【連載】金融×新潮流① メタバース社会がもたらす金融の可能性

【連載】金融×新潮流① メタバース社会がもたらす金融の可能性

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昨今、メタバース市場の拡大が注目をされているが、本稿では、メタバースとは何かを解説したうえで、金融業界、サービスへの可能性を展望する。

  1. 本日のポイント
  2. メタバースとは
  3. メタバースがもたらす機会
  4. 金融業界・サービスへの影響

本日のポイント

  • 脚光を浴びるメタバースは、オンライン上の3次元仮想空間で人々が活動する世界であり、主に3つの技術的な要素(VR、NFT、3DCG)が市場形成を促進している
  • メタバース世界の到来は、VRの没入体験を通じた新たな接点・コミュニケーションの確立、NFTによるデジタル資産の管理・売買、3DCGによる実証実験・シミュレーションの多様化・簡便化の機会をもたらす
  • 銀行、証券、保険を筆頭に、サービス提供モデルの変容や、新たな事業機会が創造される可能性を秘めているため、様子見ではなく、「金融」の側面から市場形成・拡大を促す率先した取り組みが期待される

メタバースとは

2021年10月、Facebookが社名を「Meta」に変更し、同年だけでも100億ドルを投資するというニュースが世界を驚かせたことは記憶に新しく、メタバースという言葉が広く知れ渡る大きなきっかけとなった。メタバースは、「メタ:超越する」と、「ユニバース:世界」を組み合わせた造語である。メタバースの定義は諸説あるが、本稿では、「オンライン上の3次元仮想空間で人々が活動する世界」として話を進める。

メタバースを構成する要素は様々あるが、今回は、技術的な視点からVR、NFT、3DCGの3つに分けて捉えてみる。まず、VRは、専用ゴーグルを通じて仮想空間で没入体験が得られるものだ。代表例は、Facebookが2021年8月にベータ版を公開した「ホライゾン・ワークルームズ」で、専用VR端末を用いて自分のアバター越しに3次元仮想空間でオンライン会議を開催・参加できるサービスである。

次に、NFTは、Blockchain基盤を用いて作られた3次元仮想空間で、デジタルアイテムやコンテンツを所有したり、暗号資産を使って売買したりできるものだ。代表例は、ユーザー主導の運営体制で作られたデジタル世界上で、アバターを介して土地や衣服の売買、アートギャラリーを展開するなど多様な活動ができる「ディセントラランド」や「ザ・サンドボックス」がある。

最後に、3DCGは、マルチデバイスでアクセスできる3次元仮想空間で、現実社会をミラーしたデジタル世界で様々なシミュレーションができたり、ゲームなどの現実とは切り離されたパラレルワールドで大規模人数が同時に様々な体験を共有できたりするものだ。代表例は、2021年6月に全世界で3億5千万人のプレイヤー数を突破し、アリアナ・グランデや米津玄師などの有名アーティストがバーチャルライブを開催して話題を集めたオンラインゲームの「フォートナイト」がある。

ネットワーク回線の高速化やコンピューター性能の向上などの技術革新に後押しされ、急激に市場が形成されつつあるメタバースだが、具体的にどのようなことが新たにできるようになるのだろうか。また、それによって金融業界やサービスにどのような影響が起こり得るのだろうか。VR、NFT、3DCGの視点から考察してみたい。

メタバースがもたらす機会

現在のVRは、専用ゴーグルを頭に被る形態が日常生活に馴染まなかったり、都度手間であったり、ゴーグルも高価であるため、まだまだ世の中に浸透していない。近い将来、より簡易なものが開発されれば、デジタルネイティブ世代を起点に、日常の中で、当たり前のように仮想空間の没入体験が得られるようになる。

VRの没入体験は、従来のモバイルコンテンツに比べて、人間の知覚や感情に働きかける効果が高いと言われている。それは、利用者に疑似体験させることで、言語化しづらい他者の経験を簡易的に伝え、また、同じ仮想空間にいる他者や、その他者が提供するコンテンツに対して、感情的な共感を高める。特に若年層は、仮想空間で長い時間を過ごしていくため、没入体験による影響を大きく受け、これまでの生活様式、時間・労力・お金の使い方も変わっていくだろう。そのため、没入体験の効果に基づいた教育や、顧客の行動喚起に関連するサービスには進化の可能性があると考えられる。

また、後述の3DCGの概念と一部重複するが、仮想世界では、利用者が没入型コンテンツを創作する提供者となることができる。そのため、一人の利用者が疑似体験を通して成長を得て、多くの他者の成長のきっかけを与えるループが形成されていく。昨今の企業は、地域、顧客、従業員から、経済的、社会的、体験的・感情的価値など、様々なニーズに応えることが求められているが、企業はメタバースによって、コンテンツ創作の役割の一部を利用者に委ね、市場の多様な価値観に応え、ひいては企業価値の向上にも繋げられるものではないか。

NFTは、ブロックチェーン上で発行されるトークンの一種である。NFTの出現で、複製可能であったデータの一意性が判別可能になり、固有の価値や権利を持つデジタル資産として高値で売買される事例も見られる。
NFTは、①価値の希少性の担保、②アプリケーションを超えて所有し行使できる事、③実質的な価値を持つ、という特徴を供えている。現実世界に例えるなら、アート作品に通し番号をつけることで、作品の真贋や希少性を表現できることに似ている。これらの特徴を踏まえると、メタバースにおけるデジタル資産として一意性のある創作物の作成や権利の交換といったことができる。

3DCGは、宇宙産業と相性が良く、現実社会では難しい様々なシミュレーションや実証実験をメタバース上で簡単に取り組める未来を切り開く可能性がある。例えば、1,500~2,000機ほどの人工衛星で地球上のデータを観測すれば、現実社会をミラーしたリアルタイム更新のメタバース空間を創り上げることができるという説がある。そうすれば、世界中のあらゆる瞬間をメタバース上で追体験できるようになり、様々な事象を効率的・効果的に原因究明できるようになる。また、刻々と移り変わるヒトやモノの流れを活用できるため、自動運転やドローンの実証、街づくりの検証、災害発生時の被害予測など、現実社会で実施する場合と同等の多様なシミュレーションが可能となる。今後は、メタバース上での多角的なシミュレーションによる検証を重ねた上で、現実社会に実装するアプローチが当たり前となる世の中が到来するかもしれない。