ユーザーの5割以上が30~40代の資産形成世代 「3つの不足」解消で、投資のハードルを下げる(LINE証券)


LINEの金融事業子会社であるLINEFinancialと野村ホールディングスが共同で設立したLINE証券。取締役執行役員のイ ウォンチョル氏に、スマートフォンに特化したサービス戦略を聞いた(記事内容は2020年2月20日現在)。

  1. 口座開設の手間を省き最短翌営業日から取引可能
  2. 「LINE」での特集記事配信後に関連銘柄の注目度が上昇
  3. 投資経験者からも好評アクティブ・ファンドが人気
  4. ユーザーの生活に溶け込む総合証券サービスを目指す
目次

口座開設の手間を省き最短翌営業日から取引可能

─証券会社としての特徴は。

 当社は、LINEの金融事業子会社であるLINE Financialと野村ホールディングスが共同で設立した、スマートフォンでの取引に特化した証券会社だ。LINEの顧客基盤やユーザビリティの高いデザイン、野村グループによる金融ビジネスのノウハウを融合し、「働く世代」のための投資サービスを目指す。LINE証券は、普段からコミュニケーションツールに「LINE」を利用していれば、専用アプリを別途ダウンロードせずに「LINE」アプリ上で口座開設・取引が行え、投資未経験者でも始めやすい点が特徴だ。

サービスの開発にあたって行った調査では、資産形成や投資の必要性を感じながらも、いざ投資を始めようとしたら、「何を選んだらいいのか分からない」「知識がないから投資が怖い」「複雑で難しい」といった知識不足、「まとまった投資資金がない」といった資金不足、「取引所の取引時間に縛られる」といった自由度不足の「3つの不足」がネックとなる意見が目立った。

こうした声を受け“投資をもっと身近に、もっと手軽に”をミッションに、LINE証券の取り扱う金融商品は、日本の有名企業の株式を315銘柄、ETF(上場投資信託)15銘柄、投資信託28銘柄と厳選している(2020年1月末時点)。すべての銘柄は1株/1口から(投資信託は100円から1円単位で)と少額取引が可能なため、資金不足で投資をためらっていたユーザーでも取り組みやすい。

従来、証券口座の開設には本人確認として運転免許証などのアップロードや郵送が必要となり、かつIDやパスワードは簡易書留で自宅に送付されてくる。居住者が不在だと郵便物を受け取れず、働く世代の口座開設のハードルになってきた。

LINE証券では、「かんたん本人確認」(eKYC)の導入により、ユーザーはスマートフォンで本人確認書類と顔画像を撮影すれば、オンライン上で手続きが完了する。それまでは申し込みから取引開始まで通常4営業日程度かかっていたが、「かんたん本人確認」を利用すれば、最短翌営業日から取引が可能だ。

「LINE」での特集記事配信後に関連銘柄の注目度が上昇

─LINEならではのユーザーとの接点はあるか。

 LINE証券公式アカウントを通して、友だち登録済みのユーザーには投資のヒントを散りばめた特集記事を定期的に届けている。テーマは人気の優待銘柄や高配当銘柄、「3,000円以下で買える」銘柄から、ノーベル賞関連銘柄といった旬の話題など多岐にわたる。配信後のユーザーの取引行動などを見ていくと、特集の関連銘柄に注目し検討・購入するユーザーも多く見受けられる。

投資信託の取引画面上では、「はじめての方におすすめ」「低コスト」「リターン重視」「ブルベア型ファンド」と投資未経験者から投資経験者までを想定した4つのカテゴリーとランキングが表示され、銘柄選定が容易に行える設計になっている(2020年1月末時点)。「はじめての方におすすめ」のカテゴリーのクリック率は非常に高く、投資初心者や投資未経験者の関心の高さがうかがえる。各銘柄については、分かりやすさを重視した概要説明文や紹介動画を多数用意しており、投資初心者のユーザーでも銘柄への理解が深まるようサポート機能も揃えている。ユーザーのサービス内での動向を分析し、より利用しやすいデザインとなるよう日々サービス画面の改良を続けている。

月間利用者数8300万人(2019年12月末時点)超の「LINE」のユーザーのうち、資産形成世代は約70%を占める。一般的に株式市場で取引できる時間帯は9時から15時までだが、LINE証券は「働く世代」のライフスタイルに合わせて、平日21時まで即時注文・即時約定(取引成立)できる(一般的な1株単位の取引では、取引が成立するタイミングは1日数回と限られているため注文時に取引価格が確定しない)(下図)。

一部の証券会社が提供しているPTS(私設取引システム)による夜間取引では、東京証券取引所などの取引所と比べて参加者が少ないため約定しづらく、銘柄によっては極端な値動きが発生しやすい傾向にある。こうしたPTSと比較して、LINE証券の夜間取引は翌日基準値段に0.5%のスプレッド(差額)を乗せる方式を採っており、投資経験者からは確実にその値段で約定できる点が評価されている。

投資経験者からも好評アクティブ・ファンドが人気

─ユーザーの投資経験者と投資未経験者の比率は。

 現在、口座開設者における割合は投資経験者と投資未経験者が半々で、年齢層は20~50代が95%を占め、子育て世代や資産形成に興味を持つ30~40代が5割以上を占める。男性は67%、女性が23%と約7割が男性ユーザーだ。LINE証券で株取引経験のあるユーザーを対象としたアンケート調査では、他社取引経験のないユーザーの約7割が「『LINE』上で簡単に始められる」ことを利用理由に挙げた。このことから、投資を始めようとする人にとって「LINE」から始められることが投資への第一歩を踏み出すきっかけになっていると考えられる。また、他社取引経験のないユーザーの51%が、株投資の勉強について「特にしていない:実践で勉強している」と回答している。投資未経験者にとって、LINE証券は実践しながら投資を勉強できるサービスであると言えるのではないだろうか。(下図)

株式・ETF・投資信託のうち、現在は株式を取引するユーザーが圧倒的に多い。その要因の1つに少額取引が考えられる。東証に上場している企業約3600社の最低購入代金の平均は約20万円だが、例えば、ファーストリテイリングのような株式を購入する場合、1株は約6万円(2020年1月末時点)、取引には単元株分の約600万円の資金が必要となる。このように取引金額が大きい銘柄でも、LINE証券では1株から売買可能なため、少額で好きな銘柄に投資して自分のポートフォリオを組むことが可能だ。

2019年11月27日から提供をスタートした投資信託の利用者も徐々に増えている。現在、投資信託の売上ランキング上位の多くは購入時手数料0円の銘柄が占めており、ファンドのパフォーマンスの良し悪しに関わらず購入時手数料の有無が銘柄選択の判断基準とする投資家は少なくないと言われている。そこで当社は業界に先駆けて全ての投資信託の購入時手数料を0円にし、コスト以外の基準で銘柄選択ができるようにした。その結果、現時点ではインデックス・ファンドよりも運用管理費用が相対的に高めのアクティブ・ファンドを選好するユーザーが多いことが分かっている。

LINE証券では、ユーザーの成長に合わせたサービス展開を進めている。近年、積立投資や長期投資が推奨されているが、投資初心者や投資未経験者にとって、どんな結果が出るか分からないものを毎月数千円、数万円買い続けることは心理的ハードルが高いと考える。積立投資は、相場の急変をきっかけに休止してしまう投資家が多いといった調査も出ている。LINE証券は、ユーザーの投資体験の機会を提供することにフォーカスし、少額投資やLINEポイントを取引に利用可能とするなど、誰もが投資を試みやすい環境づくりを常に心掛けている。

ユーザーの生活に溶け込む総合証券サービスを目指す

─投資未経験者に対する投資体験の機会提供として、どのような取り組みを行っているのか。

 当社はユーザーの投資体験を促進するため、定期的にユニークなキャンペーンを開催している。これまで実施してきたキャンペーンは4つで、第1弾は2019年10月から11月に行った。全ての取り扱い銘柄の取引コスト(スプレッド)を2カ月間0円としたキャンペーンを打ちだした。第2弾は同年10月下旬から11月に開催した新規口座開設と初回取引をしたユーザーを対象としたキャンペーン。第3弾は同年12月、期間限定で株のタイムセールを開催し、対象銘柄を開催日の終値の最大7%オフの割引価格で購入できるという、証券業界では稀な試みに挑んできた。

第4弾は2020年1月、新規口座開設ユーザーを対象に約1カ月間、最高3株分の購入代金がもらえるお年玉企画を実施。そして、2月6日から3月31日の期間中に口座開設を申込み、4月14日までに1回以上取引した先着3万人に現金1500円分を贈呈するキャンペーンを開催している。他社取引経験があるユーザーからは、こうしたキャンペーンがLINE証券の魅力の1つとして好評を得ている。

LINE証券はキャンペーン後に、ユーザーの投資行動がどのように変化するか追跡調査を行い、分析した検証データを次のビジネスに徹底的に生かしていく。当社の戦略は、業界標準と比較して減らせる部分は徹底的に減らし、逆にニーズがあっても現状ないサービスは新しく作って増やすこと。これはLINEの原点であり、企業DNAとしてグループ全体の基盤でもある。

LINE証券は今後、投資未経験者から投資経験者まで全ての「働く世代」のユーザーに支持されるようサービスの改善を図っていくと同時に、取り扱い商品の拡充を進め、総合証券サービスを目指していく。長期的な視点では、コミュニケーションツールである「LINE」の強みを生かし、ユーザーのニーズにあった金融アドバイスを提供するプラットフォームを構築し、ユーザーの生活に溶け込む新しい総合証券サービスを確立していきたい。

インタビュー

LINE証券
取締役執行役員
金融商品担当/営業企画担当
マーケティング・サービス副担当
イ ウォンチョル 氏

野村證券株式会社の支店営業や本社企画、海外拠点等を経て、2019年1月に
LINE証券設立準備株式会社の取締役に就任。2019年4月より現職。

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