- 新生銀行のマルチクラウドを活用した“オムニチャネル顧客コミュニケーション戦略”
- 金融業界におけるSales Techを活用した営業改革とその具体例とは?
- ソニー銀⾏におけるクラウド活⽤状況とセキュリティ管理のポイント
新生銀行のマルチクラウドを活用した“オムニチャネル顧客コミュニケーション戦略”
- 基調講演➀
【講演者】
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株式会社新生銀行
リテール営業推進部 CRM担当営業推進役松永 美生 氏
かねてより金融業界では、顧客の高齢化に伴うリレーションの欠損、若年層へのタッチポイントの不足、手数料率の低下などによる収益性の減少といったビジネス上の課題が指摘されていた。
このような状況では、新たに顧客を開拓するのは難しい。むしろ目を向けるべきは既存の顧客であり、彼らとより一層強固な関係性を築いて顧客基盤を安定させることこそが今後の経営に資するのではないか。そのためにもお客様一人一人の行動や属性といったデータを統合し、コミュニケーションチャネルの構築や業務プロセスの改善に役立てていく必要があるのではないか――このような考えのもと、弊社では2016年よりクラウドCRMを導入し、統合された顧客データ基盤や顧客コミュニケーションの最適化などに取り組んできた。
金融業界におけるお客様ニーズの特徴として、「専門家に対面でしっかりと相談したい」「自らで専門的な情報収集をしたい」というものがあり、これが我々の業界におけるDXが進まない要因の1つにもなってきた。しかし今、コロナ禍を通じてお客様のニーズに変化が生じている。具体的には、外出したくない、対面でスタッフと話をしたくない、といったものである。
こうしたニーズを受けて、従来の対面による相談や面談に代わりオンラインのコミュニケーションチャネルを利用しようとするお客様が急増している。デジタル化イコール自動化、セルフ化というイメージが強い時期もあったが、我々の業界における顧客ニーズはそこにない。あくまでもヒューマンタッチを大切にし、一人ひとりの顧客に即したコミュニケーションをオンライン上で行うことが重要だ
たとえば、弊社では顧客情報を集約したクラウド基盤を各チャネルと連携し、営業担当やアウトバンドスタッフが横断的に情報を共有できる仕組みを整えている。これによりさまざまな部署、チャネルのスタッフが連携し、シームレスな顧客体験を実現することが可能になった。
そして、これらのシステムを使って作り上げた顧客とのコミュニケーションチャネルは現在のコロナ禍にあって我々の業務プロセスに欠かせないものとなっている。
もっとも実際にこうしたクラウドCRMを導入・運用するうえでは、システムの内容はもとより、導入する側の組織体制や開発運用体制の整備も重要である。たとえば弊社では、開発・運用にあたっては各ビジネス部門を横断するような形でのチーム作りを行った。
ここで重要なのは、顧客と現場を知るビジネス部門が自ら率先して動くということだ。お客様とコミュニケーションをするためのツールだからこそ開発をシステム部門に任せるのではなく、自分たちのシステムを本気で作るつもりで取り組むべきである。そうでないと現場の人間が自らシステムを改善できず、最終的に「使えないシステム」ができあがってしまう。
また本当に使えるシステムを作るためには、各チャネル、フロント、ミドル、バック、それぞれの現場の人間が開発の現場に参加し、かつ各チャネルの利害を超えて業務プロセス全体を見ながら開発を進める体制も必要だ。さらに実際にシステムを使う側である現場をサポートする、あるいは改善要望を反映させられる仕組みを作ることも重要といえる。
実際にシステムを使うのは現場の人間である。フロントも含むすべてのチャネルのスタッフに対して、システムを使うためのトレーニングやエンジニアによるサポートを徹底して行い、現場の人間が自らシステムやツールを使いこなせるようになるのが望ましい。
現場の人間がテクニカルな知識を身につけることで、よりよい顧客対応が可能になり、業務プロセス全体にも良い循環が生まれる。そのことは我々としても日々実感しているところである。
金融業界におけるSales Techを活用した営業改革とその具体例とは?
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【講演者】
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ベルフェイス株式会社
エンタープライズグループ 市場開発チーム
リーダー横山 豊 氏
弊社では「勘と根性の営業をテクノロジーで解放し、企業に新たなビジネス機会をもたらす」というミッションの下、オンライン商談ツールbellFaceの開発・販売、インサイドセールスの体制構築コンサルティングといった事業に邁進してきた。
もともと近年、インサイドセールスやオンライン商談については企業側からの注目度が高まっている状況であった。その背景には、さまざまな企業で慢性的な営業職不足が起き、限られた人材で売上を最大化する必要に迫られたことがある。とはいえ、ビフォーコロナの段階ではオンライン商談を積極的に取り入れていたのはIT業界を中心とする一部業界にとどまっていた。
しかしコロナによるパンデミックが起きたことで、企業側を取り巻く状況は大きく変わった。これにより、これまで伝統的に訪問型の営業を行ってきたような業界でも積極的にオンライン商談を取り入れるようになってきている。
コロナは多くの企業の業績にマイナスの影響をもたらしたが、特にこれまで訪問で営業活動を行ってきた金融業界や不動産業界では大幅な業績の落ち込みが認められる。これには、「対面型営業を避けたい」という顧客ニーズの変化や、店舗を一時休業により営業活動ができなくなったこと、といった要因が考えられる。
コロナ禍が起きてからは金融業界や不動産業界でもオンライン商談で営業活動を行いたいというニーズが増大しており、実際にbellFaceの導入件数も増加してきた。これまで多かったIT系や人材系の企業に加え、小売や製造業、コンサル、金融業、不動産といった業界でも導入する企業が出てきている。
これまで訪問営業が主流であった金融業界においても、今後はオンライン商談が訪問と並ぶ営業手段になる時代が来るのではないだろうか。
実は、オンライン商談ツールを使った営業活動には、1日でこなせる商談数の増加やリードタイムの短縮など従来の訪問営業にはなかったメリットがある。なかでも最大のメリットは、1つ1つの商談をデータ化できることだ。これにより、普段行っている実際の商談をデータとして社内で蓄積し、人材の育成や組織開発に活かすことが可能になる。
たとえばbellFaceでは商談そのものが録画でき、実際の商談における行動を細かく記録することができる。これらの録画データはチャットツールを通じて同僚や上司と共有することも可能だ。これによりチーム内で容易にフィードバックを行えるようになり、また上司が部下の商談に同行する代わりにスマートフォンで直接様子を見守るといったこともできるようになる。
こうした試みにより、これまでブラックボックス化していた営業や接客のスキルが可視化され、社内で共有できるようになった。実際の商談における成功事例・失敗事例、さらに、いわゆるハイパフォーマーといわれる人材の優れた点をデータとして集め、社内で蓄積することも可能だ。
優れた人材にはつねに転職のリスクもつきまとう。しかし商談のデータさえ残しておけば、彼らの属人的なスキルを新入社員に伝えることもできるようになる。
このようにオンライン商談には、従来の訪問営業にはなかったメリットがある。金融業界は伝統的に訪問営業が強い業種ではあるが、ここにオンライン商談を取り入れることで新しいビジネス機会を創出できるのではないか。
特に弊社のbellFaceのようなオンライン商談ツールはチャットツールやCRM、MA、リーガルテックといった他のツールと連携させることも可能で、総合的に取り入れていくことでデジタルトランスフォーメーションの取組推進にも資するという側面もある。弊社としてもセールスのビッグデータ活用やオンライン商談の機会創出を通じて、皆様の売上最大化をサポートできれば幸いだ。
ベルフェイス株式会社:https://bell-face.com/reason/
三井住友海上の「仕事の変革」への挑戦
~オフィスワークとリモートワークをベストミックスした生産性の高い働き方の追求(SalesTech活用のベース作り)~
- 基調講演➁
【講演者】
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三井住友海上火災保険株式会社
人事部企画チーム 兼 働き方改革推進チーム
課長荒木 裕也 氏
営業部門の生産性を考える上で、セールステックは今や欠かせないものになった。しかし今回はツールそのものの話ではなく、ツールを使いこなすために必要なスキルやマインドについて、実際に弊社がこれまで行ってきた取り組みを紹介したい。
営業部門の生産性向上において、セールステックと並ぶカギとなるのがリモートワークである。
「リモートワークを始めてから効率が下がった」という意見も一部にあるが、リモート営業には短時間で多くの商談をこなせるなど多くのメリットがある。そのため無駄な定例業務や付随業務を減らし、営業に使える時間を増やせば、長時間労働を防止しつつ効率の良い営業活動を行うことも可能になるのではと考えている。
リモートワークを取り入れて業務にかかる時間とコストを削減しつつ、得られた営業機会をセールステックで最大限に活かす。これが今後、営業活動における生産性を上げるポイントになってくるのではないか。このような発想のもと、弊社ではリモートワークの推進に力を入れている。
2016年に始めた働き方改革の一環として、弊社では以前よりリモートワークを積極的に取り入れてきた。
ビフォーコロナ時代の「自宅で仕事をして生産性を上げよう」というコンセプトからスタートし、緊急事態宣言以後では「感染防止、生産性を下げない、ナレッジの共有、新しい働き方へのチャレンジ」などの観点からリモートワークを推進しているところである。
現在我々が抱えている大きな課題は「リモートワークを当たり前の働き方にする」というものだ。弊社では多い時では7、8割の社員がリモートワークになったこともあったが、こうした全社的にリモートワークを推進する上でさまざまな課題も見えてきた。ICT、通信環境の不自由さといったハード面の問題に加えて、コミュニケーション不足や新しいマネージメントスタイルの追求といったソフト面の課題も出てきている状況であり、ソフト・ハードの両面からリモートワークを効率よく進めるための環境整備を行っているところである。
ハード面では、軽量型シンクライアントPCの導入、Web会議システムの拡充など現場の社員の声を聞きながらインフラ整備に努めてきた。
そしてソフト面ではマネージメント教育、社員の自発性を引き出す職場作りといったものに取り組んでいる。
リモートワークの場合、仕事のプロセスや進捗が見えにくい、サボっているのではないかという上司側の疑念が拭えない、そして自律的に動けるメンバーとそうでないメンバーの差が出やすいといった課題がある。これらの課題を解決するのは社員一人一人の言動であり、マネージメントである。そこで弊社では組織開発ツールも取り入れながらマネージメント教育にいっそう力を入れている。
管理職を対象とした研修、1on1ミーティングを活用した部下とのコミュニケーション強化(心理的安全性の確保)といったことを行ってきた。また各職場でも、時間の見える化によるタイムマネジメント、HRTechを使った職場・個人の状態の共有といった活動に、全社員が自律的に取り組んでいる。
さらに最近では、働き方改革を推進する過程で得たノウハウを新たなサービス・商品としてパッケージ化し、他社に提供する試みも始めている。
リモートワークには、場所・距離を問わない、業務を切り分けない、紙などの物的資源を利用しないといった特徴があることから、人材の最適配置や経費の削減といった効果も期待できるものと考えている。またリモートワーク導入の過程で業務の無駄を省くことで、生産性の向上――労働時間の適正化と成果の最大化につなげることも可能だ。
多様な社員全員が成長し活躍できる会社の実現、そのための仕事の変革を実現するために、弊社では今後もリモートワークを強力に推進していくつもりである。