2019年11月28日(木)開催 INSURANCE FORUM InsurTechの最新動向と業務変革<アフターレポート>


2019年11月28日(木)、セミナーインフォ主催「INSURANCE FORUM InsurTechの最新動向と業務変革」が開催された。人口減少社会における経済変動や消費者の保険ニーズの多様化により、保険市場は変革の時期に差し掛かっている。デジタル技術の発展は、変化を推進する上での主要な要因の一つとなっており、現在多くの保険会社が「InsurTech」を経営課題として取り組んでいる。本フォーラムでは、基調講演として第一生命保険によるITを活用した業務変革の活用事例としてAI活用やビックデータ解析の取り組みについてご紹介いただいたほか、ICTプロジェクトの推進によって「業務改革」 と「新たなマーケット創造」の取り組みを進めているあいおいニッセイ同和損害保険による特別講演をはじめ、先進企業各社による講演を通じて、テクノロジーを活用した業務改革のあり方についてご紹介した。

  1. 第一生命の業務変革を進めるIT戦略とAI活用
  2. デジタルトランスフォーメーションの衝撃
    ~vadaxが導く新たな可能性~
  3. 今、保険会社がローコード開発でするべき3つのこと
    ~「2025年の崖」に向けて、DXで競争力を高めるための開発手法とは~
  4. 保険インダストリークラウドで実現するデジタルトランスフォーメーション
  5. あいおいニッセイ同和損保における業務プロセス改革の取組み
目次

第一生命の業務変革を進めるIT戦略とAI活用

若山 吉史 氏

基調講演

【講演者】
第一生命保険株式会社
ITビジネスプロセス企画部長

若山 吉史 氏

第一生命では、ITの中期戦略として「バイモーダルIT」を掲げている。既存ビジネスの課題解決を進める「守りのIT」と新規ビジネス・サービスの創出を進める「攻めのIT」を両輪で回していく考えだ。オープンイノベーションを進める「InsTech」にも積極的に取り組んでおり、これらの取り組みの推進にはAIの活用が欠かせない。

AIに必要なものは3つある。第一に、AIに学習させるための良質で大量な「データ」。第二に、プロジェクトを実際に進めながら得る「ナレッジ」。第三に、AIプロジェクトをより効率的に進めるための「インフラ」の整備だ。当社では、巨大で複雑な契約管理システムを抜本的にリノベーションし、ホストのスリム化やコンポーネント化を行った。契約管理システムの本来の目的を主眼に置きつつ、適材適所を徹底的にモダナイゼーションし、新規機能開発の際の工程を効率化した。また、社外との連携基盤として、Microsoft社のAzure上にホームクラウドという概念を展開し、クラウド、オンプレミスをハイブリッドにオープン化しているほか、システムの本丸まで含めてクラウド、API、SaaS等の活用を進めている。

AIを活用した実際の取組事例について紹介したい。まず、コールセンターでのオペレーター支援だ。オペレーターとお客様の会話をテキスト化したデータをIBMクラウド上にあるWatsonが読み取り、計算結果をリアルタイムにオペレーターの端末に表示
する。多岐にわたるお客様からの問い合わせ対応をAIによりサポートすることで、応答を早くしてお客様の満足度を上げるとともに、オペレーターの負担を軽減することも狙いだ。現在は応対支援に留まるが、開発時からWatsonの中核機能であるNatural Language Classifiler (自然言語分類器)の活用にこだわり、将来の自動応答まで見据えて活用しながら継続的なレベルアップをしている。次に、お客様からの請求処理のデータ化と点検の自動化だ。保険金請求書と本人確認書類をスキャナーで画像データ化、AI-OCRツールで読み取ったテキストをIBM社のルールエンジンODMで本人確認書類と付け合わせ点検、その結果を入力するところまですべて自動化している。次に、個人保険の営業支援だ。お客様の契約見直しニーズを入力すると、全国で作成されている過去の提案書のログの中から最適な設計を検索・提示してくれる。商品体系の変革による提案の自由度を大幅に向上したことにより増大している営業負担の軽減に繋がっている。その他にも、AIを活用した種々の取り組みを進めているが、将来的には商品開発支援やバーチャルコンシェルジュにも取り組んでいきたい。ここまでに紹介した事例はいずれも「守りのIT」であるが、「攻めのIT」にも取り組んでいる。ビッグデータを活用した保険プール(被保険者集団)の変革だ。健康年齢や健康診断受診結果、保険引受基準等をビッグデータ解析により分析・見直しすることで、新規商品開発や新規契約の拡大に繋げた。さらに今後に向けては、AIの燃料である「データ」をより活用していくため、データ戦略を考えることを主要ミッションとしたデータマネジメント室を立ち上げた。2019年4月の立ち上げ以降、この半年で既存データの棚卸が完了。今後はデータの獲得や活用の観点から戦略を構築していきたい。これらの取り組みを加速するために、オープンイノベーションの取り組みも重視している。例えば、大学との連携を強化したビジネスシーズの研究や、また企業との取り組みとしては健康応援アプリ「健康第一」の開発などである。

新しい取り組みはオープンな基盤で進めることが肝要だと考えている。大学やベンダー・コンサルはもちろん、保険会社同士でも知恵を出し合い、切磋琢磨し協業していきたい。ぜひ皆様の活用事例も聞かせていただき、情報交換していきたい。

デジタルトランスフォーメーションの衝撃

~vadaxが導く新たな可能性~

藤井 秀樹 氏

【講演者】
パクテラ・アジアパシフィック・ホールディングス株式会社
パクテラ デジタル イノベーション 最高経営責任者

藤井 秀樹 氏

山口 大世 氏

【講演者】
スタンダードキャピタル株式会社
代表取締役 社長

山口 大世 氏

近年グローバルでは、デジタル、特に新しい先端技術を使っていかにイノベーションを起こすかに注目が集まっている。オープンな時代、そして先進テクノロジーが次々と登場する時代においては、先端技術を持った人々と上手に組んでコラボレーションしていくことが重要だ。

本日はデジタル活用について3つのポイントをお伝えしたい。まず第1にAIの可能性についてだ。AIには、それ自体がまるで人間そのもののように応対できるようになる可能性がある。現在、画像解析を使って2つの仮説を検証している。1つめは対面でお客様に会ったときに表情を解析して満足度をチェックすること、2つめは画像解析結果からどういう応対をすればお客様に満足していただけるのかという予測モデルを作ることだ。AIは統計ツールであるため、データを大量に集めることで人間には見つけられなかった新しい予測を作ることができる。顧客応対をする過程でお客様が満足したかどうかを解析し、満足したデータに対する応対内容を分析すれば顧客に対する最適な提案を導き出すことができる。我々の仮説では、半年~1年以内に、特定領域において、合理的な予算内でAIを人間と区別できないレベルにすることが可能と想定している。

第2に、Vadaxと呼んでいる我々が描くビジネスコンセプトについてだ。アプリケーションを通じ、AIが利用者と対話をしながら、例えば運動習慣や栄養バランスのサポート、健康診断の実施・アドバイス、毎週の保険料の査定変更等ができる世界を実現したいと考えている。そのためには、①電子カルテ等の情報を正確に交換するためのデータ交換基盤、②ブロックチェーンを活用した個人情報管理、③AIを活用したデジタルイノベーションの3つが必要になってくる。これはいわゆる健康増進保険であり、ぜひ実現したく進めているが、保険業界・病院業界の壁や、AIによる提案への論理的なリスクなど、さまざまな壁が存在する。こういったイノベーションを成功させるためには、小さな実験を素早く見直しながら流動的に回していくことがポイントだ。デジタルイノベーションの領域で小さく挑戦を続けることで、その先にあるデジタルトランスフォーメーションへの道が開けると考える。

第3にブロックチェーンの領域において、今後の保険業界に変革をもたらすものとして、セキュリティートークンオファリング(STO)に取り組むスタンダードキャピタル株式会社を紹介したい。STOとはブロックチェーン上で有価証券をトークン化したものであり、株式・不動産・債権等が主流だ。テクノロジーの発展は新たな保険サービスを生み出す。セキュリティトークンについても同様であり、投資家保護のための保険や、セキュリティトークン化した個人情報の授受による保険料の無償化など、さまざまな可能性が考えられる。また、ブロックチェーン技術の各種手続きが効率化されれば、保険市場での活用も活発化されるだろう。契約内容の改ざんやデータの紛失・ハッキングリスクを抑えられるほか、運転データをブロックチェーンで管理することによる保険金詐欺防止なども取り組みが進んでいる。スタンダードキャピタルでは、エンジニアが各種法案を理解したうえで技術開発を行っている。開発したものは海外の経済特区で実証実験を行なうことにより、いずれ訪れる日本での本格運用に備えている。

本日はデジタル活用について3つのポイントを紹介した。パクテラは現在、AIを使って保険業界をどのように変革できるか、保険業界に今までにないデバイスを作れないかという2大テーマに挑戦している。今後ぜひ皆様にも成果をご覧いただきたい。

講演企業情報
パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社:https://jp.pactera.com

今、保険会社がローコード開発でするべき3つのこと

~「2025年の崖」に向けて、
DXで競争力を高めるための開発手法とは~

廣瀬 晃 氏

【講演者】
OutSystemsジャパン株式会社
リードソリューションアーキテクト

廣瀬 晃 氏

OutSystemsは、システム開発の初期段階から運用・改善まで、開発効率を上げるための製品を提供している。グローバルで1,200社超、日本でも120社以上のお客様に使っていただいている。ローコードとは、一言で表現するとソフトウェアの開発・運用
の自動化だ。従来のソフトウェア開発は、プログラミングを例にとると一行一行プログラムを書いていく方法が一般的であったが、ローコードではビジュアルで設計したものをそのままプログラミングとして動かすことができる。当社の製品は、システムの実装部分に留まらず、要望の分析・設計から実装、テスト、本番稼働におけるパフォーマンス監視まで、ソフトウェアのライフサイクル全般にわたって自動化対応できる点が魅力である。また、モバイルアプリやさまざまな基幹システムと連動したバッチ処理の仕組みが改善しやすい点も特徴だ。

近年、IT人材の数は減少する一方で、その需要はますます高まっており、需要と供給にギャップが生まれている。さらに保険業界は、競争環境の激化と規制の多さなどによるシステム改善の難しさを抱えている。これらの課題に対し、OutSystemsの活用で解決を目指すことができる。当社では、保険業界がローコードを使ってすべき3つのこととして、①業務システムの改善、②顧客や代理店に対するデジタルエクスペリエンスの向上、③大規模・複雑な基幹系・コアシステムの改善を提唱している。保険会社における具体的な海外事例を紹介したい。

まず、デジタルエクスペリエンスに関するFWDグループの事例だ。アジアを中心に9カ国で展開している同社は、国ごとに異なる規制や顧客からの要望に素早く対応していくために、OutSystemsの導入によりタッチポイント改善や新サービス創出をITで実現
することに取り組んだ。結果として、製品開発からプロモーション、お客様による保険の検討から購入、請求まで一連の流れで対応できるモバイルアプリをわずか3ヶ月でリリース。実際に、テロ被害に遭われた方のための保険などを新規創出し、成功を上げている。

次に、社内業務改善に関する事例として、Liberty Segurosを紹介したい。レガシーシステムの存在によりシステム変更や改善が難しい状況にあった同社は、既存の仕組みと統合可能な点や素早いアプリケーション開発・改善が可能な点、メンテナンスが可能である点などを重視しOutSystemsを導入。その後14年間に渡りOutSystemsを利用した継続的開発を実践している。CRMの仕組みを6か月でリプレースした例では、チャネルごとに異なる仕組みをOutSystems上で作ったアプリケーションに統合。お問い合わせの分析や基幹システムとの連携を行いビジネスインパクトの確認を行えるようにしたことで、デリバリーの短期化を実現、競合に対して高い成長率を達成した。

最後に、基幹系システムのリプレースの例としてFidelidadeの例を紹介したい。バイモーダルITを実践している同社は、M&Aに伴い複雑化していた既存システムをデータ保管領域と改善領域とに分け、後者のモダナイズをOutSystemsで進めている。OutSystemsでは、徐々に改善を進めて機能を入れ替えていくインクリメンタルな手法が非常に実現しやすい。大規模システムにおける全体管理やコンポーネントの依存関係のチェックなどをサポートする仕組みもある。この結果として、アジャイル化が実現されるとともに、学習・引継ぎの短期化による人的リソースの有効活用が可能になった。

OutSystemsは、セキュリティ要件として金融機関が重視している各種規定もクリアしている。素早く、安全に、安心してアプリケーションを作る際に非常に便利なツールだ。無償のトライアルも用意しているので、興味がある方はぜひ当社WEBページをご確認いただきたい。

保険インダストリークラウドで実現する
デジタルトランスフォーメーション

神谷 攻 氏

【講演者】
Vlocity Inc.
ジャパンカントリーマネージャー

神谷 攻 氏

北原 圭祐 氏

【講演者】
エヌエヌ生命保険株式会社
オペレーションデジタル推進部長

北原 圭祐 氏

Vlocityは2014年にカリフォルニアで創業、CRMプラットフォームであるSalesforceを基盤に、顧客体験の改善を目的として保険を中心とした6つの業種に特化したアプリケーションを提供。世界で200社近いお客様にお使いいただいており、Forbesが選出するThe Cloud 100の中に3年続けて選ばれるなど、業界からも高い評価を得ている。

Vlocityが提供する保険に特化したデジタルインシュアランスプラットフォームは、お客様の体験・接点を中心とした保険のエンド・ツー・エンドのプラットフォームであり、引き合いから見積・引受、契約締結、請求収納、保険金請求等、保険ライフサイクルのすべての局面でお客様にタッチポイントを提供している。すべての機能がマルチチャネル・マルチデバイスで利用可能であるだけでなく、募集人や代理店向けの画面やセルフサービスのポータル、コンタクトセンター向けの画面等も一つのシステムで対応できるように標準用意されている。また、基幹システムで提供されるようなレーティングエンジンやルールエンジン等もクラウド上に実装されており、アジャイルでの保険商品の設定や改定も可能だ。

Salesforceクラウドプラットフォーム上ですべての機能を実現しているため、Salesforceの標準オブジェクト上に保険に必要なデータオブジェクトがあらかじめ追加されており、お客様の方で追加対応の必要なく迅速に開発・導入が進められる点も大きな特徴だ。将来のアップデートや保守に対しても低コストで実装が可能。また、Vlocityはコンポーネント化されていることから、コールセンターのシステム刷新、お客様向けのポータル構築など、様々な要件に応じて必要な部分だけ選択して導入することができる。レガシーシステムからクラウドへ移行することで、迅速な商品の導入や新たな業務システムの構築を実現したい企業から世界中で引き合いを受けている。

日本においてVlocityを採用いただいているエヌエヌ生命によるコールセンター再構築の事例を紹介したい。エヌエヌ生命は、代理店チャネルによる法人向けの事業保険に特化した保険会社だ。CRMにおいてはこれまでユーザー体験や業務効率において課題を
抱えていたが、Vlocityを活用し、先進的なクラウドをベースとしたCRMシステムへの入替を実行した。導入のアプローチとしては、実際の業務担当者のペインポイントをインタビュー等で確認。そこから生まれた主要なアイディアをワイヤフレームで見える化し、ビジネス側の要望を具体的な画面イメージまでしっかり定義することで、ビジネス側、エンジニア側の目線にズレが生まれないようにした。そこからVlocity社の製品を使いながら開発を実施。短期間での開発が可能であるので、プロトタイプの開発は1週間単位、実際のアジャイルでの開発フェーズでも2週間単位での開発を進めていった。これにより、一つの処理が複数のシステムや画面にまたがっていたものが、必要な情報を一つの画面で表現することができるようになった。この取り組みは2018年の年初に着手し10月1日には新しいシステムへの完全切替を迎えるという短期間での実施であった。2019年以降はさらに開発のスピードが加速しており、コールセンター用システムのバックオフィス業務への展開や、顧客ポータルの刷新など、四半期に1つ程度のペースで次々と開発に取り組んでいる。今後の取り組みとして、顧客行動の予測モデルを開発しているので、それをCRMと連携しながら顧客コミュニケーションに生かしていきたい。

講演企業情報
Vlocity Inc.:https://vlocity.com/

あいおいニッセイ同和損保における
業務プロセス改革の取組み

佐古田 有宏 氏

特別講演

【講演者】
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
経営企画部プロジェクト推進グループ
担当次長

佐古田 有宏 氏

損害保険業界の事業環境は、国内市場の縮小、リスクの多様化や技術の進歩などにより先行きが不透明な状況だ。このような環境の中で競争力を強化していくため、あいおいニッセイ同和損害保険は、ADデジタル革命という言葉を掲げ、現在の仕事をデジタル化で効率化し、それを再投資することでイノベーションを起こしていこうと考えている。そのための取り組みとして、当社では2016年にICTプロジェクトを立ち上げた。プロジェクトは業務改革と事業開発の二軸で展開しているが、本日は業務改革に焦点を当てて紹介したい。

当社における業務改革の取り組みの中心はRPAによるオフィス業務のオートメーション化だ。2017年にPoCを実施したが、走り出しでは大きな失敗があった。はじめに作成したテスト用のRPAで業務の自動化および時間短縮に効果を感じたことから、その効果を全社的に波及させようと本社各部からRPAでの自動化希望業務を募ったものの、1,500ほど集まった業務の内のほとんどが、費用対効果が見合わない業務ばかりであった。また、PoC全体を通じても、要件定義の自社作成や安易なコンサル投入、テクノロジーありきの導入など失敗につながりやすい行動への気づきを得ることができた。

翌2018年には本番導入を進めたが、前年の経験を活かして対象業務選定のアプローチを変更、現場のニーズは度外視して効果が大きい業務を狙う方向にシフトした。RPAは2割のロボットが8割の仕事をしているといわれる。一つひとつのロボットの開発費用は変わらないため、その2割のロボットを優先的に作っていくことが重要だ。大玉業務を探し当てるには、業務量が多いものを選ぶことはもちろん、該当業務の前後を見ることもポイントになる。業務を上流で自動化することができれば、後続の業務そのものをなくすことができる場合もあるためだ。実際の取り組みの過程では、プロジェクトメンバーがまず当事者意識持つことも重要だ。ユーザー側と一体になって共にプロジェクトを進めることで、スムーズなプロジェクト進行が可能になる。RPAで自動化した一例として、保険料の入金消込業務を紹介したい。単純に入金消込を自動化するだけでなく、本社と現場で重複業務を行っていたプロセス全体を見直し、業務分担をあるべき姿に戻すことで大きな改善につながった。また、Dynamics365を使って本社と現場のやりとりをデータ化することで、現場責任者の押印プロセスを省略し、さらにスムーズな業務プロセスを実現した。

本番展開においては、さまざまな気づきや今後の課題の発見もあった。例えばRPAの管理方法として、現在は集中管理を行っているが、業務によっては自分のタイミングでロボットを動かしたいというニーズも多く、現場分散型の検討も必要だと感じている。また、リソースの適切な配置によるコスト圧縮のため、コンサル、社内SE、外部SIerの使い分けにも取り組んでいる。現場課題を解決する次の一手の模索のため、新しいテクノロジーの研究をミッションとして掲げた研究・開発(R&D)チームも設立した。現在
は、WEB上で簡単に操作ガイドを作れるTechTouchや、Microsoftが開発したビジネスアプリ開発ツールのPowerApps、RPAツールのUI flowsなどの活用を検討している。UI flowsは一般ユーザーでも簡単にRPAが作れるように設計されており、今後費用対効果の小さい細かい業務の自動化につながるのではと考えている。今後に向けては、RPAで定型業務を置き換えた先に、空いたリソースの再投資によるイノベーションを生み出せる体制を作っていくことが課題になってくる。オートメーション化の先に描く未来を実現できるよう、取り組みを進めていきたい。

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