2020年7月16日(木)開催 FINANCE FORUM クラウド活用がもたらす金融ビジネスのパラダイムシフト<アフターレポート>


新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、経済活動が強く制限され、世界的に多大な影響を及ぼした。金融業界に与える影響も大きく、企業として持続的成長を続けるため、コロナ禍での働き方を実現するため、クラウドサービスの活用が不可欠になっている。本フォーラムでは基調講演として、みんなの銀行設立準備会社 代表取締役 横田 浩二 氏より「みんなの銀行におけるクラウド活用とデジタルネイティブバンク構想」について、特別講演にて内閣官房 政府CIO補佐官 兼 みずほ銀行の大久保 光伸 氏より、ニューノーマル時代のデファクトスタンダード『社会基盤としてのパブリッククラウド』のご考察について、ご講演いただいた。その他、各協賛企業よりクラウド活用の最新事例についてもご紹介していただいた。

  1. クラウド技術を活用したデジタル時代の新銀行「みんなの銀行」構想について
  2. “Planning DX” ~手つかずのDX、計画・計数業務のデジタルトランスフォーメーションにむけて~
  3. Sansanがもたらすニューノーマルな働き方とは
  4. 金融機関に最適なテレワーク環境構築3つのポイント
  5. ニューノーマル時代のデファクトスタンダード『社会基盤としてのパブリッククラウド』を考察する
目次

クラウド技術を活用したデジタル時代の新銀行「みんなの銀行」構想について

横田 浩二

基調講演

【講演者】
みんなの銀行設立準備株式会社
代表取締役

横田 浩二 氏

ふくおかフィナンシャルグループ(以下「FFG」という。)は、九州を主な営業基盤として展開する、国内最大級の広域展開型地域金融グループである。現行の中期経営計画でデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)の推進を掲げ、「みんなの銀行」設立の準備など各種施策に取り組んでいる。

DXの実現には、前提として、地道な「デジタイゼーション」と、それを活用する「デジタライゼーション」が進んでいることが必要だ。DXの競争力やPLインパクトを生み出すのは、デジタル技術ではなく、人と組織である。人と組織の変革がなければ、DXの実現は難しい。

FFGのDX戦略における取組みの柱は3つだ。第一に、デジタル化のエンジン構築。第二に、DXの推進。DXを加速させるため、全社横断での既存ビジネスの高度化と、みんなの銀行の設立を並進している。この2つの柱を、iBank事業とデジタル化支援から成る第三の柱、オープンイノベーション促進にもつなげていく。

FFGにおける新規事業のDXは、iBankがver.1.5、みんなの銀行がver.2.0といえる。2014年に、既存の銀行・サービスに捉われない「全く新しい」マネーサービスとしてiBankの構想を始めた。その後、Fintechの台頭などの動きの中で変容し、様々な機能を追加してきた。近年では、銀行ライセンスを取得せず銀行代理業者として銀行商品・サービスを提供するネオバンクが登場。現在のiBankは正にネオバンクだ。

iBankの中核プロダクトは、金融機能と非金融機能を融合させたスマートフォン専用アプリ「Wallet+」である。2016
年のリリースから3年で100万ダウンロードを突破した。オープンAPIによる提携金融機関は、現在8行。地域の顧客をよく知る地域金融機関と横連携することでN数を増やし、大手企業と競争する手段になると考えている。

iBankを推進しているのは、社内ベンチャーとして設立した別会社だ。FFG本社とは物理的に離れ、別エンティティ
として成長してきた。これにより、既存サービスに捉われないデザイン思考のサービス設計、顧客理解・マーケティ
ングの高度化、アジャイルなシステム開発など、スキルと経験値を高められた。

iBankでの経験を基に構想したのが、デジタル時代の新銀行、みんなの銀行設立プロジェクトである。従来の銀行ビジネスを再デザインし、提供価値を再定義することで、銀行の将来像を追求することを目指している。コンセプトは3
つだ。

第一に、「みんなの『声』がカタチになる」。顧客の行動変容に即した新しい金融サービスを提供する。

第二に、「みんなの『いちばん』を届ける」。顧客理解に基づく総合金融コンシェルジュを目指す。

第三に、「みんなの『暮らし』に溶け込む」。非金融事業者に銀行機能をサービスとして提供するBaaS(Bankingas a service)型ビジネスにより、日常の消費行動を金融機能とシームレスに結びつけていく。

みんなの銀行は、ゼロベースで設計するチャレンジャーバンクだ。システムの再構築やデータ移行が不要なため、最新テクノロジーを活用した軽量かつ柔軟なシステム(次世代バンキングシステム)を構築できる。同時に、銀行として求められる要件とチャレンジャーバンクの要件も満たす必要があるため、高い性能と可用性を確保できるGoogle Cloud
Platformを勘定系システムの基盤に採用した。その他のシステムも含め、各領域に最適なクラウドサービスを取り入
れ、マルチクラウドで構築していく。また、業務はテクノロジーが行うことを前提に、ゼロベースで設計可能。ガバナンスも、最小限の組織運営による構造のシンプル化を図っていく。

チャレンジャーバンクは世界各国で台頭しているが、日本にはまだ存在しないとも言われる。みんなの銀行を日本初にしたい。我々は、デジタル革命による社会変革やパラダイムシフトが生まれ行く中で、探検隊として新たな金融・銀行
の将来像を目指していく。

“Planning DX”

~手つかずのDX、計画・計数業務のデジタルトランスフォーメーションにむけて~

濱田 真

【講演者】
Anaplanジャパン株式会社
リージョナルバイスプレジデント

濱田 真 氏

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれる取組みの多くは、過去実績や現行プロセスをベースとするデジタル化・自動化であり、デジタイゼ―ションやデジタライゼーションに該当する。これに対し、DXとは、デジタル技術を活用した社内外のビジネスプロセスそのものの変革を意味する。

本セッションでは、金融機関におけるあらゆる業務領域に存在する計画業務プロセスを、デジタル技術を使っていか
に変革するか紹介する。

計画業務とは、企業の経営資源を配分するための調整プロセスだ。経営判断を司る重要な業務にもかかわらず、多くの企業において手元の表計算シートによるバケツリレーが行われ、非効率な実態がある。国内某自動車メーカーの事例では、生産計画(Excel )を受け取った営業部門が販売計画(Excel)と突き合わせて出荷計画(Excel)を作成する業務に、約80人が延べ3,500時間を費やしていた。

計画業務におけるDX推進が遅れている要因は、業務の特性にある。まず、計画業務は人による「意思入れ」と「調整」の連鎖だ。また、変化が前提であり、ビジネスユーザー自身が変更・シミュレーションしたい業務である。更に、過去の傾向から予測できない将来への対応も求められる。

このような計画業務に対し、当社の統合計画プラットフォーム「Anaplan」が提供する価値は何か。Anaplanの名称は、AnalyticsとPlanningと掛け合わせたもので、圧倒的な軸足を後者に置いている。Anaplanは、表計算シートが飛び交う業務プロセスをクラウド上に統合し、生産性向上や計画サイクルの短縮化、経営資源の機動性向上に寄与する。加えて、企業内のあらゆる業務に散在する計画や見込み、予実管理のPDCAを統合し、経営管理の高度化、すなわち「Connected Planning」を実現する。Anaplanを活用する企業はグローバルで現在1,400社を超える。国内では、進出後約4年を経て、現在約100社に活用いただいている。

Anaplanの具体的な活用事例を3つ紹介する。

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループでは、グローバル人事の統合計画プラットフォームにAnaplanを採用。
約3か月で初期フェーズの成果を創出。グローバル各所のステークホルダーを効果的に巻き込みながら、人事領域を皮
切りに適用領域を順次拡大している。

国内某大手銀行グループでは、グローバル各拠点の経費マネジメント高度化のためにAnaplanを採用。各拠点からの
収集・集計プロセスに加え、多段階の配賦、部門・拠点間の付替えプロセスを自動化。地域・事業・機能など多様な軸での経費構造が、アクション可能な粒度で可視化され、経費の最適化が実現した。

イギリスの大手保険グループであるRSAでは、全社横断での抜本的な計画プロセスの整流化・可視化・最適化を図るため、経理・人事・営業等様々な部門の計画プロセスをAnaplan上に統合。導入1年目で年次計画プロセスを約4か月短縮した。

最後に、計画業務のDX実現に向けたポイントを5つ紹介する。

第一に、計画系専用基盤の整備。改革の起点として、実行系や分析系とは異なる特性を捉えた専用プラットフォーム
が必要だ。

第二に、プラットフォームビジョン。全社に存在する計画業務は、本来は共通の経営資源を争う業務プロセスであるため、共通基盤上で管理する必要がある。

第三に、アジャイル実装アプローチ。課題感や即効性のある領域から順次着手し、短期間での効果創出を継続することが重要である。

第四に、中長期的自走体制の整備。変化に柔軟・迅速に対応し続けるために、中長期的に内製化を図るべきだ。

第五に、経営効果へのコミットメント。順次ステークホルダーを巻き込みながら、足元の生産性効果を早期に刈り取るとともに、その先にある経営効果への貢献も見据えて改革に取り組む必要がある。

講演企業情報
Anaplanジャパン株式会社:https://www.anaplan.com/jp/

Sansanがもたらす

ニューノーマルな働き方とは

後藤 直之

【講演者】
Sansan株式会社
Sansan事業部 金融営業部
部長

後藤 直之 氏

Sansan株式会社は、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、名刺アプリ「Eight」を提供している。現在、Sansanのマーケットシェアは83%を占め、利用企業は約6,000社に上る。金融機関(関連会社を含む。)でのご利用も50社を超えている。

Sansanは、名刺を起点としたビジネス・プラットフォームだ。紙の名刺のスキャン又はオンライン名刺交換により名刺をSansanに登録すると、名刺の情報が99.9%の精度でデータ化され、組織・人物に関連する情報が付与される。そのデータを、パソコンやスマートフォンからSansanのデータベースにアクセスして活用できる。Salesforce※など他のシステムとの連携も可能だ。
※Salesforceは、Salesforce.com,Inc.の商標であり、許可のもとで使用しています。

Sansanの主な機能としてまず、名刺の管理、検索、共有。それから、同じ人物の情報を名寄せして経歴等を更新・蓄
積する機能。また、取引先との新たな名刺交換発生を知らせる「社内人脈」など、様々なニュース(通知)配信機能は非常に好評だ。会社情報は、四季報や帝国データバンクなどの情報を一元的に可視化・管理。この他、名刺交換した情報を組織図形式で表現する「組織ツリー」や1to1のメール配信機能など、機能は多岐に渡る。本年3月には、Sansanに蓄積された顧客データベースへ、さまざまな外部サービスが連携し、正確な情報取得とアプローチを可能にする「Sansan Plus」をリリースした。「反社チェックオプション」など、現時点で5つの機能を提供している。

今般の新型コロナウイルス感染症対策のため、経団連始め、各業界団体のガイドラインでは、名刺交換はオンラインですることを推奨している。名刺交換に限らず、非接触形式を取り入れた働き方が求められている。

ニューノーマルにおける事業継続の鍵は、「BCPの構築」「リモートワーク推進」「営業手法の変革」の3つと考える。共通項は、社内の「情報資産」をデジタル化し、「活用できる状況」にすること。その実現のために、広範囲な場面でSansanは価値を提供する。

まず、BCPの構築。Sansanは、名刺の取込みだけで全社員共通の顧客情報基盤を構築。場所を問わずアクセスできる。

次に、リモートワーク推進。Sansanのメッセージ機能により同僚間のコミュニケーションが促進され、コンタクト機能により上司・部下の報告業務を確保できる。加えて、両機能により同僚の強みやナレッジを可視化する。

そして、営業手法の変革。オンライン商談でも、Sansanのオンライン名刺、リスト作成機能、メール配信機能により顧客接点を蓄積・維持できる。

オンライン名刺は、本年6月16日にリリースした新機能だ。利用企業は既に3,000社を超えている。オンライン名刺のURLを伝えるだけで、誰とでも名刺交換ができる。相手がSansanやEightを利用していない場合も可能だ。シームレスなオンライン名刺交換実現のために、「Chatwork」「Salesforce」「EventHub」など、様々な外部サービスと連携している。今後、随時増やして行く方針だ。

最後に、金融業界におけるSansan活用のポイントを、4つにまとめて説明する。

第一に、デジタルトランスフォーメーションの推進。名刺登録により共通の顧客情報基盤を構築。併せて、名刺関連業務を効率化する。

第二に、非接触型営業の推進。オンライン名刺交換等により顧客接点を蓄積・維持。また、人物単位の情報蓄積
と引継ぎが可能。情報蓄積がアカウントカバレッジの拡大にもつながる。

第三に、社内コラボレーション。同僚の人脈・ナレッジを可視化し、同僚間のコミュニケーションを促進する。

第四に、地域振興。特に地域金融機関のユーザー様から、取引先企業にSansanを紹介いただくことで、地域企業のデジタルトランスフォーメーション推進につながり得る。

ニューノーマル時代を見据えて、企業は様々な取組をしなければならない。当社は、名刺をはじめとしたあらゆる「顧客データ」を連携することで、働き方を変え、企業の成⻑を支援していく。

講演企業情報
Sansan株式会社:https://jp.sansan.com/

金融機関に最適なテレワーク環境構築

3つのポイント

大石 良

【講演者】
株式会社サーバーワークス
代表取締役社長

大石 良 氏

サーバーワークスは、Amazonが提供するクラウドサービス、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の専業インテグレーターだ。2000年に創業し、当初は別事業を行っていた。2006年にAWSが登場し、2009年にAWS専業インテグレーターに転換。自社のサーバーにもAWSのみを使用しながら、増収・成長を続けてきた。2009年当時はクラウドの導入に消極的な企業が多かったが、2011年に状況が一変した。東日本大震災の発生直後、アクセス集中によりサイトがダウンした日本赤十字社に対し、当社はボランティアでAWS導入を支援した。既存サイトの復旧に加え、義援金管理システムの新規構築も短時間で実施。これを契機に、AWSの有用性が広く知られるようになった。

当社がAWS導入を支援した企業は、現時点で800社を超える。世界中のAWSパートナーネットワークのうち、上位0.3%が認定される「プレミアコンサルティングパートナー」(4段階中最上位)に、当社は2014年から継続して認定されている。

昨今のクラウド需要高まりの背景に、社会の本質的な変化がある。ITを活用する未知の挑戦者が、既存のビジネスを破壊。そこにコロナショックが追い打ちをかけている。

今、企業に求められるアクションは何か。まず、競争力の源泉へのリソースの集中。そして、クラウドでどこでも仕事ができる環境整備だ。「若くて優秀な人が興味を持って取り組める」DX 基盤を準備することも重要である。こうした文脈でのAWSの利用が進んでいる。

テレワークは利便性が高い一方で、課題もある。3つに大別し、それぞれ対応のポイントを説明する。

一つ目は、「誰がどこにいるかわからない」「スピーディーなコミュニケーションが取りづらい」こと。当社ではチャットサービス「Slack」を活用している。メールなど従来のクローズドな媒体と違い、Slackは原則オープンな環境だ。また、電話メモや議事録の作成・呼び出し、Q&Aなどボットの自作も簡単に行える。AWSに仕組んだボットやBIツールと掛け合わせれば、プロジェクト採算管理の自動化にも応用できる。

二つ目は、社外からの電話対応だ。AWSが提供する100%クラウド型コンタクトセンターサービス「Amazon Connect」で解決でき、非常に安価かつ簡単に構築可能。電話を受けられる社員がボタンを押して「Available」の状態にし、そのうち一人の電話が鳴る。PCとヘッドセットさえあれば、家でも会社の電話に応対できる仕組みだ。

当社では、SlackとAmazon Connectを組み合わせて、電話の見える化も行っている。代表電話をAmazon Connectに移行し、Salesforceと連携。誰から・いつ電話がかかってきたのか、リアルタイムにSlackで通知している。また、AWS
のAIサービス「Amazon Transcribe」で音声情報を文字起こし。更に、外部クラウドと連携して感情の情報も見える化している。

三つ目は、業務を行う環境の構築だ。AWSの仮想デスクトップ「Amazon WorkSpaces」は、1台から導入可能。モバイルアクセス及び通信経路の暗号化が最初から施され、スペックは仮想デスクトップごとに選択できる。画面転送型のシンクライアントのため、端末にデータが残らない。単体でもセキュリティレベルは極めて高いが、更に強化するため、当社では「リモートワーク証跡管理サービス」も提供している。Amazon WorkSpaces内の操作ログ保存により、在宅勤務での監査対応が可能。当社経由でAWSをご利用の場合、1週間分の操作ログの保存が無償だ。有償版では、長期間のログ保存や追加機能も利用できる。

「働きやすさ」と「セキュリティ」は両立可能だ。当社では、金融機関でのAWS導入実績を持つアドバイザーが、AWSをはじめとするパブリッククラウド導入を強力にサポートする「金融クラウド導入コンサルティングサービス」を用意している。次世代のテレワーク環境実現に向け、ぜひご相談いただきたい。

講演企業情報
株式会社サーバーワークス:https://www.serverworks.co.jp/

ニューノーマル時代のデファクトスタンダード『社会基盤としてのパブリッククラウド』を考察する

大久保 光伸

特別講演

【講演者】
内閣官房 政府CIO補佐官
株式会社みずほ銀行
兼 株式会社 Blue Lab アドバイザリーボード

大久保 光伸 氏

今般、新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」と言う。)のパンデミックにより社会環境が変化し、情報システムに俊敏性や柔軟性が求められている。

政府の「IT新戦略」では、「国民生活で便益を実感できるデータ利活用」が重点テーマの一つとされている。海外においても、パーソナルデータの活用事例が英国、米国、中国などで見られる。With/Afterコロナでは、個人・企業・社会の各レベルで段階的に様々な変化が起こり得る。金融データを分析し、行動の変化を察知して次のアクションにつなげることは、ビジネス機会の創出において有用だ。

これからの金融機関に求められるビジネス軸は何か。3つに分けて考察する。

第一の軸は、「手を取り合う」こと。例えば、異業種連携、業界特化型スタートアップ企業との協業、分散型都市、情報銀行、副業解禁や外部専門人材の積極活用などがある。

第二の軸は、「寄り添う」こと。他業態と手を結ぶ中で、アドバイザー、価値のまとめ役、アクセス支援者といった役割になることが期待される。OMO(Online Merges with Offline)の概念としては、オンラインとオフラインのデータ・IDを統一し、両者を決済でつなぐ形が理想といえる。

第三の軸は、「社会問題の解決」。手続きのオンライン化、情報格差の解消、ビジネスマッチング、サーキュ
ラーエコノミー、安心・安全なPDS(Personal Data Store)、非接触認証・決済手段。こうした未来に向けた社会課題解決にも取り組む意義がある。

近年、様々な決済サービスが登場している。まず、海外では既にバーチャルバンクライセンスの発行が進み、
国内でもオープンバンクAPI化が進んでいる。また、ネオバンク・BaaSも注目すべき領域だ。クレジットカードの領域では、海外では交通機関EMV、タッチ決済が進み、国内でも高輪ゲートウェイ駅で試行中である。この他、本年7月3日の未来投資会議で検討の方針が示された、全銀システムとは別の安価な新しい資金決済システム(「全銀LITE(仮称)」)の構築も重要な動きである。

いわゆるGAFAをはじめ、サービス提供事業者のファイナンス領域への参入が急速に進んでいる。これに対し、
我々は既存アセットを活かしたクロス構造のアプローチで異業種連携を進めていく方針だ。顧客と事業、新規と
既存という視点で分け、それぞれを掛け合わせてビジネスを考えていく。

最後に、政府が進めるパブリッククラウドの現状について説明する。政府情報システムにおけるクラウドサービ
スの利用に係る基本方針には、「クラウド・バイ・デフォルト原則」がある。クラウドサービスの利用を第一候補とし、まずはSaaS、その後にIaaSといった順で検討するものだ。2021年2月には、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)が始まる予定である。ISMAP 運営委員会という専門部隊が政府を代表して個別のパブリックプラウドを評価し、セキュリティ要求を満たすクラウドサービスを予め登録する制度だ。

金融機関の場合、パブリッククラウドの適用評価をどのように行うか。私が過去に手掛けたAWSの導入事例では、「FISC安全対策基準の適合性確認」及び「当社制定のリスク評価項目に基づく確認」を行い、社内規定に則り各リスク所管部にて確認・承認を実施して行った。

事業継続の観点でも、ロケーションに依存しない「BCP Anywhere」という考え方もある。コロナを契機に、非常時に特定のデータセンターに行くこと自体のリスクが顕在化した。BCPにおいて再現性・接続性の観点からパブリッククラウドが基盤として優位であるが、実現するためにはゼロトラストの概念でロケーションフリーにおけるセキュリティリスクを補完していく必要がある。

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