「データ活用で金融機関を変える!キーエンス流データ活用術」

鈴木 辰弥 氏
【講演者】
株式会社キーエンス
データアナリティクス事業グループ
鈴木 辰弥 氏

キーエンスとは

当社は、1974年の設立以来、FA用センサーをはじめとする高付加価値商品を通じて、主に製造業の現場の生産性・品質向上に貢献してきた。25万社以上の顧客を持ち、過去25年間、平均10%を超える成長を遂げ、50%を超える営業利益率を誇っている。その成長を支えているのがデータ活用にほかならない。その経験を基にビジネスユーザーがプログラムなしでデータからビジネス課題の因果を発見し、施策を見つけられるよう『KI』というソフトを自社開発し、科学的な経営に役立てきた。

現在、KIはデータ活用ノウハウとともに金融機関をはじめ数百社のお客様に提供している。提供形態はツールだけの提供ではなく、データを基に組織の生産性を高めるプログラムという形で提供している。データ分析のソフトウェア「KI」と、当社の担当データサイエンティストによるデータ活用の支援「カスタマーサクセス」の2つを掛け合わせて、データドリブンな組織の実現に向け、伴走支援している。

既に金融機関のお客様を幅広くご支援させていただいており、みずほ銀行様などのメガバンクや都市銀行、中京銀行様や京都中央信用金庫様をはじめとする地方銀行および信用金庫、さらにはSMBC日興証券様などの証券会社、エムエスティ保険サービス様などの保険会社にご活用いただいている。

金融業界とデータ活用

金融業界において、データ活用が重要視されている理由として、「顧客本位の業務運営」が厳格化し、顧客理解やニーズの重要度が増している点が挙げられる。

3つのポイントを上げる。1つ目が顧客本位の業務運営に関する原則の厳格化である。売りたいリストや売れるリストではなく、顧客のニーズに基づき、アプローチすることが重要であり、顧客ニーズの現状・変化の把握が必要だ。2つ目は、地域金融強化のための特別当座預金制度の活用であり、制度を活用するために各社が、人件費や店舗削減など、経費削減を積極化していく中、限られた人員でトップラインを下げない効率的な営業活動にシフトする必要がある。3つ目については、貸出金の規模拡大から、企業や個人に対して非金利収益強化の流れである。金利低下や人口減少に伴い、貸出金を増やすことから、深く入り込み、非金利収益取引を増やしていく事が重要であり、非金利収益につながるニーズや行動、取引履歴を活用し、複合取引を狙う必要がある。

データ分析ソフトウェアKIについて

KIはバラバラなデータから、自動分析、シミュレーションまで1つのツールで実現する事ができる。特徴は主に3つあり、1つ目が分析切り口の自動生成だ。バラバラなデータを統合し、人では考えきれない無数の切り口を自動で生成するができる。2つ目は機械学習による優先順位付けであり、施策の切り口を機械学習により、優先順位付けすることで、効率よく打ち手検討することができる。3つ目は施策のシミュレーションであり、施策の改善効果をその場で試算することができ、効果の高い施策に注力がすること可能だ。

金融機関での活用テーマの例としては、営業推進部署では投信/ローンの推進先分析、事業性融資のニーズの先の分析、渉外活動の標準化など、経営/総合企画部署では店舗の統廃合やATMの撤退、支店業績分析などが挙げられる。その他、人事部門であれば入社確率の高い応募学生の分析し、戦略的な人事戦略に活用する例もある。

金融機関の活用例のデモンストレーションと活用事例

一例として、年間投資信託を複数回購入いただいているリピート顧客の特徴分析を行い、優良顧客の特徴を持つ顧客の最大化をテーマとした、デモンストレーションをご覧いただく。顧客の属性情報が紐づいているCIF(Customer Information File)マスタ、アプリログ、口座移動履歴、商品取引履歴をKIに取りこみ、データの紐づけのためのリレーションの設定と分析の目的の設定をおこなうだけで、分析を実行することができる。

実行後は、特徴量を生成し、考えられる膨大な仮説をデータの中から自動的に全て洗い出し、今回の分析で有効なものを評価、発見する事が可能だ。データサイエンティストが同様の作業を行う場合でも、人の経験により、仮説を作り、検証をするため、非常に時間が要する大変な作業であるが、KIを活用することで、数分、数十分という短時間で分析することができる。

分析結果を活用しながら、優良条件を選択することにより、ターゲットのリスト生成や、施策をシンプルに実行することができる。KIでは、スコアだけではなく、一人一人のスコアの評価結果の要因が分かるため、営業担当者も顧客の理解や、顧客に合わせ、アクションを変更することが容易になる。

金融機関の事例として、顧客ニーズの把握のために、データを活用いただいている。顧客ニーズは、大きく「どんな商品・サービスを求めているか」「どのチャネルを求めているか」の2つに分類される。データ活用において、それらを細分化し、それぞれにロードマップを策定することが重要である。

商品、サービスの顧客ニーズにおいては、顧客の行動データを基にモデルを作り、定期的に分析を行うことで、スコアの変化を把握し、数か月後の投信のニーズが高まっているタイミングに合わせて、アプローチを行うことで、お客さまの満足度の向上や、顧客本位の業務運営につながると考えている。

また、さらなる応用として、お客さま一人一人のライフステージに合わせ、目的別のローン商品などを分析することにより、今どの段階にいて、どのような資金ニーズがあるかを特定することが可能だ。そして、資金ニーズ移行のタイミングに合わせて、渉外担当のヒアリングやマーケティング施策での活用などに反映することができる。

そのほかにも、事業性の領域では、融資増額ニーズ先のターゲティングを行う際、取引先データを分析することで、直近で融資増額した顧客の共通点を実施することで、どの企業の融資増額ニーズが高まっているかを判断し、優先順位付け、フォロー漏れの確認がおこなえる。

その後、優先順位付けされた企業に対し、どのような営業活動を行うか決める際には、営業活動履歴を加えることによって、その企業に対しての、プロセスやリソース配分の最適解を特定し、望ましい活動量の指標を設定することが可能だ。

キーエンスの伴走支援サービス

伴走支援(カスタマーサクセス)について紹介する。KIの導入後は金融機関担当のデータサイエンティストがつき、導入直後の操作の習得はもちろんのこと、分析の準備、設計、実際の分析、施策の立案・実行、振り返りという一連の流れに沿って、文字通り伴走型の支援をおこなっている。

また、このようなデータサイエンティストによる支援に加え、e-Learningシステム「KIサクセスサイト」では、様々な金融機関の分析スキルの向上やケーススタディーなどの役立つコンテンツや、金融機関に特化した分析マニュアルなどを公開しており、金融機関のDX人材育成に活用される例も多い。

たとえば、京都中央信用金庫様からは、「コミット感があり、データサイエンティストの伴走があることによって、これまでに経験したことのない充実したものとなっている。」とご評価いただき、大分みらい信用金庫様からは、「KI導入の真の目的は、営業の効率化によりお客様と向き合う時間を増やしていく事であり、データ分析とFace to Faceの営業を強化するために、KIを導入した。」と声をいただくなど、KIはツールだけでなく、これらのキーエンスのデータ活用ノウハウを駆使した伴走型支援がデータ人材育成につながっていると、多くの金融機関のお客様から非常に高い評価をいただいている。

◆講演企業情報
株式会社キーエンス:https://www.keyence.co.jp/ki