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地銀再編を読み解く3つのキーワード ~二極化する地銀と未来の姿

地銀再編の動きが活発になっている。既存ビジネスの収益力減少などを背景に地銀の再編が進み、早ければ2020年には総資産20兆円の金融機関が20行の時代が訪れる。どの金融機関の動きが地銀再編に影響を及ぼすのか。本稿では、地銀再編を読み解く重要キーワドを通し、地銀の行方と未来の姿を占う。

地銀再編を読み解く3つのキーワード ~二極化する地銀と未来の姿
  1. 地銀再編の未来
  2. 地銀再編が進展する3つのキーワード
  3. 地銀の二極化
  4. 大物同士のメガディールの可能性も
  5. 地銀再編の台風の目となる金融機関

地銀再編の未来

2020年20兆20行体制へ

地銀再編が進んでいる。地銀各行は、貸出有価証券運用手数料という収益の3本柱が苦戦しながらも、隣接他県への展開や有価証券運用の強化、ビジネスマッチングやコンサルティング力の強化などで、なんとか活路を見出そうとしている。

しかし、マイナス金利政策や少子高齢化による地方縮小といったマクロ要因には打ち克つことは容易ではない。

抜本的打開策として考えられる多角化縮小均衡規模の拡大という3つの選択のなかで、最終的に多くの地銀が規模の経済を享受する選択を選ぶことで、地銀再編が加速し、早ければ2020年には20兆円20行(グループ)体制が本格化する可能性がある。

事実上20行体制は始まっている

地方銀行・第二地方銀行は全国に105行あるが、非上場銀行を除き、九州フィナンシャルグループ傘下の鹿児島銀行(鹿児島)と肥後銀行(熊本)のように、持株会社のもとにグループ化されている銀行を一つとカウントすると、上場地銀は、82グループにまで集約される。

なお、非上場銀行は、東京スター銀行(東京)、神奈川銀行(神奈川)、静岡中央銀行(静岡)、福邦銀行(福井)、但馬銀行(兵庫)、佐賀共栄銀行(佐賀)、沖縄海邦銀行(沖縄)の7行となる。

地銀105行と一括りにいうものの、事実上80前後のグループに現時点でも既に収れんしている。実際に、規模や業容の面からも地銀二極化は進展しており、事実上、地銀20行時代は幕開けしている、といったら驚きだろうか。

残り10席の争奪戦

下図は、資産規模の上位から順に5兆円以上の銀行28グループを並べたものである。資産規模トップ10地銀は、最大手のコンコルディア・フィナンシャルグループ(東京)の18.7兆円を筆頭に、10兆円クラスの銀行が並び、その多くが持ち株会社のもとグループ展開しており、証券子会社をもち、フィンテックやオムニチャンネル構築にも積極的で、メガバンクに負けないフルライン体制を作り上げている。

10位以下の18行のどれも地域のトップ地銀であり、トップ10グループと同様に規模と業容をフルラインで展開している地銀ばかりである。

地域バランスも含め、既に20の指定席のうち、約半分が埋まり、残る10席前後をこれら5兆円以上の規模の地銀が合従連衡によりその座を狙っているのが現状といえよう。

2020年にも資産20兆円規模の地銀20グループで、総資産合計400兆円、あながち夢物語ではない数字である。

図1

▼筆者:高橋克英氏の関連著書
地銀大再編
図解でわかる! 地方銀行

地銀再編が進展する3つのキーワード

地銀再編が進展する3つのキーワード

今後、地銀再編が進展していくにあたって3つのキーワードがある。

キーワード① メガバンクによる系列地銀の売却

三重銀行(三重)と第三銀行(三重)による三十三フィナンシャルグループの設立、近畿大阪銀行(大阪)と関西アーバン銀行(大阪)、みなと銀行(兵庫)の3行による関西みらいフィナンシャルグループの設立が示すように、今後も実現していこう。

地銀再編の次の焦点とされる千葉興業銀行(千葉)や中京銀行(愛知)だけでなく、メガバンクの株式保有が3%以上の地銀は、株式売却による持ち合い解消を含め、何らかの対応を迫られることとなる。

キーワード② 既存トップ地銀による更なる拡大

とはいえ、地銀再編で最も注目すべき動きは、第四銀行と北越銀行という新潟のトップと2位による第四北越フィナンシャルグループの設立が示すように、既存トップ地銀による更なる拡大である。

特に、東日本ではコンコルディアフィナンシャルグループ、西日本では、山口フィナンシャルグループ(山口)の拡大戦略や両翼戦略は、地域バランスを大きく変える力があり注目だ。

キーワード③ ゆるやかな提携から経営統合

従来アライアンスからの深化として、ゆるやかな業務提携から経営統合へ踏む出す地銀がでてきるかも注目だ。

千葉銀行(千葉)と武蔵野銀行(埼玉)による千葉・武蔵野アライアンスを筆頭に、北東北3行連携(青森銀行、秋田銀行、岩手銀行)や四国アライアンス(百十四銀行、阿波銀行、伊予銀行、四国銀行)などの深化や経営統合の可能性がこれに該当する。

地銀の二極化

地銀の二極化

無論、地銀105行がきれいに20のグループに収れんすること考えるのは現実的ではないだろう。

規模や業容の充実し広域化した20の地銀グループと、それ以外の非上場銀行や小規模銀行、地域的に再編から孤立した銀行、創業者の影響が強い銀行、公的資金注入行などは、当面そのままで残る可能性があろう。地銀の二極化である。

また、トップ20行となる資格のある資産規模5兆円から10兆円クラスの銀行は、現時点でも地域のトップ地銀であり、自主独立経営も可能であることから、結果的に地銀再編から距離を置き、当面そのままということもありうる。

七十七銀行(宮城)、東邦銀行(福島)、八十二銀行(長野)、山梨中央銀行(山梨)、静岡銀行(静岡)、スルガ銀行(静岡)、京都銀行(京都)、滋賀銀行(滋賀)などが該当しよう。

大物同士のメガディールの可能性も

大物同士のメガディールの可能性も

海外や他業態の合従連衡でも散見されるが、上述した大枠の地銀再編の3つの動きと並行して、トップグループ同士やトップ地銀同士のいわゆる「メガ再編」も今後多く想定されよう。

九州のトップグループが3つではなく2つになる。関東も4つではなく、2つになるなど。例えば、コンコルディアフィナンシャルグループと東京きらぼしフィナンシャルグループ(東京)、コンコルディアフィナンシャルグループとほくほくフィナンシャルグループ(富山)、めぶきフィナンシャルグループ(東京)と千葉・武蔵野アライアンス、西日本フィナンシャルホールディングス(福岡)と九州フィナンシャルグループなど、組み合わせは多様にイメージできる。

その際、りそなホールディングス(東京)の総資産47兆円という規模感は、一つの目安として意識されよう。

▼筆者:高橋克英氏の関連著書
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地銀再編の台風の目となる金融機関

地銀再編の台風の目となる金融機関

コンコルディアフィナンシャルグループ ~メガ地銀化の可能性

地銀最大手の横浜銀行(神奈川)と東日本銀行(東京)を傘下に持つコンコルディアフィナンシャルグループの動きは、引き続き地銀再編の台風の目となる。

仮に、千葉興業銀行が加われば、首都圏を網羅する一大勢力が誕生する。更に、群馬銀行(群馬)や東京きらぼしフィナンシャルグループ、神奈川銀行(神奈川)が加わるようなことがあれば、圧倒的な勢力になる。

実際、横浜銀行と三井住友信託銀行によって設立された資産運用会社であるスカイオーシャン・アセットマネジメントには、群馬銀行、東京きらぼしフィナンシャルグループがそれぞれ15%出資している。最大傘下行の横浜銀行によるガバナンスではなく、傘下各銀行の自主性やガバナンスを尊重する経営方針が示せれば、これら候補銀行のグループ入りの可能性はより高まろう。

事実上、関東は、コンコルディアフィナンシャルグループ、めぶきフィナンシャルグループ、千葉・武蔵野アライアンスの三陣営に収れんし大勢は決しつつある。これら三大陣営同士も含め、更なる再編や提携に動くことにもなる。

山口フィナンシャルグループ ~台風の目となる

西日本の再編の中心は、山口銀行(山口)、もみじ銀行(広島)、北九州銀行(福岡)を傘下にもち山口を中心に両翼戦略を更に進める山口フィナンシャルグループである。

山口フィナンシャルグループと中国銀行(岡山)は、国際業務連携もあり、仮に統合となれば、両翼を挟まれる広島銀行(広島)には相当な脅威となる。

この場合、広島銀行は、従来から幾度とうわさに上った山陰合同銀行(島根)や伊予銀行(愛媛)との統合に動く可能性が高まる。

また、佐賀銀行(佐賀)の貸出残高の約4割は、隣接する福岡向けであり、実態は「佐賀福岡銀行」ともいえる。かつ、佐賀銀行の支店は、福岡県境および福岡市内にも多く、北九州市中心の北九州銀行との福岡県内の店舗バランスもよく、山口フィナンシャルグループにとっても魅力的な相手であり、ふくおかフィナンシャルグループに両翼を攻められる危機感がある佐賀銀行にも悪い話ではない。

佐賀銀行とシステム共同化している久留米を基盤とする筑邦銀行(福岡)も同様に山口フィナンシャルグループに加わるインセンティブと可能性はあろう。

コンコルディアフィナンシャルグループや山口フィナンシャルグループなどトップ10クラスの地銀が更なる拡大に動くことで、ドミノ的に各地で地銀再編が加速し、早ければ2020年には20兆円20行(グループ)体制が確立する可能性は十分にある。

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高橋 克英 氏 【 寄稿 】
株式会社マリブジャパン
代表取締役

高橋 克英 氏

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