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アフラック生命保険による顧客接点強化のデータ利活用事例

データの利活用は多くの企業にとって重要であるにも関わらず、その活用方法において課題となっている場合も多い。本連載の第2回目は、アフラック生命保険が取り組んでいるユースケースの取捨選択やお客様サービス向上に寄与した事例を聞いた。

アフラック生命保険による顧客接点強化のデータ利活用事例
  1. アフラック生命保険のデータ利活用指針
  2. 優秀な会話技術を横展開
  3. 13営業日から5営業日に短縮
  4. データ利活用の前進

アフラック生命保険のデータ利活用指針

アフラック生命保険は顧客接点の強化を目的に、データ分析基盤の構築やAIによるデータ分析を行っている。同社はCRISP-DM(Cross-Industry-Standard Process for Data Mining)というデータ分析モデルを採用。50件以上のユースケース(データ活用案)を定義し、ビジネスニーズを基に優先順位を決めてロードマップを策定する。

同社のデジタルイノベーション推進部デジタル技術支援課課長の棚橋健児氏は、「現在、分析作業を約10件同時進行できる。PDCAサイクルを検証し、効果が見込めないユースケースは中止する判断も重要視している」と説明する。

優秀な会話技術を横展開

同社の進める代表的なユースケースを紹介したい。コンタクトセンターの優秀なオペレーターの会話技術を分析して特有の会話内容を抽出し、他のオペレーターに横展開することで、オペレーター全体の会話の品質向上を目指す取り組みだ。棚橋氏は、「6カ月分の会話データをAIに機械学習させて、優秀なオペレーターが使用するキーワードや言葉運びなどを抽出し、会話事例に反映させた。これを基に約100名のオペレーターを対象にABテストを実施した結果、従来よりもお客様への説明をスムーズに進められるようになり、お客様サービス向上やオペレーター稼働時間の効率化に寄与した。その他、ご契約者向けのアフターフォローなど、様々なユースケースを実施しているが、1つでも多く実用化し、お客様サービス向上に繋げていきたい」と明かす。

13営業日から5営業日に短縮

ユースケースの実行には、データ分析基盤の強化も欠かせない。「機械学習において、AIが学習するデータの取得に多くの時間を要する。当社はデータ取得の自動化を進めている。個人にまつわる項目はデータ取得の際すべてマスキング処理を施すため、データサイエンティストは個人情報に触れることなく作業が可能だ。また、従来は平均13営業日かかっていたデータ取得作業が、自動化によって5営業日まで短縮したことで、より効率的に分析作業が進められるようになった」(棚橋氏)

データ利活用の前進

保険×データ利活用の国外の代表例としては、南アフリカ共和国のPineapple社が挙げられる。「Pineapple社は個人間で資金を融通するP2P(Peer to Peer)のモノ保険のプラットフォームを提供しており、ユーザーは保険をかけたいモノをスマートフォンで撮影して登録すると、AIが画像を判断して保険料を算出する」(棚橋氏)

データの共有化にフォーカスした同社の取り組みの一つに、がん経験者コミュニティアプリ「tomosnote(トモスノート)」がある。がん経験者同士による情報発信や意見交換が気軽にできるサービスを通じて、取り巻く不安やストレスなどの大きな負担を和らげることを目指す。

一方で、昨今は個人情報保護の意識も高まっている。欧州では2018年5月にGDPR(一般データ保護規則)が施行され、2020年1月には米グーグルが、ネット広告企業など第三者がサイト閲覧履歴などを利用する仕組みの「サードパーティー・クッキー」を段階的に制限する方針を公表した。

ここ数カ月で、多くの企業が個人情報取り扱いに関するページの仕様を大幅に変更するなど、業界問わずデータを扱う環境は整備されつつある。「総務省が進める『情報銀行』など、データの流通基盤が整えば、データ利活用は大きく前進するはずだ。当社単体でのデータ利活用に加え、業界を超えて多くの企業や行政と連携し、社会全体におけるデータ利活用を促進する一助となりたい」(棚橋氏)

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【 インタビュー 】
アフラック生命保険
デジタルイノベーション推進部
デジタル技術支援課
課長

棚橋 健児 氏

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