【連載】新しい資本主義を巡る動向② 金融所得課税の強化の考え方


岸田政権における、新しい資本主義を巡る議論について、金融との観点では、①金融所得課税の取り扱い、②自社株買いガイドライン、③四半期開示の見直し、の3つの政策の動向がポイントであることは前回触れた。その中で、前回触れた四半期開示については、足元金融審議会ワーキンググループにおける議論が終了し、現在2種類存在する決算書類を一本化する方向で概ね決着したようだ。残りの2つはどのようになるのだろうか? 本稿では、この中で「①金融所得課税の取り扱い」について考えてみたい。

目次

期待されるのは成長戦略

一方、格差拡大を象徴するr>gへの対応策は、金融所得への課税強化だけではない。g、すなわち経済成長率を引き上げるという観点も重要だ。新しい資本主義の議論においては、ともすれば分配強化による格差縮小との観点が注目されがちだが、経済成長率を高めていくという従来の成長戦略のアプロ―チもより注視すべきであろう。ただし、経済成長率と資本収益率はある程度パラレルに動くことが予想されることから、金融政策、財政政策などのミックスによるバランスを重視した対応が望まれる。まさに、新しい資本主義のスローガンである「成長と分配の好循環」が問われることとなろう。アベノミクスへの評価は現段階では確定しないものの、第3の矢である成長戦略が成功したと評価する向きは少ないだろう。岸田内閣の新しい資本主義においては、成長戦略として「科学技術立国」や、「イノベーション」、「デジタル田園都市」、「経済安全保障」といった項目が並んでいる。現段階でこれらの構想が経済成長に与えるインパクトを評価することは困難だが、世界経済がコロナ禍から立ち直りつつある中、日本経済の持続的な成長を実現すべく、構想の実現が期待される。

<参考文献>村松健「金融所得課税強化の処方箋は「包括所得税」の復活にあり」週刊金融財政事情 2011.11.9

本稿中、意見に係る部分は筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を示すものではない。

寄稿
SBI金融経済研究所 https://sbiferi.co.jp/
事務局次長
村松 健 氏
1996年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、株式会社日本興業銀行(現みずほ銀行)入行し、2021年11月より現職。著書に『銀行実務詳説 証券』、『NISAではじめる「負けない投資」の教科書』、『中国債券取引の実務』(全て共著)、論文寄稿多数。日本財務管理学会、日本信用格付学会所属。
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