【連載】保険業界が取り組むべき重要事項第4回~~デジタル技術を活用した効果的な取り組み③


前回の記事では、コロナ禍での環境・経済の変化の中の保険会社の業務のあり方として、保険会社職員やコールセンターオペレータの在宅勤務での業務効率化に向けた文書のデジタル化と、非対面での顧客へのサポート、およびデジタルソリューションについて述べてきた。定型商品での提供を行うダイレクト販売や職域販売を除けば、保険営業のスタイルは、営業職員が顧客を訪問し、または顧客が代理店や保険ショップ、銀行窓口へ訪れ、対面で向き合い、募集資料やオンライン画面を使用した詳細な説明と納得のもとに、時に相手の顔色を伺い、提案を繰り返して成約に至る、伝統的でなじみ深い特徴を持っている。しかし、多くの保険会社は三密回避と自粛規制の中で、非対面販売方式をベースに将来のノーマルな営業スタイルへ変化していくよう、よりきめの細かいサービスの提供と維持ができるよう、取り組んでいると想定する。本稿では、非対面販売に向けたアプローチとソリューション、考察事項について、生命保険の対面販売と新契約申込プロセスを例に、詳細に述べていくこととする。

  1. 非対面販売へ向けたアプローチ
  2. オンライン会議ツールとコブラウジング機能
  3. セールスサポートサービスと今後の方向

※本稿は保険毎日新聞に掲載された内容を、保険毎日新聞社の許可を得て、転載・編集しています。

目次

非対面販売へ向けたアプローチ

弊社においても、対面販売の営業プロセスや営業支援システムに対し、非対面販売の営業プロセスの実現とそのシステム改良、適合するソリューションについて、お客様の現況を踏まえたうえで取り組みを行っている状況である。

ペーパレス化が導入されている対面販売のプロセスフローを基に、非対面販売の場合のプロセスフローを整理した(図表1)。

対面販売では、取扱者は、紙または電子データにより、商品パンフレット等の定型の募集資料を基に顧客に「説明」もしくは「配布」し、商品提案から保険設計、申込手続きを進める。また、保険設計から申込書作成、告知、保険料支払方法による手続き、取扱者報告の一連の操作は、取扱者側によりログインされている状態で、顧客と対面しながら必要なステップでPCまたはタプレットを顧客に向けて「入力」「署名」を依頼し、顧客に申込書控えや告知書控えをその場で印刷・手渡し、もしくは「後送」する。

対面販売のプロセスフローと営業支援システムを、非対面販売(遠隔でかつ取扱者は在宅勤務の状態を前提とする)でも併用することを想定した場合、顧客への「説明」と顧客との面談のためには、音声とビデオによる面談・会議ツールを使用するのが導入アプローチとしては早くかつ確実である。

顧客にとって申込手続きに必要な「入力」ステップは、申込内容の確認と意向確認を兼ねた申込書への「署名」、告知内容の「入力」、保険料支払方法に添った情報「入力」となる。ここで取扱者と顧客の画面共有か顧客専用画面か他の方法か、といったソリューションの選択が必要となる。

非対面販売の実現のためには、インタラクティブ(双方向)なやり取りとコブラウジング(共有)と電子化に着目するべきであるが、伝統的で根強い営業スタイルの対面販売を変革する意識付けと、代理店や営業職員によるビジネス価値、顧客エクスペリエンスをより高めるための対応がキーポイントとなるのではないか。

オンライン会議ツールとコブラウジング機能

オンライン会議ツールとコブラウジング機能のポイントを整理した(図表2)。

WebexやTeamsに代表されるオンライン会議ツールは、インタラクティブ(双方向)なやり取りが可能であると同時に、録音・録画機能を設定することにより、会話の中での顧客ニーズを繰り返し確認することが可能となる。オンライン会議ツールでの画面シェアは片側で操作する内容の一方向のシェアリングとなるため、顧客からの入力・署名を求めるためには入力画面を共有するしくみが必要となる。

コブラウジング機能には、共有と同期という要素が含まれている。Webコンテンツの入力画面を共有する目的であれば、チャット、音声、ビデオ映像機能が搭載されていないソリューションで満たされる。弊社が提供する「Policyholder Connect」のようにデュアルカーソルを見て、取扱者と顧客間のリアルタイムプロセスを実施することが可能なソリューションも存在する。取扱者と顧客が同じように動く入力画面を見て確認を行いながら販売プロセスを進めていくイメージとなる。

いずれの場合でも、現行の販売プロセスと営業支援システムの、非対面販売に向けたプロセス導入と改定は、対面販売の残存・移行を含めて進めていくことが重要と考える。

セールスサポートサービスと今後の方向

図表1において、非対面販売のプロセスフローを描いたが、ステップによっては音声に代えてチャットでの対話サービスを活用・連動することで、顧客のニーズをより引き出せるツールとなる可能性も考えられる。非対面プロセスフローには、時にインタラクティブ(双方向)なやり取りに加えて、繰り返し確認できる機能が有能な局面があるかもしれない。

異種のポイントを持ったソリューションの連携と弊社が提唱する統合デジタルセールス&サービスソリューションの対比を整理した(図表3)。

前者は断片的に見えるがうまく連携すると要所でその効果を発揮する。また統合デジタルセールス&サービスはシームレスなプロセスであることは確かだが、非対面販売の条件で適用できるものかはまだ検証が必要となる。

また、非対面販売の適切な措置を講じるためには、金融庁監督指針の確認と関係部署による検証は重要な活動となる。「Ⅳ-1-4 危険選択」の「身体的危険と環境的危険選択の適切性」「モラスリスク排除の適切性」や「Ⅳ-1-13 インターネットによる商品販売の取扱い」で述べられる方策の確認等が、保険商品審査上の留意点として定められており、非対面販売という募集方式の拡大とともに商品の開発・改良の際には根拠を明確にすることが社内規程への改定として必要となる。

日本の保険マーケットの営業プロセスにおけるデジタル化と、非対面販売プロセスを確立する事案に関して、弊社も保険会社様とともに考察し、最良のアプローチを提案していきたいと考えている。

寄稿

コグニザントジャパン株式会社
コンサルティング事業部
藤原 賢治 氏

国内および外資系生損保システム開発・企画部門での業
務担当を経て、コグニザントジャパン株式会社に入社。
現在、保険コンサルティング部門に所属し、生損保クラ
イアント各社の事務の構築からソリューションの導入・
保守に関わる一連の業務を担当。またクライアントの保
険ビジネスやシステムに関連する案件への各種提案を
行っている。
コグニザントジャパン株式会社
〒102-0083 東京都千代田区麹町2-1 PMO半蔵門
電話:03-4563-8300
URL:https://www.cognizant.com/ja-jp/
Email:CognizantJapan@cognizant.com

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