BaaSとは?初心者向けにわかりやすく解説

BaaSとは?初心者向けにわかりやすく解説

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既存の銀行ビジネスモデルに限界が見え、この数年間で銀行が生き残りをかけてDXに舵を切っています。また、ネット銀行や、新しい形態の「BaaS」を利用した非金融企業の銀行サービスも一般的になってきました。本稿では、BaaSが注目される背景と課題やメリットについて解説したのち、国内外の事例を紹介します。

  1. BaaSとは
  2. BaaSが注目される背景
  3. BaaSのメリット
    (1)利用者のメリット
    (2)金融機関のメリット
    (3)事業会社のメリット
  4. BaaSの課題
    (1)コスト
    (2)専門性
    (3)相互運用
  5. 日本国内のBaaSの事例
    (1)住信SBIネット銀行「NEOBANK」
    (2)新生銀行グループ「BANKIT」
    (3)みんなの銀行「Minna no BaaS」
  6. BaaSを活用した有名サービスの事例
    (1)Apple
    (2)Walmart
    (3)Uber
  7. まとめ

BaaSとは

BaaSとは「Banking as a Service」の頭文字を取った略称です。その名の通り、銀行が提供しているサービスや機能を、APIを利用して「クラウドサービス」として提供されることを指します。
銀行業務は大きく「為替」「預金」「融資」の三つに分類されます。これまでは、これらの銀行業務を行うためにはライセンスや仕組みが必要でした。しかしBaaSを活用することで、銀行以外の事業者にも提供が可能になりました。つまり銀行業務で扱うデータを、IT技術を利用することで、よりオープンに活用できる仕組みです。
そのため銀行以外の事業者がライセンスを持たなくても、自社サービスに金融機能を組み込んで提供できるようになりました。

またBaaSには他にも「Blockchain as a Service」の略称ともされています。ブロックチェーンシステムの開発を簡単に行うための、クラウドサービスとしての意味合いです。
ブロックチェーンとは「正確な取引を行えるようにする仕組み」です。ネットワーク上には時に、不正を働かせる人や正常にサービスを利用できない人がいます。
ブロックチェーンという名の通り、利用者のデータをブロック(箱)に保存し、それらのブロック(箱)に保管されている取引履歴をチェーン(鎖)で結ぶイメージです。ブロック(箱)は非常にセキュリティが高く、これらをチェーン(鎖)で結ぶため、データの書き換えが簡単に行えないのが最大の特徴です。

こうした金融に関わる業務のデジタル化によって、BaaSの市場規模は拡大傾向にあります。
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、BaaSの市場規模は2021年〜2027年の間に54.2%成長すると予測されており、2027年には179億米ドルの市場になるとしています。
こうした予測から、世界はもちろん、日本でもBaaSの普及が広がることが考えられます。

BaaSが注目される背景

BaaSが注目される背景としては「業務のデジタル化」が挙げられます。ITの急速な発展は金融業界のみならず、あらゆる業界でデジタルのニーズが高まってきました。
その中で金融業界では、世界的なオープンバンキングの推進が広がってきています。オープンバンキングとは、銀行で取り扱っていた機能やデータを、APIを通じて公開することです。オープンバイキングが広まったことで、銀行機能の一部を搭載したアプリが多くリリースされ、新たな価値のあるサービスとして生み出されてきています。
他にも金融以外のサービスを提供する事業者が、既存サービスに金融サービスを組み込んで提供する、Embedded Financeが広がってきていることも挙げられます。
Embedded Financeの詳しい内容については、以下の記事が参考になります。

参考:国内での拡大が予想されるEmbedded Financeの可能性と法的留意点

オープンバンキングもEmbedded Financeも、自社のサービスに金融サービスを搭載したいというニーズです。これらのニーズを応えるかのようにデジタル化の波が押し寄せ、BaaSへの注目が集まってきています。

BaaSのメリット

利用者のメリット

利用者のメリットは、ストレスなく銀行機能が利用できる点です。従来であれば、ECサイトで買い物を行なった際に、決済のために外部サイトへ飛ばされる、コンビニでの振込が必要になるなどの手間が発生していました。
しかしBaaSを活用すれば、ECサイト内に銀行機能があるため、そのサイト内で決済が完了できます。他にもスマートフォンアプリを利用しての入出金や振込も行えるようになるため、利用者はストレスなく銀行機能が利用できます。

金融機関のメリット

金融機関のメリットはBaaSによって、多くの企業と提携ができ、自行の利用者が増えることです。
例えば多くの顧客を持つ企業にBaaSを活用して、自行のAPIを提供できれば、企業のサービスを利用している顧客に対して、自行のサービス提供が可能です。提携した企業の顧客に対しても、間接的なアプローチができるので、自行の利用者獲得も期待ができます。
そのためビジネスチャンスの拡大にもつながります。

事業会社のメリット

事業会社のメリットは銀行ライセンスを取得することなく、自社のサービスに金融機能を組み込めることです。BaaSを活用することで、決済機能などを自社サービスに組み込めるため、利便性の高いサービス提供につながります。利便性の高いサービスが提供できれば、利用者の満足度は上がり、自社の価値創造にも貢献できます。
BaaSによって金融機能を組み込むハードルが下がったことは、事業会社の大きなメリットと言えるでしょう。

BaaSの課題

コスト

コスト面の課題は大きいと言えます。なぜなら金融は利用者のお金を厳格に正確に管理する必要があるからです。そのため非常に高度なセキュリティシステムが必要になります。
導入コストはもちろんのこと、運用コストも考えなければいけません。BaaSを活用したい企業は費用対効果を見極め、コストをかける意味があるかを納得させなければ活用は難しいでしょう。

専門性

銀行は高い専門性を持って、信用力の判断や貸し倒れのリスクを想定して資金運用を行っています。そのため事業会社にとっては、こうした金融の専門性が運用時には求められます。
事業会社が専門性を身につけるためには、専門家に助力が必要になる他、スペシャリストを確保するなども必要になるでしょう。また合わせて社内での教育も必要と言えます。

相互運用

BaaSがより広く運用されるためには、銀行とFinTech企業の相互運用が欠かせません。なぜなら利用者が多くなればなるほど、BaaSに関わるネットワークが広がり、利便性も高まるからです。銀行とFinTech企業の相互運用ができれば、利用者は拡大され、サービスに対する付加価値の創造やイノベーションの創出も期待ができます。
BaaSの考え方は相互運用によって、自社の顧客が広がっていくというものです。これまでのビジネスの考え方である「ユーザーの取り合い」ではないため、考え方も変えていく必要があります。

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