2021年5月13日(木)開催 INSURANCE WEBINAR コールセンターにおけるテクノロジーを活用したCX変革<アフターレポート>


2021年5月13日(木)、セミナーインフォ主催INSURANCE WEBINAR「コールセンターにおけるテクノロジーを活用したCX変革」が開催された。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、保険業界などのコールセンター業務においても在宅勤務化・デジタル化への移行、新たなチャネルの構築等が注目されている。一方で個人情報の管理などセキュリティ面の課題を解決しつつ、ニューノーマル時代における顧客ロイヤルティ向上の取り組みが必須となる。本イベントでは保険会社のコールセンターでの先駆的なテクノロジー活用事例や先進企業各社のご講演を通じて、保険業界各社におけるCX変革への取り組みのヒントを見つけていただけるセミナーをお届けした。

  1. 期待を超える『感動』を提供し続ける次世代型コミュニケーションセンターをめざして
  2. 数千件の社内照会対応をデジタル化!「smart照会業務」のご紹介
  3. ユーザー事例から考える保険業界における今後のCXやコンタクトセンターの姿
  4. コンタクトセンターの在宅化を阻む課題と対策
    ~在宅化に必要なセキュリティ対策とは~
  5. イーデザイン損保のCXを起点としたカスタマーセンター改革
目次

期待を超える『感動』を提供し続ける
次世代型コミュニケーションセンターをめざして

山内 信介 氏

基調講演➀

【講演者】
明治安田生命保険相互会社
コミュニケーションセンター長

山内 信介 氏

< 当センターの紹介・取組みの背景 >
当社は637万人以上の契約者、35,000人以上の営業職員を有する生命保険会社だ。コミュニケーションセンター(以下CC)は、営業職員のお客様のアフターフォローを補完する役割を担っている。CCの座席数は、お客様からの電話を受けるインバウンド対応で270席、お客様に電話をかけるアウトバウンド対応で100席設けている。対応件数はインバウンド69万件、アウトバウンド43万件(=有効会話、発信件数は105万件)に及ぶ。CCでは、期待を超える「感動」の提供を目指し、安心感をお届けすることを前提に、「満足・特別感」と「簡単・利便性」を追求している。満足・特別感に関しては、AI等を活用したコミュニケーター(以下CM)の応対支援の高度化など、簡単・利便性については、AIチャットボット、デジタルコミュニケーションなどが主な取組みだ。

< 満足・特別感の提供①:AIを活用した電話応対支援の高度化 >
電話応対において、各種マニュアルの整備・電子化、電話応対中のAI検索、アラート・マニュアル等の自動表示を活用している。CMは電話中に電子化された各種ルールを参照したり、音声認識と連携したAIによるマニュアルの自動表示を利用したりすることができる。これらの取組みにより、応対時間や保留回数の短縮・縮減につなげている。実際の画面では、申し出の多いワードが検索窓の下に並び、選択すると上位に検索の多いナレッジが表示され、関連のあるワードを選ぶことでナレッジが絞り込まれていく。音声認識ではCMが発した言葉をAIが認識すると画面にポップアップが出現し、クリックするとマニュアルが表示される仕組みだ。

< 満足・特別感の提供②:コール品質評価の高度化 >
従前は専任担当者が通話モニタリングを聴いて評価をしていたが、評価対象コールが限定的で、1CMあたり年間6コールのみであった。現在は、電話応対の基本動作について、音声認識システムの活用により評価を一部自動化した。電話応対の印象面については、終話後のSMSアンケートでお客様からの評価を実施している。これにより、全コールが品質評価の対象となり、課題コールの抽出や公平なコール評価運営の実現、応対品質の一層の向上ならびにCMの納得感の向上につなげている。

< 満足・特別感の提供③:ご相談窓口の多様化 >
ご高齢のお客様専用のお問い合わせ窓口を用意しており、番号選択(プッシュ操作)なしで担当者に直接つながる。ご高齢者への通知物にはこの窓口の番号を掲載し、応対時はゆっくり・はっきりとした丁寧な対応を心がけている。「MYアシスト+」制度では、視覚・聴覚の低下など、自力でお手続きが難しいお客様をサポートしている。「手話リレーサービス」では、耳や言葉が不自由なお客様からの問い合わせについて、手話通話オペレーターが対応している。「5か国語によるお問い合わせ窓口」も用意し、日本語以外での申し出を希望するお客様も安心して契約を継続いただける態勢の構築に向けて取組んでいる。

< 簡単利便性の提供①:AIチャットボット等の自動応答の取組み >
対話型自動応答サービスを導入しており、質問・照会したい単語や文章を入力すると自動応答で対応する。営業時間外の問い合わせについても、時間・曜日にかかわらず情報を提供できる。入力された質問内容から回答が絞りきれない場合は、AIが独自の「聞き返し」を行なう。入力した内容に関連する語句を自動的に示唆し、回答の絞り込みが可能だ。

< 簡単利便性の提供②:有人チャット等のデジタルコミュニケーションの推進 >
AIチャットボットに加え、有人チャットサービスとかんたんお手続きフォームも展開している。お客様の問い合わせ手段を拡大する取組みであり、ボタン1つで簡単・即時に気軽に問い合わせができる。
これらのデジタルコミュニケーションは年々増加傾向にあり、CCへの入電抑制にもつながっており、今後も導線拡充や通知物の掲示等によって一層推進していく予定だ。

< 今後に向けた取組み >
様々なお問合せ窓口での応対履歴等の実績データは、分析可能な状態で集約しており、単に窓口としてだけでなくお客様の潜在ニーズを分析するプラットフォームの役割を果たすと考えている。お客様との会話の実績データや履歴データによって、WEB導線の改善やFAQの改善、AIチャットボットの改善などにも順次取り組んでいる。コロナ禍が続くなかで非対面コミュニケーションの重要性は増し、お客様の期待値も高まっていくだろう。

数千件の社内照会対応をデジタル化!
「smart照会業務」のご紹介

麹池 貴彦 氏

【講演者】
カラクリ株式会社
取締役 VP of Sales

麹池 貴彦 氏

< 社内照会応答業務の課題 >
社内照会応答業務では、3点の課題があると考える。まず多数の問い合わせを日々受けるため、作業負荷が高く、少しでも減らしたいという課題だ。2点目は工数削減のためFAQ化を進めているが、業務での検索ニーズにFAQの完成が追いつかない課題だ。3点目として、ナレッジ検索ツールを導入しても精度が良くないため、実用面で活かせないという課題をお持ちの方もいるだろう。

< ナレッジ活用についての真実 >
照会業務に関するナレッジの棚卸やFAQ整備は、いつまで経っても完成しない。すべてマニュアル化しようとするのは幻想である。ナレッジ検索はまったく知らないことの確認というより、知っていることの確認のために利用されるケースが多いのも重要な点だ。また同じ問い合わせでもその時々で回答は異なるため、ナレッジは体系化できるものではない。

< smart照会業務とは >
FAQの完成を目指すのではなく、過去のログデータをそのまま参考データとして検索・参照できることを目指し、発想を転換して生まれたのがsmart照会業務だ。画面はシンプルなUIであり、特別な知識がなくても使いやすい。AIチャットボットや一般的なナレッジ検索システムとの違いとして、検索対象の事前整備が不要であること、個別具体的かつ更新頻度が高い領域を得意とすること、検索性能が高いこと、比較的容易に導入できることなどが挙げられる。

< smart照会業務ならではの大きなメリット >
ナレッジが即時にDB化し、その時点から照会業務で活用できる。ナレッジ更新作業をせずとも自動的に内容がアップデートされ、ナレッジ資産として即時に再生産・活用することが可能だ。

< 導入活用事例 >
明治安田生命保険相互会社様では、個人事務を担う事務オペレーション部においてsmart照会業務を導入いただいている。2018年頃より、チャットボット・FAQの導入検討を開始した。しかしながら、大量の社内ナレッジのFAQ化が困難であり、ナレッジサーチ系機能の導入を検討。実際のPoCにおいて、検索精度の検証を実施し、運用に耐えうる精度が実証されたため、本格導入する運びとなった。導入効果として、検索精度は10%から32%に向上。また個人事務手続き等に関する社内問い合わせは30%削減することができた。作業負荷を軽くすることで、よりお客様へのサポート力が高まった。また副次的な効果として、自己解決に向けてナレッジを活用する社内文化も醸成されてきている。今後コールセンター部門でも更に機能を追加しての導入が決定した。

< smart照会業務の機能 >
ここから画面のデモンストレーションをお見せする。検索ウィンドウの下に、よく使われるキーワードが表示されている。ここで「自動車保険」をクリックすると、関連するログデータが一覧表示され、「保険金」などよく一緒に検索されるキーワード項目もサジェスト表示され、選択すると過去に応対したログデータが表示される。クリックすると質問・回答内容のほか、回答日時が表示され、現時点の回答として使えるかどうかの参考になる。「解決した」「解決しなかった」のボタンを押していただくことにより、AIの学習を促進する。学習が進むと検索キーワードと関連の高いナレッジが上位表示されるようになる仕組みだ。

< コールセンター業務への応用展開 >
コールセンター業務に導入する際、社内照会業務との違いをいくつか考慮する必要がある。問い合わせは電話データが主で、直近はオペレータによるテキスト入力で対応しているが、将来的には自動テキスト化されるようになるだろう。問い合わせの難易度が低いケースも混入してくる可能性が高く、低難易度のものはチャットボット等で対応し、高い者はsmart照会業務で対応するなど、相互補完的な利用が望ましい。さらに、コールセンター業務の場合はリアルタイムでのレスポンスが求められる。オペレータの負担を減らすため、クリック・サジェスト等のみで業務完結できることが必要だ。

講演企業情報
カラクリ株式会社:https://karakuri-ai.co.jp/

 

ユーザー事例から考える保険業界における今後のCXやコンタクトセンターの姿

中野 正人 氏

【講演者】
ジェネシスクラウドサービス株式会社
ソリューション・コンサルティング本部
本部長

中野 正人 氏

< 保険業界のコンタクトセンターにコロナがもたらしたもの >
コロナがもたらした影響として、まず顧客の非接触/非対面志向がある。従来の外交員が足で稼ぐ営業スタイルからの脱却が求められ、Zoom等の技術を使った遠隔営業も定着しつつある。2番目に顧客のセルフサービス志向が挙げられ、今後はBotの本格的な導入が進むだろう。実際にオンライン専業保険は業績向上が見られ、Bot導入企業からは『5年分の技術革新が半年でできた』との評価もいただいている。3番目の影響は在宅化であり、出社したくないと考えるオペレーターの方が増加している。在宅化を実施できた会社とできなかった会社では、離職率に明暗が生じているのだ。

< Genesysソリューションの価値 >
当社のソリューションは電話・メール・LINE・SMSなど多様なチャネルに対応し、最適な使い分けが可能だ。場所を問わないため、オフィスでも自宅でも選択でき、コンタクトセンターのみならず、営業・外交員でも利用できる。コールフロー等お客様自身でシステム設定変更が可能なのも特徴だ。コロナ禍で、ベンダー技術者の来社回数を増やしにくいことに配慮している。

< Bot導入の必要性 >
コロナの影響により、3密・通勤忌避のため、コンタクトセンターの業務遂行能力が縮小した現在、在宅化による能力維持を図っている。合わせてAI・Botの活用することより、従来以上に能力拡大に貢献するのではと考える。また、若い方を中心に、人手を介さない、セルフサービス志向の高まりなど顧客の嗜好の変化にも対応が可能となり、CXへの大きな貢献が見込まれる。Botは主にFAQ(簡単な受け答え等)、コンシェルジュ(有人対応に繋げるための事前情報等)、フロー(顧客特定と要件理解した上での処理の遂行等)の3種類に分けられる。導入に際してはいずれかだけを選ぶのではなく、組み合わせることがほとんどだ。まずはFAQを導入いただいた後、コンシェルジュ・フローなどを組み合わせることが多い。

< 保険業における海外事例1. Ping-An Insurance(平安保険・中国) >
中国最大のコンタクトセンター運営であり、コロナ禍の在宅強制下であっても在宅でコンタクトセンター運営を継続できた。スマホアプリ「平安好医生」に問診機能を付け、「病気の時に頼れるアプリ」の地位を獲得したのがポイントだ。加入者が自発的に健康状態を自己申告させるモチベーションを維持できる仕組みを確立した。またエージェントはアプリのデータを見ながら、顧客に最適な保険パッケージのアップセルやクロスセルの実施が可能になった。

< 保険業における海外事例2. Barmer(ドイツ) >
ドイツ医療保険大手のBarmerはボイスボットを導入し、顧客要件を簡単なものとそうでないものに分類。前者の割合を増やすため、コンタクトセンター内にサービスデザイン部署を設立した。答えが一意に決まる案件を中心に選定し、現在は全インタラクションの80%が、Botでの対応となっている。

< 保険業における海外事例3. 米国大手損害保険 >
アメリカのある大手損害保険では、機会損失の弱小化を目指すために当社のソリューションを導入。全Web訪問者の動線をトラッキングし、加入可能性の高い挙動を示した見込み客にチャットを持ち掛けることが可能となった。お客様の興味範囲を把握し、無駄な会話をすることなく、目的の保険商品の売り込みを開始できる。

< 保険業におけるフローボットの動きとAI活用 >
実際に顧客からの電話に対し、ボイスボットが最適な内容を返答、またはオペレーターへの取り次ぎを行う。オペレーターが対応する場合、会話が始まるとAIが会話を聞き取り、会話内容に対し、最適な答えをPCの画面上で示唆・指示する仕組みとなっている。顧客目線では、熟練のオペレーターがスムーズに対応してくれたように感じることができる。
これは夢物語ではなく、米国ではすでに存在し、実際に使われているサービスだ。

講演企業情報
ジェネシスクラウドサービス株式会社:
https://www.genesys.com/ja-jp

 

コンタクトセンターの在宅化を阻む課題と対策
~在宅化に必要なセキュリティ対策とは~

大蔵 将照 氏

【講演者】
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
流通ビジネス企画室 流通ビジネス企画チーム
流通ビジネス企画第2課 主任

大蔵 将照 氏

岩佐 真幸 氏

【講演者】
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
セールスエンジニアリング本部金融グループ
シニアセールスエンジニア

岩佐 真幸 氏

< コンタクトセンターの在宅化を阻む課題 >
コンタクトセンターの主な課題は、個人情報保護をはじめとしたセキュリティの確保、システムへの投資、人材の採用や確保、在宅の環境があり、すべて解決する必要がある。また金融業界は特に在宅化が進んでいない業界の1つである。

< 在宅勤務についてのアンケート結果とお客様から伺った問題・悩み >
昨年7月に当社が実施した在宅勤務者へのアンケートでは実際に在宅を行った上での不安点や課題についての声を収集することができた。またお客様への提案をしていく中で、お客様が抱えている問題や悩みについてヒアリングすることで、在宅勤務に必要な課題に対するソリューションを選定・提供することが可能となった。

< 在宅コンタクトセンターに求められる対策 >
在宅勤務実施者アンケートの不安点の上位4つにあたる、①通信のセキュリティ対策、②品質管理対策、③コニュニケーション対策、④生活音対策と、お客様の問題・悩みの上位4つにあたる、①PCのセキュリティ対策、②労務管理対策、③のぞき見防止対策、④パスワード管理対策の合計8点について、対策できるサービスを用意している。

< 在宅コンタクトセンターシステムの導入イメージとプロセス >
在宅コンタクトセンターのシステム環境はCitrix Cloudの仮想環境上に作業環境を移行することにより、安全に業務を行う事が可能となる。音声通話はオフィスのPBXに在宅のスーパーバイザーやオペレータが、インターネットや携帯電話を経由して通話をすることで実現する。在宅勤務の導入プロセスではまず業務選定が最も重要で、ネットワーク環境の確認やセキュリティ構築の確認等を経てPoCを実施する。その後システムの評価を行い、在宅化しやすい業務から本格導入に進む流れとなる。

< 在宅ソリューションパッケージのご紹介 >
PCのセキュリティ対策として、「Citrix Cloud」の仮想デスクトップ環境を利用することで、PCにデータを保存せず安全にテレワークを行える。通信のセキュリティ対策として、「Citrix Gateway」を利用することで、暗号化やVPN環境を実現可能だ。その他、品質管理、情報漏洩、労務管理、パスワード管理、生活音といった多様な課題に対策できるソリューションに加え、対策に必要なサービス・ソフトウェア、リモートアクセス用PCなど、コンタクトセンターの在宅化に必要なシステムをトータルで提供することでシステム担当者の負荷を大幅に軽減することが可能となる。さらに高度なセキュリティが必要なお客様には、閉域網接続サービスやCRMの情報をフィルタリングする個人情報保護対策を提供したり、通話量を削減するソリューションなども用意している。

< 社外からのシステム利用時のリスク >
ここからはシトリックスシステムズジャパンから説明をさせていただく。社外からのシステム利用時には、盗み見・情報漏洩など、センター内での利用とは異なるリスクが存在する。またセキュリティ関連だけでなく、勤務状況の不透明さやサービス品質の低下なども対策が必要だ。

< これからのセキュリティ対策で必要なこと >
利便性と安全を両立するため、これからは複数方式を混ぜ合わせて利用し、そこにセキュリティを施す必要がある。当社は従来セキュリティを高く守ることにフォーカスしてきたが、これからはそれぞれのセキュリティレベルに合わせて実装することが重要と考えている。また従来のVDIなどによるセキュリティ強化だけでなく、SIAやSWAを用いて脅威への耐性を大幅に強化することに取り組んでいる。

< SWAによるワークスペースのセキュリティ確保 >
SWAを用いて、IDをベースとしたゼロトラストアクセスを実現する。VPNレスでのアクセス、BYODデバイスでの情報漏洩対策、SaaSアプリへのSSOセキュリティ管理などに活用できる。キーロガー対策・印刷制限など、画面にセキュリティ対策を施せるのがポイントだ。

< Citrix SIAの特徴 >
クラウドセキュリティに関して、この2月に「Citrix SIA」をリリースした。テナント自体がユーザーごとに分かれているのが大きな特徴だ。これによりSIA経由でのSaaS
アプリ利用に関しても、IPアドレスでの接続制限が可能だ。仮想化によるセキュリティリスク削減と抑止効果があり、具体的には無料のワンタイムパスワード、オペレータ操作の証跡管理、操作画面の透かし挿入などが挙げられる。

講演企業情報
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(略称CTC):
https://www.ctc-g.co.jp/
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社:
https://www.citrix.com/ja-jp/

 

イーデザイン損保のCXを起点としたカスタマーセンター改革

桑原 茂雄 氏

基調講演➁

【講演者】
イーデザイン損害保険株式会社
取締役社長

桑原 茂雄 氏

< 当社の紹介 >
当社は東京海上グループのネット型保険会社として、2009年6月に開業した。主に取り扱うのは自動車保険で、お客さま契約数は65万件、クルー(社員)の数は560名、カスタマーセンターは240名だ。「声を聴き、改善する。」ことを重視しており、カスタマーセンターでもこの精神をしっかり意識している。 

< 当社のMission・Vision・Action・Value >
当社のMissionは、「事故時の安心だけでなく、事故のない世界そのものを、お客さまと共創する」である。保険会社として事故があった時に安心を感じてもらう点は基本として、それだけでなく事故のない世界をお客さまと一緒に創っていきたいという想いから掲げている。
VisionはMissionを実現するための行動指針であり、「Create a New Standard」を掲げている。これまで保険会社として我々が当たり前と思われてきたことを真摯に見直し、保険業界の新しいかたちをお客さまとともに創りたいという思いを反映したものだ。2021年度から2023年度のActionは「私が変わる、私が変える。」とし、我々のスローガンの中心に据えている。クルーの一人一人が自ら変化し、会社を変えていくことが大切だと考えている。Valueはお客さまが得られる体験のことで、お客さまに提供する価値である。事故にあわない、事故を起こさない「究極の安心・安全」、疑問や不安を感じさせない「究極の先回り」、お客様がカンタンでわかりやすく迷わないようにする「究極の快適性」、お客さま一人ひとりにぴったりなサービスを提供する「究極のFor Me」の4点を掲げている。

< イーデザイン損保のCX向上の取り組み >
当社はお客さまが得られるValueを重視するため、CXを経営の根幹に据え、NPS指標をKGIとしている。NPSは、「当社を友人や同僚にどの程度お勧めしたいと思いますか?」と質問し、11段階で答えていただき、推奨者(9・10と回答)の割合から批判者(0~6と回答)の割合を差し引いたものだ。NPSは情報収集・検討時、契約/契約変更時、事故時、ロードサービス時、解約時などあらゆるタッチポイントで取得している。

< NPSを基軸とした改善サイクル >
NPSをどういう形で使っていくかについて説明する。NPSスコアを、事故時の対応のスムーズさ、問い合わせ応対の感じの良さといった評価項目を、NPS向上の寄与度と満足度の2軸で4象限に分けて分析をしている。お客さまの満足度が高くNPS向上に貢献している項目は我々の強みであり、維持・強化していく。NPS向上の寄与度は高いが現状のお客様の満足度が低い項目は、重点的に取り組むことによって満足度を高めていく。NPS向上の寄与度が低い項目は、リソースに応じて対応していく。これらを定期的にチェック(定点観測)して改善を繰り返している。

< イーデザイン損保のカスタマーセンターについて >
従来のマーケティング部を改めてCX推進部に改めたほか、4月からビジネスアナリティクス部を立ち上げた。
当社のカスタマーセンターはお客さまサポート部であり、業務グループ、東京お客さまサポートセンター、仙台お客さまサポートセンターの3組織に分かれる。
2019年度の入電数は約41万件あり、そのうち既存のお客さまが27万件、新規のお客さまが11万件の構成となっている。AD(オペレーター)1人あたりの応答数は15-20件/日、平均応答時間は18分となっている。チャットによるお問い合わせは4万件だ。1日の平均対応件数や1時間あたり対応数についてコールとチャットを比較すると、チャットのほうが効率は良い。2020年度のお客さま満足度はコロナ禍にありながら最高値を出し、NPSは20~29の水準だ。

< カスタマーセンター改革の概要 >
当社ではハード・ソフトの両面からCXを実現する取組みを実施している。CXの実現において重要なポイントは、働きやすさ・働きがい・仕組み・マインドの4つであると考える。CX実現のアプローチについて紹介する。
これまで、CCの役割は、お客さまから問い合わせのお電話が入り、電話が繋がりやすくし、ルールに従って丁寧に対応しお客さまに寄り添った対応をすることであった。しかし、CCの役割が変化してきていると考えている。CCの仕事はお客さまからお電話が入る前から始まっているという考えのもと、お電話をされる前にお客さまご自身で完結できる、分からなくてもFAQで自己解決できるということもCCの重要なミッションであるという点を大切にしている。また、問い合わせが入ったときに、お客さまが知りたいことに対して端的に答える、ルールベースではなくプリシンプルベースでコンパクトに答えるマインドセットも重要であると考えている。

< 本講演のまとめ >
CXを経営の根幹に据えることが大切であり、ルールベースからプリンシプルベースへの転換が必要だ。ミッション・ビジョン・アクション・バリューの浸透を図るのが当社の一丁目一番地である。CX戦略を支える2つの土台として、従業員エンゲージメントと仕組みを作るためのITが必要だ。CCの役割(ミッション)は変化しており、電話がそもそもかかってこないようにすることもCCの大切な役割である。

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