メタバースとは?過熱する投資と最新動向【2022年8月版】


いま話題のメタバースとは一体何か?本稿では、メタバースの起源から現在の状況について解説するとともに、認知度の高いプラットフォームやメリット、課題等を紹介しながら、メタバースに関する情報をお届けします。

  1. メタバースとは
    (1)定義
    (2)活用が期待される分野
  2. メタバースの歴史
  3. メタバースが注目される理由
  4. メタバース関連の株価と投資の現状
  5. メタバースのメリット
  6. メタバースに対する批判的な意見
  7. メタバースのプラットフォーム・サービス
    (1)フォートナイト
    (2)マインクラフト
    (3)あつまれ どうぶつの森
    (4)Decentraland
    (5)バーチャル渋谷
  8. メタバースの最新動向・ニュース
    (1)メタバースを用いた医療サービス構築に向けての共同研究
    (2)自民党がメタバース演説会
    (3)メタバース上での新型電気自動車お披露目
  9. メタバースの将来性
  10. まとめ
目次

メタバースとは

定義

メタバースとは、インターネット上で利用できる「仮想空間そのもの」や「仮想空間内で行えるサービス」のことです。メタバースという言葉は、「メタ (meta) 」と「ユニバース (universe)」を組み合わせた造語であり、1992年に発行された『Snow Crash』という小説から取られています。
メタバースは新しい技術のため、明確な定義付けはまだされていないのが実情です。しかしメタバースが従来の仮想空間と異なる点は、現実世界に近い状態でコミュニケーションが取れるという点にあります。具体的には仮想空間上に自身の分身となるアバターを作成し、他者とのコミュニケーションやゲームの体験、サービスを受けることが可能です。
現在、最も知られているメタバースと言っても過言ではないのが、「あつまれどうぶつの森」です。ゲームをインターネットに接続し、仮想空間上にアバターを作成することで、他のプレイヤーとのコミュニケーションが可能になります。

こうした仮想空間上で、高度なコミュニケーションを実施する、多様な体験ができたりする点は従来のホームページの閲覧やSNSでのコミュニケーションにはない切り口であると言えます。
メタバースは今後、現実世界と同じように、仮想空間上でのビジネス展開や経済活動まで行えるようになると予想されており、私たちの生活の一部にまでなり得るとも考えられています。

活用が期待される分野

イベント、展示会、交流会、ショッピング、ゲームへの参加など、メタバースはB2Cの領域からの注目が大きく、現在は幅広く展開する様相を見せています。特に人気オンラインゲームである「フォートナイト」には、メタバース空間が構築されており、歌手の星野源さんがバーチャルライブを行なったことでも話題になりました。こうした現実世界でも体験できる事柄が、仮想空間上でも同じように体験が可能になります。

参照:星野源バーチャルライブで考える、メタバース本命の1つであるフォートナイトの可能性

また近年ではビジネス展開の様相も見せており、セミナーや社内研修、会議、チームビルディングなどでもメタバースの活用が広がっています。例えば仮想空間上で実際の業務を行える「バーチャルオフィス」です。バーチャルオフィスでは自身のアバターをバーチャルオフィスに出勤させ、音声やテキストでコミュニケーションを取れるツールを活用することで、現実世界と同じように同僚とのコミュニケーションや会議を行えます。
実際にVR法人のHIKKYでは、従業員の全員がバーチャルオフィスに出社して働くという新しい働き方を行っています。働く時間や場所はいつでもどこでも、個人の都合が良いようになっており、定例ミーティング以外に時間の縛りは設けていないとしています。結果として、世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」の開催を成功させるなど、成果につながっています。

そのため今後もB2Cの領域やビジネス領域など、幅広い分野での活用が期待されています。

参照:【HIKKY】「働き方」は現実を超えていく。メタバース時代に広がるVRワークの実態

メタバースの歴史

メタバースという言葉は前述した通り、1992年にSF作家であるニール・スティーブンスン氏によって描かれた小説である『Snow Crash』で登場したことが初出とされています。ニール・スティーブンスン氏は「メタバースの生みの親」とも呼ばれており、さまざまなテクノロジーを予言していると評判の人物です。彼は他にも1999年に『Cryptonomicon』という小説の中で、デジタル通貨を登場させ、ビットコインに影響を与えたともされています。

最近になって注目を集め始めているメタバースですが、インターネットの発展と共にさまざまなサービスが存在してきました。1997年にはNTTデータ通信が女性向けのバーチャルモールサービス『まちこ』を開設し、2003年にはリンデンラボ(Linden Lab) 社が、ユーザー自身が仮想空間上で好きな世界を作る『Second Life』をリリースしています。『Second Life』は仮想空間内の土地を専用通貨で売買ができる斬新さが売りとなり、世界的なブームへとつながっていきました。日本では、日本経済新聞の一面に記事が掲載されるなど注目が集まりました。なおブームは下火になってしまいましたが、『Second Life』は今なおサービスを継続しています。

近年ではオンラインゲームが市場を拡大し、メタバースの認知度は加速度的に広がっています。要因としてインターネット回線の高速化や、VR機能を用いたゲームへの没入化が挙げられます。特にゲームへの没入化は、ゲームの世界に入り込み大勢でプレイするMMORPG等が流行り、大きなビジネスとなりました。前述した『フォートナイト』や『あつまれ どうぶつの森』は、それぞれメタバースを基調としたオンラインゲームとして大流行しました。

ビジネスの世界にも広がりを見せているメタバースは、2021年10月28日に米SNS大手のFacebookが「Meta」に社名を変更し、メタバース分野への1兆円規模の投資を行うと発表しました。「Meta」の発表から、GoogleやMicrosoftなどがメタバースへの投資を開始しているため、メタバース時代の到来を予想させています。

参考:Metaがメタバース関連部門の業績を初公開。2021年売上は前年比2倍の約2,500億円、1兆円規模の投資を実行

メタバースが注目される理由

メタバースが注目される理由はさまざまありますが、一番の要因は「デジタル技術」が進歩したことが大きな要因として挙げられます。インターネットの高速化によって、遠隔地にいる人ともリアルタイムなコミュニケーションが可能になり、直接会って話すという物理的な距離を飛び超えるようになりました。
加えてVR技術の進化によって仮想空間をよりリアルに感じられるようになったのはもちろんのこと、操作するアバターも表情やボディランゲージなど、現実に近いクオリティを出すことが可能になってきています。

さらにNFT等のデジタル通貨が注目を集めていることもメタバースが注目を集めている理由の一つです。NFTとは「Non-Fungible Token」の頭文字を取ったもので、「偽造等が行えない証明書付きのデジタルデータ」のことです。こうしたNFTを活用することで、仮想空間上でも経済活動が容易に行えるのではないかと考えられており、さまざまなサービスがメタバースと組み合わせてリリースされています。
2021年にはカナダの投資会社がメタバースにある土地を243万ドル(約2億8000万)で購入したことが大きな話題になりました。

参考:カナダの投資会社、メタバースの土地を約2億8000万円で購入

さまざまな企業がメタバースへ力を入れており、前述した「Meta」によるメタバース分野への1兆円規模の投資発表をはじめ、2020年代末にはメタバース市場が1兆ドル(約130兆円)市場になるとも予想されています。

参考:メタバース1兆ドル市場へ 半導体や触覚技術にも商機

日本でも2021年7月に経済産業省が「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業 報告書」を公表したことで認知度が高まってきています。

参考:「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」の報告書を取りまとめました

こうしたメタバースによるビジネス展開は、世界中で多岐にわたると考えられており、メタバース市場は過熱しています。

メタバース関連の株価と投資の現状

メタバースには数多くの企業が投資を行っています。
前述した「Meta」はVRヘッドセットである「Meta Quest2」というハードウェアと、「Horizon Workrooms」というサービスをリリースしています。「Horizon Workrooms」では自身のアバターを作成し、実際にコミュニケーションを取るのはもちろんのこと、キーボードの打ち込みやホワイトボードに事柄を書くなどの機能も有しています。こうしたメタバース環境の構築に向けて、2年間で5,000万ドルにも及ぶ投資を発表し、xR技術の研究支援を行っています。xR技術とは、VR やAR、MRなど専用デバイスを活用して仮想空間を作り出す技術のことです。
Microsoftでは、メタバース空間でのコミュニケーションを促進させる「Mesh for Microsoft Teams」の提供を2022年から開始すると発表しています。加えてMicrosoftでは、ゲーム会社であるActivision Blizzardを687億ドル(約7兆8000億円)で買収する計画を発表し、さらなるメタバースへの展開を考えています。

参考:マイクロソフト、メタバース見据えた巨額買収–なぜアクティビジョンか、背景や課題は

日本企業ではグリーがメタバース「REALITY」へ100億円への投資を行い、順調に進捗していると発表しています。「REALITY」はライブ配信アプリとしてリリースされており、利用者がアバターを作成し、自身の代わりに雑談やゲームプレイ動画を配信するものです。
海外ユーザーが8割以上を占めており、今後もグローバルに成長をしたいとしています。

参考:グリー、メタバース「REALITY」への100億円の投資は「順調に進捗」 ユーザー数非開示だが「収支均衡レベル」に 海外比率は8割に到達
参考:「メタバース」に巨額投資、グリーが描く青写真

またソニーグループもメタバース市場へ巨額の投資を行っています。「フォートナイト」を運営しているEpic Gamesに出資を続けており、累計で14億5000万ドルにも上っています。
ソニーの吉田社長は「ライブ的なネットワーク空間では、ゲームや映画、音楽といったジャンルが混じり合うようになり、それぞれがつながります。メタバースはコンテンツが交差するライブネットワーク空間になっていくでしょう。」と新たなビジネスモデルの構築に向けて動き出しています。

参考:ソニー、「億ゲー」をメタバース基盤に 米社に3度目出資
参考:ソニーが賭ける「メタバース」と「モビリティ」 勝算はあるか?

このように世界の大企業から日本の企業まで、メタバース市場には多くの企業が投資しています。

メタバースのメリット

メタバースのメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 非日常のユーザー体験が得られる
  • SNS等と比較して得られる情報量が多い
  • コミュニティ参加者との一体感が生まれやすい
  • 新しい経済圏、ビジネスコミュニティの発達

仮想空間で活動を行うメタバースは、ユーザーの好きなように世界を構築できます。現実世界に近づけてリアリティを追求することもできれば、現実ではありえない世界を構築できます。そのためメタバースは、ユーザーの自由に設計することができ、現実世界では体験できない非日常の体験が得られます。
また、メタバースを活用することで、現実世界の場所に囚われずにコミュニケーション等を取ることが可能です。アバターを利用して他のユーザーとコミュニケーションを取るため、テキストでしかコミュニケーションが取れないSNS等と比較しても得られる情報量は多くあります。加えてアバターの表情などもリアリティがあるため、現実世界でのコミュニケーションと大差なく行えます。
こうしたコミュニケーションの容易さは、他のユーザーとの一体感が生まれやすく、新たな価値創造につながることも期待できます。
さらにメタバースには多くの世界的企業が投資や出資を行っています。実際にバーチャル店舗の活用や、デジタルコインを利用した取引等は始まっており、新たな経済圏としても期待ができます。将来的には現実世界よりもメタバースで構築した仮想空間の方が、大きな経済圏として発達しているかもしれません。
このような様々なメリットがメタバースには挙げられます。

メタバースに対する批判的な意見

メタバースに対する批判的な意見としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ビジネスモデルとしてゲーム以外での収支が現状合いにくい。
  • ECなどの物販には向いていない。
  • メタバース等の仮想空間に対する法整備が遅れている
  • ユーザーのリテラシーが求められるので、すぐに大きな市場にはなりにくい

メタバースは3Dモデルの仮想空間を構築することを基本としています。3Dモデルの構築コストは、従来の2Dモデルよりも高くなってしまうため、現状ではゲーム以外の収支が合いにくいとされています。またユーザー側もメタバースをより体感するためには、VRデバイスなどが必須です。しかし現状はスマートフォンのように広く普及はしておらず、購入にも高いコストがかかってしまうため、手頃な価格になるなども求められます。

またEC等の物販にも向いていないことが挙げられます。新型コロナウィルス感染症の拡大によって、オンラインによる買い物等が広く普及しました。こうしたECサイトでの購入も、メタバースを介することで手間が増えてしまい手軽さがなくなってしまうという懸念があります。

他にも法整備の遅れへの懸念があります。メタバース内で作成された創作物の「権利」に関する保護や「取引」に関する保護など安全にサービスを利用できる環境整備が求められます。また悪意のあるユーザーへ対応するためのルール作りも、メタバースが発展するためには必要とされています。こうした法整備が整わなければ、ビジネスや経済圏の発展にもつながりにくいでしょう。

加えてメタバースはユーザーのリテラシーが求められるため、成熟した市場になっていくのは時間がかかるとされています。
ザッカーバーグ氏も事業計画が楽観的であったと発言しており、現状はメタバースというワードが一人歩きしていると言っても過言ではありません。しかし、現在はメタバースの理想に現実が追いついていないという見向きもできます。法制度の課題や技術的課題は今後、解決される可能性も高く、2030年代には一般的になっているかもしれません。そのため現在は、メタバースの将来性に期待して、投資等が過熱していると言えます。

TheFinance編集部
寄稿
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TheFinance編集部
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