サステナブル・ファイナンスはメインストリームになるか

サステナブル・ファイナンスはメインストリームになるか

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持続可能な社会の実現を金融面でサポートする手法として、「サステナブル・ファイナンス」が注目されている。欧州や米国における地球温暖化防止や気候変動への取り組み拡大、日本では菅首相の2050年の「カーボン・ニュートラル宣言」(排出する二酸化炭素を吸収する二酸化炭素の量以内とし、二酸化炭素の増加を抑制するとの宣言)などを背景に、サステナブル・ファイナンスの市場は拡大しており、2020年の組成額は全世界で前年比倍増の5,443億米ドルに到達した。2021年は、既存事業の脱炭素化に要する資金を調達する「トランジション・ファイナンス」といった新たな切り口も登場し、今後一段と広がりを見せそうだ。本稿では、サスティナブル・ファイナンスがメインストリームになるか考察する。

  1. 国内におけるサスティナブル・ファイナンスのメインストリーム化に向けた必要な要素
  2. サステナブル・ファイナンスの金利適用
  3. 最後に

国内におけるサスティナブル・ファイナンスのメインストリーム化に向けた必要な要素

当面サステナブル・ファイナンス市場が拡大することは間違いない。では、いつの日かサステナブル・ファイナンスは資金調達のメインストリームとなるのだろうか? 投資判断において、利率や期間と同じ位置付けでサステナブル・ファイナンスとしてのインパクト(社会に与える効用)が勘案されることはあるのだろうか? 日本においてメインストリーム化に必要な要素は2つ、①間接金融における取り込みと、②調達水準への反映だと筆者は考えている。

まず①間接金融における取り組み、について考えてみたい。サステナブル・ファイナンスは、グリーン・ボンドを端緒に発展してきたことからも推察できるように、直接金融主導の枠組みである。市場からの規律付け、すなわち、環境に配慮する企業でなければ市場での資金調達が困難になる、ということが、サステナブル・ファイナンスに期待されている本質的機能だ。

一方、日本が間接金融主導の市場である以上、間接金融をサステナブル・ファイナンスに取り込み、銀行による規律付けを機能させることが、直接金融と同様の効果を実現するためには不可避であろう。すなわち、銀行のサステナブル・ファイナンスへの対応が重要ということだ。昨今、メガバンクに限らず地方銀行などにおいても、「サステナビリティ・リンク・ローン」といった形で、企業のサステナビリティへの取り組みを表すKPIを設定し、その進捗に応じ金利を減免する仕組みが取り入れられつつあるが、まだまだ限定的だ。社債発行などの直接調達市場のみならず、銀行ローンに代表される間接金融においても、貸出可否の判断や条件決定において、社会の持続可能性を高める企業の取り組みを勘案するようになることが市場拡大のために決定的に重要だろう。

企業の立場で重要となるのは、②調達水準への反映、すなわち経済合理性だ。企業、すなわち借入人にとって、サステナブル・ファイナンスは通常のローンと比べ、モニタリングや第三者機関のオピニオンの入手などに関する追加費用が必要となる。銀行が社会や当該企業の持続可能性向上を信用力に反映することで金利が低下するメリットと追加費用を比較し、経済合理性が認められることが、企業のサステナブル・ファイナンスへの取り組みを促し、組成額を拡大するための必要条件だ。直接調達であるグリーン・ボンド等においても、同じ理屈が成り立つ。追加費用を賄うだけのメリット、すなわち、通常の社債よりもグリーン・ボンド等の金利水準が低いことが重要だ。

サステナブル・ファイナンスの金利適用

実は、通常のファイナンスと、サステナブル・ファイナンスの間で金利の差異を見出す理屈は非常に悩ましい。たとえばサステナブル・ファイナンスに取り組む企業と取り組まない企業の場合、比較は容易だ。一般論ではあるが、サステナブル・ファイナンスに取り組む企業の方が経営に余裕がありかつ意識の高い企業でろうから、おのずと信用力が高いことが想像される。一方、想像の世界ではあるが、同じ企業が同一時期に同一期間で通常のファイナンスとサステナブル・ファイナンスを実施した場合、それぞれのファイナンスに異なる金利を適用することは、明確な差別化要因がないだけに、現時点では無理がある。

このことを乗り越えるためには、サステナブル・ファイナンスによってもたらされるインパクト、すなわち社会に対する効用を可視化し、企業の信用力に反映する枠組みが必要だ。すなわち、現在までファイナンスで勘案できていなかった環境・社会への影響といった経済の外部性を内部化すること意味する。実現すれば、今までの企業の信用力の常識が大きく揺らぐことが予想される。米国を中心に様々な検討が行われているが、まさにパラダイム変換とも言える構想であり、枠組み作りにはなお時間を要するものと思われる。

最後に

球環境を金融面からサポートするサステナブル・ファイナンスの意義を認めない人はもはやいないだろう。日本における更なる拡大のためには、銀行など間接金融における対応と、経済合理性を担保することが必要だ。日本におけるサステナブル・ファイナンスへの取り組みは、同様に間接金融主導の金融構造を有するアジア諸国への影響も予想される。現状明確な回答は見いだせていないものの、難路を切り抜け、更なる飛躍に至ることを期待したい。

本稿中、意見に係る部分は筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を示すものではない。

寄稿
みずほフィナンシャルグループ
村松 健 氏
1996年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、
株式会社日本興業銀行(現みずほ銀行)入行し、現在に至る。
著書に『銀行実務詳説 証券』、『NISAではじめる
「負けない投資」の教科書』、『中国債券取引の実務』
(全て共著)、論文寄稿多数。日本財務管理学会所属。