1. HOME
  2. イベントレポート
  3. MANAGEMENT FORUM 経理・財務業務の最前線とテクノロジー活用<アフターレポート>

MANAGEMENT FORUM 経理・財務業務の最前線とテクノロジー活用<アフターレポート>

COVID‐19の感染拡大により、世界的な景気後退や経営業績への影響、消費抑制などの懸念材料が押し寄せる中、経理・財務部門に関しても、ニューノーマルな時代に対応し、企業経営を支えていくことが求められている。本フォーラムでは、マツモトキヨシホールディングスの西田 浩 氏に「経営支援に資する財務・経理データの活用方法」について、流創株式会社の前田 康二郎 氏に「経理財務スキル人材の可能性」についてご講演をいただいた。その他先進企業各社のご講演を通じて最新の事例や実務に役立つ情報をお届けした。

MANAGEMENT FORUM 経理・財務業務の最前線とテクノロジー活用<アフターレポート>
  1. マツモトキヨシにみる、
    経営支援に資する財務・経理データの活用
    ~これからの財務・経理部門のあり方~
  2. 財務・経理業務の完全デジタル化へ向けたステップ
    ~テクノロジーの活用~
  3. 事例に学ぶ!!
    先進の経営管理プラットフォームの活用方法
  4. ニューノーマルで活躍の場が広がる
    経理財務スキル人材の可能性

マツモトキヨシにみる、経営支援に資する財務・経理データの活用
~これからの財務・経理部門のあり方~

西田 浩 氏
基調講演
【講演者】
株式会社マツモトキヨシホールディングス
管理本部
財務経理部長
西田 浩 氏

マツモトキヨシは、1932年に創業し、2007年にホールディングカンパニーを設立した。国内子会社に関する財務・経理業務の全てを、ホールディングス財務経理部が担っている。売上高は業界5位だが、売上・利益ともに前期末の決算では過去最高を更新した。また、2021年10月に業界7位の株式会社ココカラファインと経営統合し、売上高約1兆円の企業連合が実現する予定だ。

財務・経理部門の役割は、かつては「事務方」「金庫番」であったが、これらは今後デジタル化で消滅するという危機感が必要だ。財務・経理部門が生き残るためには、経営を支援する存在にならなければならない。そのためには、経営課題の抽出と戦略立案のための経営分析が必要だ。会計や税法といった専門知識はもちろん、その専門知識を本当の意味で活かすために、業界環境も含め自社の事業理解を深める必要がある。

これからの財務・経理部門に求められる力を3つ挙げる。第一に、数字を読み込み分析する力(分析力)。第二に、現場から学ぶ力(現場力)。第三に、何を求めているか考える力(マーケティング力)。例えば、業績の情報であっても、社長と店長では知りたい情報は異なる。それぞれのニーズに合った情報を適切に伝えることが重要である。

財務・経理部門、特に責任者の役割は、最後の門番だ。投資案件などが自社の戦略に合っているのか、本当に実行して良いのかを確認・検証し、最終的なジャッジを行う立場にある。その一方で、事業への寄り添い方も重要ある。新規事業や海外事業など、社内的にまだマイノリティな事業などは特に、寄り添ってしっかりと支援する必要がある。

データは生き物であり、現場で起きていることを映す鏡だ。当社では、毎朝前日の売上データが配信されている。売上のほか、粗利益、購入客数、客単価といったデータが配信される。日々のデータから、異常値を発見し、現場の状況を確認することが必要だ。天候、気象、競合などの動向・様子から、売上の変調を読み取っていく。こうしたデータ分析は、営業部門はもちろん、財務・経理部門でも月次の分析における理解促進・効率化に役立っている。

営業面のデータ活用施策を紹介する。当社は、会員及び商品のデータを自社のプラットフォームに蓄積している。顧客接点数は延べ7,100万を超える。顧客データは、購入時点だけでなく、前後の行動も含めて分析。また、年齢など単純な属性情報ではなく、「新しいものに敏感なママ」といった価値観の軸で顧客を捉えている。こうしたデータを、自社のマーケティング、プライベートブランド(PB)開発、メーカーブランドのマーケティングに活用している。

我々財務・経理部門が行うべきことは、管理会計データの充実だ。事業を理解し、数字で明確に根拠を示す。そして、数字の理由を明確に語れなければならない。当社の管理帳票では、財務会計と管理会計の営業利益を一致させている。データは、「店舗/事業部/事業会社」「既存店/新店」「商品群」などといった軸で分類。この他、人事データも取り込み、総人時やパート・アルバイト比率などの帳票を作成・配信している。先述した営業面のデータと、管理会計データを掛け合わせて、KPI管理による経営改善につなげている。

今後の財務・経理部門は、経営意思決定を支援し、事業に積極的に関与することが求められる。加えて、BCPやコンティンジェンシープランの策定などのリスク管理も重要な役割となろう。財務・経理部門が消滅せず、逆に重宝されるためには、まず責任者が意識を変え、組織を、人を変えていかなければならない。

現在、株式会社ココカラファインとの経営統合に向け、両社で財務・経理業務の内容や会計方針などを擦り合わせているところだ。統合した会社で素晴らしい財務・経理部門を作れるよう尽力していく。

財務・経理業務の完全デジタル化へ向けたステップ

~テクノロジーの活用~

鷲尾 武 氏
【講演者】
株式会社セゾン情報システムズ
経営推進部
財務経理チーム長
鷲尾 武 氏

財務経理部門を取り巻く様々な環境変化の中で、特に重要なのは人材の問題だ。経理業務は汎用性が高く、比較的転職しやすいため、人材の定着が容易ではない。また、新しく採用した人材には、会社ごとの経理や会計のルールを引き継ぎ、経理スキルを育成しなければならない。更に、働き方改革により残業時間の抑制も求められている。

こうした状況の中で、いかに財務経理部門を運営していくか。私のチームでは、2019年に「モダンファイナンス組織への変革」を目標に掲げた。「桁違いの効率化」と「ペーパーレス化の完全実施・どこでも働ける環境」を実現し、浮いたリソースを企業価値向上へ振り向けていく。真の戦略組織を目指す「モダンファイナンスプロジェクト」として社内で発信・始動した。

変革の大きな契機は、会社全体で2017年に実施したオフィス移転とフリーアドレス・テレワークの導入だ。部門の例外なくフリーアドレスになり、紙の書類を収納するキャビネットも半分になった。社員が離れた場所で業務を行うようになり、細かいコミュニケーションが難しくなった。そこで、2019年に変革に着手。軌道に乗ったタイミングで2020年に新型コロナウイルス感染症が発生し、緊急事態宣言下で完全在宅決算を成し遂げた。

モダンファイナンスの実現に必要な要素は、「ペーパーレス化」「テクノロジーの整備」「在宅勤務に向けた業務設計」の3つだ。変革のステップに沿って説明する。

まず、従前の紙ベース・人手による処理を、電子データによる自動処理に変更。申請者がシステムにデータを直接入力することで、即座に「ペーパーレス化」が実現する。

自動処理に向けた「テクノロジーの整備」では、各分野に特化したシステムを導入。例えば、決算支援システムには「BlackLine」、財務管理システムには「Kyriba」を活用している。

その後、標準化されたシステムに合わせて「在宅勤務に向けた業務の設計」を実施した。

なお、システムの導入に当たってはデータの連携も重要だ。当社では、自社サービスの「DataSpider Servista」を活用して各システムをつないでいる。

決算支援システムのBlackLineは、当社にとって未知の新しいシステムだったが、まず導入してみた。PDCAではなくDCAP(決算業務→決算評価会→決算タスク見直し→スケジューリング・業務分担)で実行。すぐにペーパーレス化の効果が表れ、変革への社員のモチベーションも高まり、ポジティブサイクルが回り始めた。2019年9月に取組を始め、2019年度の第3四半期決算時にはペーパーレス化と自動承認を実現した。その後の期末決算時には、完全リモートを実現し、監査もリモートで対応。2020年度の第1四半期決算時には、各システムのデータを連携した。

完全デジタル化と在宅決算により得られた効果は、大きく4つある。

第一に、決算タスクの可視化。進捗状況がダッシュボードで可視化されるとともに、体系立ったタスク管理、目的や手続きの言語化が実現した。

第二に、電子承認による統制強化。ペーパーレス化、承認フローの可視化が実現。また、作業のログが残るためデータの信頼性が向上した。

第三に、データ連携による自動マッチング。膨大な作業の完全自動化により、効率化が実現し、信頼性が向上した。 第四に、情報の一元管理。決算支援システム(BlackLine)の中でやり取りが完結し、過去データの参照が容易になった。

モダンファイナンス実現による定量効果として、タスク管理や勘定照合といった経理業務の年間約30%削減を目標にしている。その先に目指すのは、業務を削減した分のリソースを、未来志向型の業務にシフトすることだ。過去のデータを真摯に分析し、未来を予測するために有用な情報を得ることで、経理部門の価値を示していく。

講演企業情報
株式会社セゾン情報システムズ:https://home.saison.co.jp/

事例に学ぶ!!
先進の経営管理プラットフォームの活用方法

山本 卓 氏
【講演者】
Tagetik Japan株式会社
シニアディレクター
山本 卓 氏

CCH Tagetikは、イタリアにある経営管理ソリューションカンパニーである。提供する経営管理プラットフォーム「CCH Tagetik」の導入実績は、全世界で1,300超の顧客、75,000超のユーザーに上る。

CPMには様々な製品があるが、特色が異なる。「連結管理」「総合予算」「個別予算」「分析」といった領域に分けられる中、CCH Tagetikはワンプラットフォームで全体をカバーする唯一の製品だ。日本企業独特の細かい管理にも対応可能で、柔軟性に富む。モジュール構成は、予算管理や連結経営管理などを行う「ファイナンシャルワークスペース」と、販売・売上分析や損益管理などを行う「アナリティカルワークスペース」の二階層になっている。両ワークスペースのデータはシームレスに連携でき、グローバル・複数事業にまたがるグループ全体の経営管理が可能だ。予算・連結・開示までをカバーし、データウェアハウスとの融合も実現。CCH TagetikはそれをUnified Management Platform(統合された経営管理プラットフォーム)と呼んでいる。

CCH Tagetikの強みの一つは、会計機能の豊富さである。まず、財務諸表の整合性を保持する機能。また、勘定科目の属性設定機能により、CFの生成や投資回収管理への発展が可能。KPIの算出も容易だ。更に、データの信頼性を維持するためのガバナンス機能も充実。この他にも、ERPや他システムとの優れた連携性・連動性や、クラウドとオンプレミスの両方への対応など多くの機能を有する。

CCH Tagetikの導入事例を3つ紹介する。

まず、株式会社アドウェイズの事例。同社では、勘定科目より詳細なレベル、かつ、負担部署と予算統括部署とのマトリックスにより、本体及び国内外グループ会社の予算を管理していた。全てExcelで行い、変化の激しいビジネスに管理会計が追いついていなかった。そこで、予算管理サイクルの短縮、管理単位の詳細化、管理会計システムの新規構築を実施。お客様の2名も含めてわずか5名の小規模な体制の下、約3か月でリリースした。この結果、集計期間及び計画サイクルの大幅な短縮と、見える化が実現。計画の制度が大幅に向上した。

次に、日本サニパック株式会社の事例。ポリ袋の製造・販売を行う同社では、伊藤忠グループに入って以降、損益管理だけでなく設備投資計画や資金計画も重要になった。これに伴い、販売・生産・在庫計画、外貨、原料相場の管理も複雑になったが、管理はExcel頼みの状態だった。また、PL計画から資金計画への整合にも課題があった。このため、確実に整合が取れるよう、計画策定方法の見直しを実施。併せて、非財務・子会社・過去情報を同一システムで管理できるよう、情報を統合化。この結果、作業工数が大幅に削減され、分析などの本来業務に注力できるようになった。

続いて、ドイツの自動車メーカーであるDaimler社の事例。同社が戦略的プランニングプロセスで必要としたものは、①詳細かつ統合的な管理、②機能修正への柔軟な対応、③強力なシナリオ分析とシミュレーションだ。そこで、新しいシステムをCCH Tagetikで開発することになった。自動車業界に特徴的な製品別ライフサイクルの損益管理では、様々なシステムから様々な形式のデータを収集し、合理的な基準でコストを製品に負担させる必要がある。そのために、「大量データ対応」「ETLを標準装備」「様々な計算処理機能」といったCCH Tagetikの特性を自動車関連の様々な企業で活用いただいている。

最後に、これからの経営管理システムの方向性を2つにまとめる。まず、拡張性を活かした「経営管理のプラットフォーム」であること。そして、高い柔軟性を活かした「現場のための経営管理ツール」であることだ。企業の皆様には、経営管理インフラを整備し、効率化、可視化、そしてスピードアップを推進していくことが重要である。

講演企業情報
Tagetik Japan株式会社:https://www.tagetik.com/jp

ニューノーマルで活躍の場が広がる経理財務スキル人材の可能性

前田 康二郎 氏
特別講演
【講演者】
流創株式会社
代表取締役
フリーランステレワーカー・ビジネス書作家
前田 康二郎 氏

2011年に一人会社として流創株式会社を設立。それ以前の約15年間は企業に所属し、経理や株式上場(IPO)など様々な経験を蓄積。独立後は、経理業務を外注で請けながら、企業の顧問や社外役員、ビジネス書の執筆などを行っている。

これまで、経理のテレワーク化を阻害してきた要因は、「思い込み」だ。経理は、以前からテレワークが可能な職種である。しかし、多くの企業では「経理は毎日フルタイムで、全員が会社の自席に着座するべき」という考え方が根強くあった。今般の新型コロナウイルスによって、その考え方に変化が訪れている。売上が減少する中でコストを削減するため、デジタル化、テレワーク化、外注活用の動きが出てきている。

デジタル化により生まれる「空き時間」や「待ち時間」を、いかに有効活用するか。例えば、資格取得の勉強(自己啓発)、他社の経理業務への従事(副業)、他部署業務の請負(社内副業)、起業(兼業)などがある。多様な経験は、本業である経理業務にフィードバックされ、新たな発想にも繋がる。機会があれば、本業の枠を越えて経験の幅を広げることを推奨する。

経理のスキルは、通常の業務以外でどのように活かせるか。

まず、社内では、新規事業への積極的関与が挙げられる。売上・利益に関与することで、業務評価に繋がるインセンティブ要素も加わるだろう。コロナ禍で既存事業がダメージを受けている企業が売上を伸ばすためには、新規事業の開発が主となる。数字の抜けや甘さを出さないために、経理部が最初から参画し、定期的に経営陣に提案することが望ましい。

他方、社外でのニーズはどうか。まず、純粋な作業代行。そして、経費削減、資金繰り、業務改善などのアドバイス。更に、経営者の提案・提言も考えられる。経理は、比較的業界を横断して仕事がしやすい分野だ。ただし、社外で存分に活躍するためには、人脈・営業力・交渉力・コミュニケーション力といった「知識以外のもの」も必要となる。

これからの経理は、従来の経理処理にプラスアルファで何ができるかが重要だ。特に求められるだろう能力を2つ挙げる。

一つ目は、文章力。チャットツールの活用が広がり、文章を書く機会が増している。特に経理は難しい文章になりがちだ。1回の読み流しで全員が理解でき、かつ、不快でない文章作成能力が求められる。

二つ目は、共感力。経営者の考えに共感する力だ。常に売上・利益を考えている経営者に寄り添うに当たり、数字を扱う経理は他部署より有利だ。ただし、経理目線だけでは足りない。経営者の目線に立って提案・提言する必要がある。そのためには、ビジネス書を読んで視座を高めること、新しいものを試す好奇心、情報収集力が求められる。

最後に、テレワーク活用のポイントを紹介したい。対面とはコミュニケーションの状況が異なる中、特にマネジメントする立場から見たコツを6つ挙げる。

第一に、「上から下への確認」ではなく「下から上への報告」スタイルとすること。

第二に、信頼できない人材を無理に雇用するより、信頼できるフリーランスを活用すること。作業単価や社会保険料などのコスト削減にも寄与する。

第三に、スキルの浅い社員には、Web上で同席すること。

第四に、指導・注意をする場合は、上司目線ではなく同僚目線で行うこと。対面より柔らかい伝え方が望ましい。

第五に、マイノリティの意見を見落とさないこと。

第六に、提出物の期限を厳守すること。これが何より重要だ。全員が100%完遂しなければ、生産性の高いテレワークは不可能である。今後、デジタル化・テレワーク化が進めば進むほど、期限厳守、自立・自律の能力が重要になっていくだろう。

新着の記事
講義へのICT活用を積極化する中央大学は、どのようにしてデータマネジメントを実践しているのか?

新型コロナウイルス感染症は、世の中に大きな影響与えているが教育現場への影響は計り知れない。そんな中、中央大学ではICTの活用を積極的に取り組んでいる大学の一つだ。本稿では、中央大学のICT教育におけるデータマネジメントのICTサービスを安定的に提供しているのか事例を紹介する。

異業種の金融参入・連携における成功実現の要諦

本連載の第1回では、国内市場における異業種連携の最新動向と、金融サービスの位置付け、連携の実現に向けて初期構想段階に検討すべきポイントなどについて解説した。第2回ではこれを踏まえ、具体的事例として日本郵船の電子通貨事業MarCoPayのCEO 藤岡敏晃様のお話を紹介した。最終回となる今回は、これらを踏まえて準備・実行フェーズにおける課題・ポイント、戦略・システム面での成功の要諦について解説していく。

異業種による金融参入事例〜MARCOPAYの実現に向けた日本郵船の取り組み

本連載の第1回では、国内市場における異業種連携の最新動向と、金融サービスの位置付け、連携の実現に向けて初期構想段階に検討すべきポイントなどについて解説した。第2回ではこれを踏まえ、具体的事例として日本郵船の電子通貨事業MarCoPayのCEO 藤岡敏晃様のお話を紹介していく。

機械学習モデルにおけるカテゴリ変数の数値化手法4選~扱い方から注意点

今回は「機械学習モデル」を使う上でポイントとなるカテゴリ変数の数値化手法に焦点を当て、代表的な4つの数値変換手法、①One hot Encoding、②Label Encoding、③Count Encoding、⑤Target Encodingについて解説するとともに、カテゴリ変数を扱う上での注意点についても解説する。