2021年8月24日(火)開催FINANCE WEBINAR「実践的なBI活用の5W1H ~新生銀行における導入・運用事例~」


2021年8月24日、セミナーインフォ主催FINANCE WEBINARの基調講演にて株式会社新生銀行 松永 美生 氏にご登壇をいただき「実践的なBI活用の5W1H ~新生銀行における導入・運用事例~」についてご講演いただいた。

目次

実践的なBI活用の5W1H
~新生銀行における導入・運用事例~

松永 美生 氏

基調講演➀

【講演者】
株式会社新生銀行

リテール営業推進部 CRM担当 営業推進役
松永 美生 氏

<新生銀行における実践的BI活用>
新生銀行のBIツールを導入・運用してきた事例に基づき、BIの導入前の準備、導入するときのニーズの確認やツールの選定、そして導入後の運用における内製化のメリット・デメリット、プロセスを5W1Hの6つのポイントに沿って、紹介する。

<「WHY」BIツールの導入についての確認>
1つ目の「WHY」のポイントについて、本当にBIツールを導入する必要があるかという点である。全社的にデータの活用やデータに基づいたマネジメントを行いたいという考え、また現場のデータを活用したいという気持ちがはっきりしている必要がある。データを見る、触る、それらを活用した結果を見るなど、これらの体験を通じ、自分たちのビジネスにはBIツールが必要かを考え、必要であれば導入することを勧める。

新生銀行がデータの活用を進めてきたステップについて紹介する。10年前のデータを使い始めた初期の頃、データは社内のオンプレの各システムにあり、大量のデータを扱う場合、専門スタッフが週次や月次でシステムからデータを取り、それを各現場に配付できるよう加工して渡していた。現場はこれを受け取り活用するが、それらのデータの結果が返ってくるまでには何カ月もかかり、データ活用のサイクルは、3~6カ月程となっていた。そのため、中長期的なものには活用できるが、時機に応じたキャンペーンやマーケティングといった短期的なものには活用できない状況であった。

その後、5年前頃には、データを早く、大量に、簡単に取得できるようにSASのオンプレミスのサーバーを導入し、各システムからのデータを大量に自動的に取得できるようなった。具体的には、SASのエンジニアがSASに入ってきたデータを処理して、各部店に配り、配ったものに対して現場からのフィードバックをもらう形で、現場での結果を比較的早く出すことが可能になった。当時のデータの活用サイクルは1~3カ月となり、少し期間の短いキャンペーンやダイレクトマーケティングでも活用できるようになったが、現場では特殊なスキルがあるエンジニア人材が必要となり、使える人が少ない現状があった。

そこから改善を重ね、現状の姿にたどり着いている。各種データはクラウド上のデータプラットフォームに集約されており、それをリアルタイムで取得できるようになっている。これらの取得されたデータを営業のマネジャーやスタッフといった、特殊なデータスキルがない方でも、クラウドBI上で確認、使用することが可能である。このようなデータ活用のプロセスを得て、自分たちが求めているデータを取得できるように様々な試行を重ねた結果、BIツールの導入に繋がったといえる。

まずは手元のデータを活用してみるというプロセスを経た上で、全社的にBIツールを導入すると自分たちのビジネスが良くなるかという点を確認するとよい。

<「WHAT」BIツールの選定について>
続いて、2つ目のポイント「WHAT」について紹介する。BIツールは世の中に多数あり、どのBIツールを選択するかは、ご自身の企業の中でどのような目的で使用するかにより選ぶべきツールは異なる。

BIツールは、個人的な見解にはなるが、大きくは「アクション系」「分析系」「経営系」という3つの目的に分けられ、使用者によって求められる製品の機能・特徴が異なると考えている。

「アクション系」は、現場の営業スタッフ、コールセンターのスタッフ、現場の方が使えるBIツールを導入したい場合に有効である。求められる機能・特徴としては、現場でのインプット、アウトプットがすぐにできる機能や、営業での興味・関心や感情などの定性的なデータ、定性的な情報を自動的に収集、定量化してくれるような機能が必要となる。そのほかにも、スマホやタブレットで外出中でも使用できる機能や、お客様の応対により画面を見られない場合のアラートなど、のアウトプット機能があると使いやすい。新生銀行においても、現場で使えるBIを目指し、このアクション系タイプのBIを導入している。

「分析系」は、マーケティングや企画向けのBIツールに入れたい場合に有効である。大量に高速にデータを処理できる機能が必要であり、特に、量の多さ、速さは、どの程度のものか実務的に確認する必要がある。さらに自社データだけでなく、外部のマーケティングデータ、TMPのデータなどを活用する場面が増えたため、タイムラグや取り込めるボリュームを自社データに基づいて確認する必要がある。また、そのような外部データを使うときに、同じようなお客さま属性情報のデータを保有している場合、自動的にクレンジング、洗い替えしてくれるような機能も必要になる。最後に、現場のマーケターが簡単に汎用的な解析手法が使えるAIがそれをサポートしてくれる機能があると、高度なマーケティングに活用しやすくなる。

「経営系」は、本部営業部長やマネジメント、比較的幅広な視野でBIツールを活用したい場合に有効である。多忙な部長や役員の方が使用するため、一目でデータを見られる機能が備わっているかが重要である。データソースの異なるものを有機的にひも付けしたダッシュボードを作成できるか、これらのダッシュボード上で様々な軸を切る、期間を変える、セグメントを変えるといったことを有機的に行えるか、といったアウトプット機能を備えていることが必要である。また、ダッシュボード上と同じ画面、機能を様々な媒体で出力できる機能も経営向けには必要と考えている。

<「WHERE」BIツールの置き場所について>
続いて、3つ目のポイントである「WHERE」については、BIツールの置き場所が重要であり、データがあるところにBIツールを置くべきであると考える。効率的なBIツールの導入を実現した新生銀行のデータの置き場所について、過去の失敗事例を交えながら紹介する。

5年前、新生銀行のデータは、お客さまとの応対やコミュニケーション、お取引などを記録していた。それぞれのチャネルに対して、オフライン対面のデータはCRM、コールセンターのデータはCTIなど、同じお客さまのデータであってもチャネル種類によって異なるシステムがあるような状態であった。この状態でBIツールを入れる場合、データがある場所からばらばらなデータを取得し、BIツールに入れることになるため、データをリアルタイムに活用するということはできていないと考えている。

現在は、データが発生するお客様とのチャネルと各システムの間に、クラウドのデジタルプラットフォームを構築しており、各チャネルで発生したデータと内部のデータをすべてクラウドCRMに集約している。また、このCRMの中にBIツールを設置しているため、集約されたデータをBIツールが直接扱う事が可能だ。そのため、チャネルアプリケーションの変更や内部システムが変更になった場合でも、このBIツールは直接的な影響は受けず、データの停止、使用不可となることもなく、中間でデータのハブになっているクラウドCRMが変更後のデータの処理をした上でBIツールに渡してくれるため、BIツールの運用の継続性も担保されると考えている。

<「WHEN」BIツールの導入時期について>
4つ目のポイントである「WHEN」についてだが、BIツールの導入時期は、データがない状態でBIツールを入れても全く動かないため、データの集約ができるようになってから導入すべきと考える。

新生銀行のリテール部門でDX全体を進めてきた順番・プロセスについては、約5年をかけて、コールセンターや営業といったオフラインやリアルの有人のチャネルをプラットフォーム上に集約しており、この中で各チャネルの業務の最適化やチャネル間連携を行っている。その上で、デジタルマーケティングやデジタル系・オンライン系のチャネルをデジタルプラットフォームに載せ、結果的に全てのチャネル業務がこのプラットフォーム上に載り、連携が可能になっている。

また、これに合わせて、リアル系のチャネルのデータは、当然お客さまの属性情報としてデジタルプラットフォームに集約している。行動情報については、最初にリアル系のチャネルの蓄積と、デジタル系チャネルのオンライン行動のデータを連携することにより、データは順々にデジタルプラットフォームに集まる仕組みである。これらの動きに連動させ、その時々で製品を導入している。

BIツールの導入において、1つ大きなハードルとなるのは、リアル系のチャネルである営業の方々がデータを入力する手間が増える事である。解決策としては、リアル系のチャネルデータをデジタルプラットフォームに入力し、集約を始めるタイミングでBIツールを導入し、営業の方が気持ちよくデジタル化に慣れていただけるように取り組んだ。手入力の負担は、BIツールを一緒に導入することによって、営業のデータ入力があるため、データが綺麗にリアルタイムに可視化できるなど、効果を実感頂き、BIツールをデータの入力を促進していくために、動機付けとして利用したのである。

また、最終的にはもう一度全てのチャネルのデータが集約されてきた段階で、別のBIツールを導入している。この時点では、様々なデータが集まっているため、本当に現場でデータをどう使うか、どう扱っていきたいのか、どのように営業やマーケティングに生かしていきたいのかを考えるために、導入したものになる。

これらから、BIツールの導入タイミングとしては、途中で効果的に入れるか、または最後に全部データが集約できたタイミングで導入する事が良いと考える。

<「WHO」誰がBIツールを作成・導入するか>
最後に、5つ目のポイント「WHO」は、誰がBIツールを作成・導入するのかについてだが、通常はデータを取り扱う人であるデータアナリストやデータサイエンティスト、デジタルマーケティング担当が行うと思われがちだが、誰もが簡単に作れる必要があると思っている。

新生銀行においても、5年間営業を担当し、Excelの関数も使っていなかった方が半年で、データ処理やデータの統合に関するダッシュボードを作成している。そのほかにも営業を7年担当していた方が3か月でツールの立ち上げ、導入、設定を行い、新しいダッシュボードを作成している。実務に有効なダッシュボードを作れるようになった共通点としては、やはり現場出身、営業出身であると考えている。営業出身のため、営業が欲しいものがイメージできており、何が欲しいかを理解しているため、使えるダッシュボードを作れたと考えている。また、今後は作成のタイムラグを無くすためには、現場の担当者がダッシュボードを作成できるようになる必要があると考えており、現場の方がBIツールを使いやすくするための育成プログラムの構築などに取り組んでいる。

導入にあたり大事なことは、現場の方々がデータを使いこなすことを目的として、BIツールの説明会やハンズオンセミナーで製品を触る機会を設け、その後、個別のOJTなど、個別のトレーニングを行い、裾野を広げていくことだと考える。また、現場だけでなく、本部企画の担当の人たちがやるべきこととして、汎用的なデータを作り、データのメンテナンス、新しいデータの追加など現場をサポートしていくことである。そして、最後に一番大事な点は、マネジメントの方々がデータを信頼し、活用することである。このような姿勢を示し続けることが必要である。例えば現場から上がってくる報告がExcelだったら怒る、営業・部長会議にてマネジメントの皆さまがBIのダッシュボードを使って説明をするといったことも効果的であると考える。


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