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事例で学ぶIoT – 国内外のIoT先進事例とIoTの本質<前編>

IoTは第4次産業革命の引き金として、製造業やサービス業、社会インフラなどを含むあらゆる産業分野に変革をもたらしつつある。一方で、その進化方向性や本質的価値が見通しにくいのも事実だ。本稿では全2回連載の第1回目として、各産業分野でのIoT活用の展望を整理した上で、その本質的価値と活用のポイントに迫る。

事例で学ぶIoT – 国内外のIoT先進事例とIoTの本質<前編>
  1. IoTとは? IoTの定義
  2. ドイツ・アメリカなどの国家を挙げたIoT推進
  3. 製造業におけるIoT活用事例と展望
  4. 社会インフラ分野におけるIoT活用事例と展望
  5. サービス業におけるIoT活用事例と展望
  6. IoTの本質と活用のポイント
  7. まとめ

IoTとは? IoTの定義

IoTは一般的には「センサをあらゆる場所に配置することで、物理的なモノの世界とインターネットを結びつけること」と定義される。これは製造業を始め、様々な産業分野を変えていく可能性を秘めており、蒸気機関、電力利用、電子・自動化に次ぐ、第4次産業革命として期待されはじめている。

▼関連記事 オープンイノベーションとは?IoT時代の成功事例と変革<後編> IoT(モノのインターネット)の課題とトークナイゼーション

ドイツ・アメリカなどの国家を挙げたIoT推進

ドイツ・アメリカなどの国家を挙げたIoT推進

IoT活用による第4次産業革命時代を見据え、欧米では先行的にIoT関連のイニシアティブを推し進めてきた。

代表的な事例であるドイツの「Industrie4.0」は、バリューチェーン全体としての効率化に向けた工場のネットワーク化とそのグローバル標準化を進めており、官民一体で自国に有利な製造アーキテクチャへの転換を目論んでいる。

米国の「Industrial Internet」はGEなど民間企業が中心となって、いわゆる製造業のサービス化と呼ばれるような大手製造業のビジネスモデル革新を目論んでいる。

他に、中国でも「中国製造2025計画(メイド・イン・チャイナ2025)」などのIoT推進施策を展開する中、日本においてもIoT推進ラボの設立など政府を巻き込んでの動きが加速しつつある。

ドイツ・アメリカなどの国家を挙げたIoT推進

製造業におけるIoT活用事例と展望

製造業におけるIoT活用事例と展望

工場内の活用からサプライチェーンを繋ぐイノベーションツールへ

これまでの製造業における典型的なIoT導入事例は、工場内におけるダウンタイム減、工程のムダ減、不良品減など、分かり易い/見えやすい改善が中心であった。例えば工作機械にセンサ機能を搭載することで、停止などのトラブルをいち早く検知し、ダウンタイムを削減するといった事例が代表的だ。

一方で、近年におけるIoT活用は工場内での活用から、「工場を超えた活用」へと広がりつつある。

小松製作所の事例

例えば、小松製作所は自社製品(建設機械)を遠隔監視するだけではなく、そのデータを生産計画業務や品質管理業務まで結節し、ビジネスプロセス全体としての強化に取り組んでいる。これによって世の中の建機の稼働状況を見ながら自社の生産計画を立てることが可能となる。

ヤンマーの事例

ヤンマーは、農機の故障予知を先読みし、交換部品をあらかじめ生産・在庫補充することで、交換タイミングの最適化を実現している。これによって交換部品の販売につなげるとともに、顧客にとっては在庫切れによる農作業の遅延リスクを回避できる。

このように、IoTの活用は工場内での活用からサプライチェーンをつなぐ活用へと発展しつつある。

社会インフラ分野におけるIoT活用事例と展望

社会インフラ分野におけるIoT活用事例と展望

インフラ間で進む連携化と既存インフラの破壊的革新

これまでの社会インフラ分野における典型的なIoT導入事例は、電力分野における無線検針のように、特定のインフラに関する業務の効率化が中心であった。一方で近年はインフラ間を統合的に制御することを目指した動きが加速している。

Deutsche Bahn(ドイツ鉄道)の事例

例えばDeutsche Bahn(ドイツ鉄道)は長期ビジョンで自らをTrain operatorから「エンド・ツー・エンドをつなぐMobility manager」へと再定義し、鉄道だけではなくレンタカーなどの他の交通モードとの連携を仕掛け、交通分野の胴元へと転換しつつある。

Siemensの事例

SiemensはVPP(バーチャル・パワープラント:仮想発電所)と称する新たなエネルギーインフラの実証を進めており、これは特定地域内の複数の分散型発電機器の統合制御や、域内の電力消費や蓄電機器の制御を通じて、地域全体としてのエネルギーの最適管理を目指したものだ。

Uberの事例

さらにIoTは既存インフラの制度そのものを破壊しつつある。代表例としては自動車の配車サービスを展開するUberだ。同社は輸送手段のオンデマンドサービスという基本戦略を持ち、サービスの提供側と需要側を仲介するプラットフォームを拡大している。タクシーなどの既存業界や既存規制と衝突はしているものの、交通のあり方を着実に変えつつある。

このようにIoTはインフラ間の連携を促し、また、新たなインフラのあり方も提示しつつある。

サービス業におけるIoT活用事例と展望

サービス業におけるIoT活用事例と展望

生産性革命に向けた導入の萌芽

サービス業では、これまでは製造業や社会インフラほどIoT活用は進んでこなかったが、近年その活用が急速に広がりつつある。

パルコ・シティの事例

例えば、小売分野ではパルコ・シティはビーコン(屋内測位デバイス)のデータを活用することで人流を解析し、店内改装に活かそうとする取り組みを始めている。

がんこフードサービスの事例

居酒屋を展開するがんこフードサービスでは従業員に装着したセンサ情報とPOS/クレーム情報を相関分析することで、業務低下の兆候となる行動パターンを抽出し、オペレーションの効率化に取り組んでいる。

近畿日本ツーリストの事例

他にも、観光分野では近畿日本ツーリストはスマートグラスに内蔵されたGPS機能とAR(拡張現実)を使用し、現存しない歴史的建造物を再現する取り組みを始めている。

このようにIoTはリアルとバーチャルとを連携することで、サービス産業に新たな価値をもたらしつつある。

IoTの本質と活用のポイント

IoTの本質と活用のポイント

IoTの本質「スケールの拡大と知の進化による社会の最適化」

ここまでに見てきたような近年のIoT動向を踏まえると、IoTの本質的価値は「スケールの拡大と知の進化による社会の最適化」と捉えることができる。

最初は特定業務の可視化であったものが、工場外との連携やインフラ間の連携のようにより広い産業バリューチェーンを連携することで、全体としての最適化を実現していく。このようにスケールを広げれば広げるほど、最適化すべき余地も大きくなり、最適化の価値は高まる。

また、取得できるデータが広がることで、提供できる価値も単なる可視化から判断や自動制御などへと進化することができる。

このようなスケールの拡大と知の進化を両輪として、また、正のサイクルとして、IoTは今後も社会の様々な分野を統合的に最適化していくことが想像され、それこそが第4次産業革命の真髄だと認識すべきであろう。

IoTの本質「スケールの拡大と知の進化による社会の最適化」

IoT活用のポイント「既存の業務や産業の枠からの脱却」

一方で、その革命的な可能性を秘めることの裏返しとして、IoTを本格的に導入して事業や産業を変えていく上ではいくつかのチャレンジが存在する。

一つ目の壁は工場に閉じた活用からサプライチェーンを横断しての活用にシフトする際に直面する「部門の壁」だ。特に日系企業は現場力の高さゆえに、この壁に直面しがちであり、部門間でのデータの共有などが進みにくい。

もう一つの壁は特定産業やインフラに閉じた活用から産業やインフラを超えた活用にシフトする際に直面する「産業の壁」だ。特に日本は産業構造や規制制度が硬直的であり、既成の枠の中で物事を考えてしまいがちだ。

IoT活用のポイント「既存の業務や産業の枠からの脱却」

まとめ

IoTによる変革を推し進めるためには、「既存の枠を超えた構想力」と「既存の壁を打破する実行力」が問われる。また、その実行にあたっては特定一社ではなく複数社による連携が有効となり、その突破口として改めてオープンイノベーションの重要性が高まっている。

そこで、IoT連載の後編では、IoT時代におけるオープンイノベーションのあり方について提示する。

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三ツ谷 翔太 氏 【 寄稿 】
アーサー・D・リトル・
ジャパン株式会社
プリンシパル

三ツ谷 翔太 氏

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