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トランジション・ファイナンスの海外の事例13選
国際的にもトランジション・ファイナンスに関する取り組みは進んでおり、2021年には既存・新規のネットゼロ金融イニシアティブを取り纏め、ネットゼロ移行への加速を目指す「GFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)」が設立されています。
このGFANZに参画しているイニシアティブの一つが「NZAMI(Net Zero Asset Managers initiative)」です。本章ではNZAMIに加盟している国外企業の目標設定事例について紹介していきます。
企業名 | 基準年 | スコープ | 目標 | 設定方法 | その他目標設定 |
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Allianz Global Investors | 2019 | Scope 1,2 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
2025年:インフラ直接投資 排出量-28% | 総炭素排出量 | ・低排出量かつEUタクソノミ適格資産のポートフォリオシェアを拡大 ・低/中/高温室効果ガス(GHG)排出カテゴリーは、各企業のGHG排出強度に基づく。 |
AXA Investment Managers | 2019 2021 |
エクイティ・債券:Scope 1,2 不動産:Scope 1,2,3 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
2040年:重要セクターのAUMの100%ネットゼロ達成 2030年: 社債 2019年比 排出量-50% 2025年: 社債 2019年比 排出量-25% 不動産 2019年比 排出量-20% CRREMパスウェイに基づく不動産AUM -50% 材料セクターの融資排出量 50%をネットゼロ達成 |
加重平均 | ・材料セクターの融資排出量の90%をエンゲージメント対象とする ・材料セクターの融資排出量の70%をエンゲージメント対象とするAUMの6%を気候ソリューションに充当 |
Black Rock | 2021 | – | 顧客に代わって運用するブラックロックの企業およびソブリン資産の最低75%を、科学的根拠に基づく目標値または同等の値を持つ発行体に投資する。 | – | 2020年に、投資ポートフォリオの石炭燃料生 産から25%以上の収入を得る事業への公債および株式投資から撤退する投資見解を表明 |
Boston Common Asset Management | 2021 | Scope 1,2 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
現在気候変動に関する目標がない、あるいは不十分なポートフォリオ保有株式(カバーAUMベース)の31%をSBTi目標または同等の目標に移行。 | – | すべての自社アクティブ運用戦略について、化石燃料への投資を行わないという指針を採用 |
Boston Trust Walden | 2019 | 投資先企業: Scope 1,2 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
2050:ファンド I ・ファンド II の企業の100%がネットゼロ達成 2030: シリーズCファイナンスを実施した対象投資先企業の100%、または対象投資先企業の30%が2050年までにNZC排出量の達成を約束し、目標、排出実績、開示、戦略、資本配分を通じて整合性を実証する。 ベースライン技術と比較してGHG排出量を大幅に削減するソリューションを提供する企業に、ポートフォリオの100%を投資。 |
総炭素排出量 | ・PAII NZIF Portfolio Decarbonization Reference Targetを活用する |
Danske Bank | 2020 | Scope 1,2,3 | 2030年:排出量 -50%。 2025年:最大排出企業100社とのエンゲージメント実施 |
加重平均 | – |
Coutts & Co | 2019 | Scope 1,2 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
2030年:スコープ内AUMの排出量2019年比-50% 2025年:AUM 50%をネットゼロ、またはアライメント済み、アライメント中とする |
加重平均 | – |
Lazard Asset Management | 2019 | Scope 1,2,3 *Scope 3については2023年より組み入れ予定 | ほとんどのポートフォリオにおいて、2029年までにポートフォリオの加重平均炭素原単位-50% *一部の戦略では、SBTiの普及率など、別の目標も使用する予定。 |
加重平均 | – |
Royal London Asset Management | 2020 | 株式・企業債券:Scope1,2 ファイナンスド・エミッション:Scope 1,2,3 |
2040年:間接管理の不動産ネットゼロ達成 2030年:2020年比 排出量-50% 直接管理の不動産ネットゼロ達成 |
加重平均 | – |
Russell Investments | 2019 | Scope 1,2 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
2030年:排出量 -50% 材料部門のファイナンスド・エミッション 90%ネットゼロ達成 2025年:材料部門のAUMの25%をネットゼロ達成 材料部門のファイナンスド・エミッション 70%ネットゼロ達成 |
加重平均 | – |
State Street Global Advisors | 2022 | Scope 1,2 *スコープ3については時間経過とともに段階的に算出に組み入れていく |
2040年: ネット・ゼロを達成している、あるいはネット・ゼロへの道を歩んでいる物質セクターの資産への投資残高を100%とする 2030年:出資したスコープ1,2の排出量 2019年比-50% |
炭素原単位 | – |
Wellington Management | 2022 | Scope 1,2,3 * Scope3の排出量が企業全体の排出量の40%以上を占める場 合計上 |
2030年:排出量2019年比-50% | 加重平均 | – |
Robeco | 2019 | Scope 1,2 | ポートフォリオ排出、事業活動排出 2025年: -30% 2030年: -50% 2050年: ネットゼロ |
– | – |
引用:トランジション・ファイナンスに関する国内外の動向(経済産業省)
まとめ
トランジション・ファイナンスは、それぞれの分野に属する企業が2050年のカーボンニュートラル実現に向けたロードマップを立て、その取組を支援するファイナンス手法です。
持続可能な社会を目指していく中で、環境問題は切っても切り離せない話題になります。今後はあらゆる業界、企業において取り組みが加速し、資金調達方法についての枠組みもより拡充していくと考えられます。
トランジション・ファイナンスへの取組が広まることで、2050年カーボンニュートラルを実現した世界をリードする日本が見られるかもしれません。
- 寄稿
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株式会社セミナーインフォTheFinance編集部