に、ビジネスモデルのトランスフォームを行っている。

デジタルインシュアテックの活用により、アメリカの保険会社ではディスラプティブなサービスが登場している。AI 自動査定で契約プロセスの効率化を実現したLadder 社、ウェアラブル端末を活用し健康促進度をリワードポイントとして保険料低減を行うJohnHancock 社、申込から成約まで90 秒、保険料請求時には3 分での着金を実現したLemonade 社などがその代表例だ。

各社ともテクノロジーを活用しているが、保険会社がデジタルトランスフォーメーションを行うには、一部の領域を高度化するのではなく、ビジネスを俯瞰したうえでプラットフォームを設計することが重要だ。具体的には、高度にデジタル化された顧客体験を実現するデジタルプラットフォーム、顧客の全活動を網羅したオムニチャネル、デジタル技術による業務最適化、会社全体に導入された先進的なアナリティクス、IoT 統合イノベーションの5 つを実現すべきであると考えている。

北米大手の生命保険会社では、それまで分断されていた募集人・代理店向けの複数のシステムをセルフサービスポータルに集約し、すべてタブレット内で利用できるようにした。さらには、セルフサービスポータルを活用し投資性商品へのお客様のニーズを把握するため、お客様の挙動解析をキャプチャし、そこから得られるデータを分析して商品開発へ生データをリアルタイムで提供した。エンタープライズレベルでのデータ活用を実現したと言える。その他、損害請求に伴う事故現地調査にて、事故対応から代車手配業者とのやり取りを一つのモバイルアプリケーションで実現した例など、多岐にわたる取り組みが生まれている。

業務最適化の領域においてはRPA導入後に、更なる自動化対象はないのか、という問いに悩まされているであろう。インフォシスでは、ツールを用いてボトムアップでユーザの挙動解析をし、常に次の自動化対象を見つける仕組みを提案している。更には自動化実現の最終形としてAI を位置づけ、AI を活用したコールセンターにおける対応品質の分析・アドバイスや、Chatbot との併用による顧客のニーズ把握なども最新の取り組みとして行っている。

IoT については、BtoC の領域で実現するフロント部分のみではなく、その後バックエンド部分に求められる対応に備えることが非常に重要だ。特にデータに関しては、爆発的に増加することが想定される。限られたリソースでデータを活用していくには、あらかじめ今後の利用形態を想定することが重要であり、益々プラットフォームの重要性が高まってきており、データを効率的に使う仕組み自体を自動化することが不可欠だ。さらにはAI も活用し、データから気づきを得る仕組みが必要だろう。

このように海外ではさまざまな新しい取り組みが生まれているが、日本市場における喫緊の対応としては、次の3つを押さえておきたい。インシュアテックを最大かつ迅速に活用するため、統合デジタルプラットフォームを整備すること、データの最大活用のためのプラットフォームを整備すること、そしてそれらを支えるための継続的な業務効率化と業務スピード向上のためのスマート環境を整備することだ。インフォシスで用意している製品群では、これらを短期的に実現することが可能である。計画段階から導入支援のコンサルティングを行っており、生損保問わず今後一緒に検討してまいりたい。

講演企業情報
インフォシス リミテッド:http://www.infosys.com/jp

人工知能を活用した業務改革事例のご紹介 (特別ゲスト:第一生命保険株式会社 事務企画部様)

家田佳明

【講演者】
株式会社シナモン
COO

家田 佳明 氏

岩元慎弥

【講演者】
第一生命保険株式会社
事務企画部 課長

岩元 慎弥 氏

シナモンは、日常的に発生する無駄な業務をなくし人が創造性溢れる仕事に集中できる世界を目指し、さまざまなAI プロダクトを展開している。AI 活用による効果が見込める領域は多く、保険業界では総労働時間の43% が自動化可能とされている。シナモンでは、その内の40% を占めるデータ入力業務をサポートすべく、主力プロダクト「Flax Scanner」により非構造データの構造化を実現している。Flax Scannerは、人工知能を活用した文書読み取りエンジンだ。請求書や健康診断書など、これまで人手をかけて構造化してきたばらばらなフォーマットのドキュメントを、人工知能を使って構造化し、データ抽出することができる。PDFやOfficeドキュメント、FAX文書などあらゆるドキュメントに対応しており、一般的なOCR製品では対応できない非定型フォーマットからのデータ抽出が可能だ。

非定型フォーマットの読み取りを可能にするのは、機能別に必要なモジュールを組み合わせ、お客様に合わせてチューニングする「個別チューニングモデル」だ。各モジュールは、顧客ごとに自動化する業務や対象となる文書に違いがあることを想定して開発されており、導入段階でお客様の目的に合わせたチューニングをすることで、お客様の特性に柔軟に対応することが可能になる。例えば、OCRによる認識結果が誤っている際に、その誤りを検知し正しいデータへの補正を行うモジュールでは、お客様独自のデータを正としたデータ補正ができる。複数のモジュールを組み合わせることは、エラーの持ち越しによる精度の下降をもたらすことが一般的だが、シナモンは知識ベースで補正するモデルを組み込むことで、エンドパフォーマンスを高めることに成功した。

高い技術力を持つ多数のAIエンジニアと、技術と業務を結びつけて効果を最大化する業務デザイン力を持つ日本メンバーの存在が、シナモンの最大の強みだ。今後も「技術」と「業務理解」の両輪で、お客様の特性に合った確実な業務効率化を実現していきたい。

ここからは、第一生命におけるテクノロジーを活用した業務プロセス改革について紹介する。第一生命では、2018年にスタートした新中期経営計画「CONNECT2020」において「先端技術活用による利便性・生産性向上」を掲げ、その一環として、RPAやAI-OCRを活用した事務オペレーションの自動化を進めている。

まずRPAについては、2018年4月より本格的な全社展開フェーズに入っており、上半期を終えた時点で260業務の自動化、時間にして5.1万時間の効率化を実現。その他業務品質の向上や事務ミスへの心理的な負担軽減等の効果もあがっている。ロボット作成や保守、スキル育成などはロボティクス管理部門に一元化し、クオリティを均質化するとともに、各所属からRPA アンバサダーを選出してRPA 化案件選定会議を開催することで、現場主導でRPA 化を推進する体制を取っている。選定された案件は1か月という短期リリースを実現している。

2018 年からは、新たにAI-OCR による活字・手書き文字の入力自動化にも取り組んでいる。ここでは高いデータ化精度を実現することが最大のポイントであったが、非定型フォーマットに対するOCRのPOCを複数社製品で実施し、帳票認識・項目特定・文字認識のいずれにおいても高い精度を発揮したFlax Scannerの導入を決定した。現在既に開発に着手しており、2019年以降本格稼働の予定だ。

第一生命では、お客様へのエンドto エンドのデジタルサービスの提供と業務の自動化推進の二つの柱で業務プロセス改革に取り組んでいる。今後もさまざまな会社とCONNECT し、お客様の利便性と社内の生産性を向上していきたい。

講演企業情報
株式会社シナモン:http://cinnamon.is/

資産運用業務におけるデジタルトランスフォーメーション

清岡陽

【講演者】
ニッセイ情報テクノロジー株式会社
資産運用営業本部
本部長

清岡 陽 氏

保険会社の資産運用業務は、投資運用資産の多様化、国際的な規制・制度変更、情報テクノロジーの進展など、様々な外部環境の変化にさらされているが、非競争領域であるがゆえにコスト削減の要請が強く、要員も不足しがちである。一方で業務の多くが手作業での対応となっており、業務効率を飛躍的に向上させるために、業務プロセスの完全な自動化(デジタルトランスフォーメーション)が必要な状況だ。また、システム化に当たっては、ポートフォリオごとの階層構造や負債特性に合わせた資産管理など、保険会社独自の運用スタイルや資産管理方法を踏まえた検討を行う必要がある。

投資運用資産の多様化、市場制度の変更、働き方改革。これらの業務課題に対応するには、業務機能ごとに最適なソリューションを組み合わせつつ、業界標準の仕組みを活用することで効率化を実現することが望ましい。システムを構築するうえでキーワードとなるのは、投資運用資産の追加や制度変更に対する「拡張性/柔軟性の確保」、他社実績のある「外部サービス活用」による効率性確保、業務プロセスの見直しによる「業務自体の簡素化/標準化」の3つだ。これらのキーワードを、資産運用におけるフロント業務、バック業務、ミドル業務に落とし込み、システム構築を行っていく。この時、システム同士を疎結合とすることで、機能修正が発生しても他に影響が波及しないようにすることがポイントだ。

ニッセイ情報テクノロジーでは、これらの業務に対応するソリューション群「NISSAY ITソリューション」を提供している。NISSAY ITソリューションは、保険会社の資産運用業務に特化したソリューション群として、フロント・バック・ミドル業務をトータルにサポートし、全体最適を実現している。制度変更や業務要件の変化など、業界共通課題への対応や最新技術の継続的なキャッチアップを行い、最新機能を提供し続けている点、システムの企画・開発から運用・保守にいたるまで選任要員がサポートを行っている点も大きな強みだ。

具体的なソリューションとして、バック業務においては、有価証券管理ソリューション「NISSAY IT-XNETバック/IFRS」を提供している。基本的な有価証券売買機能はもちろんのこと、CV 算出機能や会計管理機能、決算機能など、保険会社特有の機能を標準装備。カスタマイズ不要で利用でき、新規投資運用商品への早期対応や業界共通課題への効率的な対応を実現できる。フロント業務においては、有価証券運用ソリューション「NISSAY IT-XNETフロント」を提供している。有価証券のオーダーマネジメントプロセスを一貫して支援し、部門間連携の完全自動化を実現。各プロセスの可視化やチェック処理のヒューマンエラー抑止にも寄与している。その他、STPソリューションでは、取引先との情報授受におけるメッセージ送受信を自動化。決済期間の短期化や決済事務の完全デジタル化を実現している。また、資金繰りシステムでは、円だけでなくドル・ユーロなど複数通貨の資金繰りに対応。決済の都度円転換する必要がなくなり、為替コストの圧縮を実現している。ミドル業務においては、資産運用情報分析ソリューションを提供。資産/部門横断的な統合データ管理を実現し、決算・ディスクローズ業務の大幅な効率化や部門間の情報連携業務プロセスの変革につながっている。

以上のように、当社では保険会社の資産運用業務におけるデジタルトランスフォーメーション実現のため、各社が共有・共用できるソリューションを目指してラインナップの拡張・機能向上を進めている。資産運用業務においてシステム開発、保守体制に課題を感じている方はぜひお声がけいただきたい。

講演企業情報
ニッセイ情報テクノロジー株式会社:http://www.nissay-it.co.jp

損害保険ジャパン日本興亜における音声認識システムを活用した保険金サービスの品質向上と業務効率化の取組み

阿部智

特別講演

【講演者】
損害保険ジャパン日本興亜株式会社
保険金サービス企画部 改革推進G
特命課長

阿部 智 氏

保険金サービス部門では、お客様との契約内容に基づいて事故や被害に遭われたお客様へ保険金支払業務を行っている。業務内容は電話対応が中心であるが、事故受付から損害調査、相談・交渉業務、保険金支払にいたるまで、お客様と複数回のやりとりを行いながら最終的な解決まで導く役割を担っており、お客様の窓口となってサービスの評価を受ける立場である。このため、高品質なサービスを提供すること、保険金支払いに関する高い専門性を発揮することが求められる。

このような状況を背景に、保険金サービス部門においては3つの課題を認識している。お客様からの評価に直結する応対品質向上とそのための品質チェック高度化、通話内容を全量的に記録に残すことで多くの業務時間を割いているアフターコールワークの効率化、品質・効率の圧倒的な向上を目指すためのAI開発によるデータ利活用だ。これらの課題を解決するため、当社では音声認識システムの導入を行った。

音声認識システムは、以下6つの機能を備えている。①通話内容のテキスト化、② 通話録音・ピンポイント再生、③キーワード検索、④感情分析、⑤特定ワード検知、⑥リアルタイムモニタリングだ。品質チェックの高度化には、まず通話内容のテキスト化機能を活用した気づきと改善のPDCAサイクルを回すことが有効だ。テキスト化により自分の発話内容が可視化されることで、自身の口癖や発声の明瞭さを客観的に確認でき、品質改善につなげることができる。

また、キーワード分析機能を組み合わせれば、例えば「ありがとう」という言葉が含まれるお客様満足度の高い通話を抽出し、応対スキルの高い職員の話法を学ぶことができる。感情分析機能では、お客様が「怒っている」通話を抽出することで、必要に応じて管理者が声掛け・フォローを行いトラブルの未然防止が可能になる。

さらにリアルタイムモニタリング機能では、複数の担当者の通話内容を同時に確認、特定ワードの検出や長時間応対のアラートを出すことで、モニタリング対象とすべき応対を管理者が見逃さずにフォローすることができる。通話中にチャットツールを用いたアドバイスを行うこともでき、通話内で対応を完結させることで対応期間の短縮にもつながる。

アフターコールワークの効率化においては、担当者が残している記録を、①削減・簡素化できる記録、②詳細な経過の記録、③今後の対応に必要な記録の3つに分類。これまで全量的に残してきた記録のうち、①を削減、②を音声認識システムのテキスト化機能に代替することで業務効率化を図った。今後の対応に必要なお客様との約束や要望、こちらからお客様にお願いした内容などのみを記録に残せばよい。

AI開発によるデータ利活用は、音声認識システムのネクストステップとして中長期的な目線で取り組み、圧倒的な品質向上と新たなビジネスモデルの開発につなげていきたい。具体的には5つのAI・システムを構想している。通話内容の自動要約によるアフターコールワークゼロの実現、FAQシステムによる担当者の知識のリアルタイム支援、お客様の心情・感情を汲み取り応対そのものを支援する応対支援ガイド、お客様の属性情報や事故形態、契約情報などをベースとしたネクストベストアクションの提示、お客様情報に担当者分析を組み合わせることで相性の良い担当者をアサインする最適担当者自動マッチングだ。

音声認識システムはまだ導入したばかりであり、課題も多く残されているが、全国の保険サービス担当者による通話データの蓄積は当社の強みである。足元課題を着実に解決しつつ、AIを活用した新たなビジネスモデルを開発していきたいと考えている。

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